254 :ひゅうが:2011/12/06(火) 23:56:40
→111 への支援として投稿しました
→165と、悪乗りしたネタである
→175-177の続いてしまったネタです。ああ!ごめんなさい!石投げないで!!
続いてしまったネタ――BAD END(嶋田青年の人生的な意味で)
――西暦198X年4月 日本帝国 某所
鐘が鳴っている。
「うう・・・。」
嶋田繁太郎は青い顔で歩き回っていた。
着ているのは、欧州大戦以後に採用されたブレザー型が今年に入って3回目の改訂をくわえられた第1種軍装である。
肩には元帥の階級章。肩からは親任官(陛下から直々に任命状を渡される公務員の最高等のクラスのこと)として授けられた金色の元帥飾緒が胸のネクタイピンに繋がっており、手には彼自身が改訂に関わった元帥杖が握られている。
しかし、彼は外見年齢では20代そのままである。
「はっはっは。嶋田さん。その格好はどこからどう見ても厨二病時代に書いた『ボクが考えたさいきょうのしゅじんこう』ですね!」
「お前が言うかお前が!」
20年ばかり前からほとんど外見が変わっていない辻正信の首を思い切りしめ上げながら、嶋田は怒りに燃えていた。
だいたいこいつが旅のラマ僧(チベット仏教の僧侶)から怪しげな「仙丹」と称する薬を持ってこなければこんなことにはならなかったのに。
後始末を丸投げされた国家公安情報庁(通称トウキョウフーチ)の後藤田正晴長官や神祇院のボス加藤保憲の苦労っぷりを愚痴られるにつけ、嶋田は胃が痛くなるばかりだった。
「御上には『せっかく若返ったのだから若返れない者たちの分も国家に尽くせ』と有りがたいお言葉をいただくし、世代交代したはずの三木君たちはここぞとばかりに仕事を押し付けてくるし、海軍は空母機動部隊拡張を、空軍は戦略爆撃隊拡張をお願いにくるし――
いい加減休ませてくれ!!」
「あ。それ無理ですね。それに・・・これからもっと仕事は増えますよ。ドイツとイタリアは関係改善を図ってきていますし、英国の『円卓』もこちらに注目しています。わが
夢幻会の『エリザベスたんを大いに盛り上げる帝国臣民の団』も閣下をお待ちしています。」
嶋田はがっくり肩を落とした。
だいたい自分がここにいるのだって、日独伊と英国が謎の大同団結を果たして行った国際的な謀略の一環なのだ。
その割に展開レベルがご町内の噂話クラスなのだが・・・
「さ。新婦『たち』がお待ちかねですよ?」
255 :ひゅうが:2011/12/06(火) 23:57:12
ニヤニヤ笑う現夢幻会の面々や、リア充爆発しろとパルパルいっている「帝国しっと団」、それにこれまで嶋田がお世話になったご町内の商店街の皆さまから生温かい視線が注がれる。
なぜかきているドイツの初代総統の家系の当主は感極まって泣いて、欧州親衛隊の中に生まれた「親衛隊」も男泣きにくれている。イタリアからやってきた親族たちはニコニコしているが、マフィアを絶滅させた(というか取り込んだ)イタリア王立軍警察の「踏まれ隊」と名乗るファンクラブは無言で「俺たちのあの娘を泣かせたらどうなるか分かっているよな?」と視線で告げている。
嶋田の親族は紋つき袴で参列しているし、その周囲を陸海空の高官や辻の弟子どもが固めていた。
そして、嶋田の「同級生」たちは口々に「おめでとー!」「お幸せにー!!」とテンションの高い声を上げていた。
――くそっ。やっぱりあの時逃げとけばよかった!なんで始皇帝の墓を調査したら出てきた中華5000年の秘薬(笑)を盛られにゃならんのだ。おかげで若い衝動をこらえきれず・・・。
――バン!!
という音と一緒に、高さ3メートルの巨大な扉が開けられた。
そこにいたのは・・・。
顔を薄紅色に染めた銀髪のゲルマン系な女性、そしてラテン系のますます豊満になった女性・・・だった。
「あの・・・」
「ここまで来たら、分かってますよね?」
恥ずかしげに顔を下に向ける女性、アドルフィーネ・ヒトラー・ブラウンと、ツンとしながらもこちらを見つめるベリーナ・ムッソリーニ・ベタッチ。
純白のドレスに身を包んだ彼女たちを見て、嶋田は自分が罠にはめられたことを今更ながら実感した。
こいつらはあの独裁者たちなのに――高校生活を共にしたことで気を許してしまっていた。
そして、あろうことかこいつらと辻は共謀して嶋田に始皇帝の秘薬を盛り・・・自分を喰わせた。
何より信じられないのが、嶋田自身が彼女等を憎からず思っていることだった。
法律上は・・・という問題は、悪乗りしたこの国の私生活ではお茶目な国家元首が「いいじゃん?」と言って相応の義務を申し渡したことで決着し、関係改善と日本帝国という超大国と繋がって世界を安定化させるという独伊と英国の方針もあってすべての逃げ道はふさがれていた。
「ああ・・・認めよう。逃げ道なんて最初からなかった。」
そう。辻があの薬を自分に盛って二度目の人生を強要してから。
何よりこいつなら、自分を死後に神格化くらいして閻魔の手先として延々と働かせかねない。それを考えればこの結末はまだマシなのだろう。
「さ、行くぞ。」
嶋田繁太郎は、これから長い付き合いになる二人にぶっきらぼうに言った。
仲人をつとめるニヤニヤ笑う山本五十六を睨みつけながら、某地方都市の教会で儀式は始まった。
~BAD END?~
最終更新:2012年01月04日 08:35