431 :ひゅうが:2011/12/08(木) 03:21:18
※ 本編の夢幻会の計画通りに日米英関係が進んだ場合のネタです。


提督たちの憂鬱ネタSS――「IFルート 『日英米三国大同盟』編」

――西暦1941年6月 ドイツ占領下ベルギー アントワープ


「撃てぇっ!!」

連合艦隊司令長官 山本五十六大将が叫んだ。
彼の号令は電子的なものに変換され、彼が座乗する戦艦「鞍馬」艦上から連合艦隊の各艦艇に伝達された。
戦艦12 巡洋艦26を数える世界でも指折りの大艦隊は、慌てふためくドイツ軍陣地に対し憎たらしいほどの精度で巨弾を吐きだし続けている。

それもこれも、上空に展開した1式重攻「連山」改造の電子管制機が砲弾ひとつひとつの弾道を計測し、なおかつGF(連合艦隊)各艦に存在しているトランジスタ式電子計算機を用いた弾道計算で修正射をはじき出しているからだった。

上空は、後方の空母「翔鶴」を旗艦とした第3艦隊の空母群から発進した戦闘機群が直掩を続けており、「烈風」をはじめとした2000馬力級の重戦闘機群は毎時700キロに達する高速でドイツ自慢の戦闘機部隊を駆逐しつつあった。

加えて、英本土に展開した大西瀧治郎少将率いる第1連合航空軍のべ200機余の重爆撃機編隊が全力出撃しつつあり、戦略爆撃機を用いた対地支援攻撃という贅沢な支援攻撃をしていた。
前述の海軍機もあわせれば、その数はのべ2000機に達するだろう。

「すごい・・・ですな。」

艦隊に連絡武官として派遣されてきたルイス・マウントバッテン中佐は眼前の光景に息をのんでいた。
日本遣欧総軍が総力を挙げて実施する対独反攻作戦「ノルマンディー」。
昨年の対仏侵攻以来ノルマンディーとブルターニュという北フランスで籠城を続ける大英帝国欧州軍と日本陸軍遣欧軍によるベルギー大突破作戦「Z」と平行して行われた日本海軍のほぼ全てをつぎ込んだアントワープ上陸作戦がそれであった。

現在ドイツ軍の目は、米国参戦とトルコの連合軍側参戦によって東と南に向いている。事実、英海軍と米海軍はその艦隊を決着のついた北アフリカからイタリア本土とブルガリアからルーマニアにかけてへ進出しておりそちらへの陸軍の増援も盛んに為されている。

そのため、英本土で陸軍の練兵が行われようと、その中に日本海軍が運用する大量の米国製上陸舟艇があろうとも「地中海向け」としてドイツ軍は疑わなかった。
ブレスト港を通じて行われる補給でいかに日英軍が強大になろうとも、所詮はその程度であると。

その裏をかいたのが、日本海軍だった。
彼らは易々とドイツ軍の暗号を解読し、電撃的な低地諸国の「奪還」と米軍の再規模投入によりフランスに展開したドイツ軍の退路を断ち、ドイツ本国への道をこじ開ける腹だったのだ。
幸いというべきか、ドイツ軍は兵力を東へ移動させていた。

こうして、ローズヴェルト大統領がドイツ軍の北アイルランド奇襲爆撃を理由としての対独宣戦布告を成し遂げた1941年4月をもって反攻作戦は準備に入り――こうして実行された。

432 :ひゅうが:2011/12/08(木) 03:23:40
「いや。同期の賜物ですよ。」

山本はそう言って笑った。
一昨年に勃発した第2次世界大戦に祖国が参戦してから、山本は首相をつとめる嶋田繁太郎により連合艦隊司令長官に抜擢された。
そして、欧州へ送り込まれた山本は、期待通りの仕事をやってのけつつある。

米国に「このままでは日英同盟が復活強化されたうえにドイツの強大化を見過ごす」という恐怖感を植え付け、そして参戦させる。
いくら嶋田首相とローズヴェルト大統領が親しく手紙をやりとりしているからといっても、山本とそれに乗じた英国宰相ウィンストン・チャーチル卿の息の合った策謀がなければこの光景は出現しないだろう。

「さて――行こうか。ベルリンへ。」

山本は言った。
ドイツの暴発を機に、日英と米国はひとつにまとまった。
米国がこちらを危険視するという懸念はあるが――今は連中を叩きつぶすことだけを考えよう。
現在は中立を維持しているソ連が、いずれ火事場泥棒的に欧州になだれ込んでくるのは明白だ。
その時は、ヒトラー政権を倒したドイツとわが帝国が反共の盾として米国との同盟関係を構築する。――夢幻会の戦略に、山本は基本的には賛成だった。
だからこそ彼は、ここにいる。


東条英機総司令官が率いる遣欧総軍第2軍集団の97式戦車改が多数の兵員とともに欧州へ上陸していく。
南方では松井石根司令官の第1軍集団がノルマンディー・ブルターニュ包囲網を見事に突破し北上しつつあり、同時に英本土にはついに満州で経験を積んだパットン大将率いる米軍20個「機械化」師団が到着した。遅くとも1週間後、上陸第2陣として戦闘に加わることになっている。

年末までには、マース河を渡れるかもしれなかった。
そして、1943年にはドイツ本国へ侵攻できるだろう。もしかすると、暴発したスターリンを抑えるために東部戦線へ移動しているかもしれない。
そしてその頃には――帝国は初の「あの兵器」たちを手にする。
カナリア諸島から欧州全土を15分以内に攻撃できる秘密兵器、そして、東海岸をも狙える超重爆とそれに搭載される強力極まりない・・・超爆弾。

帝国の興廃は、まさにこの1年にかかっている。
この一戦で同盟国たることを示し、そして米国にも文句を言わせない程度の軍備と経済力を手に入れるのだ。

「だから嶋田よ・・・帝国を頼んだぞ。俺はここで存分に働いて見せるからな・・・。」


 ~true end1~

ルート分岐「日米激突への道」or「太平洋同盟」の選択ができます。続けますか?(Y/N)

433 :ひゅうが:2011/12/08(木) 03:28:46
【あとがき】――英仏両国が遣欧軍を受け入れたルートですwもちろん警戒はされていますが、チャーチル卿がふとしたことで日本の助力を頼むことを決断したことでこの世界は生まれましたw
夢幻会にとっては願ったり叶ったりな世界です。米国でもローズヴェルト大統領が倒れず、結果として日米の緊張感をはらんだ平和は続いています。
その総決算が、連合軍のこの欧州奪還作戦です。ソ連侵攻作戦のために兵力を東へ向けつつあったドイツにとり、痛すぎるタイミングでの一撃でした。
この後1年あまりで日本軍が米軍とともにいかなる戦いを繰り広げるのか、それによって帝国の未来は変わることでしょうw

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最終更新:2012年01月04日 08:57