580 :ひゅうが:2011/12/09(金) 23:49:48
※金曜ロードショーを見たから書いたネタです。続きません。
――西暦195X年10月 北欧
「ごめん下さい!」
「どなたですか?」
厳しい目をした壮年の男性が戸口の前に立った。
嶋田繁太郎は、少し眉を上げる。
「ああ、おどろかせてしまってすみません。私は嶋田繁太郎という者です。少しばかり御話があって参りました。――大丈夫。旧ドイツ第2帝国のようなことはいたしません。」
男性は少し驚いたようだった。
この北欧の地においては、嶋田の名は有名である。
同盟国である極東の島国は、冬戦争や第2次世界大戦でつとに有名である。
特に、太平洋戦争を指揮した嶋田の名は、この地においてトーゴーと並んで評されるものだった。
「その・・・どうぞ・・・。」
「ああ。――君らは待っていてくれ。あとは4人だけで行くから。」
護衛にそう言い添え、嶋田は広いその屋敷へ入って行った。
「どうぞ。」
男性の奥方が紅茶を出してくれた。
「ああ、おかまいなく。」
「それで、今をときめく元帥閣下が何の用です?」
「そう警戒されずとも。ああ、こちらは日本宇宙開発事業団のフォン・ブラウン博士とセルゲイ・コロリョフ博士。この筒はただの図面や写真入れです。」
嶋田は言った。
その横では、なぜかついてきた辻が相手を怖がらせないようにギラギラした目を下に向けている。
「さっそくですが、これを見ていただきたい。わが国の高性能極超短波レーダーが探知したものです。高度60キロほど。」
嶋田は、なんでこんなものが・・・とお茶を噴き出したことを思い出す。
富士山頂に建設された気象レーダーと高性能の対弾道ミサイルレーダーが探知したものは、それほどまでに異常な代物だったのだ。
「これは・・・。」
北欧でも一二を争う工業グループの長である男性が顔色を変える。
女性の方も同様だ。
「はい。まさかと思って調べてみました。インド洋モルジブ諸島はるか沖の潜水調査の結果、明らかに異常な物体が発見されました。深さ3000メートルを超える海底に、大量の石のようなものがあったのです。」
嶋田は写真を取り出す。
海底の大量の黒い石や石材、それらに混じって、ロボットのようなものの手が見えている。
先ほど取り出した写真。格子模様が描かれたそこには、レーダーの情報から合成された画像――どう見ても木のような物体が写っている。
ただ、縮尺率を考えればどう見ても「全長500メートル」をはるかに越えている。
「幸い・・・といっていいのか。あの探検と空中戦艦『ゴリアテ』遭難事件に関してはドイツ革命時の混乱で資料がほぼ全て焼き払われていました。
我々がたどった手がかりは、隠滅済みです。」
ただ。と嶋田は言った。
「できれば、どのような事情があるのか説明いただけませんか?これからの宇宙時代、30年後か40年後かは分かりませんがいずれはこれの存在は公になるかもしれません。
かつて冒険を繰り広げた少年と少女は、顔を見合わせた。
最終更新:2012年01月04日 09:03