484 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 21:15:15
【ゲートネタ】あの場所にゲートが出来ました


史実世界と、夢幻会による歴史改変が行われた世界を結ぶゲート。
すわ一触触発かと思われたのだが、結局のところ、史実側も憂鬱側も互いに干渉しないという方針で一致したのだった。
何故か?勿論左向きに元気に回転している人たちは軍国主義滅ぼせという発言を繰り返したり、あまつさえ自衛隊や
国連軍を送り込めと言う平和主義なんだか軍国主義なんだかそれともどこぞの惑星同盟のようなことを言い出している。
アメリカなど日本の周辺国ではそのゲートを巡っての暗躍が密かに始まったりしたのだが、当事者の日本国、
そしてつながった先にある大日本帝国の間ではある種のあきらめのようなものがあり、速やかに結論を下した。

「では、改めてではありますが、史実方面への干渉はなしということで」
「異議なし」
「陸軍としても異議なし」

夢幻会の会合の場にて、短い議論の後に結論が交わされた。

「まさか、あんな場所にゲートができるとは……いやはや、何とも不思議な次第ですな」

ええ、とうなずくのは

「富士山山頂にゲートができるとは……」

485 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 21:16:18
標高3776mの、綺麗な懸垂曲線を持つ成層火山にして、日本の最高峰たる富士山。
史実世界においても世界遺産に登録された名山であり、現在も活動を続け、数百年周期で噴火を繰り返している。
また、いくつもの文化人たちを虜にしてきており、美術作品や文学においてはよく題材とされてきた名山である。
同時に浅間信仰という、富士山そのものとそれにかかわる神々を祀る信仰すらあり、浅間大神はコノハナノサクヤビメ、
即ち日本書紀や古事記にも登場するニニギノミコトの妻 木花咲耶姫と同一視されている。

少々マイナーなものまで見れば、富士の浅間と八ヶ岳の権現が背比べをして、負けた富士の浅間が八ヶ岳の権現を
叩いて小さくしたというものもある。有名な物ではかぐや姫のラストにおいて不死の薬が焼かれる山としても登場する。
さらに言えば、日本には富士見という地名が富士が見えない土地にも存在し、霊峰や山の渾名として『○○富士』などと
付けられることもある。これらの事から日本人の根底に近い立ち位置を持つのかがわかるだろう。

蘊蓄はこの程度として、とにかくそういう神聖さを持つものということが重要だ。
さて、史実世界においてはそれはもうゲートの向こうへの『解放』や『征伐』といった声が挙げられたかといえば、
実のところそうではなかった。そもそもゲートが開通してから発見されるまでそれなりに時間がかかっており、発見から
調査隊の結成に1週間かかり、さらに現地の天候を鑑みて登るのにふさわしいタイミングを待って2週間かかってしまったのだ。

ゲートの発見と漸くの通信インフラが相互間に開かれてから2週間後、漸く話し合いが行われて両者は合意に達した。
史実側の首相官邸の記者会見場には、多くの記者が詰めかけていた。

「現在富士山頂に確認されたゲートは、異なる歴史をたどった世界につながっている。
しかし、現状の交流は最低限しか不可能であり、日本国は大日本帝国との間に基本的相互不干渉の立場をとることを確認した」

記者会見場がざわつく。官房長官が述べたのは、相互不干渉。
即ち、互いが何をしようが、互いに影響が及ばない範疇においては何ら口を挟まないというものだ。
しかし、一部の記者を除けば、そうなったか、という表情の記者ばかりであり、会見を行っている官房長官もあきらめ顔であった。

「報道各社には、いたずらな報道を行わないように強く自制を求める次第であります。
 たがいに関与することが難しいならば、あまり関与しあうこともないでしょう。
 積極的な干渉を促すような報道は謹んでいただきたい」

眼光鋭く一部の記者をにらみつけた官房長官であったが、すぐに表情を緩めた。

「ともあれ、あちらの世界の方々と交流することまで我々は制限しません。同じ登山家同士で語り合うのもよいでしょう。
そこに関しては良心に委ねることとします。ただ、いたずらな情報の拡散については強く自制を求めます」

会見は質問もほとんどなく終了し、それぞれが仕事に戻っていった。
富士山のゲートの事よりも、みな自分の仕事の方が優先なのである。

486 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 21:17:08
さて、ここで一般的な富士登山の際の装備について述べよう。
シャツ、長袖の服、ベスト、登山靴、靴下、合羽、軍手、洗面用具、水1.5l、タオル、常備薬、救急用品などが必須である。
これらを全てリュックに背負うか身に着けていく。もちろん、1着だけでなく予備も含めていくのが当然だ。合計でおよそ6キロ。

しかし、軍を送り込むにしてもこれらに加えて装備品を持ち込む必要がある。それこそ、標高3000mクラスの山の頂上まで。
勿論、歩兵の装備だけではなく重火砲・戦車・ヘリ・装甲車・機関砲などを持ち込む必要がある。
だが、それを町中にあるならばともかく山の上の、よりにもよって富士山の頂上にあるゲートまで運ぶなどナンセンス極まりない。

日本の主力戦車(MBT)の90式戦車は重量にして50トン前後ある。
たとえそれをばらしたところで結局1両分運ぶにも50トン分のパーツを運ぶ必要があるし、分解が難しい主砲弾は
そのまま運ぶ必要がある。90式の主砲は120mmであるため、およそ19キロから23キロはその重量がある。この重さ故に
現代では自動装填装置、即ち機械の力を借りて砲弾が装填されているほどで、どう考えても山持ち込んで運ぶ代物ではない。
まして、一両に詰め込まれるのはそれなりの弾数だ。非効率という言葉を通り越している。

因みにだが、航空機で運ぶという手も使えない。
何故なら、富士山とは遮蔽物が周辺にないため風が強く吹く山で、晴れた日には航空機が近寄らない危険な山であるためだ。
だから、大型輸送機などで乗り付けようなど狂気の所業だ。少なくとも、まともな操縦士なら近寄ろうとはしないだろう。

さて、ここまで論じたのは持ち込むまでだけである。
その後は言うまでもなく、憂鬱側の富士山を下る必要があるのだ。
当然ながら、同じ日本列島故に富士山の形状も同じで、高さも同じである。
しかしながら、人が2,3人横に並んで通過できる程度の幅しかないゲートは航空機など通れるはずもない。
そもそも、分解して持ち込んだ航空機なりヘリコプターを高度3600mで組み上げて飛ばすなど現実的ではない。
ヘリコプターはまだしも、航空機に至っては富士山頂に十分な滑走路など敷けるはずもない。
まさか、山頂から突き落とすわけにもいかない。VTOL機ならばチャンスはあるかもしれないが。

まして、富士山は世界遺産である。
如何に事情があろうとも、やたらと武器を持ち込んでいくなど感情的な理解が得られるとはいいがたい。
『平和のため』『ゲートの向こう側の世界をファシズムから解放するため』『打倒帝国主義』などと威勢の良い言葉を
吐くのは簡単である。しかし、富士山に武器を持ち込み、あまつさえゲートの向こうで用いることが本当に『平和』を生むのか。
史実からの『有志』が必死になって富士山を登り、ビラをまき、演説をしたところで、登山目的の憂鬱世界の人間が
そんなものに興味を示すかといえば、ノーである。ぶっちゃけた話、迷惑である。
一周回って冷静になった史実の人々も、そして大日本帝国の国民も、そういった活動に白い目を向け続けた。
やがてそういった活動を続ける団体やら市民組織も自然消滅した。

487 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 21:18:12
さて、この『別な場所にゲートが出来れば!』と期待していた人間達のその後を簡潔に言えば、彼らの願いはかなった。
ただ、どれも厳しい位置になのだが。例を挙げれば『エレベスト頂上付近』『ロッキー山脈山頂付近に数か所』
『モンブラウン山頂上』『ツークシュピッツェ山頂』などなど……どう考えても人がたやすくたどり着ける場所ではない。
最近の報告では太平洋海底の海溝付近にそれらしきものがみられるとの報告があったが、大したニュースにすらならなかった。

かくて世はこともなし。

一つ確かなことは、日本が始まったり終わったり真っ二つになったり怪獣に蹂躙されたりと、いつも通りなことである。

日本は平和なのであった。

世界もいつも通りグルグルと回り続けている。

居眠りをする猫の近くに雀が鳴いているような、平和な世界なのだ。







「で、なんでいつもデスマーチなんですかね!?」

「軍人が暇で政治家が忙しい。平和な証拠ですよ」

そして嶋田さんたちが辻ーんに仕事を持って追いかけられるのも、いつもの通りであった。

どっとはらい。

488 :弥次郎@帰省中:2016/08/12(金) 21:19:03
はい、以上となります。
wiki転載はご自由に。正直一発ネタですね。
最近のゲートものへのアンチテーゼ的なモノを書いてみました。

例えば「繋がっても交流できない位置にゲートが出来た」「ゲートが開通した瞬間に双方の世界が崩壊」とか。
温めていたネタとしては、皇居の内部に人がやっと一人入れるゲートができて、並行世界の同位体同士が交流する
ネタもありましたね。竹のカーテンの向こう側ともなれば、史実側でも慎重にならざるを得ないでしょう。
何しろ、GHQさえも手を出すことを諦めざるを得なかった聖域なんですから。

さて、ネタを書き続けますかね。
コジマよ、我に力を……!(啓蒙999)

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最終更新:2016年08月31日 19:44