512 :影響を受ける人:2016/04/06(水) 21:41:32
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第八十九話 ―決戦前夜06 御前会議:後篇―



提示された提案は耳を疑うものだった。
台風を利用し。巨大魔方陣を形成する事。
そんな事が可能なのかという疑問が沸き上がる。
しかし山本五十六は知っている。それが可能だという事を。

(嶋田に聞いていなかったら彼女の頭の心配をするところだ。)

目の前で、ガラスコップのふちを利用した液体遮絶を見せられた時は、腰が抜けるほどだったと苦笑する。
その時の山本の様に驚いて、目を見開いた堀井大将は何度か瞬きをし、息を小さく吐いて問う。

「そんな事が可能なのか?」
「可能です。」

即答だった。
石渡みねの表情には陰りなどは全く浮かんでいない。自信による裏打ちがあるのだ。
堀井は「ふむ・・・」と言って腕を組んで考える。そして、

「それが可能ならば、何故大陸で使用しなかった?」

間違いなく問われるであろう問いが来た。
故に、すぐさまに答える事ができる。

「それにはまず、この魔法儀式による長所と短所を申し上げねばなりません。」

目配せで堀井を見ると、言って見せろというように鷹揚に頷いた。

「まず長所ですが、台風と言う自然の力をそのまま使用する事ができ、食いつぶす形で魔力運用が可能になります。
 台風が消え去らない限り、魔力は供給し続けられ、その供給量は今の扶桑にいるウィッチ総出で上げられる魔力量を上回ります。
 更に単純なシールドでさえも高圧縮高硬度化が容易となり、ウィッチに魔力補給できる以外に、戦艦の火砲も魔力砲同様に使用する事が可能となります。」
「ほう。それはいいな。」
「うむ。敵を粉砕できる時間が、単純に短くなる可能性があるのは歓迎したい。」

堀井が生真面目に言い、九鬼大将は穏やかな笑みを浮かべた。
だが次は、問題の短所。一度つばを飲み込んだ石渡の表情が、少しだけ暗くなる。

「続いて短所ですが・・・
 天候を強制的に操作する事により、今年度の後半は災害に見舞われるという事です。」
「「「「「・・・!!??」」」」」

一同が驚愕するのを見ない様にして、説明を続ける。

「なぜ災害に見舞われることになるのかですが、歴史上で習った大飢饉を覚えておいででしょうか?
 その大飢饉は織田幕府に大打撃を与え、翌年の収穫まで貧困に耐えねばなりませんでした。
 ですがそれは、その二年前の冬に行った予知の災害回避によるものなのです。
 当初予知された災害は、夏に雨が中々降らない長引く晴天だったそうです。
 雨が降らないというのは作物に悪く回避する為、通常の雲を発達させ、雨に変えました。
 適度の調整された天候により、その年は豊作となり。天候操作による災害回避は有効、今後も適度に調整する事になったのですが・・・
 その翌年の天候予知は全く機能しなくなりました。予知未来が大量に分岐し、当てにならなくなってしまったのです。
 それどころか豊作だったその年の冬、記録的な大豪雪が襲い掛かり、翌年の夏は雲すらない大干ばつになってしまったのです。
 織田幕府はそれでも天候操作で危機を乗り切ろうとしたそうですが、最終的に天候操作すらできなくなり・・・
 台風が10も襲い掛かったその年を境に、天候操作は打ち切られました。
 天候操作を開始してから三年目の事です。
 さらなる災害を呼び込むのであれば、しない方が良いとなり。天候操作の技術のみが伝承されることになったのです。
 そして今現在は、高確率で天候予知が可能なまでに回復しています。
 また。災害になる天候に関しても手出しをせずにいた為、極端な災害は起こり難くなりました。」

沈黙が会議室を包んだ。
歴史の教科書で習う “大飢饉”が、天候操作によるものだという結果だとは信じられなかった。
そもそも、この事実は教科書に載っていない。
明らかに織田幕府の汚点の事実。竹井元少将が絶句する一同を代表するように聞く。

「なぜ、今になって・・・ この場で明かすのか?」
「それは・・・」

513 :影響を受ける人:2016/04/06(水) 21:42:20
石渡はどう答えていいか困った。これは自分の発案ではなく、出来るからと提示された方法なのだ。
そしてその事を言ったのは・・・

「織田信平総理大臣首相からの、提示・・・です。」
「織田首相の?」
「は、はい。
 今回の作戦において、私達はこの儀式を使う事無くどうにかして戦艦を守る方法を探っていました。
 確かに長所を見れば最適解なのですが、短所の影響を考え見るとどうしても実行できなかったのです。
 しかしそんな時に首相が尋ねられ、

「我が家系の汚点を明るみに出しても、この扶桑を守って欲しい。」
 その後の幕引きは、汚名は私が請け負う。」

 と・・・」

再び沈黙が会議室を覆う。
九鬼大将や柴田大将などは、

(アイツ。俺達に相談しないで勝手に決めやがって・・・)

幼馴染に悪態をついていたが・・・
だがその思いはわかるつもりだ。この戦争が始まって以来被害は鰻登り。
前政権がしでかしたことにより学徒兵を招集、さらに被害が出た。
他国よりも人員が多く、更に教育期間が長くとれ、技術が有るとは言っても若い世代が居なくなるという損失は計り知れない。
そして今作戦で戦艦を失うとなれば・・・ 想定される損害額は見たくもないだろう。

だからこそ、織田信平は提案をしたのだ。
たとえ被害が未来に出るにしても、今を乗り切らねばならないと。
堀井もさすがに首相を敵には回せないし、裏側もわからない。織田信平の手腕は彼も認める所であり、良いようにやられるのが落ち。
後に山本が聞くことになるのだが、九曜葛葉は・・・嶋田繁太郎としての経験である火山噴火によるアメリカ攻撃の影響をよく覚えていた。
温暖化ではなく寒冷化していく世界。自然を強引に操る結果を知っている九曜としては、絶対に賛成できなかった

しかし当時の天皇家では賛成と反対が半数ずついて、九曜としてもどうして駄目の中を説明できなかった。
まさか「異世界で火山を人工的に噴火させて、津波で他国を攻撃して、後に寒冷化で地球が冷えました」なんて言えるわけが無いし、信じられるはずがない。
結局上手く説得できず、実行と相成ったのだ。
話を戻す。

「むぅ・・・ 長所と短所はわかった。政府も覚悟を決めていることも了承しよう。
 そこまでお膳立てされて引き下がる事は、さすがに失礼極まりない。
 しかしだ・・・」視線だけを石渡に向け「台風は本当に本土に来るのか?」

いかに予知で災害が有るとわかっていても、太平洋側通過では話にならない。

「その対策ですが、小笠原諸島、南洋島等と言った南方地域から台風発生通信を受けとります。
 そして結界術士動員して台風を 制御 します。
 制御と言っても本格的には動かしません。
 ですが本土に迫る様に、扶桑海通過ルートを取るようにある程度の制御は行います。
 そして同時に台風の力を増大させます。これは少しでも魔力生成できる時間を長くするためです。」 
「台風を大きくするのか・・・ 船乗りにとっては最悪な選択だな。」

山本は苦笑して頭を掻く。戦闘は基本的に晴天、穏やかな時にやる事が多い。
雨が降る時でも行う時はあるが、強風吹き荒れる嵐の中は流石にない。
掻く手を止めて、続きを促す。

「結界士達は交代で台風を牽引し、敵が扶桑海を渡るタイミングを見計らって突入させます。
 そして、「我々が攻勢をかけるタイミングでもある、という事だな?」・・・はい。」

遮る様に発言した堀井は、溜息を一つ吐く。

「最後の質問とさせていただきたい。
 気象をコントロールする技術が有るというのはわかった。
 しかしだ。
 制御できていたのは昔の事。今、この現代で可能なのか?」

確かにそれは問題であった。
気象コントロールは今欲しい技術。しかし昔に行われて以来していないという話だ。
そんな不安を打ち消すように石渡は答えた。

「可能です。」

言い終わると同時に、田坂香苗が続ける。

「つい先日、小規模ですが雨を降らせず。曇りに止め、雨雲を北に流すことに成功しています。」
「そういえば・・・ 一昨日雨が降る予報なのに降らず。「傘持って来たのに・・・」と思ったが、その時か。」

小さく呟いたつもりなのだったのだろうが、しっかり会議室に響いて全員の視線が堀井に集中した。
呟きが聞かれた事に気が付き、咳をわざとして姿勢を正すと、全員の視線も元に戻る。

514 :影響を受ける人:2016/04/06(水) 21:42:59
(む、むぅ・・・ 少し気が緩んだか? 注意せねばな・・・)
「じ、実績がすでにあるならば、問題は無かろう。」

気を取り直し、鷹揚に頷く。
その仕草がどうにも恥ずかしさを誤魔化している様に見えて、少し微笑ましく思えた。
それから少しだけ息を整えて改めて一同を見渡す。

「こうして詳しく聞き、私も納得できた。
 不躾な質問ばかりで機嫌を悪くしたと思うかもしれん。
 しかしこの作戦に、実際に命をかけるのは現場で働く将兵達である。
 万が一の不備も、理解不能な事が有ってはならない。
 主だった者達は理解し、主導して進めようとするだろう。
 しかし私はあえて引き止め、詳しく聞き、指摘させていただく。
 よろしいかな?」

一同は堀井の鋭い視線を受け止めた。
九鬼も、堀井が自分に本気で敵対する気になった事を知り、嘆くべきかどうか少し悩んだ。
だが、

「是非も無し。私個人としても、は議論も無しに決着するの望ましくないと思っている。
 だからこそ、今回のこの場の様に話し合いの場を設けた。
 忌憚なき意見を、質問をしてほしい。」

竹井の一言で気を引き締める。
そうだ。ここから対立したとしても、奴の能力を知っているのは自分だ。
どう出るかも知ってはいるが、こうして対立して、真正面からあいまみえるのは初めて。
歳の差など気にせず、好敵手としてみよう。九鬼は姿勢を正して相手を見返した
堀井も海軍軍人らしく、ピシッと姿勢を正して資料に支援を落として手を上げる。

「作戦の大まかな流れは把握できた。しかし不備もある。
 この資料によれば扶桑海をわたっている最中に攻撃とあるが・・・
 こちらの攻勢を無視して、護衛だった奴らが本土に奇襲をかけないだろうか?」

む、それは考えていなかった。
柴田と佐久間がすこし考えると同時に竹井も手を上げる。

「それもありますが、敵増援はどの程度と予測しておりますかな?
 もし想定しているならば、どのような偵察を行うかを聞きたい。」

この質問に・・・というか、竹井に責められるとは思っていなかった東条や杉山と言った夢幻会メンバーが焦りを少しだけ浮かべた。
山本は苦笑しつつも、このトラブルを楽しむように内心で不敵に笑う。

(おいおい。竹井元少将は味方じゃなかったのか?まあいいさ。この世はわからいない事ばかり。夢幻会の大半がまだアニメなどと言う虚像に引っ張られている証拠だろう。
そう考えると・・・やはり辻に相談することを重きに置くべきか?
きっぱりできるのは、あいつぐらいだろうからな。)

そう思いつつ、何とか焦りを抑えて質問に答える佐久間を見据える。
そして視線を皇女陛下が座っている方に向けた。
皇女陛下の膝の上には相変わらず白きキツネが、表情は暇そうに、しかし耳は真剣に此方を聞いているに違いない。
頼りになるけど頼れない味方。
信頼され、信用されているならば答えないといけない。親友を裏切りはしない。



以上です。
会議長かった・・・
前後編にする予定だったのになぁ。
ああそうだ。織田幕府の汚点は、会議室にいる者全員が口を紡ぐことにした方が良いでしょうかね?
下手に暴露すると、変な所で政変が起きるし・・・
自分で問題出して解決できないって・・・(泣

それはそうと、このままいくと100話超えるぞ(戦慄

517 :影響を受ける人:2016/04/06(水) 22:15:39
書くの忘れていたので一言。
織田幕府が行った天候操作ですが、扶桑だけの被害ではありません。
実は世界中で影響を及ぼしていました。
北半球が大干ばつなら、南半球では大豪雪といった感じです。
なので丁寧に調べると・・・まずいのですよ。

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最終更新:2016年09月13日 17:10