503 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:36:12 この作品には、
オリキャラが出てきます。
最強要素があります。
オリジナル設定があります。
個人的解釈が入っています。
個人的趣味が入っています(オイ)。
それでも良い、という方のお読みください。
※注意
このお話には未成年者の飲酒と喫煙の描写が有ります。
あくまでストーリーの都合上の描写であって、決して推奨しているものではありません。
未成年者の飲酒喫煙は法律で禁止されています。
購入することも違法です。
お酒、煙草は二十歳になってから!
なお、筆者はタバコを吸わないため、間違っていることがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
1944年 アフリカ
その夜。
ケイは書類仕事を一通り済ますと、天幕を出て、少し離れた場所に向かった。
真美やシャーロットのような年少組には見せられない。
ある程度離れ、周囲に人、そして砂漠の危険な夜行生物のサソリがいないことを確認すると、懐から紙巻タバコとライターを取り出した。
あの人も、あの娘も吸っていた銘柄。
まさか自分も吸うことになるとは・・・
タバコを1本、口に咥え、ライターの火を手で隠すようにしてタバコに火をつける。
ある海域では、夜間航行中の輸送船が、僅かなタバコの火によって出来た灯りを頼りにネウロイが襲ってきたという。
あの化け物でもその程度認識できるなら、人間の眼でもそれくらい認識できるだろう。
実際、私もそうして"タバコを吸っているあの娘を"見つけたのだから。
(年少組にはまだ早いしね。)
そう思いながら煙を吸い、肺から出す。
「なにやってんだ?」
突然声をかけられて慌てて、タバコを後ろに隠しながら振り返ると、マルセイユがいた。
「タバコか?
匂いでばれてるぞ」
そう指摘されて諦めて隠していたタバコを再び口元にやる。
「ケイも吸うんだな、タバコ」
「吸えないことは無いけどね。ただ・・・これは弔いなのよ」
「弔い?」
「そう・・・」
そう言ってケイは空に目をやり、遠い目になる。
そして、彼女は語り出す。
「かつての戦友の、ね・・・」
504 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:36:44 1937年7月。
大陸で怪異が出現した。
既に1年前にもヒスパニアで怪異が登場しており、私達の扶桑も欧州にウィッチを派遣していた。
そんな中での出現だった。
だが、私達は、例え欧州に人員が割かれても自信があった。
扶桑のウィッチは他国に比べて群を抜いて優秀だ。
20歳を超えても飛べるし、多彩な魔法を扱う。
さらに同時期には世界に名高い宮藤理論を導入した新型ストライカーもあった。
同期の何人かは奢っていたりしていたわね。
私達も当時名を上げてきた倉崎製のストライカー、97式戦闘脚を履いて猛訓練に励み、大陸に渡って行ったわ。
このストライカーは海軍との共用で、元々陸軍で独自に作ろうとしたけど、大蔵省の職員によって共用化が決定したとか。
なぜか、その話をすると当時担当していた技官の今本少佐(今は中佐、いや大佐だっけ?)とかが顔を青ざめるけど、なんでかしら?
ともあれ、一部では楽観ムードもありながら、渡って行ったわ。
だけど、予想とは裏腹に大陸では苦戦が続いた。
当時の私は、今は扶桑陸軍のウィッチ総監になっている江藤少将(その内、田中元少将の後押しで中将昇進もあるとか)の指揮の元、戦闘に参加した。
基地には海軍の顔馴染みの北郷少将の部隊も居て、一緒に戦うこともあったけど、それでも苦戦であったわ。
北郷さんなんか、初陣で漏らしたっけ(苦笑)。
まず、連中が前大戦よりも強くなっていた。
これは、まぁ当然かもしれないけど、それにしては強すぎたわ。
今では戦術を使うことも確認されているけど、当時はそんなことは知らないから、驚いたことはあったわ。
そしてなによりも数が多かった。
本当に多かった。
大して強くない奴でも数が多い分面倒だった。
どこかの漫画で『戦いは数だよ!』と上司に将軍が叫んでいるシーンがあったけど、正にその通りだった。
ウィッチにも戦死者が現れ、負傷して後方に移送される者も居た。
そして、大陸では苦戦、欧州に派遣した人員は容易に引き抜けない。
そのために、政府はあの悪名名高き学徒出陣を決定した。
「その話は師匠から聞いているよ。
師匠も最初は反対だったって・・・」
「ええ。上に立つようになってからは政府の判断にある程度は理解できたけど、それでも納得できないものはあったわ。
智子なんか真っ先に怒りを露わにしていたし」
ケイはそう言いながら、小さい箱型の携帯灰皿に短くなったタバコの火をもみ消して、新しいタバコを取り出す。
「あの時には私や隊の仲間も戦績を挙げて部下を持つようになってね。
それでも正規兵の割合が大きかったわ。
別の戦線では隊員の半分が学兵というところもあったらしいけど」
彼女はさらに話を紡ぐ。
505 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:37:23
私や江藤少将、北郷少将の知り合いに飯井少佐という人がいた。
実は隊内で一番年長の私も、訓練生時代にお世話になったことのあるベテランだった。
年齢はそれほど大差があるわけではなく、どちらかと言うと幼年学校の先輩と後輩みたいなものだった。
酒やたばこを嗜む豪快な人で、時々学兵に悪戯で酒を飲ませては、旗本さんの説教を受けてたなぁ。
「飯井さんはよくこの銘柄のタバコを吸っていたわ。
縁起担ぎなんだとかで。
あまり好きではないと言っていたのにね」
ケイは自分の吸っているタバコを見つめながら懐かしむように言う。
そして彼女はさらに語る。
飯井さんの部隊は、通常6名のところを飯井さんと副隊長の木矢さん、そして、正規兵4名、学兵4名と比較的多い10名で編成されていた。
平均化するよりも、安全面を取ったからというけど、飯井さんがかなりゴリ押ししたとか。
でも、今はもうその部隊は存在しない。
ある戦闘で敵を深追いしすぎて、敵中に孤立してしまったのだ。
その日は連戦で弾薬が少なくなっていたことも災いした。
さらに悪いことは続くもので、救援要請を出した時、どの部隊も燃弾不足で基地に下がるか、補給を終えて上がってくる最中だった。
一番近くにいたの私達狐狸部隊だった。
なので、直ぐに駆けつけた。
だけど・・・間に合わなかった。
上空にウィッチは居らず、有るのは地面から立ち上る黒煙のみ。
飯井部隊は既に壊滅していたのだった。
せめて遺品でも回収しようと私達は地上の捜索を始めた。
そして、唯一の生存者を見つけた。
共に学兵で、1人は早良ミチル、もう1人は鬼瓦千という名前だった。
鬼瓦千はミチルを庇ったために重傷を負っていて、幸い命は取り留めたものの、ウィッチとしての生命を断たれてしまった。
ミチルはその後事情聴取を受けた後、復帰することになった。
けど、どこの部隊も引き取らなかった。
「験担ぎか?」
「そう。壊滅した部隊の唯一の生存者。それが彼女を受け入れなかった理由よ」
軍隊というものは信心深い。
命のやり取りをするゆえに、どうしても運勢というものに頼ってしまうことがあるのだ。
ティナも長い軍隊生活でそのようなことは知っていたが、だからと言って素直に受け入れられるものではなく、怒りが込み上げてくる。
「けど、私達の部隊、狐狸部隊の狸釜隊のベテランウィッチが魔力減衰で退役することになったの。
そこで私達が彼女を受け入れたわ。
でも、彼女、ミチルは真面目で頑固だったわ・・・」
部隊が壊滅したのは自分の所為だ。
そう彼女は強く思い、自責の念に駆られていた。
自分が扱う銃器を毎日整備し、腕を磨こうと射撃訓練を毎日行った。
私と智子は別部隊、狐狸部隊の狐火隊に属していて、本来は狸釜隊の隊長である武子と副隊長の綾香がなんとかするべきなんだけど、智子はよくミチルに突っ掛っていたわ。
私も彼女が心配で話しかけることもあったわ。
それでも彼女は、自分が許せなかった。
真面目で、頑固で、それが彼女を苦しめていた。
506 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:38:03
ある日の夜の出来事だった。
その日の夜、私は外に出ていた時、ふと基地の近くの林の中に、ぼんやりと灯りの様なものが見えた。
私の固有魔法は遠距離視と動体視力が強化される『超視力』。
だから、僅かな灯りでも察知できた。
(なにかしら?)
不信に思った私は、腰にある拳銃をホルスターから取り出して、気配を殺して慎重に近づいた。
ウィッチは基本的に美人であるし、扶桑の場合は婚活の意味も兼ねてブロマイドが売られている。
そんな美人のウィッチ目当てで不審者が来る可能性もある。
こんな大陸の最前線まで来る馬鹿はいないだろうが、用心に越したことは無かった。
徐々に近づいて行くと匂いがしてきた。
紙巻タバコの独特のにおいだった。
(基地の男共の誰かが吸っているのかしら?)
学兵たちが居るから遠慮したのだろうか。
そう思いながらタバコを吸っている人物を確認して、驚いた。
(え!ミチル!?)
林の中で密かに吸っていたのは、あの早良ミチルだった。
タバコを手に持つ彼女は、目に涙を浮かべ、今にも泣きそうであった。
早良ミチルはまだ未成年だ。
飯井さんが吸っていた時も『未成年だから止めてください』と言っていたのを見たことあるが、まさか彼女も吸うとは思っておらず、目の前の突然の光景に私は慌てた。
だからだろう。
ミチルは、私の気配を察して、タバコを携帯灰皿に仕舞いながら叫んだ。
「誰だ!!」
ミチルは腰のホルスターから拳銃を取り出そうとする。
その様子に、私は慌てて両手を上げて姿を出し、名乗りを上げた。
「ま、待って待って!私!!」
「加東副隊長・・・」
ミチルは私だと確認して安堵して拳銃を戻す同時にバツの悪い顔をする。
仮にも別部隊とはいえ、上官にタバコを吸っているのを見られたのだから、当然であろう。
「別に告げ口しないわよ。
にしても・・・あなたも吸うとはね・・・」
私は、気にしないで、と手を振りながら、拳銃を仕舞いつつ彼女の傍に寄る。
ミチルは寂しそうな顔をしながら、タバコの箱を取り出して、それを見つめながらが言った。
見るとそれは飯井さんが吸っていたものと同じ銘柄のものであった。
「・・・これはな、自分の再確認なんです」
「再確認・・・?」
「ええ・・・自分の、私のミスで龍宮隊が壊滅した。
もうあんなミスはしない。その再確認なんです」
「あれは貴方の所為ではないわ」
ケイはそう言ってミチルを宥める。
だが、それでもミチルは頑固にも自らを責めようとする。
「副隊長が言いたいのは解ります・・・ですが!」
ミチルがタバコの箱を握りしめ、そう何かを喚くように言いかけた。
そんなミチルをケイは抱きしめた。
「あ・・・」
「あなたがどんなに自分を許せないのか。
その気持ちは痛いほどわかるわ。
でも、何時までも自分を責めていては駄目よ。
今は泣きなさい。泣いて心が晴れることもあるのよ」
林の中は、ミチルのすすり泣く声で染まった。
507 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:38:45
「落ち着いた?」
「はい。すいません、ご迷惑をおかけして・・・」
「いいのよ。年下の面倒を見るのもお姉さんの仕事だからね♪」
私は気にしていないと答えて、ミチルを落ち着かせる。
ふと、彼女が手に握ったままのタバコを見やる。
「ねえ?私も1本いいかしら?」
「え?タバコを・・・ですか?」
ミチルは、私の視線から、私が言ったことに疑問を抱く。
「加東副隊長、まだ未成年ですよね?」
「あなたもそうでしょ。見逃すための駄賃よ」
「さっき『告げ口しない』って、言いませんでした?」
「だまらっしゃい」
ごちゃごちゃ言うミチルの手からタバコを掠め取り、1本取り出して口に咥える。
「ほら。あなたも吸いなさい。これで御相子よ」
私はそう言って、彼女から掠め取ったタバコから1本出してミチルに向ける。
ミチルはやれやれと苦笑しながら、1本取り、ミチルが懐から出したライターでお互いのタバコに火をつけて一服した。
「でも、彼女とは再び一緒に吸うことは無かったわ・・・
あの後、地獄の一週間と呼ばれる激戦が始まって、ミチルは魔眼持ちの美緒とコアを見つける任務に出て、あちこちの戦場を渡り歩いたわ。
けど、最後の日になって、オニグモと呼ばれる新種の大型ネウロイが彼女達を襲った。
突然の新種の登場で、戦場はしっちゃかめっちゃかになり、ミチルは美緒と共に仲間と逸れたわ。
そして、彼女は美緒を庇って死んだわ。
今日はミチルの命日。だから私は、彼女のためにこうやってタバコを吸うのよ・・・」
そして彼女は口を紡ぐ・・・
近くも遠き、記憶の彼方に鮮明に残る戦友たちを思いながら・・・
「そうか・・・」
ケイの話を聞き終わり、ティナはそう言う。
ティナ自身も事変の序盤の頃は扶桑での修行の最中であり、途中で参加を、と考えたが、九曜の力技で捻じ伏せられた。
『手加減した私に勝てないようでは無理です』
九曜の雷で少し黒焦げになった状態でティナはそう言われた。
その後まもなくして、自分の使い魔が急激に力付けた私に着いていけなかったために焦りを感じ始め、ついにはあの事件が起きた。
卒業後も義勇軍として従軍したかったが、政治的にも外交的にもマズイこともあって、師匠に諭され、後ろ髪をひく思いで扶桑を離れた。
あの事変については近くにいたのに詳しくは知らないことが多々あった。
改めて知る事実に彼女は言葉が上手く出なかった。
ふとケイを見ると、彼女は完全に吸い終わったタバコを携帯灰皿に入れ、新しいタバコを取り出していた。
「なぁ、私もいいか?」
「え?タバコを?
あなたは水タバコ派でしょ?」
ケイはティナの言葉に戸惑う。
ティナは酒を様々な種類を嗜むが、タバコに関しては水タバコ以外は吸ったことが無い。
「ケイの戦友を弔うんだろ?
私もお供させてくれ」
そう言ってティナは手を差し出す。
ケイは顔に喜色を浮かべ、タバコを1回振って、1本が箱から飛び出した状態にしてティナに向ける。
「ええ。いいわよ」
ティナはタバコを取り、ケイのライターで互いに火をつけ、一服した。
空には、まあるい満月が輝いていた。
508 :ham ◆sneo5SWWRw:2016/05/22(日) 17:39:37
ライーサ「2人でどこに行ったのかと思ったら、こういうことだったんですね」
マミ「ケイさん・・・」
シャーロット「でもタバコってよくないよね・・・」
マイルズ「まぁ、そうね。貴方達は真似しちゃだめよ」
実は全員にバレバレな2人であった。
あとがき
というわけで、即興でしたが、いかがでしたでしょうか?
一応、矛盾が無い様に色々と確認しながら書きましたが、つたないところもあったかもしれません。
最後にもう一度。
このお話には未成年者の飲酒と喫煙の描写が有りますが、あくまでストーリーの都合上の描写であって、決して推奨しているものではありません。
未成年者の飲酒喫煙は法律で禁止されています。購入することも違法です。
お酒、煙草は二十歳になってから!
あと、携帯灰皿は
夢幻会の喫煙者が開発したという設定で。
お読みいただき、ありがとうございました。
最終更新:2016年09月12日 12:58