611 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:16:47
186の人です。ssが完成しました。
零支援ssです。
零編のストーリーと異なる場合があります。
タイトルは、彼女にあり得た可能性です

612 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:17:58 とある病室
そこに一人の少年が入院していた
彼は治療の見込みのない不治の病に犯されていたが
それでも治ると信じていた

彼は夢を持っていた。病気を完治すれば飛行機のパイロットになりたいと
あの果てしない大空を自由に飛び回りたいと

その夢の延長戦で飛行機に興味を持っていたが、特にストライクウィッチーズに夢中であった。
何故なら彼女達は大空を自由に気持ち良さそうに飛び回っていたからだ。
風を全身に受けながら、誰にも囚われずに、翼を持った天使のようだった

彼は彼女体に憧れの気持ちを抱いていたが
夜遅く、胸に突然激しい痛みが伴いナースコールを押せないまま
意識が深く引きずりこまれていったのであった・・・・・・




「・・・・ここは?」
彼が目覚めて見ればどこかの草原のような所に立っていた。
周りに高層ビルも何もないただ広い草原であった。

と、突如上空に爆音が響いた。
彼が驚き見上げて見れば大きな複葉機の双発機が飛んでいた
そして、1機の機体の上にいた人物が何語か喋っている。
彼が驚き立ったままでいると、機体の上にいた人が飛び降りてきた


「やれやれ、もっと低く飛べないとは困るな。ところで君はどこから来たのかね?
ここは私の夢のはずなのだが?」
「あっと・・・僕は日本の東京から来ました」
「ほう?日本!日本の少年がまた来たのか。おっと、私はカプローニ伯爵。カプローニと呼びたまえ」
「僕は■■です」
「ふむう・・・見たまえ。あの機体はこれから敵を焼きに行く。半分は帰ってこれまい」
その言葉を聞いて、彼は顔をしかめる。
当然だ。これから敵を殺しに行くのだ。好かれるはずもない

カプローニもそれに気づいたのか
「安心したまえ。もうすぐ戦争は終わる。もう人を殺すことは無い。それよりも新たな夢がある

        • あれを見たまえ。」

彼が振り返ってみれば、1機の航空機が降りてくるところだった
「あれで、爆弾の代わりにお客を乗せる。これでヨーロッパ中の空を飛ぶのだ
乗りたまえ。日本の少年」

カプローニの言葉に従い、航空機の中に入る。
飛行機は初めて入ったが、予想以上に豪華で彼は驚いた
その後、カプローニの案内によって翼の上に立つ

カプローニの指をさす先には巨大な翼が何枚も重ねた巨大な飛行艇が滑走するところだった
「見たまえ・・・・私の夢である、多くのお客を乗せて大西洋を横断する飛行機だ。・・・・美しかろう?」
「・・・・ええ、言葉も出ません」



その後、巨大機は大空の彼方へと飛んで行った





「まあ、この夢は儚く散ったがな。日本の少年よ、君はどんな夢を持ってるのかね?」
「・・・・えっ?」
「ここは、大空に憧れた者達が集う夢だ。君も夢を持っているだろう?」
「僕は・・・・夢は持っていません。僕は一度も夢を持ったことありません」
「・・・・嘘だな。日本の少年、夢を捨てるのかね?その小さくも大きな夢を


      • あれだね。君の夢は」

613 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:19:05

彼が振り返ってみれば、一人の少女が飛び去った
その少女は足にストライカーユニットと呼ばれる機械を装着しており
少女はカプローニと少年の周りをクルクルと回ったり、高く上昇したかと思えば
垂直に二人の所にめがけて落ちて、ぶつかる直前に引き起こして頭上スレスレを飛行する
そして、少女は大空へと消えていった


「見事なパンツだ・・・・・・あれが君の夢か」
「・・・・すいません嘘をついてました。あれが僕の夢です。彼女のように一心に風を受けて自由に大空を飛び回ってみたいと思いました」
「では、その夢を目指せばいいのではないのかね?」
「・・・・あれは、アニメで女性でしか飛べません。・・・・何よりも」


彼は顔を伏せて
「僕は不治の病に侵されてるんです。僕は治ると信じてここまで生きてきましたが、つい先ほど強い痛みを感じて意識を無くしました。
        • 恐らく僕はこの世にはもういないでしょう。その様な僕に夢を追いかけてもしょうがないのです」


カプローニは彼の側に寄ると
「日本の少年よ、私も大空を自由に飛び回りたいと思ったことがある、しかし、私は飛行機の操縦はしない、いやできなかった!それでも私は諦めなかった!
私は飛行機を作る人間だ、設計家になった!大空は美しい夢だ、設計家は夢に形を与えるのだ!」
カプローニは彼の顔をずいっと近寄ると


「君の夢を叶えてあげよう。次の人生を心行くまで楽しんできたまえ」
「ちょっと待ってくださいカプローニさん!」
彼が大声を上げようとするも、突然、彼の足元に立っていた翼が破れ
彼は奈落の底へと落ちていった。

だんだんと視界が暗くなっていく彼が最後に見た景色はカプローニが飛行機の後部に立って手を振るところであった・・・・・










それが十数年前の出来事だ。
意識が浮上してみれば、小さな女の子の体になっていた。
それからしばらくは苦労した。男にない女の体独自の様々なことにだ

ストライクウィッチーズについての学校はあまり知らなかったが、早期に魔力があることが分かり
ウィッチの専門学校の一つである導術士学校に入った。その間にかけがえのない友が多く出来た。
その間に私がいないことでハッスルしたのか、妹が出来たという知らせを聞いた時は呆れたものである。



その学校で初めてストライカーユニットを履いた時は物凄く感動したものだ
初めは上手く飛べなかったが自由に飛べるようになったときの
言葉にいい表せない程だった

間もなく、大陸で怪異が出現したという知らせが入いり、緊急に学徒兵の応募が来た。
僕はこの頃はストライクウィッチーズ零という作品で、もっちゃんが参加すると知っていた。
上手くいけばもっちゃんの先輩になれるかもしれない。

僕はそういう軽い気持ちで学徒兵を志願した







          • 今思えばなんて浅はかな考えだっただろう・・・・・
戦場はそんなに甘い物じゃなかった




実戦を想定した訓練は厳しかったが合格し
大陸へと渡り、部隊に入った。

614 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:19:37
実戦部隊は予想していた以上に暖かかった。
厳しい事をやらされるだろうと想像してただけに
その分、実戦は真剣に遣らざるを得ないが、幸いにも連戦連勝だった。
戦争はゲームのような感覚でネウロイを倒すことができ


        • それがいけなかったんだろう。
知らず知らず、心の中に隙間が出来てしまったのだ。


あの日も、いつものように実戦をこなし、二度目の出撃に上がることになったが
こんなのは慣れっこだった。

すぐ様上がるために偶々整備士が持っていた、機関銃を奪い取って上空に上がった。
整備士が何か叫んでいたが、私の耳には届かなかった

何時ものように戦闘をしていたが、何時もよりもネウロイの攻撃は激しかった。
私は敵の攻撃が強くなったことに焦りながら、何時ものように完全に勝利して帰れると思っていた矢先だった
いきなり、銃がはじけ飛んだ。ネウロイの攻撃によってじゃない。ボルトがはじけ飛んでの自壊だった

あの時、整備士が叫んでいたのは機関銃の整備が終わっていないという意味だったのだ
だが、今更理解しても遅すぎた

無防備になった私は目の前に迫りくるビームに動けなかった。



そのビームは私を貫くことは無かった
      • いや、貫かれた


「た・・・隊長!なぜ!」
「はぁ・・・はぁ・・・・無事か?」
隊長が私を庇ったからだ。私が無傷の代わりに隊長の服に赤い色がつく


「隊長!速く帰還しましょう!そして治療を!!」
「ハァ・・・・無理だ。もう、囲まれてる。それに私は長くない・・・私を置いて行け」
「そんな・・・みんなで行けば逃げ「聞けええ!!」

隊長は私を掴んで
「これは負け戦だ。私はもう長く生きれない。
        • だが、この負け戦の教訓を誰が伝えれる!お前が一番伝えるのが上手いと信じている。
そして、命令がある」

体長はそっと私を抱きしめ
「お前は最後まで生きろ。無様になってもいいから生きろ。
私の死を無駄にするではない!!さあ早くいけええええ!!」
「う・・・・うああああああああ!!」



その後は覚えていない。
気が付けば、周りのみんなは櫛の歯が欠けるように落とされ
最後まで私と共に生き残った仲間も私を庇って落ちた・・・・・

こうして、私が初めて所属した部隊は私の所為で全滅したのだった。

戦争の悲惨さはいつも言われていたのに、今まで実感しなかったが、ようやく実感した時はもう手遅れだった。
        • 後悔先立たずとはこういうことなのだろう



その後、私は荒れに荒れ、みんなの後を追いかけるように確実な死を求めた無謀な出撃・戦いを繰り返したが
その都度に隊長や周りの者にがっしりと止められて、死ぬことは無かった。いや死ねなかった。



その様な日々を過ごしていると
向こうから明るく楽しい声が聞こえる。

その声に誘われるように足を向けると
自分よりも小さな子供がいた。

        • 戦場の厳しさ、辛さ・悲惨さを何一つも知らない純真な子供が!!
だから、言ったのだ

「そりゃ、知っているけどさ。俺t「なんだ、足手まといが来たのか?」なっ! だれだ!!」
私、早良ミチルは、はっきりと子供(仲間)はいらないと拒絶するようにだ

615 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:20:08

その思いは訓練で、彼女達と共にした時により大きくなった。
私が猛訓練した時よりも少ない訓練の量なのに彼女達はバテ果てていたからだ。
このままいては邪魔だから、彼女たちの近くによって
「ここは子供の遊び場ではない。
 ここは最前線だ。即戦力だけが必要とされている。死にたくなければ・・・帰れ!」

と言った。
本気で帰らせたいと思ったものだが、彼女たちがこれを糧により訓練に喰らい付くのを見て失敗してしまったと思った。




その日の晩、日課の銃の整備しに部屋に入ったら
若本と言ったか?睨みつけてきたが、無視して銃の手入れをする。

暫く、手入れをしているとアイツが睨み続けているのを気付いた
「何だ、その目は」
「・・・別に」
「私が学兵で、戦場に出ているのに、何で自分は出れないのか・・・そう言いたいのか」
「分かっているなら意見具申してくれませんか。そのために訓練してきたのに」
やはり、分かってない。自分が訓練を受けれることがどれだけ恵まれているかをだ
他の部隊の所では速投入されて撃墜・戦死したところもあるのにだ

「何で足手纏いを出さなければならない」
「足手纏いじゃない! 本土でネウロイの襲撃を防いだんだ!」
「だからなんだ。一度きりの戦闘でもう有頂天か? そんなやつに後ろは任せられない。」
「っく・・・」
そうだ。そんな偶然みたいな勝利がいつまでも続くとは大間違いだ。
私のようにな

黙ったのを見て、銃の整備を続けていると
空気を変えるためか坂本が話しかけてきた

「せ、先輩は・・・どうしてここに?」
「銃の整備だ」

私はそちらに顔を向けないでカチャカチャとする

「い・・・いえ・・・分かりますが、普通は整備士に任せるのではないのですか?」
「・・・・自分の命を預けるものを、大切に使わなくてどうする。それにいざという時に使えないようでは困る」
そうだ。あの時も故障さえしてなかったら皆死ななくて良かった

「そうですわね。でも、だいぶ使い込んであるように見えますけれど?」
「・・・これでも、だいぶ前に取り替えたばかりなんだがな」
「そんだけ、戦場はキツイんっすね・・・」

他人事のように呟いたソイツをキッと私は睨みつける
彼女達はその眼光に驚いたのか後ずさりする

「キツイ・・・と言う言葉ではすまされない!」

私は声を荒げるのを自覚していた。
そうでもないと私は抑えきれないと思っていたから。

「想像出来るか?
 朝一緒に食った仲間が夕食ではいなくなることを!
 自分の不注意で死ぬ先輩や仲間の顔を!
 目の前で息を引き取る兵士の顔を、お前たちは想像出来るのか!」
何度も何度も夢に出てくる。仲間や兵士が恨めしそうな目で見て来るのを
その時に決まって、私はごめんなさいと謝る他なかった

私が大きく息を吸って落ち着いていると、彼女達は青ざめて沈黙していた

「用が済んだなら出て行け。寝られるときに寝るのも兵士の仕事だ。」
「えっと・・・はい・・・」

彼女達は意気消沈しながら、そのまま整備室から出ていった。



残った私は静かになった部屋で整備を続けたが、ふとあることに気づいた
「そういや、主人公もっちゃんと初めて会話したな・・・・・もうどうでもいいことだがな」
もう、あの頃の気持ちは冷めきっていた



それから、大陸で彼女達も初陣を迎えた
      • 地獄の戦場でだ

私が初陣で体験したような緩さはもはやない
今あるのは地獄の様な戦場だ


やはりというべきか、初陣を迎えた学徒兵たちが
帰還するなり、便所に駆け付けて吐きまくってた
大方、惨い死体を見てしまったのだろう。
だが、あれはまだいい方だ。何故なら死を覚悟できている兵士だからだ。
これが、守るべき民間人だったなら・・・・

私はその時を思い出して、こみ上げてくるものを誤魔化すために隊長の遺物である煙草を取り出し吸う

616 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:20:39
カチッ・・・・・スー・・・・・ハー・・・・・
くそ不味い煙草だが、私が死ぬまで止めることは出来ないだろうなあ
と確信めいたことをぼんやりと思う・・・・



新型ネウロイアホウドリが出てきた事で戦線縮小が決まった。
      • 私としては早く決断して欲しかったと心の片隅に思う

アホウドリ対策に坂本が魔眼を通してコアを探るという任務に就き
高性能魔眼にあちこちの戦線に引っ張りだことなり、グロッキー状態の坂本を見て
固有魔法を持たなくて良かったと思ったのは成長だろう

休日に近くの農家からの差し入れである大量のサツマイモを使った焼き芋祭りが行われた
皆一時の戦闘を忘れて無邪気にはしゃぎ回ったが、私はその空気に入る事ができなかった。いや、しなかった。


私にはその資格がないからだ。


代わりにグロッキー状態で休んでいるであろう、坂本に焼き芋の差し入れに行く
部屋に入ったら、案の定坂本が驚きの目で見ていた。

私はそれにムスッと来たものの、あんまり仲が良いとは言えない自覚があるから無視して
焼き芋をほいっと渡し、坂本があまりにも苦しそうなので、魔眼はそんなにキツイか?と話して
ますます、固有魔法を欲しがらなくてよかったという思いを強くするのだった。
なお、その際に飲酒がバレたが些細な問題だろう


その後、坂本たちと組むことが多くなった。
義勇軍と競技大会の警備任務からだ。その時にはみんな警備任務そっちのけで色々な食べ物を食べていたがまあいいだろう。
問題はそれからだった。私達が休暇を楽しんでいたのを待っていたかのようにネウロイが大攻勢始めて
アホウドリも今までのコアの位置にないという報告が上がってきた


そこで、再び坂本の魔眼がカムバックすることになったが
その護衛のための部隊がどこも手がすいていないという理由で学徒兵だけの部隊が
作られることになったという。

私はこの知らせを聞いて、隊長に怒鳴り込みに出掛けた
学徒兵だけで作られるのもそうだが、一度部隊を全滅させた私に隊長を任すなんて正気の沙汰じゃないと思ったからだ
司令部で短くも激しい口論を繰り広げられたが、結局押し切られた。


私は、トボトボと外に出る。風に当たりたかったのだ。
普段なら銃器の点検をするのだが・・・そんな気も起きない。
そしてふと気が付いた。

何時ものをしていないと。

ポッケをまさぐり、タバコとマッチを取り出す。
ふと、タバコの銘柄を見る。
隊長はタバコがあまり好きではないと言っていたのに好き好んで吸っていたが、今なら分かる。
きっと、私と今とおなじ気分だったのだろう・・・。

仲間や部下を一人も死なせないで全員生きて帰す
これがどんなに重圧なことか


隊長は言った。
自分の失敗を活かせ!と
今がその時だと思う。


今度はミスをしない。
今度は自分が・・・自分が命がけで守るのだ。
何もない自分よりも、原作キャラの坂本美緒を。

617 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:21:14

こうして、外のベンチでタバコ吸っていると
目の前をフラフラと歩く坂本がいた
恐らく作戦を聞いたからだろう
思わず、私は声をかけてしまった

「坂本、大丈夫か?」
「・・・ぇ?」



坂本が呆けて自分を見た
今まで気づかなかったんだろう。これが戦場ならとっくに死んでるぞ

「せ、先輩・・・タバコ・・・・・!」
「ん? ・・・ああ、これか」

坂本がタバコを吸っているところを見られてしまったか。
まあ、見られても困ることは無いがな

「まだ、未成年ですよね?」
「そうだな」
前世から数えたら30のオッサンだけどな

「駄目じゃないですか!!」
大声で咎めると坂本に、私は苦笑しつつも一本吸い終えた。
そのまま近くの灰皿に入れて消すと、もう一本引きだす。

「・・・これはな、私の再確認なんだ」
「さい、かくにん・・・ですか?」
「ああ・・・私の罪の、な」
「・・・・・・罪」

急に黙り込む坂本に私はコッチに座れと、手で座るように促す。
それに対して坂本は恐る恐ると私の隣に腰を下ろした。
ビクビクする坂本を可愛いなーと思いながら言う

「なーに、取って食わんさ。お前には知ってほしいだけだ」
「・・・知って・・・ほしい事・・・ですか?」
「そうだ。ちょっとした。昔話だ・・・去年の夏の暑い日だった・・・」



それから語る。私の物語であり、罪である龍宮隊の活躍を
初戦に、そのあとの活躍、消せれないミスに、壊滅までお話しする・・・・


「という事だ。どうだ?軽蔑したか?」
「い・・・いえ!先輩は常々に銃の整備をしろ!と言われて、不思議に思いましたがこのような経験があるのですね」
「ああ・・・・失ったものは二度と戻せない。だが、これからのモノは守ることができる」

私は坂本を見ながら
「坂本。今度からの任務は今まで以上に厳しいものとなる。ベテランウィッチはなく、未熟な私が隊長に学徒兵たちが護衛だ
理不尽なことも多くなるかもしれない。仲間を見捨てることが多くなるかもしれない
だが・・・・その時は私を恨め」
「えっ?」

坂本の呆けた声が聞こえるが私は無視して、立ち上がりながら言う

「お前は私の命令に従っただけだ。一切気にする必要なぞないんだ。あったら、遠慮なく私に恨み言をぶっつけろ」
「そんなの出来ません!私に・・・もっと力が・・・・魔眼さえなかったら!皆と戦えたんですよ!!」
坂本は泣きながら言う

「こんなことに・・・こんなことになるんだったならこの眼は・・・私はいら「坂本!!」
私は坂本の両肩をガシッと掴む

「それは多くの人に対しての侮辱の言葉だ。
確かに魔眼を持ったことで多くのつらい経験をした。そして、望まぬ過酷な運命も待ち構えている。
坂本にとっては、この眼は望んだ力じゃないかもしれん

        • だが」


私はそっと、坂本の右目の片眼鏡をなぞる
「今、辛い思いをしているのはお前だけじゃない。今料理を作っているもの、補給を運ぶもの、整備をしている人たちは皆本当は戦いたい。
それでも、食事が無かったら、私達は体の回復が出来ない。ストライカーユニットや銃が完璧じゃなかったら私達は戦えないんだ。
その人たちもつらい思いをしながらも、みんなの為にと頑張っているんだ。

それに、戦場に出ている人たちも同じことだ。
坂本の様な固有魔法を持たないウィッチどころが、魔法力を持たない男の人が大勢いる。
それでも、みんなそれぞれが出来ることを見つけて、戦っているんだ。
お前は一人じゃない。竹井や若本、委員長、山田、みんなが付いているんだ」
「私は・・・一人・・・じゃない・・・」
坂本が呆然としたかのように呟く

「そうだ。お前はみんなが付いている。お前はみんなを守るためこの眼を使うんだ。
この眼を使えば100の犠牲が必要だったものが1の犠牲に抑えれるかもしれない。
単純計算で100人の犠牲者が99人が救えるんだ。例え一回一回が少なかろうと
10回救えば990人、100回救えば9900人、凄いぞ1万人近い人が救えたぞ。
お前の眼はそういう可能性を秘めてるんだ」

そして、坂本をそっと抱きしめ
「大丈夫だ。どんなに危険や厄介ごとは私が守ってやる。だから、美緒は安心していいんだよ」
「うっ・・・・うううっ・・・・」
この言葉に安心したのか、私の胸で静かに泣き始める坂本
この二人を月がしずかに見守っていた・・・・

618 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:22:41

翌日から、私たちアホウドリ核調査部隊(特務隊)は出撃を繰り返した
アホウドリのコアは報告にあったように今までの場所にはなく
坂本は魔眼でコアの位置を特定し、手に持った機関銃のペイント弾でマーキングしていく

こうして、作戦は順調に進むかと思われたが、戦場では連絡が行き届いてないこともあって
私たちを援軍だと期待していたのに、さっさと帰るから戦友が戦死したんだ!
と罵るものがやはり出てきた。

坂本は何も言わずに下を向いたが、私が前に出る

「おい」
「なによ!あなたは!私はソイツに用があるのよ!引っ込んでなさいよ!」
「それは出来ない相談だな。私は坂本の隊長でもあるんだからな。・・・・なあ、お前は理解できるか?」


私はその隊員にズイッと顔を寄せると
「魔眼を使うとどれだけキツいか分かるか?一回使っただけでも一度の全力出撃並みに消耗するんだぞ
それが一回だけでなく、一日に何度も見るんだ。交戦するなぞ夢の夢だ
それに、坂本はペイント弾だけの丸腰や。実弾を持った私達ですら怖いのに
坂本は丸腰でアホウドリへ突っ込むんや。それもどれだけ怖いか分かるか?」
「あっ・・・・うっ・・・・」
隊員は反論出来ないのか言葉が出ない


「それになあ、丸腰の坂本を責めるのは筋違いというものじゃないか?
私は実弾が込められた武器を所持してながら、一発も撃たずにお前たちがいうさっさと帰ったんだぞ
それほど恨みがあるなら私を全力で殴れ。遠慮はいらん。」
「あっ・・・・ああ・・・・・」
「どうした?先ほどの威勢はどこに行った?それともその亡くなった戦友がそれほど大切じゃないということか?」
「う・・・うわあああああああああ!!」
その言葉に触発されたのか、思いっきり殴り飛ばしてきたが、私は微塵も揺らぎしない
隊員は殴り続けたが、やがて、周りの隊員も加わりだし、騒ぎを聞きつけた真嶋が止めるまで続いた・・・・・




私は坂本に肩を貸しながら廊下を歩いていた。
いいのを数発くらった結果だからだ。坂本はしょんぼりしながら歩く
「・・・・すいません、先輩私のせいで先輩に迷惑をかけてしまいました・・・」
「なに、気にするな。坂本が迷惑かけても、私が責任を取るのが、先輩であり、上司の役目だ」
そういって、頭をポンポンと叩くが坂本は何故か不満顔だ

「・・・・?どうした、何か言いたいことあるのか?」
「先輩・・・・・どうして、名前で呼んでくれないんですか!?」
「・・・・なんだ、そんな事か。そんなに気にすることは無いだろう」
「前に一回呼んでくれたじゃないですか!!私に名前で!!」
「そりゃそうだが・・・・」
坂本を慰めるためだったとはいえ、うっかり美緒と呼んでしまったのは不味かった
チラッと見ると、坂本はキラキラした目で私見つめていた。
その視線を暫く受け続けた私は、大きなため息を吐くと

「これでいいか?美緒」
「っ!はいっ!!」
美緒は嬉しそうな声を上げるとそのまま廊下を歩いて行く。


私はこの時思った。
美緒となら、どこまでも羽ばたいて行ける。無限にへと
私は捨てた筈の生への執着心を感じた










しかし、神様は私の事が大嫌いのようだ。








あれは、連日出撃を繰り返して七日目だ
ネウロイの攻勢を押し返し、追撃戦に入ろうとしていた時のことだ。
突然、上空が暗くなり、ネウロイ独自の怪音が辺りに響いた

619 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:24:36
私が上空を向いてみれば、真上から赤い光が降り注いできたのだ。
「っ!!」
私はとっさに、美緒を抱きかかえ、大回避を行い、無事に避けることが出来たが
他の隊員とははぐれてしまった

「美緒!大丈夫か!?」
「はいっ!先輩は!?」
「私も無事だ・・・・それにしてもなんなんだ?この攻撃は」
私は油断せず銃を構えていると



それは現れた



タコのような大きな触腕を幾筋も持ちながら空中でうねり
大きな本体が姿を現す

「デ・・・・デカい・・・・」
美緒が震えながら呟くのが聞こえる。
かく言う私も震えが止まらない


私は仲間に連絡を取る
「こちら早良ミチル。聞こえるか?」
『・・・・・・』
「おい!聞こえたら返事をしろ!!」
『・・・・・・』
「くそったれ!!」
私は思わず役に立たない通信に罵声が漏れる
大声を出したことに驚く美緒を無視して、私は近寄る

「美緒、今すぐ撤退するぞ」
「・・・えっ?」
「ここは危険だ。他の者も連絡が取れない。指揮もてんでバラバラだ
        • 残念だが、見捨てるしかない」
「そんな!」
「美緒!私達の任務をわすれたのか!?仲間を見捨ててでも情報を持ち帰れと!!」
「それは・・・・でも・・・・」
美緒はチラッチラッと周りを見回し続け、その様子を見た私はため息を吐きながら
銃をジャキンっとする。



「美緒。これから奴の弱点を探りに行くぞ」
「・・・・・・へ?」
呆ける美緒を無視して、私は続ける

「お前の主任務は「敵の弱点を探る事」だ。
 未知の敵だからと言って、弱点も探らずに帰れば大目玉だからな。」
本当に私は甘ちゃんだ。美緒の困り顔を見て、命令を変えてしまうんだから

美緒は理解できたのか、パーッと笑顔になり
「はい!」
「よーし。いくぞ!!」


私達一気にストライカーユニットを吹かし、一気に上昇していく。
そして、雲の上へと抜け、黒い影に狙いを定める。 

「美緒。いつもの通りにやるぞ」
「はいっ、すれ違い様ペイントして離脱ですね」
「そーだ。いつもの通りにやればいいんだよ。行くぞ!」
「はいっ!」

私は反転急降下し、遮二無二突入する
護衛のネウロイ やデカブツが私に気づいて攻撃を仕掛けてくるが
私はそれを回避しつつ突入するが、美緒とはぐれてしまう

「先輩!」
「私に構うな!マーキングしろ!」
私は大声を上げつつ銃を取り出して目の前に来たスズメバチを撃ち落とす
しかし、次々とウシアブやスズメバチが付き纏う

「しっこい!どけっ!!」
私はアドレナリン全開にしながら、突き進むと美緒の姿が見えた
それは茫然としているようで、棒立ちになってた
その無防備な姿に、ウシアブが突っ込んでくるのが見えた。

620 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:25:08
「っ!やめろおおおおおおおおお!!」
私は突進する。
私は約束したんだ。
あの時の誓いを果たすべきだと



        • そして



美緒を押し倒し、ウシアブの攻撃を腹部に受ける
「ごふっ・・・・」
腹部から走る激痛。今まで腕とか足にネウロイの実弾を喰らったことがあるが
それとは比較的にならないほどの激痛だ。まるで前世自分の胸に感じたあの痛みの様な・・・・

「お・・・お返しだ」
私はだんだん力が抜けていく腕を上げながら機関銃を連射しウシアブを落とすが、
もう限界だ。


そのまま真っ逆さまに落ち逝く私に美緒がしっかりと抱きしめる
「先輩っ!先輩っ!!」
なんだよ。泣くなよ。ぜっかく可愛い顔が台無しじゃないか
まあ、私の所為か

「先輩!待ってください!すぐに呪歌の人を呼んできますから!!」
そうやって、探し回ろうとする美緒の手を掴んで、ゆっくりと首を振る

「無理だ・・・・分かるよ。この感覚は・・・」
「そんなことありません!大丈夫ですから!!」
そういって、必死に傷口を押さえてくれる。痛いはずなのだが、だんだん感覚が消えていくのが分かる

「美お・・・お前が無じでよかった・・・・」
私の意識が遠ざかりそうになったその時だった

「諦めないでください!私・・・せんぱ・・・ミチルさんの事が好きだったんです!
もっと・・・・もっと!!生き抜いてお話させてください!!一緒にいてください!!
お願いですから!!生きてください!!」
「・・・・・・・・っ!!」
突然の告白に掠りだした視界が一瞬でクリアになった
起き上がってみれば、美緒がボロボロと涙を零しながらも、最後まで諦めずに
私を生き延びさせようと必死に動かしていた。


その行動になぜ、自分がこの行動をとってしまったのかを考える。隊長の生きろという命令を無視してまで
それはひとえに・・・・



「みお・・・・」
私は血塗れた手をそっと美緒の頬をなぞる

「わたしも・・・・すき・・・・だ・・・・」
愛していたからだ。前世は坂本が一番好きで、今世は色々と一緒に行動した。
それが、いつの間にかこの気持ちが芽生えてきたのだ
だから・・・・



「ご・・・・め・・・・ん・・・・な・・・・」




体の力が抜ける。目がだんだんと暗くなる。耳が何も聞こえなくなる
美緒がなにかしゃべっていたが。分からなかった・・・・・・














気が付くと、私は平原に立っていた。
ここは確か・・・

621 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:26:33
「やあ、日本の少年。また会ったね」
「ここはあなたと会った草原ですね」
「ここは夢の王国だ」
「地獄に落ちるものと思ってました」
「ははっ、残念だったかね?・・・・君の人生はどうだったかね?力を尽くしたかね?」
「はい。・・・ですが、終わりはズタボロになりました」
「君の体に攻撃受けたんだからな・・・・あれだね。君が守ったウィッチは」
その言葉と同時に草原の向こうにウィッチの編隊が飛びぬけていく
編隊の中には成長した美緒の姿が含まれ、大型ネウロイへ突撃していく
そして、ネウロイはガラス片となって散った

「美しい・・・素晴らしいじゃないか」
「ええ。僕があそこにいないのは残念ですが・・・」
僕は胸に痛みを感じたが、次の瞬間には吹き飛ぶことになる
それは向こうからもう一機来た大型ネウロイに、美緒と一人のウィッチが近づき、すごいコンビネーションであっという間に撃破した。
それはいい・・・・問題はそのウィッチだった・・・

「あれは・・・私・・・?」
成長したミチルだった。ミチルがこちらの姿に気づいたのか手を敬礼して
他の皆と共に大空へ飛び去る

「なぜ、ミチルが飛んでるのですか?私は死んだはずでは!?」
「ミチルは、本当はあの時死ぬ筈だった・・・・だが、君が彼女を救ったんだよ」
「ぼくが・・・ですか?」
「そうだ。彼女を救ったものはただ一つ・・・・・愛さ」
「愛・・・・ですか?」
「ロマンチックだと思わないかい?愛で彼女は生き延びた。
その後は見ての通り元気に飛んでるさ」
「そうですか・・・・約束を破らなくて・・・・良かったです」
僕は涙を零す


「君に会わせたい人がいる。あちらを見たまえ」
カプローニが指す方向を見れば、

「おい!待ってたぞ!早良!!」「ミチルちゃーん!!」
「早く来いよー!!」「やらないか?」
「話を聞かせてよー」
龍宮隊の皆がいた


「隊長・・・副隊長・・・・アユ・・・よし・・・皆・・・」
僕は向こうに行きたくなるが、ぐっとこらえる

「駄目です。僕はミチルじゃありません。僕は・・・別人なのです」
「何を言ってるんだね?自分の手をよーくみてごらん?」
カプローニの言葉に手を見て、びっくりした。
いつの間にか小さく細くなっていて、胸もいつの間にか膨らんでいた

「・・・まさか」
顔もペタペタ触るが、前世の自分ではなく、ミチルに変わっていた
「カプローニさん・・・・」
「それは誰でもない君の人生だ。さあ、みんなと楽しんできなさい。私もいいワイン用意してるのでね」
「・・・・っはい!」
私は元気よく返事をして、龍宮隊の皆の所に入り、もみくちゃされた・・・・












とある病室
看護師さんが少年の心臓が止まっていること発見し、蘇生を行ったが息を吹き返すことは無かった。
        • ただ、病気からして最後は激痛から苦悶の表情で亡くなっていくはずなのだが、その少年は凄く安らかな表情だったという・・・・

622 :名無しさん:2016/05/24(火) 23:27:22
終わり
もう一つの彼女のssを書き斬る事が出来ました。
初ssなのに、ここまで長くなるとは思いませんでした。
Wikiオケですので、載せてください。お願いします

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最終更新:2016年09月12日 13:24