682 :影響を受ける人:2016/07/18(月) 20:11:50
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
8月26日は坂本美緒の誕生日だ。
通常なら導術士学校の寮で、親友達と共に小さくお祝いをするのが通例となっていた。
しかし今現在、軍に志願して学兵となり、忙しい日々を送っている。
だからそんな暇はないと思っていたのだが・・・
「明日は誕生日だな。お祝いしてやる。」
「え? あ、はい。」
北郷章香等が率先してお祝いしてくれたので、かなり賑やかになった。
若本徹子の時はなんと、保冷魔法(高価)で運搬(高価)された鯛(高価)を、皆に振舞えるだけの量を揃えて振舞った。
鯛以外にも、味噌汁で数を誤魔化しはしたが伊勢海老まで出てきたのは驚いたものだ。
休息として訪れた旅館を思い出すかのようなメニュー。
何時も一緒の狐狸部隊の面々も大喜び。お祝いされている徹子も、それはもう大喜びで食べまくった。
その後ろでは、香ばしく焼いた鯛の御頭で一杯傾ける大人達もいたが。
そして今度は自分の番。
流石に決戦前であるが故にお祝いなどないと思っていた。
だが、
「今度は坂本だな。楽しみにしておけ。」
「え、でも・・・」
いきなりやってきて頭をポンポンされつつ、視線で「そんなことやっている場合じゃないと思う」と抗議してみる。
しかし上官の面は厚かった。
豪快に笑って宣言する。
「なに、遠慮するな。こういうお祝いはしておくものだよ。」
「だったら他の方はどうするんですか?
確か黒江綾香さんに隊長もそうでしたよね。」
上官は攻撃から目を逸らした。
「この歳になると、もうお祝いしてもなぁ・・・
もう大人の仲間入りしているようなものだし・・・
最近は実家が「早く結婚しろ」ってうるさいしなぁ・・・
そりゃウィッチ保護条例の期限は三十路までさ。
三十路過ぎれば優遇措置が無くなって、寧ろ縛りは多くなるさ。
家族も親切心から進めてくるのだろうけど、だからってもう少し待ってもらってもいいじゃないか。
自分だって恋愛したいんだ。ただ出会いが無いんだ。
軍隊生活に入れば恋愛会が遠のくのは知っていたけれど、ここまで無いなんて思っていなかったよ。
一応まだ二十歳だ。まだ大丈夫・・・だと思いたい。
でも水瀬大佐は御見合い結婚だって聞いているし、先輩達に聞くと恋愛なんて幻想だっていうし・・・
あれ? 旗本さん、坂本はどこに??」
「・・・先に帰らせた。」
呆れ返っている旗本サエの冷たい視線を受け流しつつ、ほっぺをポリポリ掻く。
流石に愚痴ったのは不味かったと反省する。美緒が視線でサエに助けを呼ばなかったら、何時までも言い続けたに違いない。
「・・・何、学生に愚痴っている。」
「いえ、その。」
「・・・理想が高すぎると、誰とも結ばれんぞ。 ・・・素直に見合いをしろ。」
「婚約者がいる人は違いますね。」
「・・・ああ、あいつは良い奴だ。」
無表情なのに、凄く勝ち誇った顔をされて憮然となる。
いいじゃない。女の子なんだもん。夢見たって罪ではないはずだ。
「ですけどぉ。水瀬大佐が逃してくれるとは思えませんしねぇ。」
「うぉ! 旭川、驚かさないでくれ。」
いつの間にか背後に立っていた副官から飛びのき、溜息を吐く。
「わかってはいるよ。江藤も逃がして貰えそうにない事を愚痴っていたし。」
「変に優秀だとぉ、困っちゃいますねぇ。あ、自分はしっかり支えますからねぇ。」
「ありがとう・・・」
「知り合った腐れ縁ですよぉ。」
683 :影響を受ける人:2016/07/18(月) 20:12:26
ヒラヒラと手を振り、カラカラと笑うそんな彼女に、苦笑しつつも感謝する。
腐れ縁と言えば真嶋もそうだなと思い返す。野獣だけど。
そう言えば、江藤敏子は部下四人を逃がすつもりはないらしい。道連れにするつもりだとか。
南無南無。
そんな風に楽しそうに会話をしている三人を覗き込むように見ている変態がいた。
「ああ♪ 隊長、相変わらず凛々しいわ♪」
顔を赤く紅潮させ、腰をくねくね動かす姿まさに変態。
特に注視する場所はたわわな果実。節操無しの変態は二人にも視線を向ける。
「くふぅー♫ こうしてみると旭川も良いわね♪」
注視する場所は腰。あのクビレがたまらんらしい。
更に年下ながらも逆らえないサエを見る。
「あの無表情♪ いつか崩してみたいわね~♬」
「ああ? そりゃ、無理じゃねがぁ?」
「オギャァァァァァ!!!」
大嫌いで超苦手な野獣の登場に大声で驚き、優れた身体能力で跳んで距離空ける。
それを見つつ、真嶋志麻はいつも思っている事を聞いてみた。
「おい・・・何時もそれだと、傷つぐぜ?」
「いきなり出てきたら驚くでしょう!? というか、アンタ。なんでアタシにはタメ口で、サエは敬語なのよ!」
「あ? そりゃ、尊敬でぎるかどうかだろぐが。」
「それもそうか・・・♪」
「いや、納得ずんなよ。」
呆れる年下の同僚を無視し、テヘペロをする三十路前。
無駄に前向きなのが彼女の特徴であり、欠点であり、利点でもある。
「そう言えばアンタって、結婚に関して親に言われないの♪」
「あー・・・ なにも言われていねぇな。」
「やっぱり野獣だから?」
「いや。ウチって大家族でよ。兄貴が三人に、姉貴が一人いるんだわ。下は弟が二人に、妹も二人だな。」
「ゑっ!?」
今まで知らなかった事実に驚愕する。兄が3人、姉が1人、弟妹が2人ずつ。
コイツを入れて9人!? 御両親を入れると11人家族!?
「でも俺だけ姉妹兄弟の中でデカいんだ。カアチャンも、トウチャンも、平均的なのによう。」
化物が11人もいるかと思ったが、そんな事は無かったようだ。
ひとまず一安心。
「トウチャンのジイチャンは俺並にデカいけどな。」
訂正、隔世遺伝だったようだ。
そんな無駄話をしていると、さすがに章香達は気が付く。もっとも、ランの大声で気が付いたのだが。
「何をやっているんだ・・・」
「がぅ? 俺の兄弟を教えたら驚きやがたんだ。」
「ああそう言うことか。お前が兄弟の中で真ん中だというのは、私も驚きだったよ。
全然似ていないしな。」
「・・・驚愕。」
以前に話して貰い、実際に会った事のある章香も信じられなかった。
同様に、写真を見せてもらった事のあるサエも大きく頷く。
そして一同はそのまま執務室に行く物、格納庫に向かう者に別れたのだが・・・
「デカくなったの。俺だけなんだよな・・・」
と、志麻が小さく呟いた声は、誰も聞こえなかった。一応、自分でも背の高さを気にしているらしい。
―――――
誕生日会は意外な事に豪華になった。
と言うのも、
夢幻会のストパンファン一同がマッドシェフ、北一輝に依頼してケーキをプレゼントしたのだ。
まだこの時期のケーキは本当に高価な代物。
当然一同は困惑したが、寄せられたメッセージを読んで納得した。
『今作戦において、今まで以上の困難に立ち向かう諸君等に対し、せめてもの応援として、
果敢なる女性軍人、学兵達にこれを送る。
無事に帰還し、任務遂行されれば、もう一度同じ物を振舞おう。』
このようなメッセージカードを呼んだ一同は感激し、決意を新たに固めた。
もっとも、金を出した野郎どもは下心が有ったりするのだが、そこは夢幻会の良識派が工作して、あくまでも善意であるという感じに誤魔化してある。
少女隊にの前にはクリームたっぷりのショートケーキ。
ビターな味わいのチョコレートケーキ。
クレープとクリームを交互に重ね、更にあいだに果物が挟まったミルクレープ。
ムース状のチーズケーキ。紅茶の茶葉を使ったシフォンケーキ。
全員に配られるだけ作られたそれらケーキは、その日の内に無くなったという。
このサプライズケーキだが、一部費用に関して九曜も出費して、作戦に関わる部隊になるべく配られるように心掛けた。
原作キャラがいるからという贔屓で、彼女等だけだと恨まれるかもしれないという心配が有ったのだ。
688 :影響を受ける人:2016/07/18(月) 20:29:15
取りあえず作戦開始日時である8月31日から1週間前後の期間で、誕生日を迎える隊員がいる場合のみケーキを送り。
後は簡単に、大量に作れるお菓子で誤魔化した。
この試みは大成功し、後にケーキブームが巻き起こる事になるのだが・・・今は割愛して置く。
ついでに発端連中の懐が冬将軍に襲われて、しばらくお小遣いが暴走冷却の状態になったのは言うまでもない。
そんな楽しい食事の最中に出て行った者がいた。竹井醇子だ。
以前祖父の問われた回答が未だに出ていない。
早く答えを出すべきなのに、どうすれば良いのかわからないでいる。
皆で楽しくワイワイやっていたが、どうしても雰囲気に馴染めない。
だから抜け出した。
「ふぅ・・・」
賑やかな食堂から、静かな格納庫にやってきて一息つく。
個々は人気がなくなれば本当に何も聞こえない。上を見上げても天井が見えるだけで、なんだかこの格納庫だけが世界の全てになったような気がする。
そんな事をボーと考えていると、
「なにやっているのよ。」
「ひゃわ!」
加藤武子がコーヒーを持って来て隣に立っている事に、まったく気が付かなかった。
慌てて敬礼しようとしたが、武子の方からしなくてよいと言い、コーヒーが入ったカップを渡す。
ブラックではなく、ちゃんとにミルクとハチミツで甘くマイルドにしたものだ。
「あ、有難うございます。」
「いいのよ。甘い物食べて、なんだか苦いモノが欲しくなっていたし。」
「でも、なぜここに?」
「たまたまよ。貴方が出て行くのを見かけてね。」
「皆には「黙っておくから安心なさい。」・・・本当にありがとうございます。」
「それで、どうしたの?」
ニッコリ笑う武子は、醇子から見ても絵に書いたような出来る女性で、大人の雰囲気を出している。
章香は自分達の隊長で、ちょっと言い辛い所が有ったが、陸軍である面子に関してはそれなりの付き合いしかなった。
だから相談してみることにした。祖父に言われた事を・・・
「なるほど、それは難しいわね。」
「ですよね・・・」
竹井元少将の噂なら聞いた事がある。いかに身内であろうとも。いや、身内だからこそ、厳しい物言いとなったのだろう。
これも彼女の事を思ってなのだろうが・・・彼女はまだ学生。まだまだ学ぶべき少女なのだ。
回答は自分で出して、自分で納得し、自分で掲げなければならない。
しかし・・・ちょっとくらい助言しても良いだろう。
「そうね。私が言えることは、他人を頼っても良い・・・かな?」
「え?」
祖父とは真逆の回答に目を白黒させる醇子を見て、武子は苦笑する。
「まあ、頼り切るのは禁物よ? 支えがあるのはとても良い事、相手だって頼ってくれれば嬉しいでしょうし。答えようとする。
でも、それに甘えきってはいけない。頼りにしている人だって人間だもの、疲れるし、ミスもする。
だから自分も支えてあげるの。そうすれば、相手ももっと嬉しくなる。
人間全部一人でなんてできない。あの【軍神】北郷章香だって、初めの頃は旗本さんに頭が上がらなかったんだから。
私達は多くの人に支えられている。下からも、上からもね。
だから、自分が出来る事を見つけて、支えてあげればいいんじゃないかしら?
問題なのは、どう“結果”を残すか。だと思うし。
「どう“結果”を残すか・・・」
武子に言われ、その内容を噛み締める。まだ明確なモノは無いけれど、道は少し見えた気がする。
御礼を言い、二人はコーヒーを飲む。
「あ、そう言えば話は変わるけど、お友達二人に勉強を見ているって本当?」
「そうですよ。二人とも・・・・・・」
「なんか智子みたいね。・・・」
「それで・・・」
夜は更けていく。決戦の時まで残り僅か。
しかし二人は今、只会話を楽しむ。
以上です。
これで竹井醇子の悩みが晴れたと思ってもいいかな・・・
改訂
ミルフィーユ→ミルクレープ
江藤敏子→加藤武子 二度目
最終更新:2016年09月13日 11:42