717 :ナハト:2016/07/18(月) 22:37:43
私は舞鶴近くで早良ミチルとは別の取材の用事があってやって来た。取材は予想以上に早く終わり、丁度昼時前だったので適当な食堂に入り、注文をして、取材記録を纏めていた。
と、その時ハラリと鞄から早良ミチルの写真を落としてしまい、私がそれを拾おうとすると、それよりも先に店の店主さんが拾ってくれた。
私はお礼を言おうとしたが、店主さんは写真に写る人物に信じられない物を見たかのように目を大きく見開いていた。

私がどうしましたか?と声をかけると、店主さんは我に返ったかのように聞いてくる

「記者さん!こ・・・このお姉ちゃん知っているんですか!?知っていましたら、場所を教えていただけませんか!?」

私はこの勢いに押されながらも、落ち着かせ、私がミチルの妹の孫であることを告げ、ミチルは扶桑海事変で戦死したことを告げると
店主さんは崩れ落ちて嗚咽を漏らす

「そんな・・・・もう一度お姉ちゃんに会えると思ったのに・・・・」

私は店主さんを慰め、立ち直ってくれたところで、お話を聞かせることになった

「そうですね・・・お姉ちゃんは私にとってはヒーローなんです。
私は大陸の開拓民出身だったのです。生まれた故郷は何もないところでしたが、毎日田畑を耕して少しずつ土地を広げ
周辺の者たちと共に助け合って生きていた時代だったんです。あの頃は何もかもがつらかったと思いしかありませんでしたが
振り返ってみれば、あの頃が一番楽しかった頃でしょう



暫くすると、軍人さんがやってきて、国境線近くで怪異が発生して守備隊が全滅してしまったから
僅かな荷物と財産以外持ち出しを許さずに退去して避難せよと命じられたのです。

当然皆は納得いかずに猛抗議をしたのですが、軍は民間人を戦場にいると邪魔になるという事と
財産分の補償を政府から支給されると説得されて、渋々受け入れたんですね


こうして、生まれ育った村を捨てて離れていったわけなんですが、すぐに戦争は終わる。
終わったらもう一度村に帰ろうと励まし合ったのですが、結果的にはすぐに戦争は終わらず、村は二度と帰れませんでした。

718 :ナハト:2016/07/18(月) 22:38:16

それから、近くの大きな街で避難所生活になりました。
私は生まれて初めての大きな街だったので、あちこちに出ては、迷子になってよく両親が探し回って怒られましたね。
ここで、戦争が終われば、すぐに村に帰れると思ったのですが、戦線は相当厳しい物であり、とうとう大陸を放棄して本土へ避難することになったのです。

まず、私達民間人が避難することになり、トラックに乗って裏塩まで移動することになったのですが、私が乗る予定だったトラックが故障によって
他のトラックは先行し、私達は数時間遅れとなったのです。

夜明け出発だったのですが、昼間になって明るかったのは覚えていますね。
そして、私は遠足気分でランランでした。

と、急にトラックが止まって兵隊さんが大声で叫ばれましたね
「スズメバチが狙ってるぞ!!早く森の中に逃げろ!!」

そのこれに急いで私達は転げ落ちるように降りて逃げましたね。
そして、空から見たことない生き物が飛んできて、地上に向かって攻撃してきました。

この攻撃で多くの人が死に、私の母も目の前で死にました・・・・
そして、トラックも攻撃で爆発し、トラックの上で機銃を撃ちまくった兵隊さんも・・・


私は無我夢中で逃げ回り、気が付けば一人で森の中を走ってました
それでも生きたいという一心で走りました。

と、木の根に引っ掛かり、転げて痛む個所をさすってたら低い音がしました
上を上げてみれば、先ほど襲ってきた生き物がいました。

私は恐怖で動けずにいると、攻撃してきました。
思わず目を瞑っていると、痛みはありません。

恐る恐る目を開けると、私の前に一人のおねえちゃんがシールドを張っていました
「遅れてごめんね。もう大丈夫だから、ちょっと待っていてね」

そういうと、兵隊さんが叶わなかった生き物をあっという間にやつけてくれました
それを見た私はしばし、呆然としましたが、やがて飲み込めるようになると、泣き出しました。
母や皆が死んだのです。それを思い出したら泣けてきたのです。

それを見たおねえちゃんが頭を撫でて
「ごめんね・・・もっと早くこればよかったんだけどね」
「ぐす・・・ぐす・・・・おねえちゃんは誰?」
「私?私はね早良ミチルなのよ」
「ミチルおねえちゃん・・・?」
「そうよ。さあ、安全なところに行こうか」
そういって、私を抱いて近くの基地にまで運びそこから改めて裏塩にまで運ばれたのです
私が運ばれる当日にミチルおねえちゃんがやってきて、そっと私に封筒を渡したのです

「これね、私が稼いだお金なの。一人じゃあ大変だろうから役に立ってね」
「おねえちゃん!ありがとう!!また会えるよね?」
「ええ、あなたが覚えてくれたらね」
「じゃあ!指切りげんまんしよう!!」
そういって、指切りげんまんの約束をしてお姉ちゃんと別れたんです。


裏塩には先にお父さんが手続きの為にやってきていて、私を見て泣きながら抱き付き
ついてやれなかったことをごめんなと謝っていました。



そして、大陸を離れました・・・・



私は、それからおねえちゃんに憧れてウィッチになろうと思い受験をして
合格したのはいいのですが、素養が無かったのか卒業するまで魔力が発現することはありませんでした。
ですが、ウィッチに役に立てたいと思い、様々な事に手を出してみた結果、料理の才能を磨くことになり
食堂屋になったのです。舞鶴の訓練学校近くに食堂を作ってウィッチの訓練生にはうんとサービスをするなどとしてます。


        • ほら。見てください。丁度子供達がやってきましたよ」


そういうと、外からドタドタと足音が聞こえてくる


「やりい!!私がいちばーん!!」
「ちくしょう!!もう少しだったのに!!」
「こら!!迷惑かけちゃだめでしょ!!すいません、お母さん」
「うふふふいいのよ。元気が沢山あっていいわ」
「それよりも紅白戦に勝ったので約束通り!!」
「ええ、約束通り肉の大盛りをごはんわたしの奢りよ」
「「「うおおおおおおおお!!お肉ばんざーい!!」」」
若いウィッチの卵たちがごはんをかつぎ込んでいく

それを眺めていると、店主さんが
「ウィッチになれなかったのは残念な事ですが、こうして子供達と触れ合えるのは楽しいですよ」

719 :ナハト:2016/07/18(月) 22:38:46
終わり
グロ鬱が続いたのでいい話に書き上げました。
こんな民間人もいたことでしょう

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最終更新:2016年09月13日 11:45