532 :影響を受ける人:2016/07/30(土) 22:03:05 この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
堀井は会議が始まる前に、少しだけ思考の渦に身を置いていた。内容は最近の近況について。
昔、奮闘していた姿認められ、九鬼大将に目に留まり可愛がられ。
そして自分で派閥をつくり、恩師たる九鬼大将と共に海軍の代表格となり。
それは怪しい連中の排除においても発揮され、「二つの派閥が手を組めば敵などいない!」そう言えるほどになった。
しかしある時から九鬼大将は身を引いてしまい、離れて行ってしまう。
その“ある時”はいつだったかわからないが、堀井にとっては晴天の霹靂だった。
堀井は名家の出と言うわけではない。だからこそ部下たちは慕い、憧れ、期待した。
彼は潰される事なく彼等の期待によく答え、貫禄と実力を身に着けるにいたる。
だがしかし、時間と言うのは残酷だ。
しだいに彼自身も気が付かない内に暴走気味なりがちで、心配する九鬼大将の苦言も流してしまうほどに増長・・・
大陸の戦況が悪くなる報告を聞いては陸軍に対して憤怒の怒りを上げ、同時に海軍から助力を受けさせてやっているという優越もあり、暴言を繰り返す。
しかしこのあたりからだったか、九鬼大将が離れて行ったのは。
亀のように頭を引っ込めたはずの例の組織は、あの手この手でやり方を変えて地道に勢力を伸ばしてくる。
九鬼大将が離れたせいで派閥から出て行く者、中立になる者、九鬼大将に合流する者が出てきた。
それだけならまだよかった。こちらが保管していた備品を持って行くなど、目につく行為が多くなってくると話は違う。
それも、陸軍に浸透した例の組織の息のかかった連中となれば、敵視するのには十分。
確かに例の組織は問題になりそうだった新型の50口径41cm砲の製造に関与し、開発を速めてくれた。
だからと言って良いように組織を操られては困る。海軍は、私物ではないのだ。
それ故に、軍令部で立案された作戦を知る事ができた時、迷わず堀川等を呼んだ。
―――――
自分の執務室で仕事をしていた堀井は、ノックの音で顔を上げて扉の方を見る。
「堀川 吉郎(ほりかわ よしろう)です。」
「そうか、入れ。」
入室を許可すると、堀川はドアを開けて一礼する。
相変わらずの生真面目さに苦笑すると、彼は別の存在に気が付いてドアを閉める手を止めた。
「安田中将、貴殿も来ていたのか。」
「ああ。」
堀川の視線の先にいる男。小太りながらも顔は潮風を受け、深くなった皺を持つたたき上げだ。
確か新型の重巡洋艦を一時期率いていた筈だ。確か・・・【雲仙型】だったかな?
安田中将…【安田 道長(やすだ みちなが)】はあまり好きではない。
艦隊運用は上手く、自分も唸る機動をする時がある。
しかし・・・裏ではキナ臭い噂が立っているのだ。
堀井派では、自分と彼だけが艦隊を指揮する立場にいる。
更に彼は最近昇進し、【山代】【若狭】の二隻を率いる立場になったとか。
今のところ戦艦を率い、艦体を指揮する、それしか二人の共通点は無いが・・・
「堀川も来たことだし、これを渡そう。」
「なんでしょうか?」
533 :影響を受ける人:2016/07/30(土) 22:03:36
手渡されたものは紙束で、安田と共に交換しながら読んでいく。
枚数はそれほど多くは無かったから、1時間もせずに読み終える。
そして、安田は怒りの感情を隠さずに堀井に詰め寄った。
「なんですかこれは!
まるで陸軍主導のような作戦、認められるはずが有りません!
陛下から預かりし艦艇を、囮に使うなど!!」
強く机を叩き、熱弁を振るうかの様に腕を振るう。
少々大げさな身振りをする欠点に少しだけ嫌な顔をする。
だが安田は堀井が浮かべた表情を同意ととったのか、更に怒鳴り散らす様に続けた。
「あのデカブツが扶桑海を渡るなど、絵空事です!
有りもしない事実を評する輩などに、耳を貸す必要性はありますまい!!
そもそも大陸失陥の責が有るというのに、このような作戦を立てる事こそが間違い!
敵の陸上戦力が扶桑海を渡れない以上、気にすべきは航空戦力のみです。
たしかに“オニグモ”という目標が目下の最大目標ですが・・・敵にならないでしょう。
我が方には最新鋭の戦艦が四隻あり。いずれも最新の高性能砲を装備していますからな!」
言いきり、荒くなった息を整えるのを見つつ、満足げに頷く。
安田の意見には、堀井も同意だ。
陸軍に対して思う事が有り、なによりも責任を取っていない輩の言う事など聞きたくない。
それが本心だ。
「やはり九鬼大将に進言すべきだろうな。
このような作戦には同意できない。我々独自の作戦を立てるべきだと。」
「ええ。私も微力ながら御尽力いたします!」
二人が進言する事を決意すると同時に、
「そうでしょうか? 私は良いと思いますが。」
資料を読み終えた堀川は反対の事を述べた。
思いがけない回答に堀井が驚いて此方を向き、安田も何を言っているのだと言わんばかり振り向いて睨む。
「なぜ、そうおもう?」
驚きからすぐさま立ち直りはしたが、出した声は若干震えている。
それもそうだ。目の前の堀川は、堀井が一番信頼していた人物なのだから。
そんな人物が自分とは真逆の反応を示したのだ。
内心の動揺を抑えつつ、答えを待つ。
「そうですね・・・ まず一つ目は実績のある戦法だからです。
陸軍は大陸から追い出されましたが、民衆を安全に避難させるだけの時間を稼ぐことには成功しています。
さらに“アホウドリ”と“オニグモ”の来襲は、最終的には撃破しています。
双方の戦法は敵の護衛を排除し、本体を叩くと言うもの。
実績があり、こちらに合わせて改良した戦法ならば検討してもよいと思います。」
「そうか・・・ だが、相手は学習するという検証結果もあるが?」
「私もそれは知っています。事実“オニグモ”においては最後まで護衛を止めなかった怪異がいたようですし。」
堀井の問いに堀川は肩をすくめて同意する。
「ならば!」
「ですが、戦いに必要な戦力の集中を実現しています。
戦艦部隊を囮にするというのは、脆弱な航空母艦を守る為に必須です。
確かに 囮 と言う単語にはいささか思う所は有ります。
ですが、対空火力が明らかに上の戦艦が前に出るのは戦術上良いと考えです。
陸上で行った改造砲の急場しのぎとは違い、こちらの艦砲射撃技術は圧倒的に上。
“オニグモ”相手でも十分戦えます。」
反論しようとした安田を遮って話を続ける。
遮られた安田は歯軋りと共に黙り、堀川は穏やかな笑みを持って言う。
534 :影響を受ける人:2016/07/30(土) 22:04:12
「なによりも、先陣を切って戦う。
それは武人としても誉れ高きであり、何よりも・・・
女子の後ろに立って戦うなど、男子のする事ではないでしょう。
我々の訓練は一体何のために行われてきたのですか?
すべては扶桑皇国を守る為。扶桑に住まう国民の為。そして、誇りの為でしょう。
私はようやく役に立てる出番を貰い、寧ろ気分が向上しております。
誉れ高き扶桑皇国海軍。世界初の40cm砲搭載戦艦【長門】。
この艦に乗れて私は本当に幸せです。
新造艦で高性能だろうとも、わ か ぞ う の【紀伊】型に負けません!
この作戦の一番槍。ぜひとも我が艦隊にやらせていただきたい!!」
啖呵を切った堀川に、二人は何も言えない。
安田は堀川を「気でも狂った」ように見て、堀井は衝撃を受けて見つめるだけだ。
「自分を・・・ 俺を・・・ 裏切るのか?」
少しの沈黙の後、絞り出した声は、自分の声とは思えないほど掠れて聞こえた。
「裏切る? 誰をです。」
「っ!」
堀井は堀川の目を見て、ようやく目の前の人物が自分を 見限った 事に気が付く。
「誰に付くつもりだ・・・」
「これは異なことを。私は誰にもついておりませんが?」
「ふざけるな!」
裏切られた怒りと共に勢いよく立ち上がる。
その拍子に腰かけていた椅子が倒れ、机を思いっきり叩く。
普通の物なら萎縮するが、目の前の男は動じるばかりか前に出てきて逆に堀井を威圧する。
「フザケテいるのは貴方だ!!」
「な、ぁっ・・・」
「貴方はこの場で我々に作戦とは違う事させようとしたのでしょう!
我が艦隊には六隻戦艦がいます。ほとんどは旧式の35.6cmでが、大口径砲であることは違いありません。
この六隻だけでも抜けてしまえば、作戦の成功率はかなり下がるでしょう。
仮にこの作戦が失敗したと判断して、強制的にでも敵の排除命令でもしますかな?
味方がいるのも構わずに。
それとも、陸軍の作戦には従えないと土壇場で独自行動させますかな!?」
ほぼ息継ぎ無しで言い切り、荒くなった息を整え、
「我が艦隊は、将兵達は、海軍は! 貴方の私物ではない!」
堀川は吠えた。
安田の怒号とは違う、烈火のごとき怒りに堀井は何も言えない。
―貴方の私物ではない―
言えるはずも無かった。そんなつもりなど、なかったのだから。
呆然とたたずむ二人を残し、堀川は資料を置いて綺麗に一礼して退室する。
それを只無言で、見送る事しかできなかった。
―――――
あれは、堪えた。
自分は海軍を良いようにしようという輩を如何にかしようとしていた。
犬猿の仲だった陸軍の言う事など、聞きたくも無かった。
九鬼大将の行動に怒り、自分の思い通りにいかない事に憤怒する。
どこの子供だろうか。堀川に愛想が付かされるのも無理はない。
その日は結局仕事がそれ以上出来ず、そのまま帰宅してひたすらに考えた。
そして同時に周りの確認もする。
確かに学もある物はいるが、基本的に自分の取り巻きでイエスマンばかり。
不満はあっても改善策は出てこない。
流れを読める者は離れて行き、堀川のような人材もまた・・・
例の組織の拡大はもう、自分だけでは止められないだろう。
もう自分が出来る事が無くなりつつある。この流れはもう止められないだろう。
天皇陛下の覚えも悪い現状、もはや海軍にとって自分は害悪。
「害になるならば、排除せねばな・・・」
535 :影響を受ける人:2016/07/30(土) 22:04:58
昔からの思いは変わらない。この国の為、国民を守る為に働く。
故に、害悪となる人材を 道 連 れ に海軍を去るべきであり、派閥下層部の人員はともかく、上層部は排除する。
流石に海軍の機能を半身不随にするわけにはいかないが、これは必要な事。
それに謎の組織に対する嫌がらせにもなる。
内心でその思いを抱えつつ会議に臨んだ。
周りが騒ぐ中、堀井は静かに質疑を重ねていく。
自分が納得していると言えば腰巾着も、嫌々ながらも黙って言う事を聞く。
「提案とは台風を利用した、巨大魔方陣を形成する事であります。
あまり思い浮かばないかと思われますが、この手の自然利用の儀式と言うのは古来から有ります。
雨乞い然り、快晴然り。
我々は台風の目を利用し、目標“ヤマ”を覆うほどの巨大シールドでもって封じ込めを行いたいと思っています。」
さあ。気になる点を洗い出し。次へと繋ごう。
それが自分にできる最後の仕事だ。
以上です。
書いて行ったら想像以上に堀井大将が覚醒して、良い人になってしまった・・・
本当ならもうちょっと嫌味な人になるはずだったのに。
どうしてこうなった???
更に長くなってしまったから、次回こそ後篇にしたい。
―追記―
設定変更に伴い文章改訂しました。
539 :名無しさん:2016/07/30(土) 22:24:41 >>537
修正前は安田が重巡雲仙を率いる指揮官だったのが
今作では山代・若狭の率いる戦隊指揮官になってますね
そして、九曜さんの所の記述にも扶桑海事変の事が
これは何を意味するか分かるよね?ワトソン君・・・・
540 :537:2016/07/30(土) 22:30:23
他にもないか確認のため・・・
541 :影響を受ける人:2016/07/30(土) 22:37:22 >>修正点
すみません、忘れていました。
主に九曜さんが攻撃を受けたのが戦艦に変更になった事。
砲撃犯人を昇格させて、事実作りをしたことです。
後はちょっと文章を変えただけで、内容は変わっていません。
失礼しました(眠い・・・
最終更新:2016年09月13日 12:01