314 :earth:2011/11/19(土) 23:17:03
ISのネタSSの続き(?)です。
しかし喋るキャラは連邦側の人間だけなのでご容赦を。
あと、まだ続くかも判りません。
IS学園へ『転入』を果たした一夏であったが、彼は寮に入ることはなかった。
彼は地球連邦の政府関係者が使う宿舎から学園へ通学することになっていた。
「スキャンダルは御免だしな」
一夏は通学の途中でそう呟いた。
これは彼だけの意思ではない。お色気イベントなど起こしたら面倒なことになりかねない……地球連邦上層部(転生者組み)は
そう判断していた。
「トラブルを起こすために行くのではない。あくまで連邦の国益を得るために行くのだ。
わざわざトラブルの種になりかねない行為は避けるべきだ」
この大統領の意見に一夏は反対しなかった。
「判っています。大統領閣下。必ずや連邦にとって有益な情報を持ち帰って見せます」
「しかし顔見知りもいるはずだ。非情になれるか?」
連邦の大統領としてではなく、養父として一夏を心配する素振りをする男に向けて、一夏は堂々と言い放つ。
「閣下。私は地球防衛軍の宇宙戦士です。その覚悟はあります」
「……ふむ。期待している」
「はっ!」
これまでの生活から、彼は地球連邦への忠誠心を持っていた。勿論、元の世界への愛着はある。
だが自分をこれまで守ってくれた養父や、戦友たち、人生の師匠たちのいる世界を足蹴にすることはできなかった。
もはや彼にとっての祖国はIS世界の日本ではなく、この世界の地球なのだ。
315 :earth:2011/11/19(土) 23:17:33
(御免。千冬姉……でも、皆は、この世界の地球を棄てるわけにはいかないんだ)
苦しい戦況の中、いつも疲れているにも関わらず自分を励まし続けた養父(大統領)。
自分達が少しでも生き残れるように心を鬼にして猛訓練を課した土方教官。
自分が精神的に参っているときに相談に乗ってくれたヤマトクルー。
訓練学校で苦楽を共にした戦友たち。
簡単に切り捨てることのできないものばかりだ。
ましてや彼はガミラス戦役で自分を庇って死んだ戦友(モブ)や、戦友の死を知って泣き崩れるその家族や恋人を見てきた。
彼らを裏切るのは、彼らの死を冒涜することに他ならない……彼はそう考えていた。
「でも、あの女だらけの園は慣れないな……」
げっそりする一夏。
覚悟していたが、男ばかりの環境で過ごしてきた彼にとってあの学園での生活は、やはり精神的に辛いものがあった。
「でもやらないと。それに、もうそろそろISに乗れる」
電話帳のような分厚い教科書も、23世紀のエリートである一夏からすれば読破するのは難しくなかった。基礎訓練もこなした。
尤も一夏が信じられない好成績を叩き出していることや、一夏の連邦での地位、それにISを操れる唯一の男性という価値も
あって専用機を宛がうという動きも活発になっており、各国の間では火花が散っていた。
さらに一夏を取り込もうとする動きもあることを一夏は承知していた。
「無粋だな。まぁ今は良い。それより、この世界の最高の兵器とそのパイロット達……それがどれほどのものか見せてもらおう」
そこには甘い顔はなかった。
防衛軍時代に築き上げられた軍人としての顔があるだけだった。
最終更新:2012年01月04日 10:47