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73 :第三帝国:2016/05/24(火) 21:52:14
GATE~続いたネタ30 夢幻会、彼の地にて戦いけり


「高速に乗れたし……何とか撒けたみたいだ」

伊丹のその一言で車内で緊張が解ける。
溜息や姿勢を崩すなどをして思い思いに力を抜く。

「富田、次の休憩所で一度休むことにするからよろしく」

「大丈夫ですか、隊長?
向こうは旅館をあんな形で襲撃してきたような人間ですから、休んで居る所をまた襲撃してくる可能性があるのではないでしょうか?」

「んー確かに予想外だったけど、ロウリィ、それに特殊部隊同士で潰しあって、実行部隊が一度どこも壊滅状態に陥っていると思う。
動きたくても動けないはずだから大丈夫、大丈夫」

「分かりました、では次の休憩所まで隊長は休んでいてくださいね。
元という字が付きますが、奥さんが心配しているのですから」

「へいへい」

運転席に座る富田の言葉に伊丹は苦笑し、隣で自分の腕をしっかり掴んでいる元妻に視線を向けた。

「ん……」

だが梨紗は明日の特地帰還のための「仕込み」を終えたことによる安心感とこの騒動の疲労で既に寝息を立てていた。

「なんで離婚なんて言い出したんだろうな…?」

それでも自分の腕を離さないことに伊丹は思わずつぶやく。
離婚したにも関わらずこうも心配し、心配される事実に伊丹は理解できなかった。

74 :第三帝国:2016/05/24(火) 21:52:46

「…朴念仁」

「何か言ったかクリボー、あ、ウリボーだっけ?」

「ウリボーでもクリボーでもない!!」

「あ、ちょ!暴れるな!?俺けが人、一応けが人だから!」

「その程度、かすり傷じゃないですか隊長。
これからの人生は小野田さんがいる方向に足を向けて寝る、なんて事はできない事を肝に銘じて下さいね、いいですか、隊長!」

旅館が襲撃を受けている最中、妻が狙われているのを察した伊丹が妻を庇おうとした正にその時、別の部屋に宿泊していた小野田が襲撃者を射殺したことによって、伊丹は銃弾を掠めたことによるかすり傷程度で済んだ。
その事実を出汁に栗林が上官に向かって小野田に感謝するようにとの要求を突き付け言い放った。

「分かった、分かっているから、栗林!」

「ならいいです。
隊長でもわかるように言って、なおも分からなかったら殴っていた所です。
ああ、それと私は寝ませんが隊長はしっかり休んでいて下さいね、部隊指揮官は休めるとき休んで貰わないといざ指揮する時に不調だなんて困りますから」

尊敬しない上司の言いたいことが言えたことに満足したのか、栗林は席に戻った。

「……心配されているなぁ、俺」

あまり尊敬を受けていない上司であることを自覚している自分が、富田、栗林とそれぞれ違う形で気を使われたことに伊丹は苦笑を小さく漏らす。

75 :第三帝国:2016/05/24(火) 21:53:26

(しかし、富田には今晩再度の襲撃される可能性を否定したけど本当は違う。
例えば増援が来ないという保証はないし、今もなお後ろから追跡され休憩所で襲撃される。という可能性だってある…それに例え今晩は再度来ないとしても翌日には再編を確実に完了しているはずだ)

今晩の戦闘で明らかに各国の戦力は目減りした。
しかし、これを根拠に安心するほど伊丹はお気楽な性格ではなく、予備兵力がいる可能性と兵力を再編し、明日からの襲撃を懸念していた。

ここまで思考を走らせた後。
指揮官は例え嘘を承知でも部下の戦意を損失させないためにあえて悪い情報を与えない。という話を特殊作戦群での座学で聞いたことを思い出し、

(俺みたいな不真面目な人間がここまで考えさせるなんて超過勤務だな。
大体柄じゃないし、柳田に残業代や各種手当を出してくれるように頼んでみるか)

こんな事はもっと真面目な人間に任せるべきだ。
と、内心で感じつつ対価として手当や残業代を請求したい気持ちになる。

チラリと後部座席に座る栗林を見る。
追跡を警戒し不審な車両がないか後ろをしっかりと見張っている上に、いつでも銃を引き抜くことができるような態勢であり、頼もしい事この上ない。

(問題は賓客を確保するのが無理。と判断され、護衛もろとも抹殺を図られたら手の打ちようがない)

が、そんな栗林を見ても伊丹は懸念を感じていた。
これまで相手は同じく狙っていた相手との交戦もあったが、賓客を確保する、という最終目標がある以上どうしても行動に制限があった。

だが、賓客が日本政府との間でパイプが構築されるのを黙ってみるくらいなら、賓客を暗殺し講和への糸口を破壊、自衛隊を異世界との戦争で泥沼に嵌まらせる。

そう考えそうな国を伊丹は最低2か国ほど知っており、頭を悩ませていた。

(梨紗が「明日銀座から国会に登場した異世界の3人娘が帰る」という話をあちこちばら撒いたから、当日銀座は人が集中し安易な工作活動はしにくいはずだ)

ゆえに元妻が現在注目の的である3人に関する噂を流し、3人を一目でも見ようと集まる人々を隠れ蓑にして特地に帰還することを考えていた。
人が集中していれば、安易な拉致や暗殺などが発生する可能性が低下する可能性に伊丹は賭けていた。

76 :第三帝国:2016/05/24(火) 21:54:05

(どのくらい集まるかが不安だけど、後戻りはできない。
何せ自衛隊の施設に逃げてもピニャ殿下がアメリカに引き渡されるだけ。
日本が打てる手は「賓客が疲労を理由に一足先に特地へ帰還した」と強弁するしかない)

普段なら何と言われようが逃げ出していた伊丹だが、防衛大臣直々の要請を無視する程腐った人間ではない。

不真面目なのは自覚しているが、与えられた使命と命令をそれなりにこなして来たつもりだ。
ましてや、異世界と日本を巡る運命が自分の動きで決まるのだから。

(やれやれ、この俺が日本の運命を握っているなんてまるで主人公みたいじゃないか)

いつも愛読している二次元の世界のような展開。
この事実に伊丹は苦笑というより何故自分がそうなったのか呆れを覚えた。

(まあ、何にせよ……。今晩が無事過ぎれば明日が勝負だ。少し、休むか、流石に眠くなって、来た)

と、ここまで内心で色々考えて来たが、流石に眠気が強くなり、思考が徐々に定かでなくなりつつあり、伊丹はそれに逆らわず体の力を抜き、瞳を閉じて眠りについた。



おわり

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最終更新:2025年03月02日 23:22