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373 :第三帝国:2016/06/07(火) 00:46:31
GATE~続いたネタ31 夢幻会、彼の地にて戦いけり


1945年 東京 帝国中央情報局

帝国中央情報局は情報軽視の史実を知る夢幻会が主導して創設した日本版CIAとも言える組織で、これまでに多くの陰謀を未然に防ぎ、また敵国を扇動、情報収集で帝国に多大な貢献を果たした。

しかし、突然銀座の門から出現した異世界の軍勢には無力で、情報局の施設、人員は被害を受け、しばらくその機能が低下した。

それでも情報局は日本最強の情報機関であることに変わりはなく、銀座の門の向こうにいる小野田少尉を介して旅館襲撃の仔細を真っ先に知った。

「連中やりやがったな」

「この段階で手段を選ばないなんてどうかしている」

「それよりも向こうの日本政府は何を考えている? 
他国の工作員がここまで堂々と破壊活動ができるなんておかしいぞ」

睡眠時間と家族タイムを犠牲に集結していた情報局の課長クラスの人間によって議論が交わされる。
どの内容も「向こうの日本」に対する不信感と強い怒りで満たされておりやや感情的になっていた。

何故ならかつて中国の陰謀でアメリカとの戦争が不可避。となった経緯をよく知っているため、陰謀に対して強い嫌悪を感じており、それを防げていない平成の日本政府の弱腰の対応を許すことができなかった。

「アメリカ、ロシアはまだ分かる。
だが、中国に半島の連中まで関わっているなんて舐められているな!」

「工作員が民間人の犠牲を無視して破壊活動に従事。
なんてウチだけじゃく、下手すれば軍が出動するのだがな……」

「途中までいた日本政府の護衛が急に撤退した、という事から考えると何らかの政治的圧力があったとしか考えられない。
……夢幻会の言う通り、向こうの政治状況ははっきり言って悪い、予想以上に悪い」

これまで夢幻会の「助言」や現地での情報収集から、平成日本の政治状況はこちらの常識の範疇外であることを知識として彼らは知っていた。
が、まさか他国の工作員にここまで好きにされる状況を許すほど悪いとは思っておらず、等しく怒りと衝撃を受けていた。

「あの支那大陸の国が向こうでは世界有数の核保有国と知った時点で悪い予想はしていたが…。
まさか、これほどとは、おまけに北半分とはいえ『あの半島』まで核を保有しているなんて最初は冗談かと思ったぞ」

374 :第三帝国:2016/06/07(火) 00:47:16

その言葉で周囲は沈黙の時間に入る。
未来を知る夢幻会の転生者はそれが『常識』であるが、転生者でない人間からすれば『最先端の科学技術であり帝国の威信の象徴を大陸の野蛮人が保有している』という事実に等しく驚愕を覚え、その対策に頭を痛めていた。

「とはいえ、連中は仲間割れを起こしたお陰で賓客は逃亡に成功。
小野田少尉の報告によれば高速道路に乗って東京へ移動、翌日銀座からアルヌスへ帰還する手立てとなった」

その言葉に会議に参加している人間が頷き、安堵の溜息を吐く。
彼らが想定していた最悪のシナリオ、賓客が奪われ異世界の問題に平成日本以外の国が積極的に関わる。
という事は今のところは防げたのだから、あくまでの今の所はであるが。

「問題は明日だ。
賓客を護衛している伊丹中尉はどうやって異世界へ帰るつもりだ?
人通りがある昼間に駆け込むのが定石であるが、連中にそれが通用するとは思えん」

「旅館を燃やしたような奴らだからな…。
偽造テロを発生させまた混乱の最中に拉致することを狙ってくるはずだ」

「この夜の出来事を考えると自衛隊と警察の護衛は当てにならないな。
………局長、ここはやはり平成日本に対して積極的に関わるべきと考えます」

男達が一斉に上座に座り、これまで沈黙を保っていた情報局のトップ、堀悌吉中将に注目する。

「……積極的に関わるべき、そう考えるか。それは平成日本に工作員を派遣。
貴賓を代わりに我々が護衛し、アルヌスの丘まで帰還させる、という認識で良いのか?」

「その通りです。局長、もはや一刻の猶予もございません。
早急に対処しなくては手遅れになりますぞ。局長、どうかご決断を!」

堀の質問に対して一人が自信満々に答えた。
しかし、

「馬鹿者!向こうの日本の主権はどうなる!
国家の面子を潰し、自主自尊の精神を汚すなど、
それでは門の向こうに存在するアメ公と同じではないか!」

回答は否定の言葉であった。
同時にダン、と机に拳を叩きつけ堀は部下たちを睨みつけた。

「諜報にしろ防諜にしろその仕事は地味で退屈なものだ。
軍事探偵物の映画のように派手な戦闘など稀なのは諸君らは知っているはずだ。
おまけに非公式とはいえ、国家が招待した客を途中から横取りするなど一体何を考えている!」

375 :第三帝国:2016/06/07(火) 00:48:08

猛将と言われる山口多門のように高ぶる感情ではなく、理論と知識で部下を指揮してきた頭脳派の堀らしからぬ感情の発露に部下たちは驚くが、即座に反論が返ってきた。

「ですが、局長。
あの日本はアメリカの同盟国という名の保護国であるのは明白です。
自国であれほど好きにやらされ反抗しないなど、自主自尊の精神は既に廃れていると判断するしかありません」

「貴賓がアメリカに奪われるのはまだしも、あの中国と名乗る『支那大陸を統一させた共産勢力』が貴賓を手にし、銀座の門に介入を始めるなど、帝国の国防上における悪夢といえます!」

「しかも連中は我が帝国が有する核を有しているのですぞ!
連中が大陸でやっていたこと、そしてわが国に対して行っていたことは平成日本も変わぬことは既に知っています。
ここで介入する理由を防いでおかなければ、彼の国は必ずや門を通じてわが国に対して攻撃をしかけてくるでしょう」

しかしそれでも部下たちは一歩も引かず反論する。
普段なら冷静な態度で通している部下達がここまで感情的になることに堀は疑問を覚えたが、彼らが話すその内容からは「恐怖」が伴っているのを感じ取り、結論が下される。

(確かに『日本を破滅不可避な戦争に陥れたあの支那人』
さらには『戦前からその巨大さをよく知られるアメリカ』『日本を逆恨みする半島』が門を介して介入するだけでなく、彼らは核を有しているのだから恐怖そのものだろうな)

日本を亡国にすることを生きがいとする国々の介入。
しかも帝国がメキシコに使用した核兵器を保有しており、こちらでは嶋田総理が核兵器の安易な使用に警告をしているが、 彼ら、特に大陸と半島勢力にそうした考えがあるとは思えないのは堀も同意見であった。

376 :第三帝国:2016/06/07(火) 00:49:28

(しかし、だ。
だからと言って貴賓を奪ってはならない。
非公式とはいえ国家間の体面を守らなかければ、何でもありになってしまう。
行きつく先は情報局の利権化、そして国家安寧を名目とした際限なき暴走と碌なことにならない)

堀も情報将校として多くの陰謀を立案したが、「国家が招待した貴賓を奪う」と言った非常識なものは初めてで、もしもこれを許せば、中央情報局はギリギリ守っていた最後の一線を越えると堀は確信していた。

(だからこそ、止めねばならない。
例え彼らが国を愛するがゆえの暴走だとしてもだ。
骨が折れる仕事ではあるが、ここで部下たちに教えなければ次の世代が苦労する)

そう決断すると堀は部下たちの説得に取り掛かった。




おわり

377 :第三帝国:2016/06/07(火) 00:50:35
以上です。
お休みなさい

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最終更新:2025年03月03日 11:56