886 :ひゅうが:2011/12/29(木) 23:39:44
――西暦2024年4月 日本列島 帝都東京

「はぁ・・・やっとここまでこぎつけましたね。嶋田さん。」

「辻さん・・・もう燃え尽きてもいいですか?」

「まだまだ・・・といいたいところですが、今はゆっくり休みたい気分ですね。」

来賓席に陣取った二人の男は、メイクで目の下の隈や青白い顔色を隠しながら、なるべく短めにと指定した演説に拍手を送っていた。
帝都東京の会場には、宇宙空間からの中継映像が鮮明なウルトラハイビジョンモニターに映し出され、彼らの号令を今か今かと待っている。

ぱっと見たのなら、それは白いサーフボードにも似ていた。
しかし、漆黒の宇宙に浮かぶそれは、下部に大きな錐のような主砲を持ち、周囲を取り巻く随伴艦群を二周りは上回っているように見える。
立体的な陣形を組んだ随伴艦は、旗艦である白い戦艦よりは小さいが、数は多い。こちらは白い戦艦よりもサーフボード、いや鋭角二等辺三角形に厚さを持たせたものに近かった。

大気がないために遠近感が狂って見えるが、その実、随伴艦は全長30キロメートルに達する巨艦だし、白い戦艦に至っては70キロを超えている。


「南雲君あらためタカヤ君も、うまくやってくれるといいんだが・・・。」

「大丈夫でしょう。原作開始時点で量産型ガンバスターことシズラーが量産体制に入っていて、護衛艦はスーパーエクセリヲン級で統一。旗艦はエルトリウムが既に就役しているんですから。ワーストコンタクトとしても、対抗はできるはずです。」

おかげで国がひとつ傾きましたよ。と、「地球帝国」大蔵大臣 辻正信はキラリと目を光らせた。その横で、「地球帝国」宰相 嶋田繁太郎は、これまでたどった苦難を思い出して溜息をついていた。

――あの世界では天寿を全うしたはずの嶋田たちは、気づけばこの世界に来ていた。
こともあろうに「米帝に完全勝利した君たちならやれる!!」という書き置き付きで。
ここが、あの元祖熱血パロディアニメの世界だと知れたのは、なぜか無敵な日本政府がハワイを買収してハワイ県にしたときだった。

      • それから彼らは必死で働いた。
第2次太平洋戦争を日本の完全勝利で終わらせ、天才科学者が作り上げたエーテル宇宙論をもとに全力を挙げて宇宙開発と軍備拡張に取り組んだ。
結局、あの世界で働いていた奴らは全員が健在だったのでなんとかことに成功したが、それからが地獄だった。

何しろ彼らの真の敵は、数十億・・・いや数百億という膨大な数が存在するのだから。


「さぁ・・・帝国議会に第1次エルトリウム級量産計画の根回しをしないと・・・」

「倉崎にばかりシズラーを独占させていると不満が出ます。三菱には量産型の『ガンバスター』を作ってもらいましょう。」

「それに加えてシリウス星系への移民計画、汎用の慣性制御装置(イナーシャルキャンセラー)の量産か・・・ウラシマ効果を艦船のみではあっても撃ち消せたのは上出来だったが・・・」

それに。と嶋田は思った。
式典の奥の方で横断幕をかかげている沖縄女子宇宙高校の生徒たちを熱心に撮影している近衛氏以下、夢幻会の面々。
彼らとまた仕事をするのも悪くはない。

「ところで、辻よ。トップ部隊の戦闘服の改訂案だが・・・」

「それはダメです。お約束というものですから。」


だよなぁ・・・これさえなければイイ奴らなんだが・・・と嶋田は肩を落とした。
人類の存亡をかけた戦いを指揮することになる男は、相変わらず憂鬱だった。


ネタ――「夢幻会がトップをねらえ!世界にやってきたようです」

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最終更新:2012年01月04日 13:30