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西暦1946年(大陸日本西暦1942年) 1月10日
アメリカ合衆国
新年開けて大分経ったここアメリカ合衆国の本土では、小中学生が普通に登校していたり、それぞれの家庭の大黒柱勢が自分の仕事場に向けマイカーやバスに乗り込んでいたり、某大学ではマドンナに告白後見事に玉砕して滂沱の涙を流す青年の青春の一ページが刻まれていたりと…戦時中の雰囲気を感じさせない何時も通りの日々が過ごされていた。
仮に転生者がこの地域での日常を見たとしたら『まるでホームドラマがそのまま再現されている様だ』…とでも表現しているであろう、とても穏やかな『
アメリカの平和な日常』だった。
そんな『一見』戦時体制に有る様な雰囲気を微塵も感じさせていないアメリカ本土ではあったが、本来は大学で勉学やスポーツに励んでいたり、新入社員として先輩から仕事のイロハを学んでいる様な年齢の若者達が多数軍隊に志願していたり、砲弾等の兵器生産に若い女性が多数関わっていたり、報道機関全てが連合軍の報道や動向を国民へ伝えていたり、戦時国債のキャンペーンが流れていたりと…よくよく見れば、今が『平時』では無く『戦時』で有る事を実感させる事柄がそれなりに見られていた。
そして市民達の雑談でも、戦争関係の話題で持ち切りで有り…最近のトレンドは『中華民国』関係の話であった。
「…そういや聞いたか?未だにチャイニーズ共が『金と兵器を寄越せ!!』とステイツに引っ切り無しに電報送りつけて来るからとうとう役所の受信機がぶっ壊れたって話」
「それ正確には集りの電報に切れた外交官がハンマーで叩き壊したんじゃなかったっけ?まあでも大変だよな、国務省のお役人方も。
あんなのに対しても笑顔で対応して行かないといけないってな」
「火事場泥棒やろうとして反撃で殴り倒された挙句『連合国の為に血を流したのだから連合国が支援するのは当然だ!』とかなんとか言ってると新聞に載っているが、あんな欲望丸出しのサル共に誰が支援するかっての」
「前の戦争でも、チャイナに投資した企業の多くが、投資資金を全然回収できなくて一部は倒産した位だしな。しかも回収不可の原因の多くはチャイニーズの横領。…昔は『東洋の神秘の大国』等と持ち上げられてたが、実際はチャイナの宣伝工作で作られた幻想でしかなかったからね…」
「結局、この先の戦争は事実上ステイツ単独で戦わなければならないんだよなぁ。イギリスはインド洋から出ようとはしないし、フランスは戦争参加する気ないし、ソ連は海軍力が蒸発したし、首突っ込んできたサル共(中華民国)は全部論外だし」
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「最後にはステイツが勝つだろうが…ウェーク島で海軍が撤退に追い込まれたり、東南アジアを短時間で制圧された昨年の戦闘結果を見ると、ニホンは今までの敵とは比べ物にならない程の強敵だ。…最近何度も思うよ。『エイプリールフールの惨劇』が本当にニホンの工作による物なのか、ってさ。ここまで強いのなら普通はあんな事せずに宣戦布告を正々堂々とするもんだろ?なのにわざわざ…」
「いや、うん。何時もの事ながらさ、お前はインテリだから色々と考えてしまうんだろうけど、そういう発言は控えろって。最近活動が変になってきた白人至上主義者とかに聞かれたら俺もお前もどうなるか分かったもんじゃ無いし。それに深く考え過ぎだ。所詮…ジャップ?ニップ?……まあどっちでも良いか…もサル共と大して違わなかったってだけだろ」
「…本当にそうなのかなぁ」
『エイプリールフールの惨劇』から半年以上も過ぎれば、…今の雑談で青年が語っていたように…大日本帝国の行動に違和感を感じる市民も…極々少数ではあるが…出て来ては居たが、アメリカ人の殆どは『惨劇を引き起こした凶悪な国家』に対して強い敵意を持ち続けていた為、まだまだ戦争を継続する気満々であった。
…因みにその国家の海軍との、真正面から正々堂々殴り合った『神聖なる決戦』を終えた直後に…明らかに火事場泥棒狙いで…いきなり乱入してきて日本に返り討ちされた中華民国に対しては強烈な呆れと軽蔑の感情を抱いていた。この世界では日本が居なかった為、当然の如く日系移民が存在しておらず、代わりに中華系移民がその穴を埋めたのだが…(密航などで)学の無い中国人が多数流入しては各所で問題や犯罪を多発させていた為に、アメリカの民族カースト内でも最底辺を形成して、これまでにも様々な差別を受ける羽目にあっていた。そしてそれが、今回の件で余計に加速する事になった。
ただ、中華系移民が最底辺になった事で、ヒスパニック系や黒人への差別がそれなりに少なくなった事だけは事実であった。程度問題かつ根本的解決では無いのは分かりきってはいたが、それでも確かに少なくなったのだ。
…そして、戦後に世界でも五指に入る程世界的に有名なアメリカ人として名を馳せる事になる某少年が友人と雑談を語っているアメリカ本土各所にて、多数の志願兵への厳しい教練と各軍の増強が粛々と進められ、財務省が軍からの予算要求と(大量の国債発行額を含めた)国家予算と両方睨めっこしながら追加予算案を製作して居たり、ロスアラモス研究所の面々が核兵器だけでは無く新型ソナーだの新型レーダーだの新兵器開発に引き摺り回されている頃、ホワイトハウスでは今後の戦争の行く末を考えるべく、各省庁大臣と軍司令官による会議が開かれていた。
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「…中華民国、並びにイギリス連邦からの援助要請が引っ切り無しに飛んできています。彼ら曰く『この援助だけでは国防には不十分』…との事です。如何致しましょうか大統領?」
「得がたき戦友たるイギリス連邦への援助の拡大は考慮する。だが中華民国への拡大は無しだ。『これ以上しつこく要求する様なら今の援助量もストップする』とでも言って黙らせてやってくれ」
まあそうなりますよね…。そもそも前提としてどのルートで援助物資を輸送して貰うつもりなのだろか中華民国は。今のステイツとソヴィエトとの関係は…先日アカの細胞を大量摘出した為に…あまり宜しく無い物になっている事位知っているだろうに…。…大西洋からスエズ、インドから雲南連邦と華南共和国を経由しての輸送?うん、財務省が書類とトンプソンかガーランド持って国務省に突撃しかねんな。
口では『分かりました』とだけ答えた国務省幹部だが、自分がこの仕事に奉職し始めてから(口先は兎も角)相変わらず自国の事しか考えていない中華民国に対して、そろそろ摩耗しかけている呆れの感情を抱いていた。
アメリカ合衆国と中華民国との関係は…『中華の大地に平和と民主主義を!』やら『地球最後のフロンティア』等の美辞麗句に彩られながら(目を$マークにしつつ)多数のアメリカ人が押し寄せた第一次世界大戦後暫くしてから始まっている。
露西亜が不凍港を求めて南下する様に、フロンティアを求めて爆走するのはアメリカと言う国の本能で有る為、欧州を実質的に自国の影響下に置いた後に無数の人口が飽和する中華地域に乗り込むのは(史実で邪魔になった日本も居ない為)極めて当然の事であったが…某漫画商人ギルドの人曰く『あんな貧乏人が多数を占める地域』と言い切ってしまうような…治安も民度も最低レベルで購買力もかなり低い数え役満な…場所に進出したのは、アメリカ合衆国史上最大の失策と後世何度も言われる事になる。
詳細は長くなるので割愛するが、金も教養も無い人間の海に飲み込まれつつも(犠牲を払いながら)撤収に成功したアメリカは、『今後中華民国に対しては一切期待しない』として今までの『フロンティア』への熱意を氷水の様に冷やし切り、適当に(自国から離れない程度の)小金を与える程度の扱いへと格下げされていた。
そんな中での、今回の『連合国への報連相無しの対日宣戦布告』である。政財官軍全てが『余計な事をやりやがって…』との感情を抱いたのは言うまでも無い。特に自軍の戦略に対して要らぬ変更を強要された軍の怒りは相当な物だった。(中華民国に取って見れば、日本の兵器や資産、技術者等を強奪して国力を増強するのとアメリカに恩を売って自国の価値を再確認させて更なる援助を得ようとしただけだが)
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冷遇一直線の中華民国は兎も角として、イギリス連邦への支援に関してはさらなる航空機(ヘルキャットやコルセア)の供与、新型航空機等の共同開発その他諸々をさらに促進すると言う事でかなりの短時間にて全会一致で決められた。ソ連に関しては不仲だったり機材や戦闘用語が違い過ぎて共同戦線が張れず、フランスは本土に引き籠り状態の為、アメリカにとって(連合国内で)信頼、信用出来て有力な戦力を出せて共に戦えるのがイギリスしか事実上存在しない為に、こちらへの支援は絶対に手を抜く事は出来なかった。
そして外交関係の話題は終了し、今度は軍事面での話に移行したが…こちらでも色々と面倒な波乱が発生した。
「…海軍といたしましては、やはり航空戦力が乏しい中での進撃には反対であります。損傷艦艇のみならず新造艦にも対空火力の強化を行っていますが、やはりそれだけでは『ウェーク島沖海戦』での悲劇を再現するだけであると思われます。現状全力で戦時建造空母を建造しておりまので、やはり空母が多数戦力化された後に反撃を開始するべきだと…」
「それでは遅すぎる!陸軍航空隊といたしましては、海軍の意見には反対であります!恐らく敵国も戦時急造空母を多数建造していると思われます。
彼らの艦艇構成や機体性能を鑑みて、『航空主兵主義』をドクトリンの根本に据えていると思われますので、『大艦巨砲主義』であった我が国よりもニホンの方が空母量産速度は速い…そう考えるのが妥当と考えるべきかと。つまり、時間をかければかける程相手に有利にさせてしまうと考える次第であります!」
これまで『全戦無敗』の記録を伸ばし続けていた誉れ高き歴史に敗北(正確には惜敗だが)の傷を着けてしまい、少し居心地の悪いアメリカ海軍最高司令官代理の『チェスター・ニミッツ』の言葉を遮って、開戦初頭に多数の重爆撃機を裸で突撃させて戦果ゼロな上、続けざまにフィリピン駐留の全航空部隊も撃滅されてこちらは面子もプライドもズタズタなアメリカ陸軍航空隊爆撃機群司令長官の『カーチス・ルメイ』が放った言葉に対し…会議に参加していた人間は『此奴今度は何をやろうと言うのだ』との感想を抱いていた。
…本来の海軍最高司令官は『アーネスト・ジョゼフ・キング』であり、彼がこの会議に出て来る予定だったのだが、ウェーク島沖海戦でのアメリカ艦隊の損害にブチ切れで大暴れして、その後も(日潜水艦からの甚大な被害量や政治家からの嫌味等々)様々な精神的ストレスが圧し掛かり続けていたのが身体に良くなかった様で、会議の1週間程前に唐突に倒れてしまい、今も意識が復活して居ない為に本土に一旦戻ってきていたニミッツが代理で出て来ている。
(尚キングはその後脳出血にて意識を取り戻せないまま死去され、国葬された。ある意味意識を取り戻した後死ぬまで寝たきりに加え誰も見舞いに来ない入院生活を送った史実よりマシな最期だったかもしれない。後任は代理だったニミッツ)
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海軍の事は兎も角として、ルメイは必死に熱弁を振るう。…予算拡大のお蔭で新型爆撃機であるB-29の性能、稼働率は十二分以上に向上している事。護衛戦闘機としてP-38、P-47、P-51(頑張って開発促進した史実D型)の量産や実戦配備も進んできている事。転科訓練もハイペースに進んでおり、この『超空の要塞』ならば確実に敵国本土への大規模爆撃が成功する可能性が高いと算出されている事…
アメリカ軍内でも異端とも言える熱心な戦略爆撃信者であり、前の大戦では我も強くて軍の和を乱す事も有ったが、彼の指揮によってドイツの継戦能力を根こそぎ奪い取り、アメリカンボーイズへの損害をかなり低く抑える事に成功した偉業の存在が、彼を未だに爆撃機司令官の地位に就かせ、彼の言葉に現実味を帯びさせていた。(ただドイツの国力を根こそぎ奪ったせいでアニマル
シリーズ戦車やジェット機、V1,V2等の設計図等の戦争の果実を史実より遥かに少ない量しか入手できず、日本軍との戦闘で後れを取っているのは…少しばかり皮肉である)
「…良いだろう。ルメイ君。各軍と協議した上で作戦案を練ると良い。但し、これに失敗したら君は更迭されるだろう。…必ず成功させて見せてくれ」
「はっ。全力を尽くします!」
大した準備期間無しに不正確な情報を元に敵地に突っ込まされた経緯の為に、東南アジア陥落やウェーク島での敗戦にも関わらず更迭や降格、査問会議等の大規模処分は『指揮に影響や混乱を与える』…と言う名目で下されては居なかったが(キングが死に、マッカーサーが捕虜になった事も有る)今ではかなりの情報を入手出来た事も有り、『次回の戦果無しの大規模な敗戦』は許されない状況であった。いくらルーズヴェルト大統領が庇おうとしても、流石にそう何度も如何にか出来る程万能だったり、強硬策を取れはしないのだ。大統領と言う物は…
多数の軍高官が現在の戦力配備状況やニホン軍の情報の報告を行っている最中、『フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト』は一人…報告をしっかりと脳内に放り込みながら…物思いに浸っていた。
…ドイツに引き続き、ニホンにも戦略無差別爆撃を実行する、か…。例えこの戦争に勝ったとしても、負けたとしても、私は確実に地獄行きだろうな…
…だがことこうなって仕舞った以上、もはや生半可な状態での安易な和解や講和を選択する事は…今のアメリカ合衆国には…到底取れる事は無い。行き着く所まで行かなければ戦争終結は不可能である。恐らくニホンに関しても同様であろう。
…私は『アメリカ合衆国大統領』だ。例え後世に『悪魔』や『死神』、『戦争狂』等の名を歴史に残す事になったとしても、アメリカ国民の為にこの身全てを捧げる覚悟は既に決めている。『地獄』程度、恐れるには足りないな。
809 :641,642:2015/04/14(火) 15:27:54
この時点では、後世にどのような評価がなされるのかは全く分からなかったが、敵国である日本人であっても『愛国者』で有る事は認めざる負えない…残り20日程で齢64歳になる…この壮年の男性が誰にも悟られる事無く一人覚悟を決めなおしている時、この戦争にて、中盤以降のアメリカ軍を支え続ける事になる新兵器の開発状況の報告が始まった…
この会議の後より、既にアイドリングから駆動状態だったアメリカの戦争態勢にさらにニトログリセリンが叩き込まれ…同じく全力での戦争態勢に移行完了した日本と…太平洋の各海域で…世界を何度も茫然とさせる規模の…壮絶な大海戦と無数の沈没艦を生じさせ続ける事になる…。
…因みに余談ではあるが、この第三次世界大戦にて参戦国中もっとも冷静に戦争を行っていたとずっと言われ続けていたアメリカ合衆国であったが…終戦から60年近く経過してから(偶然にも日本と同時期に)公表された戦争中の新兵器開発状況にて、終末期型レシプロ軍用機である『F8F ベアキャット』『F7F タイガーキャット』『A-1 スカイレイダー』やアメリカ軍初のジェット戦闘機『P-80 シューティングスター』、新型ソナーやレーダーに誘導爆弾、対潜ロケットランチャー等々…堅実だったり戦争中に実戦投入された兵器に混じって、『近接信管付ロケット満載の防空ロケット火力艦』やら『爆撃機搭載型護衛戦闘機』『櫛形エンジン搭載の高速戦闘機』等の『オイちょっと落ち着け』と言いたくなる様な面しrゲフンゲフン…トンでも兵器が構想、予算請求されかけていたり、果てには『爆撃機改造の対空掃射機』だの『氷山空母』『氷山戦艦』に『既存戦艦の航空母艦化乃至航空戦艦化』と言う…発案者はアラスカ送りになりかねない…ネタに思えてしまう物の構想も混ざっていた事から、アメリカも航空戦力の圧倒的劣勢と言う戦況に加え、『自国と対等に戦える強大な国家』と言う史上初の存在に意外と動揺し、思考が混乱していた事が世間一般(特にミリオタ)に知られ…後にこのトンデモ兵器は某戦略ゲームに実装されたり、映画に登場する未来兵器の元ネタになったりと、あらゆるフィクション作品に末永く引用される事となる…。
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810 :641,642:2015/04/14(火) 15:36:00
投稿完了に御座いまする―。
…宣言しますが最後ので出て来たオモシロ兵器群は『絶対出ません』(キッパリ)
日本が対艦攻撃力不足で大混乱状態になっている様に、アメリカもアメリカで
『ミートボール・ショック』(今命名)での衝撃で米国面が出て来た事を表したかった
のです。…でも史実アメリカも色々作ってるんですよねぇ…
最終更新:2016年10月10日 21:33