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大陸日本西暦1942年(転移先西暦1946年) 1月10日
日本帝国 東京
アメリカ合衆国の首都で、ルメイの爆撃演説や新兵器の提案、開発状況等がホワイトハウス内のある会議室で行われている頃、日本でも国政への影響力、発言力が極めて大きい影の支配者層と言うべき者達による会合が行われていた。
…もっとも、もし
アメリカの指導者、支配者層がこの会合がどのような場所で行われているのかを知ったら、恐らく『ニホン人の考える事は分からん』の様な感想を抱く人間がきっと多いと思われる。何故なら、彼らが居る場所は(消毒済みだが)何処にでもありそうな普通の食事処であり、試作段階にある各種調味料やインスタント食品を食べながらの会議なのだから…
「…さて、それでは改めて会合を始めましょうか」
試作品のインスタントラーメンやらカレー粉等の試食品評会が自然に一段落した後、真面目な会議の司会を務める事になったのは何時も通りに嶋田繁太郎。
年齢等での先立もこの会合内に一応居るが、出席者は全員転生者であり、又二度の転生で積み上げた経験と実績、そしてその経験によって自然と醸し出される強烈なカリスマが自然と嶋田を
夢幻会の司会役へと押し遣っていた。
(因みにこの試食会は転移後の混乱からずっと血反吐吐きつつ第一線で踏ん張ってきた者達への慰労の意味も有り、生真面目な嶋田も嫌な顔一つせずに寧ろ協力していた)
「外交部からですが、タイ王国、並びに朝鮮公国はやはり中立を堅持するとの事です。但し『連合国との講和等の仲介に関しては労を惜しむ事は無い』…とも言っていましたが」
外務省からの第一の報告に会合出席者からは『…まあ、そうなるな』『寧ろ参戦するとか言われたらこっちが困る』『東南アジア向けの糧食や衣類等の輸入は出来るかな?』『仮に出来ても余り多くは要請出来んだろうな…』『タイと言えばニューh』『この時代にそんなのは存在しない』…等々、元々予想出来ていた事案だけに特に大きなざわめき等は起きなかった。寧ろ講和仲介に関する言質を引き出せただけでも良かったと考える人間が殆どだった。
日本が転移して僅か一年で開幕したこの戦争。しかも『エイプリールフールの惨劇』と呼ばれたハワイ、マニラ、ウラジオストック三か所の爆発事件の首謀者の濡れ衣を着せられた国家に、外交で最も必要とされる深い信用、信頼関係を築けるのは神であっても不可能である。現段階では、今後の戦争や東南アジアへの態度等の行動で『信用できる国家』で有る事を証明して行かなければならない。その事は、まあ開戦前から大体予想できた事だ。
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「…あとは、黄海海戦後からの国民党政府からの『民間人虐殺』だの『侵略的行為』だの何だのの事実無根の罵詈雑言が何時も通り有ったのと、多数の中華系組織が接触してきました。組織の要求を要約すると『貴様に我らを支援する権利を与えるアル!!そして中華統一後同盟を組んで欧米に対抗し(以下略)アル!対価はウチのドデカい市場アル!!』との事だったので速攻で叩き出しました」
その後上で出た二国に加えスウェーデンやスイス等での中立国にて連合国と接触出来た事や、フィリピン沖海戦、ウェーク島沖海戦で米英ソ艦艇が多数沈んだ事を知って反米(中南米諸国)反英(スペイン、インド、中東等)反ソ(トルコフィンランド等)感情を持つ国家、国民が思いのほか歓喜して日本に友好的になっている事等細々とした報告の最後の方で付け加えられた、中華民国や中華系組織の言動に対しては…
『世界が変わっても何時も通り過ぎる中華に全俺が泣いた。厚顔無恥過ぎテラワロス』
『支援をふんだくるだけふんだくって被害者面する気満々なんだろうなぁ。きっと自己正当化用の犯罪の証拠捏造して』
『フィリピン沖、ウェーク島沖、黄海海戦と東南アジアへの支援を見て豹変か。…日本が強烈な反中華主義であるのは知らないのかあいつら』
『中華地域の価値を高く見積過ぎだろJK。例え大鳳型空母とUS級戦艦30隻と引き換えでも絶対引き受けんぞ』
『チャイナドレスと言う至高の一品を生み出した地域がここまで落ちるとはな…哀れな物だ』
…等々、各員の転生前の中国と全く変わらない(寧ろ悪化した?)言動にもはやネタにする気力すら尽き果て、『ソ連領有地域は兎も角大陸は…やるとしても航空爆撃程度で…放置安定』との事でアッサリ片づけられ、次の話題へと移って行った。
因みに上にて話題に出た『黄海海戦』に関してだが、簡単に纏めると日本海軍のウェーク島沖海戦参戦艦艇がトラックや本土等の修理施設に入るか否かと言う時を狙って中華民国が宣戦布告し、事前に海上で待機していた輸送船団と駆逐艦を…九州地方の博多辺りが目標だったと推測された…日本本土へ突撃させたのを、訓練中の事故で本土待機になっていた最上型軽巡洋艦(長良型防巡の後継艦。雷撃強化改装後に事故った)や白露型駆逐艦(優秀過ぎる島風型の登場で二線級に追いやられた)、そして急遽掻き集めた(新米や教官すら動員した)多数のパイロットが操る連山や烈風、流星、牙龍ら最新鋭の日本軍機の群れによる迎撃にて中華民国の輸送艦、駆逐艦の殆どを殲滅した海戦である。
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この海戦での日本側の損害は…マグレ当たりで数機が墜落、不時着水したのと、一方的な戦闘で調子に乗って敵艦に近づき過ぎた白露型駆逐艦『夕立』『五月雨』が一発貰って小破した程度である。多数の航空機に無数の酸素魚雷の群れを多数の輸送艦を抱えた低連度の駆逐艦程度(しかも平甲板型)で処理、対応するのは流石に無理過ぎた。まあぶっちゃけると根本から戦力差が有りすぎて仮に日本側が手を抜いたとしてでも蹂躙にしかならないのだが。
その後に『船団には平和を求める民間人ガー』『日帝の侵略ガー』『連合の支援ガー』…と別世界と全く変わり映えのしない妄言を吐き続けて日本のみならず世界からも見捨てられたのは前回アメリカのホワイトハウスで語られたとおりである。まあ脳味噌が中世や近世辺りで停止している(平均的近代国家から見て)山賊集団レベルの国家に多くを求める事自体が色々とダメなのだろうが。
「東南アジア進駐部隊からの報告によれば、フィリピン、並びにインドシナ…独立時には改称しますが…方面に関しては、事前想定通りに支援を行えば問題は無いとの事です。やはり自治政府が存在していたのが大きいようです。まだ彼らに不足する物もそれなりに有りますが、そこまで苦にする程では無いかと」
「…代わりにインドネシアとマレーに事前想定を遥かに上回る膨大な量の援助物資と結構な国力を注ぎ込む事になりましたけどね」
外交班に代わって東南アジアから直帰した陸軍士官の報告に暗い顔と声色で答えたのは『財政の魔王』『内務省の帝王』こと辻正信。転移前からの転生者官僚軍団による活躍によって…あのアメリカすら上回る…巨大な国力を保有しているとは言え、無数の軍艦や戦時標準船の建造に加えて東南アジアへの政治、軍事的支援の前に…まるで底なし沼に砂を投げ込むが如く…多量の各種物資や資金が消えていくと言う(戦時中とは言え)極めて不健全な状況の前に、『魔王』『帝王』と言えども流石に明るい顔では居られなかった。
無論、この浪費はこの国が生き残る為に絶対に必要である事は十分に理解している。だが『理屈』と『感情』は別物である。この世界でもMMJを創設してその首領となっているこの人(+MMJメンバー)は、早くこの戦争を終わらせて又教育振興や趣味のオタ系活動に復帰したがっていた。
「…えーと、その支援物資等を運ぶ輸送船団による補給はスケジュール通りに進んでいます。米内海軍中将の計画はやはり演習通り…いえ、それ以上に有効であったようで、船舶の被害は極めて低く抑えられています」
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『魔王 辻正信』が暗い顔なのに苦笑しながらも、輸送関係に携わる海上護衛総隊の一員から報告された事は、嶋田や辻達皆を安心させて表情を明るくさせ…そして昔米内を憂鬱世界出身者全員が警戒して色々やらかした事を思い出させ、その事を知る人間を苦笑いさせる事となった…
米内光政は転生者である。それも…憂鬱世界でも戦後憂鬱世界出身でも無く…平成日本の海上自衛隊で、対潜、船団護衛関係の職務や研究に従事していた人物だった。転生後の幼少期は史実と変わらず父親の落選、事業失敗からの困窮苦学生活を送ったが、それに腐る事無く(新聞配達等をしながら)進学、進級、昇進を積み重ねて今は…前世の知識を活かして…対潜、船団護衛関係の権威として存在している。性格にしても、温厚かつ物静か、生真面目な愛妻家で(尚奥さんは幼馴染)教養も人望も有ると言う色々と完璧な人物で…一部夢幻会員からは『リア充爆発しやがれチクショーメー!!!』と血涙を流される存在でもあった。(欠点を挙げるとしたら絵描きがヘタで転生前にT督だった事も有り少々オタの気が有る程度?)
現段階ではガトー級の静音性が低い事、また98式艦攻、艦爆改造してMODを搭載した哨戒機の威力も有って効率的に対潜戦闘を実行出来ているが、アメリカが新型潜水艦(パラオ級)を実戦配備に向けて訓練している事、合衆国艦隊司令長官に…潜水艦以外でも…どの世界の歴史でも名を残す英才である『チェスター・ニミッツ』が着任した事、夢幻会員からも聞き取りしたアメリカ兵の底力を知るに及び、米内中将は現状に甘んじる事無く『鉄壁』の輸送路を維持し、更に堅くする為に何時も本土や東南アジアの各地域に飛び回っていた。
…米内の事はさておき、お次は本命の海軍軍備補充状況である。
「海軍軍備についてですが、現在順調に『雲龍型航空母艦』の建造は進んでいます。また雲龍型を補完する予定の改装空母や『飛鳥型軽空母』の建造、配備も急ピッチにて進んでおります。『飛鳥型』に関しましては『飛鷹型軽空母』の建造経験のある造船所を優先して建造させていますので、今年度中には数隻訓練に移れると思われます」
「水上艦艇に関してはどうなっている?」
「『和製ボルチモア』こと愛宕型重巡洋艦の改良型である『伊吹型重巡洋艦』、並びに『九頭龍型重雷撃巡洋艦』『太刀風型重雷装駆逐艦』を量産しております。…『伊吹型』は先祖返りとも言える雷装強化の為に少々遅れていますが、既に多数の艦艇が就役を目前としております」
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「…既に分かりきった事だが、戦艦の砲撃を吸引する艦艇が少なすぎる…。『桜花』の実戦投入は今年になるが、敵戦艦への撃沈する為の攻撃は実質魚雷頼りだ。ウェーク島沖のペースで艦隊決戦の度に水上艦が蒸発し続けたら、終戦する頃には軽巡と空母、駆逐艦と潜水艦しか残りそうには無いな…」
呻く様な声で『ウェーク島沖海戦』後の会合で何度も言われている事を言ってしまう会員だが、結局妙案が浮かぶことも無く何時も通り『未来兵器と航空機の群れで押し潰す』の結論に達し、『さらなる操縦士、水兵の確保と誘導魚雷、対艦ミサイル等の開発促進、そして戦時量産艦艇の建造促進
を死力を尽くして行う』と何時も通りの結論となり、暫く雑談が行われた後、解散となった。
「……実際の所、何時頃使えそうになる?」
「『雲龍型』は43年初期頃。『飛鳥型』と『疾風』『近接信管』『菊花(フリッツX)』『桜花(対艦ミサイル)』は今年中。『富嶽』『弾道弾』は44年以降。『核兵器』に至っては速くて45年から46年だ。…これ以上は無理だ」
「…訓練期間も考えるともっと時間が必要になりますね。」
「ウェーク島沖でボロボロになった戦艦を敢えて公表したお蔭で、軍や官僚だけで無く民意の面での戦時体制が完了したのだけが僅かながらに救いですね」
「代わりに『雪風』や『酒匂』等一部例外を除いてあの海戦に参加した兵員の多くがPTSDの様な症状を発症している。…未来知識だけでは彼らを治療するには不足だ。後方に下げた彼らを能天気なマスゴミ共が『英雄』だの『非国民』だの馬鹿な煽りをやって兵員のトラウマが抉り出される様な事を防ぐ必要があるが…」
「内務省の方で諜報部と協力して注意、警告と処理を行っていきます。あの地獄から生還した英雄たちを自らの利益の為の道具にする様な者は、相応の報いを受けて頂きますよ」
「…はぁー……。本当に、どうしてこうなったんだろうな。俺たちは平和に美味い飯に燃えや萌えを楽しみたいだけだったのに…」
「この世界の神が更なる流血を望んだからかもしれませんね。まあ取り敢えず自分は死後神様にあったらそれなりの報復と賠償請求をして行きますね」
「…一体ナニする気だよ?」
「無論、コスプレです。こんな世界に連れて来た以上、この程度の賠償は必須ですよ?そうですね…『先ずはスタンダードに犬耳猫耳狐耳にそれぞれの尻尾は当然として後はケモナーや軍服巫女服制服萌えに艦〇れT督勢その他諸々の派閥も総動員して』」(超絶早口&以下省略)
「お前まだ諦めてなかったのかよ。俺はその事にビックリだよ」
空母機動部隊再建まで自軍勢力圏内にある陸軍航空隊の傘がかけられる所以外は動きたくても動けない(序に有力な巡洋艦が多数沈んだ)アメリカ軍に対し、打撃部隊が長期間使用不能の代わり機動部隊が無傷で存在している日本軍の方が今しばらくは戦争の主導権を得られると常識的に考えられ、僅かながらに心理的余裕が…開戦後初めて…生まれ始めた夢幻会。
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後顧の憂いを断ち切る為に…ある程度の艦艇を抑えに回した後…『ロイヤルネイビー最後の残滓』と一部から言われるイギリスインド洋艦隊を撃破する為に移動、交戦を開始した頃に、…アリューシャン列島とラバウルを拠点に…北海道東部の油田地帯、港湾施設とトラック諸島の泊地を狙って襲来したアメリカ軍大規模戦略爆撃機部隊との間で一大航空戦が断続的に繰り広げられるのだが…それは叉の機会の話となるだろう…
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9 :641,642:2015/04/19(日) 22:00:36
…はい。以上になります。そしてこっから先はどう進めるべきやら…
イギリスインド洋艦隊の話にでも移りますかね…
最終更新:2016年10月10日 21:39