987 :641,642:2015/05/31(日) 21:35:12
大英帝国 ロンドンシティ・オブ・ウェストミンスター ダウニング街10番地
大英帝国連邦の本国であるブリテン島の二月は寒い。平均気温を数度下回る℃の気温を記録した2月11日。聖バレンタインの誕生日であるこの日、この『老いた超大国』の政府首班であるウィンストン・チャーチルは、『大英帝国最後の至宝』たるインド防衛の任務に就く英国軍各部隊からの報告書、そして各軍の配備状況が記されている地図を一人で眺めていた。
…そうして暫くして、地図や報告書を眺め終わったチャーチルは、新しい葉巻に火をつけながら、大英帝国の首都、ロンドンの街並みを居室の窓から気分転換に見始めるも、頭の中の思考はそう簡単には転換する事は出来なかった。
大英帝国首脳陣が現在共有する一つのとても大きな悩み。それは…『戦力不足』、であった。
フィリピン沖にて英ソ連合艦隊が『消滅』し、ウェーク島沖では
アメリカの『アルダマ・フリート』が日本連合艦隊によって撃退された、との報告が入った時、英国軍の狂乱振りは目に余る物であった『と、言われてる』。実際はただのデマでしか無く、確かに数日の間誤報では無いか入念に調査をしていたが、真実と分かった瞬間に即座に情報封鎖やインド洋艦隊への増援と各艦隊の再編成を開始する等、切り替えの早さは『アメリカの至宝』を戦争開始直後の初っ端に撃沈され、茫然自失者すら出たアメリカ軍よりも格段に速かった。
大英帝国海軍艦艇
(一線級艦艇限定。残存している護衛空母や護衛駆逐艦、旧式巡洋艦等はシーレーン防衛にてんてこ舞い状態)
戦艦
ライオン級『ライオン』『テメレーア』『サンダラー』『コンカラー』(40,6㎝三連装砲三基29ノット弱)
ヴァンガード級『ヴァンガード』『ヴェンジャンス』
キングジョージ5世級『キングジョージ5世』『デューク・オブ・ヨーク』
航空母艦
アークロイヤル級『アークロイヤル』
イラストリアス級『インプラカブル』『インディファデガブル』
オーディシャス級『オーディシャス』『イリジスティブル』
重巡洋艦
ノーフォーク級『ノーフォーク』『ドーセットシャー』
ヨーク級『ヨーク』『エクセター』
サリー級『サリー』『ノーサンバーランド』
(史実利根型重巡をイギリス風かつ経済的にした様な艦艇。先の大戦だと、船団護衛で搭載した水上機にて独伊潜水艦を制圧、撃退したり、遭遇した枢軸国通商破壊艦艇を撃沈破させたりと中々の活躍を見せている)
軽巡洋艦
リアンダー級『リアンダー』『ネプチューン』『エイジャクス』『オライオン』『アキリーズ』
スウィフトシュア級『スウィフトシュア』『マイノーター』『シュパーブ』『ホーク』『ブレイク』
(一言で形容すれば『雷撃能力を低く抑えた代わりに防空火力を強化したイギリス風阿賀野型軽巡』。最古参級重巡辺りなら状況と立ち回り次第で優位に立てるかも)
ベレロフォン級『ベレロフォン』『ディフェンス』『タイガー』
(通称『イギリス最強の防空巡洋艦』。純イギリス製だけでなく、アメリカ火器のライセンス物も含まれているが、取り敢えず弾幕の厚さはアメリカ人もそこそこ満足する一品。ポンポン砲?全部売ったよ、価格50倍にして中華に)
駆逐艦
バトル級(後期型)
ウェポン級
デアリング級
988 :641,642:2015/05/31(日) 21:38:51
『何故この戦力をフィリピン沖海戦時に派遣しなかった』『何処が戦力不足だ』と言われかねない大勢力ではあるが、前者に関して言えば、インドやビルマ等の植民地にて無視しようが無い程の大規模デモ(英国政府発表)や暴動(英国政府発表)が発生しており、治安維持(実弾仕様)に手間取られた為。後者に関しては、正確に言えば『艦載機の戦闘力』が不足していると言う意味である。
戦艦戦力では確かにロイヤルネイビーは絶対的にインペリアルネイビーを圧倒しているのは自明の理であるが…何せIJNには『現時点では』戦艦自体が一隻も運用出来る状態では無い…、空母艦載機戦力ではその立場は鏡を見る様に完全に逆転している。当然英国海軍も(開戦する少し前から)艦載機の更新も急速に進めていたが、ずっと大艦巨砲主義の下での艦艇建造、運用思考に染まっていた事が祟って、長年航空主兵主義一本槍での艦隊編成に邁進していた日本海軍に相対した場合、『マトモに洋上での空母機動艦隊同士での海上航空戦となったら自軍の方が一方的に消耗するだけである』…との認識を英国海軍は強く抱いていた。日本艦隊の懐へ潜り込めれば確実に多大な戦果を挙げられるが、その『潜り込む』
前に敵機動部隊に捕捉されたらどうなるかは、先の海戦の結果から見ても、容易に想像出来た。
かと言って、もうインド洋からは一歩も引く事は許されない。東南アジアだけなら何とか(情報操作等で)損切りと言う事で誤魔化せるが、有色人種の国家が作り上げた艦隊がインド洋を席巻するのみならず、仮に『インド上陸』等と言う事態が発生したら、英国が『大英帝国』足らしめているインドは確実に英国の手から零れ落ち、そして永遠に英国の下へ戻る事は有り得ない事で有る事位、インドへ現地入りした英国人なら容易に想像が付く事だった。
その為に『自艦隊への損害をなるべく(誤魔化せる程度には)少なくする』『日本艦隊に対して(情報操作可能な範囲での)損害を与えた上でのインド洋からの撃退』と言うかなり無茶な要求が政府から現地に『要望』の形で伝えられていた。因みに誤魔化しや情報操作の対象は主にインド人に対してである。
勿論『戦力が足りない』と嘆くだけのイギリスでは無い。軍事的にはよっぽど上手くやらない限り撃破されかねない事から『正面突破が不可能ならば裏口から突進だ!』とばかりに、この世界でも相変わらず世界トップの諜報機関を用いた対日情報攪乱、東南アジア扇動等にも打って出たが…
「……総力戦だと言うのに、よっぽど余裕が有るのだな、ニホン人には」
ふと脳裏に過った事を口に出す。皮肉めいた口調で放たれたハズの言葉は、『今のイギリス』にとってはどうやっても唯の羨望の念の言葉にしか受け取りようが無い事実に、英国紳士のイメージに有るまじき事に、ついついため息を吐いてしまうチャーチルなのであった。
989 :641,642:2015/05/31(日) 21:42:45
日本軍が東南アジアを(傍目から見たら)怒涛の勢いで制圧した後、東南アジアから叩き出された連合国全てが、確実に日本が統治体制化の東南アジアにて何がしがの騒動を発生させ、年単位での進軍が停滞すると推定していた。東南アジア防衛の任務に従事していた連合国軍からの報告によれば、(元から悲惨な場所が多かった)各地域のインフラ事情が戦闘によってさらに破壊されており、物資の流通体制に多大なる支障が出る事が確実視されていた。
物資の流れが止まれば『解放』に沸く植民地人の不満は忽ちの内に激増し、『侵略者』への敵意に溢れ、『故郷を守る』為に戦いだすだろう。仮にそこまで行かなくても、植民地人への物資の手当や配給、対応で数年単位での長期間の足踏みを余儀なくされる。日本軍の足を引っ張るなら今しかない…
願望と言うか希望的観測が多々含まれているが、連合国側の常識で言えば『東南アジア統治を万全にしつつ全世界相手に総力戦』と言う控えめに言っても『アメリカ合衆国でもキツイ(出来ない訳では無い)』所業を可能にする国家がこの世に二つと存在するとは到底考えられなかった結果である。
だが…連合国にとって極めて残念な事に、転移して来た日本はその『所業を可能にする二つ目の国家』だった。
『マニラ宣言』と言われた、フィリピン独立政府との各種条約締結と大規模援助を皮切りに、統治下におかれた東南アジア全域への独立へ向けた支援が怒涛の如く開始してから漸く日本が『アメリカと最低でも対等の国力持ち』で有る事を連合国は理解した(させられた)が、この間の連合国(実質イギリス連邦単独)の武力的な謀略はものの見事に不発乃至小火程度に抑え込まれていた。
東南アジアに派遣されている日本軍兵士は全員現地語を(発音こそ狂ってるが)意思疎通に支障がない程度には話せている上に『進駐軍』『独立支援』等兎に角『日本軍はあくまで一時的に此処に居るだけ』と言う標記や言動での意思表示を繰り返し指し示している事、本土から…軍属扱いで…来た建設会社や工兵、(する事無くて暇してた)歩兵、又多数雇用した現地住民により猛スピードでのインフラの修復(実質新建)を行っている事、場所によっては不足物資を…輸送機だけで無く旧式爆撃機も流用…空輸して見たりしている事、日本軍兵士が軍規違反した時は(事実確認の上で)公開銃殺刑すら有り得る厳正な処罰を行っている事等…何というか、『戦争しに来たんだよな、俺達』『土木工事しかしてねーな…』と言った感想を現地日本軍が抱いてしまう様な行動をした為に現地住民からの日本への支持が熱狂、心酔レベルになってしまい、連合国からの謀略行為はただ単に連合国側の諜報員や協力者を大量に炙り出す結果に終始してしまったのであった。
(尚キッチリ現地日本人無意識プレゼンツの特製超巨大文化爆弾も各所に複数個投下済み。内容はお察しください)
990 :641,642:2015/05/31(日) 21:45:53
全方位が敵になった東南アジアの連合国側諜報機関が壊滅状態に追いやられつつも、各国が長年張り巡らせた根のお蔭で如何にか生存した諜報員が必死に掻き集めた情報を元でに予測すると、日本軍の次なる標的はインド洋…もっと突き詰めていえば『英国海軍主力艦艇』であった。
(色々と悲しくなるが)上記の戦力が叩かれたら、二度の大戦で疲弊の極みに到達しつつある今のイギリスには新戦力の補充の目途が全く立たない現実を前にすれば、自分達が反乱や採算に苦労して植民地地域を(現地住民を抑え付けて)統治していたのを尻目に、えげつない勢いで狡猾に『原住民に心服される統治体制』を整え続けながらも多数の一線級艦艇を建造している日本帝国が…決して表にこそ出さないが…心底羨ましかった。
そして、敵国にそのような感傷を抱いてしまう様な今の自国が心底情けなかった。
ロンドンの街並みを見て気分を転換するどころか余計に負の思考のスパイラルに飲み込まれつつ有るチャーチルの元に一本の電話が鳴り響く。
その電話の内容がどのような内容なのかは、受話器を取ったばかりのチャーチル首相には分からなかった。
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991 :641,642:2015/05/31(日) 21:49:32
はい、以上になりまする―。…また次の投稿は未定何ですよね次の内容如何しよう()
そしてトゥ!ヘァ!様。スレ建て乙、であります。リアルと体調優先でお願い致しますね。
最終更新:2016年10月10日 22:13