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4月10日
イギリス艦隊旗艦 戦艦 ライオン級戦艦一番艦 『ライオン』
「…理屈では分かっていても、やはり歯痒いです。友軍が必死に戦い、打崩されていくのを時が来るまで聞いている事しか出来ないのは…」
「だが既に賽は投げられた。大英帝国、そしてロイヤルネイビーの誇りをかけて、今までの…そして、これから支払うであろう犠牲に見合った戦果を挙げるしかないのだ」
『フィリピン沖海戦』において、日本艦隊の猛攻により全滅し、行方不明になった極東艦隊司令長官のジェームズ・フォウンズ・サマヴィルに代わってインド洋艦隊司令長官となったブルース・オースティン・フレーザーは、次々と飛び込んでくる空軍からの多大な被害、及び少ない偵察情報に悔しさを滲ませる若手指揮官に対し、更に士気を高めさせる意味を込めて、そんな言葉をかけていた。
悪天候に紛れ、又日本諜報員や反英組織の目を欺いて密やかに出撃に成功したイギリスインド洋艦隊。彼らは徹底的に無線封止を行って日本軍の目や耳から逃れつつ、友軍たるイギリス空軍からの…受信限定の為に一方的に…送られてくる情報を元に、動き出す為の『時』を待っていた。
勝算は…『一応』有った。少なくとも、事前策定の作戦が上手く行き、航空戦を凌ぎ切り、砲撃戦へと縺れ込ませれば敵艦隊に十二分の打撃を与えられる事は絵空事でも何でもない可能性が極めて高かった。
「哨戒機より報告です。『敵潜水艦は付近に探知出来ず』…です。奴らも太平洋に回す分だけで手一杯の様子ですね」
「『今は』、だろうがな。詳細に公開資料を精査したら、ニホンの国力は盟友たるあのアメリカ合衆国に匹敵すると言う。悔しいが、我が国の艦隊とニホンの戦力が『勝負になる』のは今この時しか無い…恐らくでは有るがな」
艦載機戦力で劣勢だったロイヤルネイビーが日本機動艦隊に対して『一応』止まりとは言え勝算を持つまでに至れた『切り札』の『一つ』。それは『磁気探査装置』である。
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元々航路護衛を重点的に考えて艦隊編成を行うイギリス海軍にとって、対潜水艦戦力の充実は基本的に至上命題とも言える重い課題であった。特に、先の大戦でドイツ海軍のU-ボートに自国の商船がボコスカ沈められた事、今戦争で日本潜水艦隊に…『英海軍より劣る』(by某英国人)が普通に優秀な…アメリカ海軍の駆逐艦や護衛空母、輸送艦が多数撃沈され続けているのを目の当たりにすれば、余計に重大かつ早急に対処するべき問題に変貌するのは極々自然な話である。
正面戦備にも多数の『ヒト、モノ、金』が割かれている中、比較的充実した国力リソース配分の中で開発に成功したこの『新兵器』は、ドイツ海軍の潜水艦隊部隊以上の強敵と認識された『伊号潜水艦』に対して、極めて大きな威力を発揮すると期待されていた。
ただ、まあ…『未来知識』と言うカンニングペーパー持ちの日本と比べたら(開発を加速させた影響も有って)流石に万時問題無しとまで持って行く事は出来なかった様で…
「…長官。二機が『磁気探知装置作動不良。コレヨリ通常哨戒ヲ行ウ』との事です」
「了解。近くの駆逐艦にも伝える様に」
制式採用され、試験である程度不具合が修正されているとは言え、時間的制約に押されながら開発加速したせいか…未来知識を存分に注入した日本製磁気探査装置と比較すれば…モロめの耐久力にやや甘い精度になって仕舞ったのは流石にどうしようも無かった。
だが、それでも今までと比べれば遥かに効率的に敵潜水艦探知が実行できるのは極めて大きく、対潜哨戒時の発見率(not 撃破率)が之までより改善傾向が見られたり、出撃時に自艦隊に張り付こうとした日潜水艦の探知に成功した事等から、例え作動不調が続発しても『使えないから装置を外そう』と言う意見は出る筈も無かった。『精度と耐久力をもっと高めろ』と言う声なら続発したが。
そして当然ながら、『切り札』は『磁気探査装置』だけでは無かった。
2000馬力級エンジン搭載雷撃機『フェアリー スピアフィッシュ』
英国海軍機動部隊『対烈風』最大の切り札『ホーカー シーフューリー』
シーフューリーのサポーター兼戦闘爆撃機『ファイアフライ』
確かにww1頃の全盛期と比べれば大英帝国の国威、国力は衰退の一途を辿ってはいるが、それでも英国は間違い無く『大帝国』なのである。アメリカ合衆国やソヴィエト連邦、そして転移してきた日本帝国が色々と狂っているだけで、大英帝国の持つ底力と不屈の反骨心は、いかなる超大国相手であっても決して劣る物では無い。上記三機種の新鋭艦載機が、その証拠である。
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…この三機種も、磁気探知装置と同じく耐久力に不安が有ったり、史実と比べて性能が少しばかり低下して居たり、増加試作型すらも含めて英国全土に存在する機体を一機残らず空母艦載機用に掻き集めた状態だったりするのが、大英帝国が『超大国』では無く『大帝国』止まりである悲哀なのだったりするのだろうが…
「…、!空軍より連絡です。『沿岸側航空基地多数破壊サレルモ決戦兵力ハ残存セリ。号令一下突撃準備ヨシ。敵艦隊ノ位置ハ…。』」
そんなロイヤルネイビーの内情を知ってか知らずか、RAF所属の『万能木製戦闘機』こと『モスキート』が…多数の同僚が犠牲になりつつも…命がけで掴み取り、友軍全部隊へ放った敵機動艦隊の位置の転電を受け取ったブルース・オースティン・フレーザーは、とうとう『その時』が来た…来てくれたと判断した。
「…友軍全部隊に伝達。『ワレ、作戦行動開始ス』。…全機発艦せよ」
先の海戦で一方的に自国艦艇を沈められた英国海軍の反撃の狼煙が挙げられた瞬間であった。
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ハイ、終了となります。
…さて、これから暫くは英国軍側の視点で行ってみようかと考えてはいますが、何時も通りどうなるかはサッパリ不明となります。書き貯め終了し次第書き込む無計画行き当りバッタリ型なので…
見せられるかな?『世界の海を支配した最強海軍』の…老兵の意地を、一度の勝利で調子に乗った異世界生まれののルーキー共に。
最終更新:2016年10月10日 22:25