524 :641,642:2015/07/28(火) 22:47:43

…何者かによる陰謀か、はたまた奇跡的確率で発生した自然現象によってか、日本帝国が勢力圏ごと異世界に丸々飛ばされ、その後日本が生き残る為に世界相手に大戦争を始めざる負えなくなった頃、日本が元々所属していた世界では…


西暦 1942年 4月3日

春の暖かい日差しと陽気に包まれ『東洋の海に浮かぶ魅惑の国』日本から送られた桜並木が美しい花弁を咲き散らしている此処アメリカ合衆国のワシントンD.C.。
どこぞのピンクの魔王が主人公のアニメの舞台の国の説明文の一節が浮かぶ情景であるこの河川敷には、例年なら居る筈の“人”や“物”が存在しなかった。


1910年に東京から桜が多数寄贈され、その後の米日友好関係の発展に伴い、1933年頃より自然発生し、今では…役所すらも巻き込んだ…ワシントンD.C.地域における春の名物行事となった『SAKURA  Festival』

その名物行事が、今年は開催される事は無かった。それどころか、今この桜並木に居る人間は、既に隠居しているような年頃のご老体や、ジュニアハイスクールに通っているような若い少年少女が殆どであり、休暇を取って家族サービスに精を出すお父さん方やその家族連れの様な存在は…例年と比べると…異様に少なかった。


さもありなん、『ステイツに並び立つ国力を誇り、世界の共同管理者である日本帝国が前触れも予告も無しに突如消滅』して、僅か一年と二日しか経過していないのである。『東アジアの警察官』『東洋最大の重石』等と俗称される日本が消えて全世界の政治、経済、軍事…それら全てが完全にパニック状態に陥ったのを、このステイツのお父さん方が(友人たちと共に)『現在も』必死に立て直しているのである。マトモに休暇を取れる余地や暇何ぞ存在しなかった。

そしてそのお父さん方以上に『世界の管理者』として歴史上空前絶後の激務に襲われている男たちが、アメリカ合衆国で一番有名な『白い家』に集まっていた。


ホワイトハウス 


「お久しぶりです、首相閣下。…やはりお疲れのようですね。欧州は現在安定している、と聞きましたが…」

「『一応』安定している…と言った所ですね。フランスとイタリアがアレな状況になった時は流石に危機感を覚えましたが、ヒトラー首相が辣腕を振るっている為に想像以上に素早く落ち着きつつある状況ですね」


現在、ホワイトハウスの一室でお互いの近況報告的な事を行っているのは、『アメリカ合衆国 第32代大統領 フランクリン・デラノ・ルーズベルト』と『大英帝国 第61代首相 ウィンストン・チャーチル』。両名とも『世界帝国の指導者』として、昨年度の『Extinction of Japan(日本消失)』によって発生した諸問題の対処に駆けずり回った人間である。まあ今も諸問題は完全には解決出来てはいないのだが。

525 :641,642:2015/07/28(火) 22:50:28
この会談の一年と二日前の1941年4月1日の明け方。日本帝国の本土と多数の諸島群、樺太や台湾にマーシャル等の委任統治領が紫の霧に小一時間包まれたかと思えば、一瞬でその霧が掻き消え、日本が消えた…との報告を受けた各国政府は…初めは真面目に取り合わなかった。当たり前である。
『大陸が消滅した』とか言う戯言を真に受ける人間は普通表社会には居ない。頭が固い事の多い役人方なら尚更でもあり、しかもこの報告がなされたのがエイプリルフール当日だったと言うのが余計に各国政府の初動が遅れる原因だったと後世に結論つけられている。


だが、日本が消滅してから半日近くも経てば、朝鮮半島に居た各国大使や東南アジア各自治政府、そして日本を目指していた客船、貨物船、軍艦などから一度も途絶える事無く送られる『日本消滅』の電文、各国に有る日本大使館からの『本土との通信途絶』が各国政府首脳の耳に飛び込み、このファンタジー染みた現象が現実で有ると認識させられた。本当に世界(特に各国の民衆)がこの非常事態を認識したのは、ニューヨークタイムス等のアメリカ報道機関が(採算度外視で)全世界に送り届けた『朝鮮半島の向かい側に海しか無い航空写真』を新聞で見てからだったが。


そしてその後の世界の反応だが…端的に言って『大パニック』の一言であった。

元々、夢幻会の指導や工作によって日本の国力は(恵まれた国土状況も有って)アメリカに匹敵する物を誇っており、その事は即ち膨大な貿易環境が列強各国と形成されているのと同義である。欧州大戦でフランスやイギリス等の既存列強が一時的に没落している状況では、アメリカからのドル箱と日本原産の『黄金色の大海』が世界経済の成長を牽引せざる負えなかった。そして欧州各国の体力が本格的に復活して来たか否かと言う時節にこの『日本消滅』である。
事実暴露前に一定度準備期間を挟んだとは言え、皮肉にも夢幻会の工作で経済的な恐慌、混乱に対処するノウハウが少なすぎた事も、この『大パニック』を押し留められなかった一因でもあった。


最悪の場合に予測された『列強国家破綻からの周辺地域を巻き込んだ無政府状態』こそ発生しなかったが、人口や工業力、国力的に奇襲的大規模不景気への対処能力が致命的に不足していたイタリア王国。欧州大戦で国土に多数の日本人や日本資本を受け入れており、その後も流れで日本からの投資を受け入れる事が多かった為に日本への依存度が比較的高かったフランス共和国が、この『消滅恐慌』で発生した大規模不景気の津波の直撃をモロに喰らい、自国領や東南アジア開発景気で何とか経済を持ち直したアメリカ合衆国や大英帝国にオランダ王国、首相の圧倒的カリスマによる指導力によって大規模公共投資で不死鳥の如く飛躍してのけたドイツ帝国が支援するまでの間、政情不安でイタリア、フランス国内が『少しばかり』荒れる事となって仕舞った。

…まあ歴史に残る世紀の大不況の中、『少しばかり』荒れる程度で抑え込めたと言うのは、やはり腐っても列強クラブの一員。そんじょそこらの国家とは格が違う、と言う事なのであろうか。

526 :641,642:2015/07/28(火) 22:53:10

「…経済的な問題は一定度対処出来ましたが、代わりに新たに浮かび上がった中華騒乱、日本人問題は…」

「中華騒乱は之まで通りに国際連盟軍による治安維持活動の継続と強化。『消失』により取り残された日本人は友好国たる我が国が保護する。無論、本人の希望を優先するが…」



…中華騒乱は如何でも出来るから良いとしても、やはり日本人の保護(と言う名の自国取り込)は急務だな…。散々日本に世話になってきた国家の面子的にもだが、『日本消失』時に海外に居た日本人の殆どは何かしらの優秀な能力を保持している者が多い。ステイツだけでなく、殆どの国家が日本人を取り込もうとして争奪戦を始めようとしている。早く対策を練らねば…



表向きはアメリカ合衆国の国力の増大の前に押され気味、取り残され気味だった大英帝国が、この『消失恐慌』を機として優秀な日本人を多数自国に吸収し、『パックス・ブリタニカをもう一度』とばかりに急速に国力や自勢力圏の再建に各方面への積極的外交攻勢を推進している裏で、日本消失による世界経済の救援の為に世界を走り回っていた為に日本人取り込みには遅れを取ったアメリカ合衆国。

大英帝国に移籍した日本人(転生者)が驚異的収穫量と品質を誇る新品種の小麦、大麦などを開発したと言うニュースを先日知ったルーズベルト大統領にとっては『何故日本が消失しなければならなかったのか…神よ、ステイツが一体何をしたと言うのですか…』等と己の主神や今は無き日本に愚痴りたい気分であった。



彼…ルーズベルト大統領は知らない。『消失』したと思われた日本は、実は自分達の世界と良く似た異世界に呼び出された事を。

彼は知らない。異世界に飛ばされた日本が、平行世界の自分達の同位体とも言える存在を相手取っての生存戦争をせざる負えない状況へとなっている事を。

彼は知らない。本能レベルで刻み込まれた脅威の一方である日本が突如消失した事で、朝鮮人の精神状態が想像を絶する規模で揺れ動いている事を。

彼は知らない。中華民族の手が届く地域に居る日本人に対して『日帝討滅』『故地奪回』をお題目に、実際は日本人対象の略奪、虐殺を目的に漢民族が大挙襲撃を仕掛けようとしている事を。


…この『演説は上手いが片足が不自由で杖を使わなければ歩けない大統領』が、己のブレーンたちと共に…胃腸と寿命を犠牲にして…あらゆる難題に奮闘し続けた結果、後世『世界の正義と平和の守護者』と世界史の教科書で称えられる事になる事は、この時のルーズベルトには全く分からない未来の話であった…

527 :641,642:2015/07/28(火) 23:01:13
…はい、『あの人は今』的な感じの日本焼失後の世界の一端を
描写にて今回は以上になりまするー。…次はちゃんとできる筈ですので(オイ)

実際の所、大陸日本がいきなり消えたら史実のブラックうんたらが児戯に思える程の恐慌が発生しそうですけど、まあ日本の経済成長や改革に引っ張られる形で各国の国力も強化されているでしょうし『各国財務大臣と国家首脳を墓地に送って世界平和を特殊召喚』すれば何とかしてくれるでしょう。武器史上なら中華が有りますし。

…日本と夢幻会の枷が無くなって、ある意味自暴自棄になっているであろう転移時に外国に居た転生者の暴走の方がよっぽど怖い気がしますがまあ何とかなるでしょう。

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最終更新:2016年10月10日 23:22