724 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:11:18
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「ヴィルヘルム・レポート」1



欧州 BFFの本土たるブリテン島とGAの本土たる北アメリカ大陸の中間、丁度、アイスランドを望むその海域にそれはあった。
私がそこに立ち寄ったのは、復興中という欧州についての記事を書くために現地に向かう途中だった。
北アメリカ大陸から大西洋を横断する大型輸送艦に搭乗した私は、ミドルベースをはじめとした護衛の下でイズモに入港した。

曰く、レヴァイアサン。

曰く、AFの究極形態。

曰く、不死の怪物。

曰く、もう一つの日企連本土。

戦後、大日本企業連合がフラッグシップAFにして、世界初の群体式海上機動要塞型AF『イズモ』はそのように評価されていた。
イズモそのものに関しての発表・公表は第二次リンクス戦争前に完了していたのだが、あくまでも海上要塞として喧伝されず、しかも発表時のサイズは全長が10km前後という小さいサイズでしかなかった。群体式であるということは公表されていなかったのでGWを超えるサイズであるということ以外は特に特筆すべきことはないかのように思われた。
私自身イズモのサイズがここまで大きくなるとは思いもよらなかった。

イズモの本来の姿は全ての予想を裏切るものだった。全長25km。全高はおよそ2km。正しく島が動いていた。
数百近いユニットをつなぎ合わせ、連結し、武装を積み込み、さらに内部に工廠や食料プラントまで詰め込んだAF。
自己増殖・自己修復・自己改造・自己メンテナンス・自己資源収集が可能なスタンドアローンユニット。
もはやAFの範疇を通り越した『何か』だった。聞けば、イズモは日企連得意の海上都市ユニットがベースで、極めて生産性が高く、平時には通常の海上都市、あるいは工廠や研究施設として働くことも念頭に置かれているそうだ。

一体、どこの誰がこんなものを想像しただろうか。
確かにAFという存在はパワーゲームの主体となり、補充可能な多数の凡人によって運用されるユニットである。
戦艦 核兵器 ネクストと経てきた戦略兵器の系譜の中で最も新しく、リスクが少ない兵器。それがAFだ。
しかし、戦艦が大艦巨砲主義の終焉と共に無用の長物となり、核兵器がそのデメリット故に慎重を期す必要に迫られ、AFは一定以上の腕前のネクストを凌駕できないという、戦略兵器の欠点というのは常に誕生していた。

だとするならば、このイズモはそれをほぼ克服したと言ってもいい。
戦略/戦術/戦局。この3つのすべての領域でイズモの力は発揮される。
その生産能力/攻撃力/輸送能力/拠点としての能力。
大きさゆえにネクストでは破壊しきれず、尚且つ圧倒的な修復能力に由来する高い不死性。
文字通り、戦場に出てくるだけですべてが変わるAFだ。ある意味でAFの最適解だろう。
AFを建造できる能力を持つ四大企業の内、GAやBFFが復興を進めながらもこのイズモのような群体式AFの研究を推進しているのも、至極当然だと私は考える。このイズモと相対すること自体が、企業さえも破滅へと追い込むことができると理解しているからだ。

725 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:12:32
現在イズモは北米大陸と欧州を中継する基地としての役割があるためなのか、居住区画/雑居区画を増やしていた。
これだけでも異常な特性がうかがえるのだが、イズモを構成するユニットのうち、外縁部数層は、現在民間人や他企業の人間向けの区画となっている。私が記者として入ることが許されるのはもう少し奥までなのだが、今はこの区画を見ていこう。

今のイズモ外縁部の構造は例えるならば嘗ての江戸やヴェネツィアだ。
各ユニットは橋やユニット間に海水を引き入れることで構築された水路によって人の行き来が可能となっており、車かあるいは小型船舶によって物の輸送は担われている。さらに驚くべきことに、イズモには川が流れている。
一定の区画より奥に進むと海水から精製した真水を流す“水源”施設があり、生活用水や川魚の養殖への利用まで行われている。
また、空気に乗って来るコジマ粒子をはじめとした汚染物質を取り除くための“木”が何本も生えている。
金属と特殊な樹脂で構成されたそれを”木”と呼ぶことは些か抵抗を覚えるが、少なくとも機能は同じだった。

なんというか、もはや驚き疲れてしまった。どこまで日企連はこの海上都市要塞に力を注いだのか。
いや、ネクストの時代が終わることを考えれば、この程度の余力はあっただろう。事実、ネクスト戦力開発は、伝え聞く限りではほぼ打ち止めとなったという。各企業(日企連 GA BFF テクノクラート)の次期標準機が完成する頃には、恐らくVシリーズがこの世界に満ちていることだろう。
このVシリーズについては、また折を見て個別に記事を書いてみるつもりだ。

同時にこのAFが第二次リンクス戦争時に戦略的な活躍を見せた理由というのも自ずと分かった気がする。
噂で聞くように、これはもう一つの日企連本土なのだ。欧州と北米大陸の間に横たわる大西洋という防壁の効力が著しく減じた。さらにイズモという移動工廠がBFFに接続されることで本土防空に必要な戦力が途切れずに供給された。
他にも食料という切っても切れない物資の供給がなされたことがBFFの本土防衛に役立ったと言える。

基本的に欧州とは農業には向かない地域が多い。フランスや地中海沿岸 東欧には例外と言え、農業プラントが整備されていた。
しかしそれ以外は、少なくとも旧企業連本土の欧州はコジマ汚染をはじめとした環境悪化によって人の居住可能な地域がかなり減っていた。
なまじ、本社機能をクレイドルへと移していた旧企業連は工廠設備が設置できる程度の対策しか打っておらず、その深刻さは予想以上だった。

そういう意味では、食料生産をアウトソーシング可能なイズモの存在はとてつもなく大きいだろう。
日企連の広報によれば、アイスランドに海上都市を連結して欧州の復興の足場とする方針だそうだ。
ここにはイズモという戦略兵器を置き続けることに対するBFFやGAからの懸念もあっての事だろう。
イズモに変わる生産海上都市「シャングリラ」の完成はあと3年ほどと聞く。しかし、完成は3年後でもすでに一部生産ラインは稼働している。
事実、北側の居住区画からはアイスランドに建造が進められている海上プラントの姿が見えており、イズモの商業区では
シャングリラ産の食品の販売も行われている。遠からず、欧州にはシャングリラ産の食料が回り始めるだろう。

欧州の復興が進めば、徐々にこうした海上プラントは陸地へと移設されるだろう。
それに関連するのだが、BFFはどうやら海上企業という面の他にも空中企業という面に傾倒し始めている。
新型AFのプロトタイプあるいは試験機が欧州本土に到着し、都市の空挺建設という大事業を完遂させたという記事が出たのだ。

また、それに対抗するようにGAはアフリカで都市を輸送する大型輸送AFの試験を開始しているらしい。
GAのフラッグシップAFといえばグレートウォールだったが、間違いなくイズモに触発されたのだろう。
都市ユニットを丸ごと輸送することによる支配領域拡大、そして経済循環というのは、この復興を目指すGAにとっても重要ということだ。

専らの噂であるが、テクノクラートに関してはまだあれこれと支配企業としての体制を構築するので手一杯らしい。
元より斜陽企業と言われていたテクノクラートが第二次リンクス戦争を機に下克上を果たしたのは一時期新聞やメディアを賑わせたが、やはり苦労が絶えないのだろう。未だに企業連残党が活発な地域の一つがテクノクラートの支配地域となった旧企業連の支配地域だ。
だが、それが安定化した時、新たなプレイヤーとしてテクノクラートは参戦してくるだろう。

726 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:13:37
最後に私がこのレポートで書くべきことは一つ。イズモ・ショックだ。
AFにおけるドレッドノートとも言われるイズモの特徴は、これまで何度か取り上げていたが、いずれにせよ各企業に衝撃をもたらした。

  • 拡張性の高さ
  • 高い生存性と不死性
  • 高い生産性とローテクノロジーによって得られる高い信頼性
  • 戦闘以外における活用能力の高さ

この世界において、コジマ汚染の排除と新たな勢力圏構築という事業を推し進める企業にとっては、一番最後の要素は重要だろう。
これまでAFというのは経済戦争の主体としか認識されていなかった。つまり、高い兵器に過ぎなかった。
しかし、日企連はそこに新たな価値を与えた。その大型さをそのまま民生技術として転用したのだ。
費用回収という観点から見れば、AFを兵器としてのみ運用することは非常に非効率的だったと指摘された。
イズモ・ショックの最も大きな意味はは単なる兵器という区分にとどまらず、企業戦略にまで衝撃を与えたことだ。

例えば、核兵器という戦略兵のが誕生して普及した時、国家の戦略や方針は丸ごと変わっただろうか?
答えは否である。精々が軍事的な防衛システムの構築と、反撃体制の更新程度であった。
だが、イズモ・ショックは違う。何が言いたいかといえば、それほどまでに大きな影響を与えたということだ。
その真の姿が公表されてから、全てが変わった。
こればかりは私の記述能力の限界を超えてしまう。

イズモについて書き連ねるのはここまでとしよう。
今日私が書き連ねたのは、記事にするためというよりは、自分の中の興奮を抑えるためと言った方が正しい。
情勢が目まぐるしく変化しているのは(無論多くが良い方向にであるが)、これまで溜まっていた鬱憤や膿を絞り出しているためだろう。
それが終わった時、世界は新時代を迎えることになるのだろう。

明後日からは欧州に向けて出港する。
それまで、イズモの各所を訪ねてみたい。

第一次リンクス戦争時に壊滅したレイレナード社の実質的な後継組織であった、そして、“三企業の告白”に前後して決起した反動勢力“ORCA旅団”の言葉を借りるならば、「人類に黄金の時代を」「この星に復活の時代を」である。
そう、これから人類は、この星は新しい時代を迎える。黄金の時代とはよく言ったものだ。
これほどまでに世界がプラスの方向へ動き始める時代はなかなかに珍しいと私は思う。
有史以来の黄金時代。願わくば、私たちの子孫に誇れる世界を。


ヴィルヘルム・フリーマン 海上要塞AF「イズモ」 商業区画 ホテル『瑞宝』において

727 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:14:36
JPAF-107『イズモ』

日企連のフラッグシップAF。重装甲の6角形の機動要塞。全長25km。全高1.6km。
日企連の、というよりも夢幻会がその総力を挙げ、僕の考えた最強のAF(ガチ)を目指して開発・建造がなされた。
単純なアームズフォートと異なり、複数の海上航行ユニットを連結することで構成されるAF。
単一のユニットがスタンダートであった中で生まれた世界初の群体式AFでもある。

特徴と言えるのが、群体式という形態に由来する拡張性と汎用性、そして驚異的な不死性である。
海上企業である大日本企業連合はメガフロートをはじめとする海上都市の建造技術に秀でており、
早くからその研究及び建造を積み重ねてきたこともあって、フラッグシップAFの形態として早くから決定していた。
しかし、単独での戦闘能力の追及にはやはり限界があり、過度な肥大化と複雑化は整備性やコストに大きく響きかねなかった。
またフラッグシップAFそのものが攻撃されなくとも専用の工廠やドックなどが叩かれれば、整備・補修が出来なくなり
まともに戦力とならなくなるという危険性もあった。他にも、原作におけるスピリット・オブ・マザーウィルのように、
ネクストの襲撃によって艦載機や武装が被害を受けて補修や補充が出来なくなれば、波状攻撃によって容易く撃破されると判断された。

そこで提案されたのが、単独のAFとしてではなく、量産型AFを複数つなぎ合わせて全体で一つのAFとする手法である。
こうすれば、攻撃を食らってもユニットごと交換すればすぐさま補充可能であるし、既存の海上都市をベースに設計/製造すればコストを抑え、尚且つローテクノロジーで効率よく生産できる。内部に生産工廠も設置すれば、艦載機や武装の補充も容易いという利点があった。
そして、この群体式の採用はダメコンの向上に大きく貢献し「絶対に沈まない無敵のAF」ではなく「簡単には沈まないAF」尚且つ「損傷してもすぐに復活するAF」として、海上企業たる大日本企業連合のフラッグシップAFに相応しい能力を得られると考えられた。

このAFの実現に先んじて、日企連は技術蓄積及び運用ノウハウを獲得するために海上航行武装都市「ラインアーク」及び量産型AFとして海上機動要塞「アマノハシタテ」を設計/建造した。同時に、構成ユニットの迅速な運搬を行うための
突撃輸送型AF「リュウグウノツカイ」を建造/運用した。これらのフィードバックを反映し、以て、日企連の保有する
「最強の盾(抑止力)」にして「最強の矛(戦略兵器)」としてイズモは完成した。

兵器の生産を行うための工廠も内部に存在する他にも、食料工場や水素燃料精製装置やバイオ燃料精製プラントの搭載で、これが単独で自給自足をしていくことも可能となっている。非常時にそなえた本社のバックアップとしての機能も含まれ、居住区画を内蔵したユニットを連結することで日企連関係者全員を避難させることも可能である。
また、このイズモの内部工廠は平時における生産ラインと研究施設さらには居住施設を兼ねており、これ自体が一種の航行可能な海上都市でもある。

728 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:16:46
このAFの武装はというと、複数のネクストを用いた奇襲を警戒し、対ネクストを重点に置いている。
主な兵装は大口径レールガンとマザーウィルの主砲を超える大口径砲。副兵装として数えるのも馬鹿らしいほどの数の対空レーザーキャノンとミサイルセル、近接機関砲、実弾大口径砲である。
複数のユニットを連結しているイズモは武装を柔軟に置き換えることが可能であり、搭載スペースと排水量さえクリアできればあらゆる兵装の搭載が可能である。そのため、イズモは武装を配置や種類を逐次交換可能で、襲撃を重ねても攻撃側が常に初見を強いられるという厄介な特性を持ち合わせている。

特筆すべきは新三菱が開発したレーザーキャノンを搭載したプルートオービットである。
このプルートオービットは旧アクアビットの建造した大型兵器ソルディオスの砲塔部分を利用した、いわば新三菱版のソルディオス・オービットである。アサルトアーマーの機能をオミットし、コジマ技術によらない自立飛行を実現した浮遊砲塔である。
QBも可能なこの浮遊砲塔は、オリジナルに比較してコジマ汚染を無秩序にばら撒くこともなく、日企連らしく環境への負荷が非常に小さくなっている。このプルートオービットは最低でも60基は搭載され、ネクストが接近してきた場合にはこれが迎撃に出る。
艦載機として搭載されるノーマルACやMT、無人のガードメカ、あるいはハイエンドノーマルやVシリーズと合わせることでとてつもない迎撃能力を有している。

弱点となりうるのがコアとなるAF『アマノウキフネ』を潰すことであるが、巨大な都市のどこかにあるアマノウキフネを探し出し破壊するには極めて長い時間を必要とするため、先にリンクスが根をあげる。そもそもネクストに全長25kmもの巨大海上都市をすべて破壊しつくすだけの火力を持たせることは非常に難しい。しかし、UnKnownは運がよかったとはいえ幾多の攻撃をかいくぐり、アマノウキフネを発見し、大破しつつも致命傷を与えた。これを初見でしてのけるのだから、UnKnownはイレギュラー。実質的にイレギュラーの抑止力となっているのがこのイズモというAFである。

建造数は2。
ただしこれはコアユニットとなるアマノウキフネの数であり、イズモは分裂と増殖を容易く繰り返すことができる。
また各地に散らばる海上都市や海上基地もイズモのユニットとして連結可能であることを考えれば、何処にいるかさえも
明確には規定できず、また建造数も正確にはカウントできない。まさに日企連そのものといったAFのショックは、後に「イズモ・ショック」として各企業を震撼させた。その影響については、ヴィルヘルム・フリーマン氏やフリードマン・レイ氏および岡部いさく氏の著書を参考されたし。

729 :弥次郎:2016/10/12(水) 23:17:54
以上となります。
AC世界の様子を一記者という視点から書いてみたくなったので、ちょっと書いてみました。
本編の合間合間に書いていきたいなぁ…

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最終更新:2016年10月17日 10:38