921 :名無しさん:2011/12/03(土) 00:38:46
「一体なんだ、こんな突然に」
戦争が終わり、しかし平穏な生活を営めた訳ではなかった。
なまじ名声を上げただけにその後も苦労して日本の、更には世界の舵取りをせざるをえなくなり数十年。
平穏な生活を営めるようになったのは本当にここ数年の事だった、そんな
夢幻会のかつての、いや影響自体は今でも彼らの持つものは絶大なものがあるが、とりあえず引退して第一線からは身を引いた重鎮達が集められていた。
現実に昼間からこれだけの人材が集まれたのも、彼らが引退したから為せた事でもある。
無論、年やその他から永遠にこの世界から去った者もいたが……。
「まあ、何も言わず皆さん、この雑誌を読んでください」
そう言って、辻が差し出したのは漫画雑誌だった。
「お、懐かしいなあ。週刊マ○ジンか」
「俺はジャ○プ派だな」
「サン○ーがいい」
「別にどれでもいいよ、面白ければ」
口々に言う面々だったが、辻はそれに全く動じる様子もなく、『~ページからの漫画を是非』と告げた。
その言葉に何かあったのかと少し不安になった一同はぺらぺらとページをめくる。
そこにあった漫画に、思わずニヤリとなりたくなる思いを抱いた者もいたのだが、
「「「「「ぶーーーーーーー!?」」」」」
読み進めている内に全員が一斉に吹き出した。
多少はタイムラグがあったが、吹き出した人間の様子に他の者も急ぎ読み進め、同様の様相を呈していた。
そこには……。
『つまり大西洋大津波とは、人類の数自体を削減する為に行われた核を用いて人工的に引き起こされたものだったんだよ!』
『な、なんだってー!!』
そんな某ミステリー漫画が掲載されていた。
そう、ここに集められたのは衝号作戦の真実を知る者のみだったのである。
「おい、どうするつもりだ」
さすがに渋い表情を浮かべた嶋田が辻に問いかけたが……。
「何も」
「何も?いいのか!?」
全員の視線が集まる中、辻は淡々と事情を説明した。
下手に騒げば、却って怪しまれる事になる。元々、この漫画は荒唐無稽な事にそれらしい理屈を付け加えて描かれる事で有名な漫画。つまり……。
「却って、皆嘘だと思ってくれる、と?」
「そういう事です」
では何故皆を集めたんだという問いかけが為されたが。
「不意打ちでこれを、他の人間の目がある所で読んだりしたら困りますので」
との言葉に納得した。
確かに、夢幻会の重鎮が漫画を読んで焦った素振りを見せれば、疑念をもたれる事必定だろう。
なお、この漫画に関しては大体想定どおりになった。
無論、それを大真面目に検証したりした人間がいたり、この漫画を真面目に「世界の真実!」と張った奴がいたのも確かだが……当り前の話だが、そうなる程に真っ当な人間や国の上層部は真実から遠ざかっていったのである。
この様を見た嶋田は後に。
『ひょっとして、この漫画って辻の奴が裏で糸引いてるんじゃなかろうな?』
との疑念を抱いたそうだが、真実を知る事はなかったのである。
いや、知ろうと思えば可能だっただろうが、下手に知ると厄介な事になりそうだったので放置したのだが。
真相は辻しか知らない。
最終更新:2012年01月05日 09:41