572 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 20:55:39
それでは投下します。
4―――砂鼠
月の明かりは細く、暗いモニター越しでもわかるぐらいに砂塵が舞い上がっているのが分かり、外が強風である事を悟らせる。
『各員、配置についたな?』
中隊長のバルク大尉の声が通信機から聞こえる。
ここは北アフリカと南アフリカの境目、ザフトと連合の哨戒域から僅かに離れた場所だ。
無論、最低限の航空偵察は行われているが、戦略的、及び戦術的に重要でない為に両軍は地上戦力を配置していない―――
『攻撃開始は十分後、一応その前に勧告は行われるが、恐らく応じないだろう。各員その積もりで臨戦態勢を維持しろ』
バルク大尉の声に自分と中隊員が了解と応える。
―――それに目を付けたのだろう。ジャンク屋ギルトの連中が活動拠点を作り、このアフリカで活動を開始した。北アフリカはともかく、我が国の友邦である南アフリカでは彼等の存在を認めず、違法だというのに。
「まったく、まるで盗賊だな」
ポツリと連中に対する印象が言葉となって零れた。
『全くもって同意します。軍曹』
小隊内で回線が繋がりっ放しだった為に聞こえたらしい。モーデルが独り言に応えた。
『奴らはただ戦場での残骸《スクラップ》を回収するだけの真面目な掃除屋ではなく、それを作る側でもあるそうですから』
『そこは〝あるそう〟というんじゃなくて、〝ある〟とハッキリいうべきだな。連中は実際そうしてる。戦闘で傷つき敗走した連合やザフトの部隊を狙って自分達の飯のタネに変えて行くんだ。ほんと軍曹やお前が同意するように盗賊としか言えん』
モーデルに続いてブリックが加わる。
『僕たちや南アフリカのMS隊はまだ狙われていないそうですけど、北アフリカや南アメリカでは結構派手にやってるって聞きますね、その話。当のジャンク屋達は言い掛かりだと知らぬ存ぜぬを言い張ってますが…』
ナウマンも話に加わる。
「酷いもんだ。…自分達が狙われなかったのは勝ち越す事が多かったためだな。それにザフトのMSよりも手強いからだろう」
『尤も遠巻きに見られていることは何度もありましたけどね』
『ああ、しつこく俺達の後をちょろちょろ追い掛けてくる事が度々あった』
『…その時、望遠でトラックに座るあいつらの顔を見ました。アレはどう見ても手を出せないお宝を前に、どうやって手に入れようか?って算段してる顔でしたよ』
ジャンク屋について思わず話し込む。若干気が抜けてるようにも思うが、もう少し続けてもいいだろう。
「傭兵もやってるって話もあるな」
『盗賊が傭兵に…良くある話ですな。平時は盗賊家業をし、戦《いくさ》となれば傭兵として金銭を稼ぐ。まあ、連中はこの戦時下でもこの二つを都合よく使い分けてるようですが』
『随分とまあ、古い話を。しかし、連中の無法ぶりを見る限り、戦後もそうやって都合よく職を使い分けてやっていきそうですな。軍曹』
「ああ」
モーデル、ブリックと続く言葉に頷く。
『盗賊、傭兵……じゃあ次は貴族様にでもなろうとするかも知れませんね』
『ナウマン、また唐突だな。モーデルの古い話に影響されたか? 確かに力を付けた盗賊が領主を追い出して、土地を収める貴族になり替わる事はあったそうだが…さすがに今の時代で―――』
「―――いや」
ナウマン、ブリックの会話にふと、荒唐無稽だが何か閃くものがあった。
もしも、もしもだ。このままジャンク屋ギルドが権限を盾に拡大を続けたら。もし我がユーラシアや大洋やその他の国々も奴らを認めていたら……政治的にも軍事的にも無視できない。それこそ一つの国家に匹敵する勢力になるのでは…? それはまさに盗賊や傭兵が貴族になるような話だろう。
『軍曹?……どうしました?』
モーデルの怪訝な声に首を横に振った。
「いや、ただ貴族を権力者と考えるなら、そう間違ってないな…と思っただけだ。特権は既に持ってるからな、あいつら」
『そういう見方もありますか。特権で守られ、好き放題してる点で言えば、貴族のようなものですね。ある意味では』
「ああ、ちょっと強引だけどね」
苦笑する。ふと過った荒唐無稽な考えを口に出さない事を誤魔化すように。
「さて、もう直ぐで時間だ。相手はそんな盗賊紛いな連中だが、MSを戦力に持ち、武装した拠点を構えている。油断はするな。もし油断して奴らに後れを取るようであれば良い笑い話だ。いや、笑い話にもならないな。恥にしかならない。だから気を引き締めて行け! いつものように、ザフトを相手する積りで掛かれ! いいな!」
『『『了解!』』』
573 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 20:56:51
まだ時間は少しあったが、話し込んで緩んだ気を引き締める為に皆に言うと、その意図を理解した部下達が強く頷き、返礼した。
力強い返事に僕も満足するように頷いた。
■
違法なジャンク屋どものアフリカでの拠点は三つあり、自分達の担当する砂漠の哨戒域の外れの他、紅海沿岸部に一つ。紅海洋上の無人島に一つ構えているらしい。
紅海沿岸にある拠点は陸と海から挟み込み、洋上にある無人島は海軍特殊部隊による潜入、対空兵器の無力化を図り、その後、なんと通常の空挺部隊と共にMS部隊も空挺降下を行って制圧を行うことになっている。
クルツの所属する中隊はその空挺降下を行うそうだ。個人的には非常に残念で、クルツが羨ましくある。そういった自分の技量を新しく試せる面白そうな作戦に参加出来ず、それを試せる同期の友人が。
…やや、不謹慎だとも思わなくはないが。
「…いけないな。目の前の事に集中しないと」
小さく通信機にも聞こえない声で呟く。
ともあれ、自分たちの中隊が担当する砂漠にあるジャンク屋の拠点は、MSという巨大兵器も運ぶためか、中規模の空港程度の広さがあり、どうやって集めたのか、周囲をザフトの陸上戦艦などの甲板や装甲で覆って、高く強固な外壁を築いている。
この拠点の出入り口となる場所は西と東の二つで、外壁にMSが二機並んで通れるほど隙間がある。
厄介なのは、このゲートというべき隙間の左右にこれまたザフトの陸上戦艦の砲台が備えられている事だ。尤も射角はあまり広くないらしいが、それを補うために南と北の外壁にはイーゲルシュテルンなどの小型砲台が無数に設置されており、さらに地雷原にもなっているとのことだ。
迂闊に近づけば、それらの餌食になるという訳だ。…まあ、MSの機動力を活かせば、接近はそう難しくはないのだろうが。
『…中隊に通達。予定通り今、武装解除及び降伏の勧告が行われたそうだ……が、これまた予想通り、〝砂鼠〟どもは拒否した』
バルク大尉から通信が入った。
『こちらも予定通り作戦行動に入る。砲台の爆発が合図だ。盗賊紛いのチンピラが相手だからといって油断するなよ。各員心して掛かれ! 状況開始!』
そうして大尉からの通信が切れてから一分もしない内にジャンク屋どもの拠点に爆発が起きた。西と東に設置されている大型砲台からだ。
予め侵入していた工作員によるものだ。いくらMSや戦車を揃え、武装が正規軍にも劣らないとっても所詮は素人。警備はザルだという事だ。
拒否する事が分かっていたから時限式の物を使ったらしいが、もし勧告を受け入れていたらどうする積もりだったのか?と、一瞬そんな考えが過るが、僕はその合図と同時に部下たちに命令を下していた。
「よし! 行くぞ! 予定通り地雷原の手前から攻撃を行い、砲台を潰す! 全機散開! 攻撃開始!」
南から我が隊は―――他の小隊はそれぞれ北、東、西からと囲むように―――拠点へ迫り、対地掃射にも使えるイーゲルシュテルン…75㎜機関砲の火線を集中させない為に散開を命じ、攻撃させる。
両腕に狙撃にも使える170㎜レールガンを構えさせる。
…意外というべきか、それとも当然というべきか? 既にこちらが見えている筈なのに敵から砲火は飛んでこない。
素人だからか、突然の爆発での混乱の所為か、どちらにしても好都合であることに変わりない。照準に収まった砲台に向かってトリガーを引く。
瞬間、雷光が奔り、落雷が起こった時に聞くような大気を裂く轟音が響く。
レールガンの先から迸る電光は夜の闇によく栄え、おどろおどろしい轟音は夜闇の為により恐ろしげに響いた。
電磁加速によって音速の十倍以上に加速された砲弾は、狙いを外すことなく標的に命中し、火花を咲かせる。
闇の中―――もっともカメラは緑色に視界を染める暗視モードだが―――で美しく咲くそれを見届ける間もなく、僕は次の目標に照準を定めてトリガーを引き…それを繰り返す。
三つ目の砲台を破壊した所で敵から反撃が来るが、その頃にはもう遅い。
『また砲台を一つ撃破!』
『こちらも同じく』
『軍曹、見えている砲台はもうあと僅かです!』
部下達からの報告が耳に入る。そう、攻撃しているのは自分だけではないのだ。自分と同じだけ砲台を破壊した彼等によって、ハリネズミのようだった敵拠点の武装は片手の指で数えられる程度となり、ジャンク屋達の火線は弾幕と呼べるほどのものを張る事が出来なくなっていた。
「よし! モーデル! ミサイルだ! ランチャーを撃て! それで残りの砲台を潰して敵拠点内に突撃する! 地雷原をジャンプしろ!」
『了解! ランチャーを撃ちます!』
「小隊、前へ! 地雷原ギリギリまで出るぞ!」
574 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 21:00:44
レールガンを地面に放って機体を前進させる。それにモーデル機以外が続く。
『ランチャー発射!』
後方から噴煙が伸びる。噴煙は八つあり、僅かに弧を描くように飛翔し、赤外線シーカーを働かせて目標へと向かう。
それを迎撃しようとイーゲルシュテルンが砲身を高速で迫るミサイルの方へ向け―――
「―――今だ! 各機ジャンプ! 突撃!」
砲火がミサイルへ釣られたのを一瞬見て、決断。スラスターを全力で噴かせる。
「…ッ」
急激にGが掛かるのを覚え、同時に視界が大きく流れる。上へ、前へ。
カメラを下に向けて流れる砂漠の大地を見て―――硬い外壁と、それに沿って並ぶ無数の倉庫や建物に囲まれた均された砂の大地を見た。
「!」
此方に気付いたMS…ジンらしき機体や砲座が、手にする銃を、砲身を向けてくるのを見るが……やはりその反応は鈍い。
「チッ」
思わず舌打ちし、スラスターの軸を動かして空中で回避機動。同時にレールガンの代わりに手にしたマシンガンで―――まずはMSに狙いを定めて―――射撃を行う。
攻撃に気を取られ過ぎためか、難なく命中。直後、砲台から火線が伸びるが回避行動を取っていたお陰で掠めることなく、それは遠く空中に消える。
そして、その砲台は自分に続いたナウマンに破壊された。
「ナウマン、ナイスカバーだ!」
スラスターで制動を掛けつつ着地し、周囲をクリアリングするとそうナウマンに告げた。
『いえ、軍曹ならあの程度問題なかったでしょう。撃墜数を差し上げる機会だったのに……余計なことをしました』
「何を言ってるんだ? 一人でできる事なんてたかが知れている。自分が上手く働けているというなら、それはお前達のお陰であって、つまり上げる戦果もお前達の物でもあるということだ」
『軍曹…』
「だからこれからもカバーを頼む。お前達がいるから僕は安心して戦え、背中を気にせずに要られるんだから」
『はいっ! お任せください軍曹!』
ナウマンが元気よく答える。
それに何となく嬉しくなるが、妙な事を気にするものだ?と内心での疑問は消えておらず、首を傾げたままだった。
ほどなく、ブリック、モーデルも外壁を越えて姿を見せ、内部の主だった敵や兵器を破壊していると、
『ブラウン…先を越されたな』
「曹長ご無事で!」
『ああ、こちらに損害はない。そっちも……大丈夫のようだな』
北を担当していたハウンズマン曹長の小隊も外壁を越えて空から姿を見せた。
「はい、こちらも損害はありません」
『うむ、だが東と西は少し手間取っているようだ。損害は無いそうだが、外壁の隙間…ゲートからの侵入を防ぐ為にMSや戦車などを集中的に投入しているそうだ。連中も外壁をあっさり越えられることを想定してなかったのもあるのだろうが……気を取られ過ぎだな』
分かっていた事だが、素人同然の動きを見せるジャンク屋に対して曹長が肩を竦める。
「では、自分達は西と東に分かれて、連中の背後を突くわけですね」
『ああ、作戦通りだ。先に俺達が中に入った場合はそうする事になっているからな。大尉もこちらの動きに気付いて無理をしないと跳ぶ前に連絡してきた。ブラウンにもそう伝えてほしい、ともな』
「なるほど、了解しました」
『よし、では我々は西の方へ行く』
「はい、自分達は東に向かいます」
応、頼んだぞ!と返事をして、曹長は自分の隊を引き連れて西のゲートの方へ向かう。
「聞いていたなお前達。自分達は東のゲートに向かうぞ!」
『『『了解』』』
自分の指示に応答が返る―――が、
「!? ナウマン後ろだ!」
『え? わっ!』
周囲に散らばる残骸の影から幾つかの噴煙が発射され、
「このっ!?」
その発射元にマシンガンを一発撃つ。ギャッ…と小さな悲鳴が聞こえた気がした。
『ナウマン、大丈夫か!?』
「だ、大丈夫です」
モーデルが慌てた声を出すが、とっさにシールドで防いだお陰でナウマン機は無傷だ。尤も―――
『あんなものでMSをどうにかできると思ったのか?』
モーデルが半ば吐き捨てるように言う。その視線―――機体のカメラは先ほどあった残骸の方へ向けられている。
「………」
575 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 21:01:54
それに自分は何も言わなかった。
先程、残骸の陰にあった…いや、居たのは携行型の対戦車ロケットを構えていた複数の人間達だ。男性か女性かは砂塵と夜の砂漠の寒さで身を守る為だろう、厚着をしていたので分からない。
なんで出て来たのか? そんな思いが過る。
モーデルの言うようにあんなものでMSをどうにかできる訳はないのに。それでも何とかできると思ったのか? 或いはやられた仲間へ報復心か、それとも不法とはいえ、自らの城《きょてん》と権利《じゆう》を侵そうとする者への抵抗心がそうさせたのか?
「…行くぞ、味方が援護を待っている」
MSという巨大な兵器で生身の人間を撃った不快感を振り払い、そう皆に告げた。
今さらであったし、初めてでもなかった。これまでも何度かあった事だ。MSを放棄しあくまでも抵抗しようとする生身の敵を、ザフト兵を撃ったことはあるのだ。
だから慣れはあった。感傷に長く浸ることもない。恐らくあと数時間もすれば気にしなくなるだろう。
それでも―――
「ゲートを抑え、MSや戦車など主だった兵器を破壊すれば、連中も抵抗は無意味だと理解するはずだ。とっととこの戦いを終わらせるぞ」
一秒でも早くこんな戦いを終わらせたいと思った。
盗賊紛いのチンピラでも…或いは、そんな正規軍でもない。戦場に出る覚悟もない奴らだからこそ、か。
そんな奴らに銃を向けたくないから、そう口にし、思ったのかも知れない。
■
東ゲートに展開する敵の排除を難しくなかった。
内部に侵入されたことは理解していたのだろうが、ゲート前方にいる我が中隊の仲間への対処に手を取られて気を回せなかったらしい。後背を突いた自分達に、そしてそれに呼応して猛攻を加えた前方からの攻撃にあっという間に瓦解した。
その後、MSや戦闘車両を排除し終えて、本格的な制圧の為に歩兵部隊がこの拠点へと突入。予想通り戦意を失ったジャンク屋達は、大した抵抗も見せずに投降した。
―――が、
「ん?」
何やら制圧を行ってる歩兵に両手を上げて降伏の意思を示しつつも、何かを訴えてるジャンク屋の男性がいる。
一瞬、我が国や南アフリカで認められていない権利を盾に抗議しているのかと思ったが、何故か困惑している我が軍の兵士達の様子に違うらしいことに気付く。
外部スピーカーにスイッチを入れる。
「どうした。何かあったか?」
一兵卒らしいその兵士に尋ねる。
兵士は、鋼鉄の巨人に近づかれて見詰められた事に僅かに怯んだ様子だったが、すぐに答えてくれた。
『は、それが…』
マイクが兵士の声を拾う。そして説明を受けて―――
「―――は?」
一瞬惚けて、
「分かった! お前達はそいつから詳しいことを聞き出せ! こっちから上に報告を上げる! それとそいつの言う問題の場所には絶対近づかないように他の歩兵隊に急ぎ伝達しろ! 万が一のことがあったら洒落にならない!」
『りょ、了解!』
怒鳴るように言った為か、兵士が少し戸惑いながらも答礼し、ジャンク屋の男性を拘束しつつ話を聞き出そうとする。
その間にバルク大尉へ回線を繋げる。
『ブラウン、どうした?』
「はい。問題が起こりました!」
『む』
「先程、歩兵部隊が拘束したジャンク屋なのですが―――」
そうして報告を行い、それを聞いたバルク大尉は一時拘束作業を中断。ノーマルスーツを着た自分達がそれの確認に向かった。
576 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 21:02:48
「曹長…」
「ああ、ジャンク屋の連中め、ほんとにやりやがったな」
それを見て、何とも言えない気持ちになる。
拠点の奥まった場所にある地下倉庫、そこにあるのは解体されたMSだった。とても見慣れた、我が隊も使っている機体……そうゴブリンだ。
撃破ないし行動不能になり、放棄した機体もあることは分かっていたが……あんな盗賊どもに好き勝手にいじられたと思うと、強く憤りを覚えるが、それよりも……
「反応炉を開けるなんて……大洋との契約や警告もあるけど、我が国も未知数すぎて中枢部の扱いは仕様書によるメンテだけに留めているのに」
なんて無謀な、と思わずつぶやく。
「ブラウン、周囲の放射線量は?」
「大丈夫です。どうやら日が経ってるお陰か、問題ないレベルに落ち着いてます。それに大洋の熱核反応炉は元々放射性物質が少ないという話ですし、余程の至近で浴びない限り人体に影響は出ない筈です」
「……その影響が出た人間がいるようだがな」
曹長が呆れたように言う。
そう、あのジャンク屋の男性が兵士に詰め寄っていたのは、その被爆者の、仲間の治療を求めての物だった。
何とも都合のいい話だ。散々無法を働き、武器を持って抵抗しておいて、捕まえるなら自分達にその治療の責任があるだろうと、人道やら道徳を説きながら訴えてきたのだ。
曹長が呆れるのも無理はない。
「とりあえず物は確認したし、汚染の心配もないようだし、問題無いと連絡を入れ―――ん? なんだ電波状態が妙に悪いな。地下か周辺の機材の所為か? 仕方ない。ブラウン外に出るぞ」
「了解です」
そうして問題はあったものの、違法ジャンク屋の摘発はこれといった損害もなく無事に終わった。
■
この〝砂鼠〟狩りによってアフリカにおける違法なジャンク屋の活動は一気に沈静化。
ただしジャンク屋ギルト本部は彼等の活動への関与を否定。しかし不法な行為と認めつつも戦場に遺棄された危険な兵器《ゴミ》を速やかに回収するという理念に沿ったものである、と一部擁護。逆に安易な武力行使に踏み切り、強引な取り締まりを行ったユーラシア連邦及び南アフリカ統一機構を一部有識者と共に非難。
このような事が繰り返されないように、またこれ以上有志あるジャンク屋たちを盗賊行為へと走らせないようにする為、条約の必要性を訴えて批准する事を改めて求めた。
つまりジャンク屋が違法な盗賊行為に奔るのは条約に反対するばかりで、認めない大洋、ユーラシア、南アフリカ、スカンジナビアなどの諸国にあると主張し、責任転嫁したのである。
当然、これに条約を批准しない各国は反発。ジャンク屋ギルトとの対立がますます深まる事となる。
それが後にどのような影響が及ぼすのか、予想しえた者は決して少なくない……特に大洋のある組織にとっては―――
577 :ゴブ推し:2016/10/05(水) 21:04:18
以上です。
今回は何かあまり中身のない話のように思います。もう少し色々と仕込めたように思えるのですが……どうも上手く行きませんでした。
武装のミサイルランチャーですが、これもレールガン同様に08小隊に出てきたものをイメージしてます。ただそれより少し弾数が多く最大八つのミサイルを同時に撃つ事が出来ます。
次回からは砂漠の虎との対決になります。時期としてはだいたい10月会談の前後の頃と考えてます。
最終更新:2016年10月17日 22:23