170 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:15:46
地上の王者とはなんであるか。
陸上での戦争が始まって以来、その問いかけは常に答えを追い求められてきた。
あるものは戦車であるというし、あるものは歩兵であると答える。地上を蹂躙する攻撃機と答える者もいるかもしれない。
その競争は常に追いつき追い越されの繰り返しだった。
しかし、ザフトのアフリカへと投入したジンおよびバクゥ ザウートといったMSは既存兵器の多くを駆逐することとなった。
無論、リニアガンダンクやミサイル車両が完全に無意味となったわけではない。しかしながらも、その装甲や機動力を
生かした戦闘は数の有利を持つ連合を一方的に押していくことができる程度には強かった。
そんな状況で指をくわえて静観するほど、大西洋連邦もユーラシア連邦も無能だったわけではない。
彼等とて危機感を抱いていたし、対MS戦闘メソッドやドクトリンの構築に力を注いでいた。
その努力は、時にコーディネーター達の予想さえも上回っていた。
『まだ復帰は出来ないのか?』
『スケイルモーターに異常がありますが、原因不明です……』
ザフト保有の陸上艦艇ピートリー級が擱座している。
エンジントラブルなのか、それ以外の理由なのか、推進機関のスケイルモーターはさっぱり動かなくなっていた。
かれこれ2時間近く経っても、原因は突き止められずにいた。
『参ったな……あと少しで防衛圏に入れるのに』
『隊長、やはりここは母艦を捨てるべきでは?』
『駄目だ。陸上艦艇はかなり貴重なんだ。例えピートリー級であろうともな……』
周辺の警戒を行うMS隊の隊長レオ・ウォーリーは部下の進言を切って捨てる。
『この地球での戦線では艦艇一つがかなり重要なんだぞ?何時でもホイホイと建造できるわけでも、整備できるわけでもない。
ともかく、これでようやく連戦続きの状態から解放されるんだ。もう少し付き合え』
事実、レオの率いるウォーリー隊はゲリラ戦を仕掛ける連合、というよりユーラシアの掃討のために駆けずり回っていたのだ。
漸く休みを取ることができる。コーディネーターは確かに肉体的にナチュラルに対して優勢であるが、かと言って休みが要らないわけではない。
レオはその事を地上に降下して以来身をもって理解していた。だから、小隊のメンバーが愚痴るのも仕方がないと思う。
(戦線は拡大する一方。だが、俺達は疲れてもそれを維持しなくてはいけない……)
レオはどことなく不安を覚えていた。
いけいけおせおせと勢力圏を広げていくザフトだが、比例するように自分達への負荷は増すばかり。
果たしてどこまで行けるのか、言葉にはしていないが不安だった。
171 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:17:07
ふと、レオが側面を映すモニターを見たとき、何かが動いた。
『っ!?光った!?』
その瞬間、バクゥ2機が一気に爆ぜた。
いや、爆ぜたというより消し飛んだと言った方が良い。
辛うじてコクピット直撃は回避されているようだが、それでも四肢を失うか背部の武装が誘爆し、巨大な火柱となる。
狙撃。しかも、とてつもない大口径砲による射撃だ。
『伏せろぉ!』
咄嗟にレオは叫ぶ。
実戦経験のあるパイロットばかりであったことが幸いし、次の弾丸が飛んでくる前にジンは残らず地面に伏せた。
代わりのように、ピートリー級のブリッジが砲撃により消し飛ぶ。冗談のような巨大な爆発が起こる。
『……ははは、隊長。母艦は放棄でいいですね!』
『冗談を言っている場合か!』
レオは部下を叱咤し、状況を確認する。
今の狙撃でバクゥは全滅。ザウートも消し飛んでいる。
合計3機が一瞬で撃破され、ピートリー級も攻撃を受けた。
そして、遠くから音が届く。数は、重なっているが4つ。
『音がようやく届いた。ということは10kmかそこらは狙撃可能か』
『しかし隊長、今の音、レセップス級の砲と同じくらいの音ですよ!しかも複数!』
『なるほどな……』
部下の報告と同時に、音響データが送信されてくる。
確かに音そのものは若干劣るが、レセップス級の大口径実弾砲にも匹敵する。
『ということは、だ。敵は俺達をつけていたか、網を張っていたってわけだ。
MSを狙い撃てる配置で、俺達をな』
『動けないじゃないですか!』
『いや、それはない。おそらくだが、奴らにとってもピートリー級の足が止まったのは偶然だ。
俺たちは30km以上を行軍してきたんだ。このタイミングで、この友軍の援護が受けられる領域で仕掛けてきたってのは、そうじゃなきゃ攻撃できないからだ。それに、バクゥとザウートが真っ先に狙われたのは、それが脅威になるからだ』
『つまり……相手はそれだけ動きづらいってことですか?』
『ああ』
確信を込めて、レオは頷いた。
『俺の予想だが、敵は巨大な自走砲か、何かだ。MSを破壊できるだけの、しかもこの距離を狙い撃てるような奴だろう。
いいか?よく考えれば止まっていた奴しか狙われていない。つまり、それだけ慎重に狙う必要があるわけだ』
『つまり、動き回れば何とかなると!』
『ああ。そして奴らが次に取るのは一つしかない』
空気を切って何かが飛んでくる音を外部マイクが拾ったのをレオは舌打ちしながらも操縦桿を操作した。
『そら、来たぞ!曲射、榴弾だ!転がってでもいい、回避しろ!死ぬぞ!』
172 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:17:58
「はっ、ジンが無様に寝っ転がっているぜ。こうなれば無様なもんだな」
エドモンド・デュグロ大尉は車長の座席で痛快だと言わんばかりに笑っていた。
はるか上空からの偵察を行うアッシマーの弾着観測のおかげで、ヒルドルブは順調な射撃を続けていた。
「大尉、そろそろ榴弾の使用も控えた方が」
「ああ、そうだな。全車に通達。撃ち方やめ。これより近接戦に入るぞ。ケイル、準備はいいな?」
「何時でもいけますよ!」
操縦士のケイル・バードリー少尉が答える。
「レイエス、砲の準備は?」
「ぶっ放す用意はできてます」
火器管制のレイエス・バーン軍曹が砲を操作する操縦桿を微調整しながら頷いた。
「ウルフ1よりフライング1へ、ピートリー級は止まったか?」
『こちらフライング1、ピートリー級はほぼ停止。総員退艦している模様』
ノイズ交じりだが、何とか届く声で上空のアッシマーから連絡が入る。
「よーし、全車傾注。これより掃討戦に入る。奴らはおびえて動けねぇ。このまま一気に食い破るぞ」
『ウルフ2了解!』
『ウルフ3、待ってましたぜ!』
『こちらウルフ4、武器の準備は出来ている。何時でもぶっ放せる!』
部隊からの返信に、エドモンドはさらに笑みを深くする。
「よーし、全車、パンツァーフォー!」
4頭の砂漠の狼が、猛然と距離を詰め始めた。
173 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:19:03
『クソ!やっぱりだ!』
『隊長?』
榴弾を避けていたウォーリー隊は、その数を何とか維持していた。
立ち上がれないまでも、地面を横に転がることで砲弾を回避していた。何機かはダメージを受けていたが、それでもまだ戦えた。
だが、レオはそれで終わりとは端から考えていなかった。曲射された榴弾の着弾時の射角と、音響センサーからの情報、そして勘。
その3つから相手がとる手段は想像できた。
『音響センサーを見ろ!複数の音源が高速で接近……時速80km!?自走砲が前に出てくるだと!?』
『どうするんです!?』
『落ち着け!立ち上がれる奴は迎撃用意!立ち上がれない奴は機体を放棄して逃げろ!最低でもピートリー級の人員が逃げる時間を稼ぐんだ!』
指示を出しながらも、レオは転がっていた重突撃銃を何とか掴ませる。
マガジンに弾丸は十分ある。これならば戦える。
『奴らは最初からこれが狙いだ!いいか!時間稼ぎだ!』
『りょ、了解!』
ジン・オーカー数機が何とか武器を手に取っていつでも立ち上がれるようにする。
何時しか砲撃は散発的になり、やがて終わった。代わりのように、徐々に音源が近づいてくる。
それは異常に長く、そして耳障りに感じる。徐々に徐々に、恐怖の根源が近寄って来るのを感じる。
ごくりと、つばを飲み込む音が大きく聞こえる。
(さあ……こい……返り討ちにしてやる!)
闘志を滾らせるレオは、距離を示すレーダーを睨みながら待つ。
そして、それが射程距離に近づいた。
「今だ!全機攻撃開始!」
操縦桿を引き、一気に立ち上がらせる。
視界が広がり、迫ってきたものが見えた。
『!?』
そこにいたのは、自走砲の様な、それでいてMSの上半身を無理やりくっつけた戦車の様な何か。
しかも4機。巨大な砲が咆哮し、僚機が消し飛ぶのをレオは見た。
『ランディー……!?』
消し飛んだ。文字通り。
破片が、繋がる先を失った腕や手にしていた無反動砲が面白いように空を飛び、地面に落ちる。
それに混乱している隙は、あまりにも致命的すぎた。ヒルドルブが再び咆哮。それは主砲ではなく、腕部に搭載された
ロケットランチャーから放たれたロケット弾。対艦攻撃も可能な30センチロケットは定められたとおり爆発。
直撃を食らったジンは右上半身が吹き飛び、追い打ちのように浴びせられたヒルドルブのガトリングの弾幕でハチの巣に変えられた。
あっとう言う間にジン・オーカーは2機倒れ伏した。戦力は残りジン・オーカー5機。まずい状況だ。
『くそ!やらせんぞ!全機散開!足を止めるなよ!』
彼我の距離は8kmを切った。重突撃砲では何とかいけるか。
ウォーリー小隊は的を絞られないように散開し、必死に銃口から逃れようとする。
しかし、ジンの疾走は猛然と距離を詰めてくるヒルドルブには叶わない。ならば、闘牛士が牛をいなすように、うまく立ち回るしかない。
174 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:19:49
突進がマシンガンの銃撃と共に迫る。だが分かりやすい。回避できる。
『おっと!』
『隊長、そっちにもう1両!』
部下の言葉を信じて大きくジャンプ。立っていた場所にレールガンの弾丸が突き刺さる。
衝撃と舞い上がる地面でバランスが崩れかけるが、それをマニュアルでうまく調節。着地した。
『捉えた!』
レオは冷静に側面から狙い撃つ。
しかし、その銃撃は悉くが弾かれていく。側面に設けられた追加装甲が、ことごとくを弾いていた。
その射撃に気がついたか、そのMAのような何かは、驚くべきことに上半身をこちらに向けてきた。
レオは咄嗟の判断で横にジャンプする。果たしてそれは正解だった。
『拡散弾!?腕の武器は選択できるってことかよ!?』
驚愕しながらも、レオは操作をやめない。着地を最小限にしてさらに横にステップ。
大口径砲が吠え、レオのジン・オーカーを衝撃が揺らす。砲弾を回避は出来たが、その着弾の振動は正しく地面が揺れるようだった。
すぐ近くを巨体が通り過ぎた。すごい勢いだ。そしてそいつは滑らかにターンを決めると折り返して再び接近してくる。
しかし態勢を立て直し、今度は慎重に狙いを定めた。
『落ちろ!』
『この野郎……!』
レオの重突撃銃と僚機のスチムソンの放った無反動砲が襲い掛かる。
『やったか!?』
『いや、まだだ!なんて硬さだよ!?』
無反動砲は確かに直撃したが、それは側面と若干耐久性に劣る本体の装甲をカバーするモジュール装甲が防ぎ切った。
だが、レオは攻撃の手を緩めない。狙うのは履帯だ。破壊すれば足は確実に止まる。それが常識だ。
必死の射撃をデカブツはその速力で振り切ってしまう。警告(アラート)。後方から攻撃。レオは咄嗟に操縦桿を倒す。
ジンは地面を転がるようにして左に避けた。一瞬前までジンがいた位置を30センチ砲弾が通過した。ギリギリだ。
冷や汗を感じるまもなく、追撃の120mmマシンガンが襲ってきた。2丁構えられたそれは圧倒的な弾幕でおいかけてくる。
装甲に当たり、ひびが入り、砕けていく音がコクピット内部にも響く。
(なんて威力だ)
そう歯噛みをしたとき、ちらりと後部カメラに何かが映った。
破片と粉々になっていくMSのボディ。
『!?ハリマン!』
後方から回り込んできたタンクに相対していた僚機の姿が見えた。
凄まじい金属音の後に、部下のハリマンの乗っていたジンが錐揉みしながら地面に叩きつけられた。
よく見れば、MAはまるで重機のようなショベルアームを振り抜いた状態だった。それで殴られたのだろう。
単純な重量による打撃は、時として銃器をも凌駕する。その端的な例だ。
その時、レーダーにはもはや動く友軍がいないことに気がついた。カメラを動かせば、スチムソンのジンも倒れた。
『くそ!クソ!』
徐々に包囲網が狭まっていく。確認されたMAは4機だが1機少ない。
恐らく、ピートリー級の始末に向かったのだろう。
そして包囲されているのは自分1機。残りは、全滅だ。
『畜生……!なんで俺は……!』
そして、砲撃がジン・オーカーを襲った。
悪態が、彼の最期の言葉になった。
175 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:20:54
「これであらかた片付いたか?」
エドモンドはふう、とため息をつきながらも状況を確認する。
装甲が分厚く、簡単に抜かれないとわかっていても被弾するのは中々心臓に悪い。
しかもMSとの彼我の距離が近い状況での戦闘だ。戦車乗りとしては、些か慣れていない距離だった。
『こちらウルフ4、残党はあらかた始末した。機体の破壊は現在進行中』
「ウルフ1了解。ピートリー級は入念に破壊しろよ」
残るヒルドルブも機体の破壊に移っていた。
パーツを粉々にしてしまえば、回収できても修復できなくなる。
銃火器を使わなくても、ヒルドルブの重量で押し潰せばそれだけでパーツは歪められる。
エドモンドもそれに加わるように指示を出そうとして、警告がコクピットに響いた。
「何!?」
吹き飛ばしたはずのジン・オーカーの一機が立ち上がり、重斬刀を振り上げていた。
『こ、この、距離ならぁ……!』
片腕を失い、頭部を損傷し、もはや満身創痍の状態。それでも、何とか立ち上がっていた。
動きは既にガタガタ。しかし、その重斬刀はまっすぐにヒルドルブを狙っていた。
コクピット内部のスチムソンも、割れたモニターや機器類が体中に突き刺さり、満身創痍。だが、それでも動かした。
『死ね……ナチュラル!』
「退h……!」
エドモンドが叫ぶより早く、何かが、ジン・オーカーに止めを刺す。
30センチAPFSDS。それが、ジン・オーカーの装甲を食い破り、貫通するというよりは斬り飛ばした。
発砲音からするに凡そ18kmは離れている。そして、回線で声が届いた。
『ウルフヘッドよりウルフ全車。油断し過ぎだぜ』
独特の、そしてヒルドルブの訓練の最中に何度も叱咤された声の主を、彼らは知っていた。
『ソンネン少佐……』
オリジナルのヒルドルブをたった一人で十全に運用してのける生粋の戦車兵 デメジエール・ソンネン少佐。
ムンゾから派遣されてきた古強者は厳しい言葉を送って来た。
『油断するなって言っただろ?敵は一発で仕留めろ。それで十分だ』
その言葉に、ウルフ小隊全員がはっとする。
浮かれ過ぎていたのだ。このヒルドルブの持つ性能の高さに。MSさえも凌駕しえる、強力な陸上の王者。
コーディネーターを打ちのめせる狼に、酔っ払ってしまった。それは戦車兵としてあるべきではない姿だ。
『だが、全員よくやった』
しばし悔やんでいたウルフ小隊に、予想外の言葉が掛けられた。
『最後でしくったが、それまではほぼミスなしだ。良い腕だ。急いでずらかるぞ。ザフトの奴らが来る』
「りょ、了解。ウルフヘッド、援護を感謝します」
『後で奢れよ?ウルフヘッド、アウト』
しばし茫然としていたが、エドモンドは切り替えて通達する。
「ウルフ1より各車。急いでずらかるぞ!ぼさっとするな!一番遅い車両の奴が少佐に奢ることにする。いいな!」
『ウルフ3了解!』
『ウルフ2ラジャー!』
『ウルフ4了解。高いやつは避けてほしいもんですね!』
苦笑しながらもエドモンドは撤退を指示する。
この戦闘で量産型ヒルドルブ(ユーラシア呼称ケンタウロス突撃砲)4機、否4両はジンを主力とするMS部隊を全滅に追い込み、また貴重な陸上艦艇のピートリー級1隻をほぼ破壊しつくし、ザフトの重要な戦力を破壊せしめるという働きを見せた。
このウルフ小隊の活躍を聞いた他のヒルドルブ小隊をより奮起させたのであるがそれはまた別な話であった。
176 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:21:38
基地に帰投したケンタウロス突撃砲を迎えたのはたくさんの整備士だった。
大型兵器故にケンタウロス突撃砲は整備に時間を食い、パーツもかなり必要となる。
まだ配備されて間もないころということもあり、慎重な整備が求められていた。
「ええ……やはりここには負荷がかかります。ええ、やはり消耗品はすぐに変えた方が十全に使えるかと」
「やはり消耗が激しいですね……オリジナルのヒルドルブよりもかなり質は向上しましたが、見積もりが甘かったでしょうか?」
「砂漠は一見同じに見えても、結構違いますからねぇ。オーストラリアでのテストと多少違ってもおかしくありませんぜ」
「分かりました。報告にも上げておきますね」
整備士や技術者と話をしていたオリヴァー・マイ技術中尉は、帰投してきたケンタウロス突撃砲より一回り大きいヒルドルブを見て嘆息した。
「やっぱり出ていた……」
車体をすっぽり治める専用格納ハンガーに収まったヒルドルブから、一人の日焼けした男が顔を出す。
「よう、中尉。帰って来たぜ」
「……御無事で何よりです、ソンネン少佐」
一応敬礼して迎える。たとえそれが、勝手な出撃であってもだ。
「そんな怖い顔をするなよ、中尉。あいつらの命を救ったんだから」
「……はぁ、仕方ありませんね。今回は大目に見ますよ」
降参した技術中尉にソンネンは屈託なく笑う。
「ウルフ小隊の奴らが奢ってくれるぜ、今夜も付き合えよ?
で、ケンタウロス突撃砲はどうだ?」
「現場の兵からもかなり好評です。ケンタウロス突撃砲じゃなくて、ヒルドルブって呼ばれてますね。
ユーラシア連邦もかなり乗り気になってます。国土的要素から大洋連合よりも陸上戦力への注力が大きいためでしょう。
アフリカの大反抗作戦に間に合うようにとせっつかれてます」
「へぇ……」
「他人事じゃないですよ、少佐。教官役が必要なので少佐にも頑張ってもらう必要がありますからね」
「ああ、もっと戦車兵を鍛えろってことだろ?任せとけ」
「期待していますよ」
そこまで言ったとき、エドモンド・デュグロ率いるウルフ小隊がやってくる。
誰もが、今日上げたスコアに喜びを隠していない。
「少佐ー!先ほどはありがとうござましたー!」
「ウルフ3の奴らの奢りですよ!思いっきり騒ぎましょう!」
「ようし、明日は非番なんだから思いっきり飲もうぜ!」
気の置けない戦車兵同士の姿は、まるで家族のようですらあった。
マイは、困りながらもつられるように笑った。
しばしの休暇が彼らを待っていた。
今日は生き延びることができた。だからそれを喜ぼう。
地獄のようなアフリカ戦線で、彼らは必死に生きていた。
そして祈る。明日も、生き延びられるように、と。
177 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:22:20
キャラ&メカニック紹介
〇デメジエール・ソンネン 階級:少佐
大洋連合 ムンゾ出身の戦車兵。
MS IGLOOに出演したデメジエール・ソンネンの同位体的存在。
コロニーという閉鎖環境でありながらも決して戦車を見捨てることなく、自らの道を貫く生粋の戦車乗り。
MSに対して既存兵器でどこまで抗えるかを研究するために地球に招聘され、ヒルドルブの開発に携わった。
本来ならば複数人で運用するヒルドルブをAIの補助も受けながらとは言え単独で十全に扱うなど、その腕前と技量はエース級。
原作と比較すればヒルドルブをはじめとした戦車への固執がなく、MSに対してもそこまで敵視していない。
どちらかといえば、二足歩行という戦車に比較すれば不安定な陸上兵器の導入に対する警戒心の方が強い。
本作においてはヒルドルブ導入を検討するユーラシア連邦の戦車兵への教導官として登場。
〇オリヴァー・マイ 階級:中尉(技術中尉)
大洋連合 ムンゾ出身の技術者。
MS IGLOOに出演したオリヴァー・マイの同位体的存在。
ヒルドルブ開発にも少し関与しており、その関係でソンネンとは知己となっている。
現在はアフリカ戦線においてヒルドルブの問題点の洗い出しと技術的なデータ収集を行っているほか、ゴブリンなどの大洋連合の販売した兵器の情報を集め、フィードバックをもたらす分析官としても活動。
〇レオ・ウォーリー 階級:-
プラント ザフトのMS隊隊長。
オリジナルは存在しない架空の人物。名もなきモブ。
地上戦線に投入された生粋のコーディネーターであったが、現実と理想の違いを目の当たりにし、絶望しつつも、泥臭くてもいいから生き延びようとする兵士。生存や戦略性を重視する指揮でこれまで何度も死地を抜けてきた。
しかし、母艦のピートリー級のエンジントラブルによってヒルドルブに狙われ、戦死。
〇エドモンド・デュグロ 階級:大尉 コールサイン:ウルフ1
地球連合陸軍の戦車兵。現在はアフリカ戦線でヒルドルブの運用を行う小隊に属している。
機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZERに登場した男性である。原作においては第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦後に退役した。
〇レイエス・バーン 階級:軍曹
地球連合陸軍の戦車兵。ウルフ1のヒルドルブの火器管制を担当する。
実はこのキャラも機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZERに登場していた。
第一話において嘗ての上官であったエドモンド・デュグロと共にリニアガンタンクを操り、至近距離からレールガンを
浴びせてジン タイプ インサージェントを撃破した。エドモンドは死亡したが、漫画版においてはレイエスは負傷しながらも生存した。
YMT-05 / GMT-05 ヒルドルブ
全長:32.2m
全幅:14.3m
全高:6.5m(モビル形態時:12.3m)
全重量:205t
動力:大洋連合製熱核融合炉
最大速力:120km/h
乗員(YMT-05):1名
乗員(GMT-05):4名以上(車長 火器管制 通信管制 操縦士)
標準武装:
30センチ主砲×1門
120mmマシンガン×2丁
スモークディスチャージャー×4
格納式20mm近接機関砲×4門
大洋連合が開発した陸上用MA(区分上はモビルタンク)。
30センチという大口径火力と最高時速120km、さらにジンの重突撃銃さえも容易く弾く装甲を兼ね備えた陸上戦艦。
オリジナルとなったヒルドルブとほぼ同じではあるが、武装面での改良がおこなわれ、武装の搭載スペースが確保されているため、多連装ロケットやビーム兵器の搭載さえも可能となっている。しかし、その性能と引き換えに原作同様にインフラに負荷をかけている。
試作段階ではほぼオリジナルのヒルドルブと同じものも作られたのだが、パイロットが一名ということによる操縦の煩雑化と視野の狭さ、長期的な戦闘における運用の難しさという課題は残った。そこで一部設計を変えたヒルドルブとより簡便且つスケールダウンされた量産型ヒルドルブの生産へと切り替わった。
178 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:23:06
GMT-105 量産型ヒルドルブ(105ヒルドルブ)/ケンタウロス突撃砲(ユーラシア呼称名)
全長:27.4m
全幅:14.2m
全高:5.52m(モビル形態時:10.3m)
基本重量:187t
最大速力:120km/h
動力:大洋連合製熱核融合炉(バッテリーに換装したマイナーチェンジ機もあり)
乗員:3名若しくは4名(火器管制 操縦士 通信手 車長)
標準武装:
30センチ主砲×1門
スモークディスチャージャー×4
格納式20mm近接防御機関砲×2門
サブマニュピレーター×2
搭載砲弾:
通常榴弾(HE弾) 対戦車榴弾(HEAT弾)
対戦車焼夷榴弾(HEAT/I弾) 粘着榴弾(HESH弾) 徹甲弾(AP弾)
装弾筒型徹甲弾(APDS弾) 弾筒型翼安定徹甲弾(APFSDS弾) 対空用榴散弾(type3)等
概要:
大洋連合が開発したヒルドルブの改良型。
全体的に機構の簡略化とサイズのダウンが行われ、より簡易に、より多くの兵に扱えるように改良がなされている。
オリジナルのヒルドルブの段階で提案されていたものがほぼ流用されており、開発自体はYMT-05試作型ヒルドルブを
経てかなり短期間で完了した。開発そのものはどちらかといえば肥大化した機構のサイズダウンばかりであったことも
短期間での開発につながっている。
武装面では引き続き30センチ砲が搭載された。オリジナルと比較すればより簡易な変形機構によって整備性が向上しているほか、全高が低く抑えられているためにオリジナルのようにモビル形態で側面をむいて主砲を発射してもそこまで車体が傾くことはなくなった。
変形機構については採用するかどうかも議論されたのだが、変形機構によって射角を一定程度は保つべきとの判断から残されている。
また複雑な作業を行えなくなるかわりに低コスト化を図るためマニュピレーターを廃して武器を一体化させた腕部に置換されている。
この腕部型武器にはバリエーションがいくらか存在し、120mmマシンガン ビームカービン ビームマシンガン
ガトリング 115mmレールガン 対MS重ショットガンなどを選択して搭載可能となっている。
近接戦闘用の武装についても検討されたのだが、護衛機(あるいは随伴するMS)との連携が前提であるために積極的な採用は行われなかった。
しかし作業用ショベルアームが引き続き採用されているため、格闘戦が不可能というわけではない。
防御面において、オリジナルよりも装甲は薄くなっているがあくまで数値上の話であり、避弾経始を意識した装甲によってむしろ実弾系への耐久性を高めている。これはMSをMSが保有する火器の射程に入る前に主砲で先に撃破するという運用方針が採用されたためで、あくまでもMSを安全な距離で撃破するための自走砲としての面が強化されたことも絡む。
砂漠のようなビーム兵器が減衰しやすい環境ではビーム兵器が使われにくいことを利用しTPS装甲をバイタルパートに採用したモデルもある。
乗員は3名~4名。車長 火器管制 操縦士 通信管制となっている。自動化をかなり進めているために熟練したパイロットが2名いれば十分な性能が発揮できるが、運用の難しさや煩雑性を考えて基本的に3名以上での運用が強く推奨されている。
総合的に見れば、オリジナル以上の性能を示しており、量産型ヒルドルブは地上での運用に限って言えばMSを凌駕する仕上がりとなっている。
要求されるMS適性の低さと戦車と変わらない操縦性から戦車兵にはまさに理想形と言えるMSであり、MSに蹂躙されてばかりで鬱憤をためていた戦車兵たちにとっては正しく救世主のような存在となった。
ユーラシア連邦ではこれを一部センサーやC4Iの拡張を行ったマイナーチェンジモデル『ケンタウロス突撃砲』を運用している。
しかし、現場の兵はオリジナルとなったMTにあやかってヒルドルブという呼称を使い続けている。
179 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:23:53 以上となります。
wiki転載はご自由に。
漸く出来上がりました。ヒルドルブの話。
ちょっとでも泥臭い感じのMS戦が描けていれば幸いだったり。
180 :弥次郎:2016/10/08(土) 18:25:44 >>178
おっとミス
× XMT-05 → 〇 YMT-05
最終更新:2023年09月08日 23:37