628 :ナイ神父Mk-2:2016/10/24(月) 01:06:07
大陸SEEDネタ その13
バーミューダ海戦とザフトの亀裂
C.E71年6日3日、ザフト海軍の主力潜水艦隊は、南アメリカ海軍と共に北米大陸の東海岸への侵攻の為に進路を一路北へと採っていた。ザフトの動きに関しては、大西洋連邦海軍も把握しており、東海岸の海軍戦力をバーミューダ沖に結集させ両軍はバーミューダ沖で激突した。潜水艦隊より出撃したゾノとグーンはエースであるマルコ・モラシムの率いる部隊を中心にして連合艦隊から出撃したディープフォビドゥン、フォビドゥンブルーと水中で激しい戦闘を演じていた。
「アメリア隊は下方から接近する連合部隊の足を止めろ!ヨーゼフ隊は敵艦艇への攻撃へ向かえ、我々は正面から来る敵を受け止める!」
「し、しかしモラシム隊長!敵はわが隊の倍の数です。我々だけでは・・・」
「ザフトの兵士なら其れぐらいやって見せろ!此処で負ければ又防衛ラインは宇宙まで下がるんだぞ!」
モラシムはそう言って部下達を叱咤するも内心では焦りを隠せて居なかった。
(不味いな、まさか此れだけの部隊を連合が用意して来るとは、やはりアレクサンドリア基地で人員を失った事が痛かったか・・・)
元々、アレクサンドリア基地を拠点として活動していたモラシムの隊も、アフリカ反抗作戦の際には陸上部隊よりは通商破壊に出ていたお陰で被害が少なかった物の、其れでも無視できるほど被害が少ないと言うわけでは無く、南アメリカに撤退後は新しい人員を補充していた。
しかし、その補充によって今までのベテラン中心だった部隊の戦力は大きく質を下げてしまう事になり、一部の英雄願望やザフトの建前を鵜呑みにしてスタンドプレーに走ろうとする兵士の矯正に作戦まで時間を費やす事になったのであるが、其れでも完全に矯正する事は出来ずに不安を抱えた侭、モラシム隊は出撃する事に成ったのである。そして、その不安は的中した。
「敵、敵はど、うわあー!」
「た、助け、助けて下さい隊長!」
「馬鹿野郎!、一人で前に出すぎるな!」
「ナチュラル如き、俺一人でやれます!」
「隊長!、奴等やっぱりやらかしました!」
「孤立した奴等は諦めろ!兎に角体勢を立て直すんだ。此の侭だと敵に包囲される。」
当初の不安通り、一部の不安視されていた兵士たちが独断専行や血気盛んに蛮勇を見せて突撃を開始し、ベテラン達はそれをフォローし切れずに先行した機体から連合の部隊に包囲される形で四方八方からの攻撃を受けて散華していく。包囲された機体は助からないと考えたモラシムは近づいていたフォビドゥンブルーに魚雷を命中させて沈めた後、指揮下の部隊へと体勢を立て直すように指示を出す。
それによってモラシム隊は体勢を立て直すが、既に補充兵達は半数が撃墜され、残りも3割ほどが連合の海軍戦力からの攻撃を避け切れずに損傷が見られていた。
だが、その喪失と引き換えに有る程度の損害を連合にも与えていた様で、連合のディープフォビドゥン隊も相応の打撃を受けた様であり、第一波のディープフォビドゥン隊はその数を半減させていたが、その背後からは第二波、第三波も近づいてきており、その中には連合のエースであるジェーン・ヒューストンの姿もあった。
「随分と先行した部隊は苦戦してい様だな。少尉」
ジェーンはそう言って先行していたディープフォビドゥン隊の隊長に通信を繋げると、隊長は苦々しい顔をしながらジェーンへと返事を返してきた。
「ジェーン少尉か。ああ、向こうの突飛も無い行動に振り回されてご覧の通りだ。其れに滅茶苦茶になった統制を直ぐに立て直したモラシム隊。噂になるだけの事はある。」
「モラシムは私がやる。そっちは他の部隊の援護を」
「済まない」
629 :ナイ神父Mk-2:2016/10/24(月) 01:06:38
ディープフォビドゥン隊の隊長はそう言って通信を切ると、残存部隊を率いて後方へと移動を始めた。其れに追撃をしようとしたモラシムのゾノにヒューストンの乗るフォビドゥンブルーがトライデントを突き出してくる。其れに反応してゾノのクローでトライデントを受け止めるモラシムであったが受け止めた直後、接触回線を通じてディープフォビドゥンから通信が入る。
「やっと見つけたぞモラシム。悪いがあの時の仇だ。打たせて貰う」
「誰だかは知らんが、私にはまだやる事がある!そう簡単には死なんぞ!」
ジェーンの言葉にそう返したモラシムのゾノは再び魚雷を至近距離で発射、TPS装甲によって損傷には成らなかった物の、其れなり衝撃は受けた様であり、ヒューストンのフォビドゥンは後退した。その隙を付いてゾノは再び攻撃を加えようとして、2機は激しい攻防戦を始める。
海中で激しい戦闘が行われている頃、海上では南アメリカの有する艦隊と大西洋連邦率いる艦隊がお互いの航空機を出して激しい制空権争いを行っていた。NJによって誘導自体は不可能である物の、だからと言ってミサイルの火力自体は落ちる訳ではなく、両軍から発射された対艦ミサイルは確実にお互いの艦へとダメージを与えていく。しかし、此処で大西洋連邦側の艦隊に予想外の事態が起こる。護衛機を突破したザフトのMS部隊が連合側の艦艇へと攻撃を開始したのである。総指揮を採るノア准将はそんな中でも動揺する事無く各部隊へと指示を出してく。
「予備のディープフォビドゥン隊は直ぐに出撃を。其れと対MS用の爆雷を投下しなさい!」
「駆逐艦アレン大破、戦線を離脱します!又、駆逐艦ウォルトより救援要請が・・・」
「アレンには無事なフリゲート艦を護衛に付けて下がらせなさい!ウォルトには第4艦隊の駆逐艦を回すように指示して!海中の部隊はまだザフトの侵攻を抑えられないの?」
「ヒューストン隊より通信。現在敵MS部隊の隊長機を撃破、敵部隊は母艦へと撤退を開始したとの報告が入っています!」
「そう・・・それなら補給が終わり次第14MS大隊とエセックスのスカイグラスパー隊に攻撃に移るように伝えて、其れから・・・」
ノア准将が通信を受け取る少し前、海中ではヒューストンとモラシムの戦いに決着が付こうとしていた。元よりTPS装甲を持つフォビドゥンブルーに対して有効な反撃手段を持たないゾノでヒューストンに対抗できていたのはモラシムのエースとしての技量による物で有った。しかし、其れも遂に限界へと達し、反撃を避け切れなくなったゾノは魚雷によって片腕を失う。
「貰ったぞ!」
そう叫んで放たれたトライデントは真っ直ぐにゾノを貫いて沈黙させた。パイロットを失い、力なく腕をたらしたゾノはゆっくりと海底へと沈んで行った。そして、其れを見ていたモラシム隊の面々も自身の不利を悟り母艦へと向かって後退していく。
其れを追撃するようにヒューストン率いるMS部隊は更なる追撃を開始した。
攻撃での要であったモラシム隊の敗走は、ザフトに協力していた南アメリカ海軍に大きな衝撃を齎した。其れと同時に南アメリカ海軍は水中からの敵の攻撃を防御する術を失い、連合のMSからの攻撃によって艦隊に大きな被害が出始める。
「サン・パウロが沈む・・・」
「ザフトの艦隊は何をやっている!此れでは此方が一方的に沈められるぞ!」
「其方にも敵MSが対艦攻撃を仕掛けたようで、通信が混乱しています!」
「撤退だ。ザフト含む友軍部隊へと通信を入れろ。今回の作戦は失敗したと」
「まだ予備部隊も残っています!其れを投入すれば・・・」
「予備部隊は東海岸を攻撃する為の部隊だ。どの道此処で投入すれば作戦は不可能になる。」
「し、しかし・・・」
「趨勢は決した。我々の艦隊は殿として此処に残り大西洋連邦を食い止める。臨時旗艦にはリバダビアを指名。以降はリバダビアの指示に従うよう、再度通信を」
「了解しました」
この海戦の結果、南アメリカ海軍の戦力はその数を大きく減らす事となり、ザフトは貴重なボスゴロノフ級を4隻とエースであるモラシムを失うと言う大損害を蒙っている。そのかわり、大西洋連邦も派遣した第3・5・8艦隊の内の第8艦隊が壊滅、第5艦隊の半数近い駆逐艦が撃沈される等、相応の被害を受けて追撃が断念されている。こうして本命であった海上からの東海岸攻撃を失敗したザフトは、今後更に苦しい戦いを強いられていく事となる。
630 :ナイ神父Mk-2:2016/10/24(月) 01:07:11
ザフト内の亀裂とその頃のAA
海戦で海軍が一大決戦に臨んでいる頃、連合を排除して機器を復旧させたパナマ基地では今後の方針についての意見で
クライスラー率いる元アフリカ方面軍の隊長陣と南アメリカを担当している司令官の間に大きな溝ができていた。
「何度も言うように、本格的な侵攻は南アメリカのMS部隊の到着を待って行うべきです!」
「そっちこそ何度も言わせるな!作戦はもう決まっている居るのだ。大体、ナチュラルの手を借りずとも我々だけで十分に連合軍を撃破できるのだ。其れを態々のんびり援軍を待って侵攻しろなどと・・・」
「ナチュラルとて日々我々に対抗すべく戦力を強化してます!現に我々がアフリカで遭遇した大洋のMSはバクゥに機動戦で勝り、空中でジャスティスとフリーダムを圧倒して見せました!北アメリカの連合がそれに比肩する戦力を持っていないとは考えられません!」
「ふん、怪しい物だな、現に此方ではナチュラルのMSを圧倒できているではないか。其方の指揮の拙さを機体の性能のせいにするなど全く情けない」
「なにを!」
思わず司令官へと掴み掛かろうとしたクライスラーであったが、流石にその行動は他のザフト兵に止められている。そして、再三のクライスラー進言は却下され、追い出されるように司令室から退室している。自身の指揮する部隊へと戻ったクライスラーの元には結果を聞きに来たのか、他のアフリカから逃れてきた部隊の隊長の姿もある。
「クライスラー司令、如何でしたか?」
「ダメだな、あの男ザフトだけで連合軍と渡り合えると本気で思っている。よくもまあ、あのレベルのコーディネイター至上主義者が地上で司令なんてやっていられる物だ・・・」
その返事を聞いた他の隊長陣は一様に肩を落した。しかし、其れを気遣う様にクライスラーがある朗報を他の面々に聞かせ始めた。
「そう肩を落すな。司令はダメでも他の部隊長の中には此方の意見に賛同してくる者も居る。それに作戦決行まではまだ時間もある。
焦らず説得を続けて行けばあの司令も我々の案を呑むだろう」
「ですが、あの司令が呑みますかね?」
「飲ませるさ。そうしなければザフトは再び敗北する。それにクライン評議員の後押しもある。大丈夫だ」
そうクライスラーが言うようにこの数日後、大西洋での敗北と複数の隊長からの嘆願によって北米への本格的な侵攻は南アメリカ陸軍の増援を待って開始される事となる。又、この増援された南アメリカ軍のMS部隊にはジャンク屋が修理を行い南アメリカへと販売したストライクダガーやダガーL、スカイグラスパー等が多数含まれており、北アメリカ攻略戦では大西洋連邦へ大きな衝撃を与える
631 :ナイ神父Mk-2:2016/10/24(月) 01:07:45
一方でパナマより撤退した連合軍はと言うと、現在は旧アメリカ合衆国とメキシコの国境付近に有る、大西洋連邦の陸軍基地まで撤退を行っていた。パナマ防衛戦に参加していたアークエンジェルもその中に居り、失ったダガー系の部隊の補充と機体の修理で整備員達は忙しそうに動いている。そんな中でキラの姿は現在格納庫の中にあった。その横には搭載機の整備員達を纏めるマードックの姿も見られる。
「・・・これが?」
「ああ、お前用に送られてきたフォビドゥンだな、ストライク隊の他の機体に付いて行ける様に強襲用のこの機体が送られたって話だが」
「それは良いですけど一体誰が?」
「それは・・・」
「それは私が説明しよう」
「ナタル大尉、どうして此処に?」
マードックとキラの間に入って来たのは、艦長の副官を勤めるナタル・バジルールであった。キラはなぜ此処の居るのかと疑問を呈するが、其れを気にせずナタルは話始める。
「偶々、機体の搬入状況の様子を見にきてな。それよりそのフォビドゥンの事だが、其れはある種の宣伝目的だな」
「宣伝、ですか?」
「そうだ、政府側からの要望で連合に所属するコーディネイターのイメージアップを狙った物だな。ザフトのせいで民間の中にもコーディネイターと言うだけで偏見を持つ者も少なくない。其処で連合政府では一般市民との摩擦を軽減する為に連合市民の為に働くコーディネイターの宣伝活動などを行っている。その為の一環として今回の戦力増強で入れられたのがこのフォビドゥンだ。」
パナマと言う言葉を聴いてキラはサイの最後が忘れられず暗い顔と成るが、其れを見ていたマードックは慌ててフォローを入れる。
「そう暗い顔をするなよ。此れであのザフトの新型にも対抗できるんだ。その力で今度こそ他のメンバーも守ってやれよ、な」
「今度こそ・・・」
「そうだ、お前はまだ生きてるんだ。だからまだチャンスはある。」
「解かりました。今度こそザフトから皆を守って見せます。」
マードックの言葉に受けて何とか持ち直したキラであったが、拗れたまま友人をなくした事は未だ深い心の傷となり後を引き摺ることとなる。
そして、C.E71年6月15日ザフトの大規模な侵攻に対抗する為、アークエンジェル隊は再び最前線へと投入され、其処で再びザフトの大部隊と延いてはザフトの切り札であるジャスティスとフリーダムとも対峙していく事となる。
632 :ナイ神父Mk-2:2016/10/24(月) 01:08:15
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最終更新:2016年10月24日 14:21