269 :影響を受ける人:2016/10/02(日) 21:50:43
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
作戦開始の報を聞き、北郷章香はすぐさま突入隊に準備をするように伝えた。
同時に江藤敏子の方も同様に伝えているだろう。
既に通常飛行機部隊が稼働を開始し始めており、エンジンを豪快に唸らせ、プロペラが順次回りだしているのが見える。
それを一瞥した後、すぐさま会議室に向かう。
「さてぇ。作戦開始ですねぇ。」
「ああ。もう後には引けん。」
副官の旭川梨奈が後ろから声をかけるが、ズンズンす進む足は止まらない。
「それで、状況はどうなっている?」
「今、この時間ですとぉ。釣りをするための通常戦闘機部隊が接敵しているはずですよぉ。」
「例の、ベテランネウロイがいる場合はきつい任務になるな・・・」
「釣られた方に行けば、我々が楽になりますけどぉ?」
「ベテランが、技術や経験を自分の物のままにしておくと思うか?」
「なるほどぉ。それもそうですねぇ。」
二人共何時もの通りに会話しつつ会議室の前に到着し、扉を開く。
室内には、この基地から発つ、突入隊メンバーがすでに着席していた。
――【天城】所属:通常戦闘機部隊――
「後続、ちゃんとについてきているか?」
『ちゃんと隊長のケツについてきてますよ。』
「お前はホモか。」
『いえ。自分はノンケです。』
アホな事を言う副隊長に対し、隊長はなんだかなぁという思いを抱くが、同時に緊張しすぎていないという確認も出来た。
この遣り取り自体、何時もの恒例行事。
なので、他の隊員は何も言わない。
「さて、そろそろか?」
『ええ。情報が正しければ。』
「何時も淡々としていて、お前は面白味も無いな。」
『性分ですので。』
その割にはしっかり冗談を言う。真面目な顔で言うので、何時も勘違いしがちだが。
会話を切り上げ、あたりをキョロキョロ見回してみるが雲が多く、視界が限られていて視認がし辛い。
それでもよく目を見開いて捜すのだが、目標は見当たらない。
これは進路を変えるべきか?そう思い、進路変更を指示しようとして、視界の端に何かが光ったのに気が付いた。
「ん?」
よくよく目を凝らし、じっと見つめていると・・・
赤い光が飛び込んできた。
「うぉぉ!!」
慌てて操縦桿を捻って攻撃を避ける。
通信機から副隊長の声が高らかに聞こえてきたが無視。すぐに機体を安定させると勘に従って上空を仰ぎ見る。
『隊長!』
「慌てるな。無事だ! それよりも・・・」
視線の先に黒いシルエットが、陽光を反射しつつ急降下してくるのが見える。
「3番隊、4番隊は上から奇襲を行おうとした奴らを攻撃しろ!
1番隊と2番隊は今攻撃をかけた奴らに向かう!
お前ら、油断するなよ!」
『『『『『了解!!』』』』』
先手を取られたが、すぐさま反撃にでる。
もう余計な考えはもたず、ただひたすらに敵を斃す。
「いいか! 死なない奴が勝ちだ!!」
最後の激励を吠えて、彼も部隊を率いて突撃して行く。
270 :影響を受ける人:2016/10/02(日) 21:51:45
――宮城――
「すでに始まっている頃か・・・」
天皇陛下がポツリと呟いた。
それを聞いているのは御茶を入れていた九曜のみ。
「はい。その通りかと。」
「この戦で、また命が散るな。」
「・・・はい。」
「九曜よ。子は旅立たねばならぬか?」
「はい。」
この扶桑を守り続けた守護者を陛下はみた。
しばし沈黙のが部屋を満たす。わずか数分だったはずだが、長く時間が経っかのような感覚に陥る。
そして九曜葛葉は口を開いた。
「子は、何時かは親元から旅立ちます。
自然界に置いては、親が子の旅立ちを促すために、あえて襲い掛かる事もあります。
未熟であったこの国は、すでに私の助けが無くとも未来に進んで行ける力がございます。
災害に立ち向かい、怪異に打ち勝ち、国としての誇りを持つ。
織田信長公が目指した先であるかわかりませぬ。
しかし、この扶桑皇国にとって、この戦が分岐点でございましょう。」
陛下は只々静かに聞きに徹し、淹れてくれた御茶を一口飲む。
「あえて、試練を課すか・・・」
「はい。必要となればこそ。」
九曜葛葉の、嶋田繁太郎の、神崎博之の考えは変わらない。
過去に生れ落ち。たった一人であるとわかり絶望し。
それでも幸せを求めつつ、記憶に残る罪を受け入れ。
不老長寿の化物とかしても変わらなかった意思。
もしかれが嶋田繁太郎になっていなければ、大日本帝国の首相になっていなければ、核兵器を使用する決断をすることが無ければ・・・結果は変わっただろう。
しかし彼は、彼女はその全てを経験している。
変わり果てて未来知識が役に立たなくなった前世の世界。
その世界で奮闘した記憶と経験が、過去に子孫に対してどうにかしなければならないという考えが出来ていた。
この世界における日本である扶桑皇国でも、それは生きているのだ。
「そうか、わかった。」
考えを変えない事を再確認し、小さく心の中で溜息を吐く。
現在のウィッチが束になっても敵わないほど強力な人物。
それ故に、昔ほど幻想と言う言葉では片付けられない現代。
その力を振るう場面は、確かに無いのだろう。
「九曜よ。」
「何様で御座いましょうか。」
「銅鏡の間に行きたい。」
はて? 銅鏡の間に?
「子が旅立つのが今日ならば、それを見守るのが責務であろう。」
その発言に納得するが、同時に血なまぐさい戦争という現実を見せて良い物か、深く思案する。
こればかりは即答できずにいたが、力強く覚悟を決めた陛下の視線を受け、渋々ながら同意した。
そして二人はそのまま執務室から出ると、銅鏡の間に向かう。
部屋に入ると、宮城仕えの護衛巫女が二人、ちょうど銅鏡を磨いていた。
「く、九曜様!?」
「陛下!」
まさか来るとは思っていなかった二人は慌てて掃除用具を片付けようとしたが、九曜はそのまま掃除を続ける様に言い、尻尾を振るって分体を生成する。
生成した分体は8体。
「お前達、中継を頼む。」
「「「「「「「「承知!!」」」」」」」」
分体達はすぐさま部屋から出て行き、飛行能力を持って飛翔していった。
別に分体が無くても、道具を用いた遠視ならば九曜も出来る。しかしやっぱり中継地点が有った方が負担が小さい。
その光景を見ていた護衛巫女二人は、惚れ惚れと呆けた顔で、偉大なる魔女を見詰めた。
が、さすがに見詰められるのには慣れていない。すぐに二人が動かずにいるのに気が付き、注意をする。
「・・・手を動かしなさい。」
「「も、申し訳ありません!」」
慌てて動く護衛巫女に対し、浅く溜息を吐く。
その様子を見ていた陛下は「くくく・・・」と小さく笑っていて、九曜は何とも言えない気分になった。
271 :影響を受ける人:2016/10/02(日) 21:52:27
――輸送船【泡瀬丸】:台風牽引部隊――
巨大な台風の中央部。
上空を見上げればそこは、芸術的に迄に綺麗な円筒状の雲が見えた。
輸送船【泡瀬丸】は高速の輸送船であり、本土に帰還する途上の船であったことから、本作戦にて皇国軍に協力を求められた。
本社は了承し、気難しい艦長の方も承知したので、特に問題も無く航行している。
戦争に赴く為、詰むはずだった荷物は積載していない。
代わりに派遣されたウィッチ達が乗り込み、台風を制御している。
完全制御された台風と言う、常識はずれの現象を見ながら戦場に向かう輸送船上では、艦長と副艦長が会話をしていた。
「本日も快晴ですね。」
「ああ。」
「今でも信じられませんな。台風の目の中心になって、しかも付いて来るなんて。」
「ああ。」
「・・・艦長。」
「ああ?」
「そんなに女性を乗せたくなかったのですか?」
「ああ。」
不愛想に頷くのを見て小さく溜息を吐く。
艦長は昔ながらの海男らしく、女性を船に乗せること自体を忌避している。
しかし今回は会社からの説得。ウィッチを率いてやってきた高齢のウィッチによる懇願により、一応は乗せているつもりにしているようだ。
そんな二人の視界に件の高齢ウィッチが映った。
「軍属最高齢の女性隊長ですか。」
「ああ。」
「確か、幼馴染でしたっけ?」
「ああ。」
「初恋で、いなくなってから気が付いて。」
「・・・ああ。」
「いつの間にか結婚していて。」
「・・・・・・ああ。」
艦長はあの人を視界に入れようとはしない。
歯切れが悪くなっているのを感じ、副艦長もそれ以上の追及を止めた。
彼女は優秀で、気立てもよく、お見合い相手とも相性が良かったのか子宝に恵まれている。
しかし結婚式当日に艦長は、まあ当時は艦長ですらなかったが、とにかく式場に乗り込んで新郎を殴りつけて「絶対幸せにしろ!死んでも幸せにしろ!!」と言って一同を唖然とさせて出て行ったとか。
それ以降まったく顔を合わせていないかったらしく・・・
ぶっちゃけ、彼女の報復が怖くてだんまりを決め込んでいるだけだ。
そんなに怖いならしなければよかったのに・・・
当時、自分はいなかったからどうでもいいけど。
「お? ほら、手を振っていますよ。」
「ああ・・・」
艦長は不愛想な顔で、目を合わせないで答える。
そんな様子に溜息を吐く。と、彼女が困った顔でお辞儀をした。
恐らく「こんな人ですが、よろしくお願いします。」とでもいう意味だろう。
もうすぐ終わる仕事だが、気を抜かずに完遂する事を考えよう。
ついでに艦長の狼狽を肴にして。
以上です。
ずいぶんお待たせしました。
視点切り替えで切り抜けたけど、今度は無しにして頑張りたいなぁ・・・
最終更新:2016年12月06日 21:59