518 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:36:11
大陸SEEDネタ その16

オーブ攻略戦開始と艦隊の各陣営

C.E71年7月11日、逃げ込んだと思われるザフト残党の引渡しや大西洋連邦が建造したギガフロートの返還を求めてオーブに圧力をかけ、従わなければ其の侭武力行使に移る為に集められていた艦隊は、静かにオーブの動向を見守っていた。特に大西洋連邦より派遣されたアークエンジェルは元々オーブから連合軍に志願したメンバーも居る為、家族が本土に居る彼らとしては他人事では無かった。

「オーブは大丈夫なの?まさか本当に開戦なんて・・・」

「其処まで心配するなよ。流石にオーブも此れだけ連合が戦力を出してるんだ。戦うなんて有る筈無いよ」

そう言い聞かせあうオペレーターの二人に対して、それ以上に気が重いのは実際にオーブと戦う事と成りえる二人であった。

「ヘリオポリスからこっち、ずっと連合で戦ってたけど、まさかオーブ軍と戦う事に成るなんて・・・」

「うん、僕も考えてなかった・・・」

「まあ、お前等が予想外なように、俺達も予想外だけどな・・・」

「フラガ少佐・・・」

「今はもう中佐だ。しっかしオーブの方は何考えてるんだ?こんな時にギガフロートをジャンク屋に渡すなんて」

「そんな事、僕達にわかる訳無いじゃないですか・・・」

そう言って暗かった顔を更に暗くするトールとキラであったが、フラガは二人を元気付ける為に声を明るくして話す。

「そう暗い顔するなって、オーブがきちんと対応してくれればそうならないんだからよ。お前等の国を信じてみようぜ」

「「・・・」」

フラガからの元気付けを貰った二人であったが、その可能性はこの数時間後に出されたオーブの拒否によって無残にも打ち砕かれ、オーブ攻略艦隊に帯同していたアークエンジェル隊もオーブ攻略戦に参加する事となり、オーブからの志願兵だったキラ達からすれば最悪の帰郷という事態になって行く。
一方で今回のオーブ攻略戦で大西洋以上の戦力を動員していた大洋はと言うと、空母鳳翔の中で草鹿中将が想像通りといった表情でオーブの返答を聞いていた。

「やはりこうなったか・・・」

「ギガフロートの返還、ザフト残党の受け渡しを共に拒否。しかも中立国である事を理由に軍を引く様に勧告。彼らは我々が此れで納得すると思ったのでしょうか?」

「さあな。或いは返答したのがサハク家の党首だったならザフト辺りに何らかの当てがあってやったとも考えられるが、理想主義者のアスハではな・・・。其れより予定通り攻撃を開始するが、準備は出来ているか?」

「各艦共に準備は完了しています。」

「解かった。では各艦に通信を送れ。我々は此れよりオーブ攻略作戦を開始すると」

「オーブ攻略戦を開始せよ」
その通信が各艦に行き渡った事で、俄かに活気付いた大洋艦隊からは事前攻撃として吹雪型ミサイル駆逐艦より次々にミサイルが放たれ、蒼龍型からはズゴックやハイゴックを護衛に巨大な影が3機ほど出撃。部隊は一路、オーブ群島を目指して進撃を始めた。

大洋、大西洋共に海軍国家らしい大艦隊を出す中、別の意味で目を引いたのは大西洋連邦の艦隊に同行する東アジア共和国と、大洋連合の艦隊に同行するユーラシア連邦の艦隊である。ユーラシアの艦隊は比較的大規模であり、大洋連合への支援であると見て取れるが、東アジア共和国艦隊は非常に少数な空母を含む艦隊であり、支援にしても戦力に成るとは思えない数である。
実際の所は、パナマでの防衛戦に置いてザフトの水中用MSに襲われた事が原因で、戦力が補充され切っていない事が理由であるが、そんな惨状でも艦隊を送る事と成った現状に、思わず艦隊を指揮するヤオ准将はため息を付く。

519 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:36:44
「未だ半壊状態の艦隊を率いてオーブに向かえとは、上も無茶を言う」

「仕方有りませんよ。我が国は未だ、今大戦では明確な戦果を上げて居ません。戦後を見据えれば、確実に勝てる此処で何らかの成果を上げたいのでしょう・・・」

「それは理解できるが、この戦力ではな・・・」

「確保出来たのは、空軍で管理していたスカイグラスパーと元々の残って居た航空機。ジャンク屋から購入したMSは陸軍が頷かずに未配備のままですからね。何とかグーンとゾノは手に入りましたが、それも艦隊護衛で手一杯ですし」

「我が国も他の理事国同様、高い工業力は持っているが、流石に設計図が無ければ意味は無いからな」

「どちらにせよ、今回の作戦でどれだけ成果を上げられるかだな」

そう艦橋から見える自国の航空隊を見ながら呟いたヤオ准将であったが、祖国の未来には今外に見える様な快晴は無く暗雲が立ち込めている事を感じていた。

そして、各々の思惑が絡んだ連合と敵対したオーブ陣営はと言うと、ある意味で予測は出来る事であったがアスハ派の多い地上軍は、祖国防衛の為に気炎を上げていた。

「いいか!我々が此処で敗北すれば、我々の守るべき理念が、そして国民が暮らしていくためのオーブその物が連合の攻撃によって蹂躙される!オーブの明日はお前達兵士一人一人の双肩に掛かっているのだ。いいな!」

そのオーブ軍将官の演説に対して多くのアスハ派の兵士達は士気を上げ、此れから侵攻してくる連合軍に対して戦闘配置に就いていった。
しかし、一方でオーブ軍の中にも其れを冷やかに見る兵士も居る。実際に山の中腹を通した道路上でリニアガンタンクに乗る面々も、そうした数少ない反アスハ派である。

「そもそもがアスハの撒いた種だと言うのに、この調子か」

「車長、余り言えば聞こえますよ」

「聞こえていなくとも、もう知られているだろうが。まあ向こうから見れば、アスハの理念を理解しない愚か者といった所だろうが」

「それなら余計に・・・」

「構う物か、新兵器であるMSは基本アスハの管轄だ。我々にはどうせジャンク屋から購入したジンも回って来ないだろうよ」

「・・・」

其処まで言われて何も言えなくなり、口を噤む砲手であったが、直後になったサイレンとミサイルの着弾音にハッとなり、他の面々も戦闘が開始された事に気が付いた。遠くの海上ではビームか爆発なのか不明だが、光が瞬いているのが見えた。

520 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:37:42
オーブ攻略戦と水上の様子

オーブ攻略作戦が開始された直後に連合の各艦から放たれたミサイルの多くは、イージス艦やフリゲートに阻まれて殆どが着弾する事無く撃墜され、オーブ海軍はダメージを最小限に押し止め、次に向かってきた敵MSに対してはオーブ軍所属のコーディネイターや地上での時間稼ぎに選ばれたザフト兵達が水中用MSや航空戦力に搭乗して、海空で激しい争いが繰り広げられていた。そんな中、ボスゴロノフ級の直掩に回っていたゾノのパイロットのヨップはおかしな音を音響センサーで拾っていた。

「なんだ?この音は・・・」

「何か有ったのか?」

「いや、さっきからおかしな音がセンサーに混じってるんだよ。潜水艦隊に配属される前に一度聞いたんだが、ゾノの方にはデータが・・・」

「どれだ?」

「12時の方から来る音だ」

「おっワプスの方にはデータが有ったぞ。此れは・・・旧式の潜水艦?」

「潜水艦?そうだ!!アレは水中用MSに乗る時に聞いた、旧式の潜水艦の音だ!」

「しかし、なんだってこんな・・・え?」

センサーが捉える音が大きくなり、視認が可能な距離まで音源が近づいてきた時にそれは現れた。全長は裕に70mを越えるであろうその赤いMAは、護衛機なのか周囲に40m近いMAを引き連れてやってくる。その姿は正に圧巻であり自身が乗る20m級のゾノと比べてもまだ巨大である。

「て、敵・・・」

慌てて敵機の襲来を知らせようとしたジンワプスは、次の瞬間横から近づいてきた蟹の様な爪を生やしたMAに突如として脇腹を貫かれ沈黙、それに慌てたヨップは急いで機体の体勢を変えてその小型MAに魚雷の照準を合わせようとして、直後に下から急浮上したズゴックに後ろから貫かれた。そして、彼の最後の姿を目撃したボスゴロノフ級も、赤いMAシャンブロに殴られて海の底へと消えて行った。

シャンブロの中ではサイコミュの使用によるパイロットの負担を避ける為なのか、サイコミュが一時切られた状態で運用が成されている。
そして、そのサイコミュ担当のパイロットであるロニを気遣う様にカークス少佐がロニに声を掛ける。

「さっきの攻撃の後一旦サイコミュを切ったが、体調は大丈夫か?」

「は、大丈夫です。負担も初期の頃よりは大分軽減されていますし、先程も其処まで負担は感じませんでした。」

「それなら良いんだが、気を付けてくれ。負担は少ないとは言え、消えた訳じゃ無いんだ。」

「解かっています。何かあれば報告しますから・・・」

「そうしてくれ。ん、通信か?」

会話を終わらせようとカークス少佐が画面を向きなおすと其処には通信を示すマークが表示されていた。発信元を確認すると、其れは護衛として付いてきているグラブロからだった。通信に出ると力強い声がスピーカーから聞こえてくる。

『少佐、そろそろ我々は対艦攻撃へ移ります。少佐は其の侭オーブ本島へ』

「ああ、護衛を感謝する。後は我々だけで十分だ。其方は攻撃に集中してくれ」

『解かっていますよ。オーブ海軍にこのグラブロの恐ろしさ、タップリと教えてやりますとも!』

その言葉を最後に通信は切れ、外を写したモニターには離れていく2機のグラブロが写っていた。其れを見送ったカークスはグラブロが向かった方向からは目を離し、真っ直ぐこの先にあるオーブ本島を見据えた。

水中では巨大なMA達が蠢いているのと同時刻、空中では現在大洋のアッシマーを中心とする航空部隊と、ディンやオーブ軍所属の戦闘機部隊が空中で戦闘を行っていた。しかし、空中での性能と数は大洋のアッシマーとガ・ゾウムが圧倒的であり、オーブ軍側は徐々に後退を始めていた。この一方的な状況に、海軍航空隊仕様の灰色のアッシマーを駆る菅野は思わず拍子抜けした声を上げる。

521 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:38:12
「なんだ、アフリカじゃ戦闘機中心とは言え100機近く落されたのに、こっちだと随分とまあアッサリ落ちていくな?」

『だからと言って気を抜くな。ディンに落されるようじゃアッシマー乗りとしては恥も良い所だぞ』

「解かってますって、おっと」

隊長機からの通信に応えようとした瞬間、菅野は前方からディンが散弾銃を撃ちながら接近している姿を発見してバレルロールで回避を行った。下からの攻撃を避けられたと判断したディンは、其の侭上昇して再度射撃を行おうと銃口をアッシマーへと向けた。しかし、次の瞬間アッシマーは変形して運動性を上げた状態で散弾を再度回避、再びMAへと変形すると、猛然と攻撃を仕掛けたディンへと向かって来たのである。ディンは焦った様に散弾を再度発射するが、今度は避弾経始に優れる丸みを帯びた装甲に弾かれ、其れを見た菅野は獰猛に笑いながら機体を変形させる。

「幾ら腕が良くても散弾じゃあ、アッシマーの装甲は抜けねえよ!」

そう言ってビームライフル側面に付属させたビームサーベルを引き抜くと、其の侭唐竹割り、ディンを両断し再び変形して離脱、ディンはその直後に爆発を引き起こして四散した。その様子を見て菅野は笑う

「ざまあ見ろ、アッシマーを甘く見るからだ!」

『馬鹿野郎!、ディン一機に時間を食いすぎだ。サッサと行くぞ』

「解かっていますよ」

隊長機から再び来た通信に菅野はそう答え、僚機の居る位置まで向かおうとした。その時、ふと水面が目に入り様子を見ると、オーブ海軍のイージス艦が船底から受けたビームで真っ二つに溶断されている光景だった。その横では、真下からのメガ粒子砲によって艦橋ごと艦中央を貫かれる護衛艦の様子も見て取れる。

「おお、他の奴等も派手にやってんなあ」

そう菅野は呟くと、又隊長から怒鳴られる前に戦域へと急行した。この30分後、航空隊の大多数を失ったオーブ空軍は本土上空まで後退を始め、海上の制空権は連合の物となり始める。そして、其れと同時にユーラシアの空母ではあるMAの発進準備が終了していた。その知らせを聞いたユーラシア艦隊司令も時計を確認する。

「そろそろ時間か・・・。艦長、アッザムの発進準備を」

「はっ、直ちに」

アッザム発進の命令を各所に送るオペレーター達を尻目に艦隊司令は艦長にこう話し掛ける。

「艦長、私はこう考えるのだ。コーディネイターが作り、そして大洋が更に昇華させたMSが新たな歩兵の一種と考えるなら、その歩兵を守り随伴する装甲車や戦車が必要では無いかとね・・・。あれはそうした考えのもと作られた物だ。」

艦橋から見えるアッザムの様子を見ながら司令官はそう話すと、再び専用の椅子へと腰掛けた。其れと同時に艦隊旗艦であるキエフからは巨大なMAが飛び立ち、それに続く用にSFSへと搭乗したザクが護衛として帯同していく。そして、このMAの動きはオーブ艦隊からも捉えられる物であった。その機影を発見したイージス艦は、即座に艦載されている対空ミサイルランチャーを使用するように命じ攻撃を開始した。

「機長、前方イージス艦よりミサイルが」

「此方でも確認した。陽電子リフレクターを展開しろ」

「了解しました。リフレクターを展開します。」

アッザムに搭乗した機長の言葉に従いアッザムはスラスターを動かして機体上部を攻撃の来る方向へと向け、機体上部に取り付けられた陽電子リフレクターを展開、ミサイルを受け止めた。しかし、出力が足りなかったのか一部の部品が通り抜けた様でリフレクターの内側にも若干の装甲の凹みが見られる。

522 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:38:42
「どうやら陽電子リフレクターは無事作動した様だな」

「はい、一部部品が此方の防御を突破して来ましたが・・・」

「それは後で技術部に報告しておく。此れから攻撃に移るが、其方は問題ないな?」

「実弾砲、ビーム兵器共に運用可能です。」

「よし、ならば予定どおり対艦攻撃を開始する。」

攻撃を防ぎきったアッザムは再度、機体を元の状態へと戻し、再び進行を開始した。先程のイージス艦は、ミサイルが防がれたと解かると艦前部に有る主砲を使用しようとしたが一歩遅く、アッザムの前足部分に取り付けられた大型ビーム砲の直撃を受け轟沈、周辺に居た護衛艦も此れに気が付き迎撃しようとするが、四肢の上部に取り付けられた単装砲によって艦橋や艦首砲を潰され追撃のビームや護衛機として付いていたザクからのバズーカ攻撃によって沈められている。

この戦闘結果、大洋・ユーラシア艦隊の前面に展開していた艦隊は壊滅し、各艦隊からは上陸の為の戦力が次々と発進して戦闘の舞台は海から陸へと変わり始める。

簡易機体紹介

YMAF-X5アッザム

全長:46.97m

武装:M534 複列位相エネルギー砲「ガムザートフ」×4
   GAU111 単装砲×4
   75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」×16
   Mk79 低圧砲×4
   試作陽電子リフレクター

概要

ユーラシア連邦が建造した試作大型対艦用MAであり、発表された際に一部の大洋の高官がアッザムと言う愛称を付けた事でこの名前が定着した。デザインとしてはザムザザーの四肢を青色へと塗装して、アッザムの胴体へと付けた様な見た目である。武装に関しては現状で、ザムザザーと謙遜無い武装が用意されているが、後に格闘用のクローや陽電子リフレクターの出力の弱さが改良された機体がザムザザーとして完成し、本機は数ある試作品の一つとして戦闘データを取った後に解体、量産はされる事無く終わっている。

523 :ナイ神父Mk-2:2016/10/31(月) 00:40:23
以上です。WIKIへの転載は自由です。アッシマーの色に関してはゲーム等で連邦軍仕様として出る黒と灰色中心のカラーの機体だと考えて頂ければ・・・

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最終更新:2016年10月31日 12:59