199 :第三帝国:2011/11/18(金) 23:21:36

90年代、冬木市。
衛宮切嗣は久々のタバコの味を堪能していたが、突然後ろから声をかけられる。

「アインツベルンを代表する、衛宮切嗣さんですね?」
「・・・・・・・・・」

名前を知られているのはまあ、予想の範囲内だ。
だが、囮である妻でなく自分を「代表」と発言したという事は敵であると同時に、
アイリスフィールを囮と見破れる戦術判断、密かに御移動したにもかかわらず見つけ出した間諜能力、
どれも通常の魔術師の枠に当てはまらず、むしろ自分と似たような思考を持った人物であるに戦慄を覚えた。

「ああ、大丈夫です。
 ほとんど住んでいないとはいえ、我が国の国民ですからそう無暗に傷つけるつもりはありませんから」

「・・・なるほど、トウキョウフーチか」

「正解です」

この国の国民といういいかた、
すなわち後ろにいる男は20世紀のインペラルである大日本帝国を支える情報機関の関係者以外、ありえない。

「魔術と表の社会とは基本不可侵ですが・・・今日は貴方に、
 いえ、近い内に聖堂教会からもマスター全員に警告が出されるのでそのことについてお話があります」

「そうか、言え」

何時でも逃走、
ならびに最悪の展開を予測しつつ衛宮切嗣は淡々と問う。

「単刀直入に言うと今度の聖杯戦争にはアメリカが参加します。
 そうですね・・・より詳しく言うならば表と裏が一体化して聖杯戦争に参加するといった所でしょう」

表と裏?
となると――――。

214 :第三帝国:2011/11/19(土) 00:09:50
199の続き
スマン途中でトイレに行っていたもので


「馬鹿な」

衛宮切嗣の戦術の基本は「貴族的決闘形式にこだわる」魔術師を、
暗殺、爆破、等などといった「貴族」には思いつかない手段で追いつめることにある。

逆にいえば、
そんな貴族意識に囚われていない集団には効果が薄いと言わざるを得ず、アメリカそのものもの参戦はその戦術の破綻を意味する。
なにせ、「表の一体化」つまり自分と同じく下賤な手段に抵抗感を持たない集団を相手とせざるを得ない事を意味し、衛宮切嗣の聖杯戦争における戦略の破綻に他ならない。

「まったく、こまったものです。
 前回も大陸の呪者に白人至上主義者が参加したそうですが、
 今回の件に対しては、『誠に』遺憾であるとお上は判断しているようです」

「・・・っ!!」

誠に遺憾。
『極めて』ではないが、この聖杯戦争にこの帝国は本気で関わるつもりだ。
その気になれば、ありとあらゆる手段で聖杯戦争を終わらせてしまうに違いない。

「・・・・・・・・・」

だが、不自然だ。
本気で終わらせるつもりならばこうして話などするはずがない。

つまり――――。

「つまり、僕たちにその部外者を排除しろと?」

「正解、サーヴァントにはサーヴァントをですから。
 ああ、それと魔術協会ならびに聖堂教会も特に憂慮しているようですから、
 くれぐれも、背中から撃つような真似はしないでください。それと、より詳しいことは城に直接届けておきますからこれで。」

そう言って気配が消える。
恐らく人ごみに紛れたのだろうか、振り向いた先には誰もいなかった。

「・・・・・・くそう」

衛宮切嗣は思わず、悪態を呟く。
魔術協会と聖堂教会が共に憂慮するだと?
よりにもよってあの反目しあう両組織が『共に』憂慮するなど尋常ではない。
反目しあう同士が手を組まなければならない事態に陥っているとは、計算外にも程がある。

「いや、それでも僕は――――」

僕は世界を救って見せる。
そう呟き冬の空を見上げた。

魔女の大鍋と化した聖杯戦争の始まりまであと少しである。



3次に色々あったが、アヴェンジャーを防ぎえずほぼ原作どおりに4次を迎えて、
私怨丸出しな憂鬱アメリカがfake的に10年以上早く参戦するというネタSSでした。

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最終更新:2012年01月05日 09:57