822 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:21:22
大陸SEED その17
オーブ攻略戦と上陸の開始
オーブ海軍が事実上壊滅した事によってオーブと連合の戦場は徐々に海から陸へとその場所を変え始めていた。海岸に防衛線を敷いたM1アストレイの部隊もビームライフルやジャンク屋やザフトから提供を受けた実体弾系の兵器で今か今かと待ち構えていた。
「連合め、来るなら来て見ろ。このM1の性能を見せてやる。」
「ああ、連中にこの国に戦争を仕掛けた事が間違いだったと分からせてやらないとな」
そう言ってお互いに士気を高めながら敵を待つオーブ軍であったが、遂に連合軍機と思われる複数の機影が海上から現れ、M1に乗るパイロット達は気を引き締めてビームライフルの引き金に指を掛ける。
「来たぞ。大きい・・・特に正面の赤い奴、アレじゃまるで特撮の怪獣だ。周りに居る緑色のMAも40m近い」
M1のカメラアイを望遠の状態にしたパイロットがそう話している間に、赤いMAと呼称された大洋の水陸両用MAシャンブロはゆっくりとその鎌首をもたげて口にあたる部分を開いていく。それに合わせる様に緑色のMA・・・MFとも呼称されるゾックの2型も砲門を露出させ、次の瞬間10条を越える巨大な光がオーブ本島の港湾へ向けて放たれた。進んでいく光は補給の為に停泊していたフリゲートも集結していた上陸阻止部隊や無人の市街地のビルの陰に隠れていたM1等、その何もかもを蒸発させながら吹き飛ばし市街地の中程で止まったが、結果として港湾と市街地に展開していた部隊はその数を大きく減らし、その隙を付いて水中用MSが上陸を開始した。
この攻撃はオーブ本島を防衛する司令部からも確認できる物であり、光の奔流が走った後が見えたオーブ軍司令室に居る面々は唖然とした表情で固まっている。
「そ、そうだ、被害は?被害はどうなっている!?誰か状況を!」
いち早く緊張から解けたカガリは他の士官へと被害状況を問い質すが、現場に居る部隊も混乱が有る様で詳しい状況が直ぐには入らないでいた。そして、混乱が収まり被害の大きさが見えてくるに連れ、オーブ軍将官の顔色は悪くなっていく。
「ほ、報告します!先程の大型MAからの砲撃によってオーブ本島の防衛部隊の2割に甚大な被害が出ています!更に
射線上に有った構造物も消失、構造物を利用したゲリラ戦は実質不可能です・・・」
「残存している港湾防衛部隊より報告!現在敵の上陸部隊が上陸を開始し、交戦を開始したと報告が・・・」
「山岳部に配備されたリニアガンタンク部隊より入電!港を砲撃した大型MA群、再度港湾への接近を開始しました。上陸の可能性も考えられます!」
「なんだって!?くっ」
「な、カガリ様!どちらへ!?」
被害の大きさと間髪入れずに攻めてきた情報を聞いたカガリは其の侭、司令室の扉に向かって走り出した。それに気が付いたキサカは、カガリに向かって声を掛ける。
「私もルージュで出る!邪魔をしないでくれ!」
「いけません!今、司令官であるカガリ様が離れれば指揮が混乱します。」
「もう指揮などとっくに混乱してる!なら、私が直接・・・」
そう言って引き止めるキサカを振り払って進もうとするカガリであったが、本職の軍人でるキサカの腕を振り払う事は出来ず、其の侭司令室に留められている。司令室でそうした騒動が繰り広げられている頃、オーブ本島の港湾では既に上陸を始めた大洋の新型MSヴァサーゴ率いる上陸部隊とオーブ軍所属のM1隊による射撃戦が繰り広げられていた。しかし、最初は拮抗していたそれも、徐々に上陸部隊が増えるごとに不利になっていく。特に大洋の投入したゾックの1型はハイゴック等の携行火器を持ち難いMSを支援するために投入された火力特化型のMSであり、前面4門のメガ粒子砲によって絶え間なく発射されるビームは正に脅威と言っても過言では無かった。そうした敵上陸部隊を押さえているM1隊は本部へと援軍要請を行い少しでも上陸を遅らせようと奮戦していた。
823 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:22:27
「此方、第4MS小隊!敵上陸部隊の攻撃が激しすぎる。支援を!」
『各隊は港湾より撤退、市街地の第4防衛ラインまで撤退せよ。』
「し、しかし、此の侭では敵大型MAの上陸を阻止できません!」
『港湾のこれ以上の防衛は不可能だ。既に第3防衛ラインも先程の砲撃で多大な打撃を受けている。市街地にて市街地戦闘を仕掛けて対応する。』
「・・・了解した」
「隊長、司令部からは何と?」
「後退だ。我々は此れより第4防衛ラインまで後退する。」
そう、隊長機が言った直後、地面を揺らすかのような音と共に多数の旧式物資運搬用のHLVやマスドライバーから射出され、宇宙に向けて上昇していくジャンク屋から購入したと思われる物資輸送用の大型シャトル等が打ち上げられていた。その状況よって一瞬の隙が連合に出来た事を見た港湾防衛部隊は迅速に戦域より後退して行く。打ち上げの様子はオーブ攻略艦隊の大洋の艦隊からも見える位置であり、草鹿中将はそのシャトルに関しての指示を出す。
「発射は想定どおり実行されたか・・・。よし、全軍に通達しろ。予定通り逃げるザフトには予定以上の数を助けさせてやれと」
その言葉が示す通り、連合各国は比較的ジブリール派の多い東アジア共和国以外はザフトの逃亡部隊には目もくれずにオーブ攻略の為の進行を開始していく。その頃、オーブのマスドライバー施設のあるカグヤ島では大洋の特務艦隊と艦隊を撃破したユーラシアのアッザム部隊の襲撃を受けていた。自在に空中を飛行するバイアランや上空を取って一方的にビームによるシャワーを浴びせてくるサイコMk-2に対してM1やジンオーカー等のザフト・オーブの合同部隊は有効打を与えられずに居る。
「くそ、下からの攻撃じゃ避けられる。おい、ディンは如何したんだ!?あいつ等なら空中からいけるだろ!」
M1に乗るオーブ軍パイロットはジン用の重突撃機銃を上空へと向けて掃射しながら隣に居るジンオーカーに乗るザフト兵へと言うもザフト兵から返って来たのは無常な答えだった。
「無茶言うな!さっき部隊単位で叩き落されたのを忘れたのか!?唯でさえ連合の航空隊の対応に回ってるんだ。これ以上は・・・うお!」
其処まで応えたいたジンオーカーのパイロットが悪寒に襲われ慌てて回避行動を取ると次の瞬間先程まで射撃を行っていた所をビームが通り過ぎ、同じ地点で射撃していた小隊を蒸発させて通り過ぎていく。上空を見ればユーラシアのアッザムが砲口を此方へと向けていた。
しかし、地上から放たれた大型のビームがアッザムの片足をもぎ取りバランスを崩したアッザムは若干片側に傾きながら艦隊の方へと向けて後退していく。
「其処のジンとM1はサッサと下がれ!此処は俺たちが受け持つ!」
そう通信で一方的に用件を伝えながら現れたのはアサルトシュラウドを装備したデュエルであった。その横には先程アッザムを後退させたビームを放ったと思われるバスターと援軍と思わしきバクゥが居る。
「済まない、助かった!」
824 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:23:00
そう言って後退していくジンオーカーを横目にディアッカは通信でデュエルに搭乗するイザークへと声を掛ける。
「で?実際かっこいい事言ったのは良いけどよ。勝算は有るのか?」
「ある!と言いたい所だが、敵を地面に下ろさない限りは如何にもならん。兎に角、砲撃で牽制しつつ時間を稼ぐぞ。それが出来れば俺達の勝ちだ!」
「解かったよ。しかし、なんでこう俺達の行く先々にはこうヤバイ連中しか居ないんだか・・・」
「愚痴っている場合か!来るぞ」
そう言うとイザークとディアッカによる決死の時間稼ぎが始まった。其れに対して霧島はサイコのコックピット内で面白そうだと言わんばかりに目を細める。
「あら、骨の無いパイロットばかりのラクショーな任務かと思いましたが、ザフトの方にも気合を入れたパイロットが
居るのですわね・・・」
「霧島少佐、面白そうだからって本気で暴れちゃ不味いですよ。マスドライバーはなるべく無傷で制圧しろって言われてるんですから」
言葉が聞こえていたのか、そう言ってきたのは同じく特務隊でバイアランに搭乗するヒースロー大尉である。その言葉を聴いた霧島は心外だと言った口調でヒースロー大尉へと通信を返している。
「解かって居ますよ。上の方からも言われているんですから、と言うかヒースロー大尉?余り人の事を見境無しに暴れる人間みたいに言わないで欲しいのですが」
「だって少佐、お嬢様ぶってますけど本質的に海賊とか女傑の類じゃないですか。あの暴れっぷり見ると心配にも成りますよ。」
「ヒースロー大尉?格納庫戻ったら覚えてろよ?」
そう言って霧島は一方的にに通信を切るとMA形態のまま、地上に居るデュエルとバスターに砲撃を開始した。
825 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:23:35
オーブ陥落と地上戦の終わり
カグヤやオーブ本島で激しい戦闘が繰り広げられている頃、もう既に決着が付きかけているのがジャンク屋が占領するギガフロートを奪還する為に派遣された大西洋連邦の部隊であった。元々、数だけならばかなりの数が戦力として存在したジャンク屋で有ったが、唯の海賊や傭兵崩れだった人間が殆どであり、正規軍の本格的な攻撃を防ぎきれる筈も無く、戦いは一方的な物となっていた。
このギガフロート占領に借り出されていたアークエンジェルのストライク隊もその余りの弱兵振りに肩透かしを食らっている。
「思った以上にアッサリと片付いたな。他に残敵は見えるか?」
「いえ、僕の方からは・・・トールの方で何か見える?」
「いや、こっちにも居ないぞ。もう終わりじゃないか?」
トールが言った事を示す通り、港湾施設の影やコンテナの後ろ等から次々と武装を解除したジャンク屋と思われる人間たちが手を上げた状態で次々と出てくる。
「やっぱりさっきので終わりなのか?」
「ちょっと待って下さいフラガ中佐、あの人たち何か言っています。」
「なんだって?」
そう言って機体を屈めて話を聞いていたフラガ中佐がそのまま暫く動かなくなり、疑問に思ったキラはフラガへと通信を繋げ様とした。
しかし、其れより早くフラガが機体を立たせ、キラ達に通信をつなげてくる。
「お前等、急いでこいつらを手の上に乗せて離脱しろ!」
「ど、如何したんですかフラガ中佐?」
「さっき降伏してきたジャンク屋の話が正しかったら此処のマスドライバーや施設に爆薬が仕掛けられてる!兎に角お前等は降伏した連中を連れて離脱しろ。俺もこいつ等拾って其の侭離脱する。くそっオーブ軍の奴等とんでもない罠を仕掛けてやがった。」
そう言ってストライクの腕にジャンク屋達を乗せ始めたフラガを見てキラとトールも手を下ろし始めた。一方でアークエンジェルにもフラガより通信が行き、俄かに艦橋内がざわめいている。
「それは本当か?」
「はい、フラガ中佐が通信して来るのと前後して奪還に向かった陸戦隊からも同じ報告が来ているので間違い無いと思われます!」
「爆発は何時だ!?何時、爆発する!」
「爆弾の解析に当たっていた部隊より報告です。爆弾は遠隔操作型の物で建物の発破解体等に使われているタイプの様です!」
「解除は?」
「他の部隊からの報告ではマスドライバーとその周辺施設に満遍なく設置されています。恐らくは不可能かと・・・」
「解かった。遺憾では有るが現時点を持ってギガフロートの占領を諦め、撤退を開始する。」
その言葉から1時間後、アークエンジェルを初めとした揚陸艦隊は捕虜や他の上陸部隊を収容後に離脱、カグヤ島にてオーブ首脳陣が捕縛された事を持って再度爆弾の解除の為に部隊を派遣している。その頃、港湾の維持を諦めたオーブ本島ではカガリが決断を迫られていた。大洋の大型MAの砲撃が付近に着弾して大きなゆれを起こす中、カガリは必死に状況の把握に努めようとしている。
826 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:24:32
「今の爆発は何処からだ!」
「だ、第6防衛ラインからです。先程同様、敵の砲戦型MAだと思われます!」
「排除は出来ないのか?」
「排除の為に送った部隊は壊滅、先程の情報では此方に砲撃を加えている緑色のMAから発進したMSが攻撃を開始した事で更に被害が大きくなっています。此の侭では・・・」
「カグヤやザフトからの援軍の可能性は無いのか?」
「制海権と制空権を奪われた今、不可能です。」
何とかして打開策を出そうとするカガリであったが、既に戦況は最悪と言って良いほどまでに追い詰められており、打開案は悉く他の将官より否定された。そして、次の瞬間司令部として設置されている建物の横を極太のメガ粒子砲が通り抜け後方に着弾する。
其れと同時に通信が入り、MAのコックピットからだと思われる映像が写し出される。
「此方、大洋連合海軍第七艦隊所属 ヨンム・カークス少佐だ。其方はオーブ本島の防衛司令部で間違いないな?」
大洋側からの通信に司令室がざわつく中、カークスの質問に答えたのはカガリの横に居たキサカであった。
「ああ、そうだ。それで用件は如何いった物か、お聞かせ頂きたい」
「では率直に言うが、現在我々の乗るMAが其方の基地を射程に捉えた。降伏して欲しい。先程の攻撃は警告だ。次は外さない。」
「それの降伏勧告は貴官の独断か?それとも・・・」
「司令部からの命令を此方が中継する形で伝えている。」
「若し降伏に応じない場合は?」
「先程と同じ威力の砲撃を命中させる事になる。」
「少しだけ時間をくれ。その間に此方の意見を纏める・・・」
「・・・5分だけだ。それ以上は認められん。」
そう言ってカークスは通信を切り、本島防衛司令部の返答を待つ事になる。その5分後に防衛司令部より正式な回答がありカガリを含むオーブ本島の守備隊は連合へと降伏を申し入れ、戦闘を停止している。そして、ウズミを初めとしたオーブ首脳陣が集まるマスドライバー施設のあるカグヤ島の施設内でもある異変が起きていた。
「これは如何言う事だ。サハク!」
そう言ってウズミが睨む先には兵士を従えたサハク家党首が居り、兵士の銃口はウズミに向けられている。
「貴方にはこの敗戦の責任を取って頂く。それだけですよ。」
「責任は取る。ザフトは既に大多数が脱出した。後はこのマスドライバーとモルゲンレーテさえ爆破すれば連合も占領を諦める。
我が国はまた中立に戻るのだ!」
「またその様な理想論を・・・。此の侭、マスドライバーやモルゲンレーテを失って、国民に如何暮らして行けと言う積もりですか!」
「理念さえあればその下に集う国民でまた国を立て直せる!厳しい期間には成るだろうが、オーブは再び蘇る筈だ!」
「それは貴方の理想だろう!国民全員が貴方のように理想に燃えている訳ではないのだ。此処での敗戦によって旗頭を失えばオーブは確実に崩壊する!」
「カガリが、新しい種は既に芽を出している!新しい旗頭はもう出来ている!」
827 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:25:02
「その新しい旗頭が必要で有るからこそ、生贄が必要なのですよ・・・。連れて行け、全権の指揮はこのサハクが執る。異論がある者は前に出よ。」
そう言って他の首長を見渡すサハクであったが、他の首長から異論が出る事は無かった。そして、司令部の掌握が終わったと判断したサハクは其の侭連合へと降伏を申し入れ、抵抗の無くなったカグヤのマスドライバー施設を連合の兵士が制圧し、各首長はその場で拘束されているが、降伏の際サハクの名で降伏宣言が出た事で一部のアスハ派の兵士は何が有ったのか察して降伏を良しとせずに周辺のオーブを構成する小規模な小島へと身を潜め残党となって抵抗しようとする部隊が多数出現、大洋が討伐部隊を送る事となっている。又、この時にザフト地上軍でも残存した部隊の大半が降伏、殿として残った若年兵やクライスラーを初めとした司令官等が連合の捕虜となっている。尚、余談では有るが、この戦闘で大西洋連邦から奪取された機体であるデュエルとバスターが降伏時に大洋に鹵獲されており機体は大西洋連邦へと返還され、ザフトで行われた改装を調べるための資料として使われている。
簡易機体紹介
ガンダムヴァサーゴ
全長:22.6m
重量:70.8t
出力:5600kw
武装:腹部大口径メガ粒子砲
ビームサーベル
ストライククロー×2
クロービーム砲×2
概要
大洋が開発した水陸両用MSであり、数少ないUC系以外を参考にして開発された機体の一つである。技術面の問題からオリジナルより大型化しているが、その搭載された大型ジェネレーターのお陰で武装は高い火力を誇る。この機体の真価は同時期に開発されたアシュタロンと違い上陸後に発揮され、仮想的である連合のG
シリーズを初めとした上陸地点を確保するのに邪魔な敵の高級量産機を排除する為に高出力のビーム兵器とシンプルな武装の機体が求められ開発されている。
ガンダムアシュタロン
全長:24.5m
重量:75.2t
出力:5600kw+1500kw
武装:ショルダーバルカン
アトミックシザース
シザースビーム砲兼ビームサーベル
ノーズビーム砲
ビームサーベル
概要
大洋が開発した水陸両用MSであり、同時期に開発されたヴァサーゴに対して此方は制海権維持を目的として開発されている。本機は大洋が来るべき大西洋連邦との冷戦に際して大西洋連邦の海軍戦力に対して大洋上層部である
夢幻会が不安を持った為に開発された機体である。その最大の特徴は背部に背負った大型のバックパックであり、此れは水中でのMA形態を取る際に使用される物である。
そして、その武装も大西洋連邦を意識してか、格闘戦、又は近距離での敵機撃破に重点を置いた武装となっておりシザースビーム砲にビームサーベルを形成する機能を付与する等、オリジナルとは違う改造が施されている。
828 :ナイ神父Mk-2:2016/11/02(水) 00:25:34
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最終更新:2016年11月07日 12:56