528 :名無しさん:2016/11/08(火) 13:57:01
「ゲートが世界のあちこちに開いてしまった世界:
アメリカ編」
ゲートに対してもっとも迷惑を被り、国民が罵声を浴びせた国となれば間違いなくアメリカ合衆国だろう。
この国にはその国土の広さ故か複数のゲートが開いた。
問題は開いた先が「アメリカ風邪を神の審判と看做し、用いる狂信者の国となった東海岸」「人種差別、人権侵害上等。ナチスの従属国といえるテキサス共和国」「実質日本帝国の従属国といえるが、一番史実アメリカに近いカリフォルニア共和国」といった国だった事だ。
これらに対して順番に状況を説明していくが、まず最もまともな対応となったのは間違いなくカリフォルニア共和国だった。
確かに当初、日本帝国の傘下といえる状況に眉をしかめた者はいた。
が、憂鬱世界の状況を知れば知る程にその反感も消えて行った。
何しろ、カリフォルニア共和国の選択肢など憂鬱世界のアメリカの状況を知れば知る程なかったと言わざるをえないし、史実側と開戦時の状況が異なる事も分かってきた。
これに積極的にかかわったのがカリフォルニア共和国のハーストだった。
彼にしてみれば、日本帝国に恩を売る好機と見たし、うまくすればカリフォルニア共和国に史実米国からの援助を得られるかもしれない。むしろ下手に日本帝国に反感を持たれた挙句にテキサス共和国などに支援されたりしたら最悪だ。故に非常な熱意をもって、史実アメリカの世論誘導を行うべく発言を行った。
この為に、史実アメリカ側も「憂鬱世界側のアメリカが滅んだのは自然災害と、その発生にも関わらず復興を放り出して戦争を続行した旧連邦政府。更に旧連邦が研究していたBC兵器の流出」という認識が急速に広まっていった。
責めようにもこれでは完全な自滅としか言いようがない。
結果、他の地域の状況が明らかになるにつれ、むしろカリフォルニア共和国とそのバックである日本帝国への感情は好転していった。
ややこしい事態が発生したのはテキサス共和国だった。
この国とは最初から険悪な睨みあいに発展した。
当り前だ。仮にも「自由の国」を挙げているアメリカ合衆国が公然と人種差別上等どころか同じ白人さえも東海岸出身という事で差別し、迫害する。そうなった背景そのものは理解出来ても、或いは国境を越えようとする感染者候補に対する苛烈な反応もまあ理解出来たが、何しろテキサス共和国は完全なナチスの従属国だ。
テキサス共和国の国旗へのハーケンクロイツの記載こそ当のナチスドイツに止められたものの、敬礼はナチス式だし、ナチスの旗自体は普通に飾られている。
これらと相まって、更にハーストの巧妙な宣伝工作も重なった結果、「ナチスの同類」と看做されていった。
おまけに、憂鬱世界のナチスドイツの行動が知られるにつれ、彼らへの反感は更に拡大していった。憂鬱世界には憂鬱世界の事情があるにせよ公然とした奴隷制に、愚民化政策など認められるものではなかった。少なくとも表向きには。それを認めれば、それこそ史実アメリカの根幹自体が崩壊する。
そして、それを更に上回るのが東海岸に成立した狂信者達の国だった。
このゲート、何と最初はよりにもよってニューヨークのど真ん中、セントラルパークに開いた。
突如として出現した巨大な黒い円盤とも見えるゲートにそこはアメリカというべきか、迅速な動きを見せ即座にゲート周辺を軍が閉鎖。その後、偵察部隊が送り込まれた。
この時、史実側に比べ憂鬱側の反応がなかったのは津波で崩壊したニューヨークに今も尚住む人間の数が史実側とは比べ物にならないぐらいに少なかった為だ。事実、憂鬱世界のニューヨークの惨状を見た史実側の人間は誰もが絶句したという。
崩壊した建物、今も尚残る残骸、そこは正に放置されたゴーストタウンであり、と同時にそこに見えるエンパイアステートビルなどの姿は確かにニューヨークでもあった。
そうして、やがてそこに生きる僅かな居住者らを中心に接触。
更に彼らのまとめ役となっていた教会の司祭らと接触。実に友好的な関係を築き上げ、津波によってニューヨークが崩壊した事などの情報を得た事で支援活動も活発化する事となった。
529 :名無しさん:2016/11/08(火) 13:57:35
その関係が急転したのはカリフォルニア共和国からの急報であった。
当初は手探りで会談を進めていた史実アメリカと憂鬱カリフォルニアは正式な会談を持った訳だが(テキサスとはこの時点で武器を持った睨みあい状態であった)、ここでふとカリフォルニア共和国側が尋ねた一言がその原因となった。
「そういえばそちらにはうち以外にもこれと同じものは出現したのですか?」
「ええ、ニューヨークや南部にも」
その言葉を聞いた瞬間、カリフォルニア共和国の出席者はハースト含めた全員の顔から一気に血の気が引いたという。
その様子に疑念を持った史実アメリカ側がどうしたのかと尋ねる間もなく血相を変えたカリフォルニア共和国側から事情が語られる事になった。
かくして、仰天した史実アメリカ側も急ぎ連絡を行い、急遽閉鎖を行った。
何しろ、余りの友好ぶりにニューヨークで半信半疑ながら責任者が司祭に「そういえばここらでは病気が流行っているとか?」と尋ねた所いともあっさりと。
「病気などではありません、神の審判です」
そう、実ににこやかな笑みで語られた、という。
「皆さんも間もなく審判の結果が分かると思います。怖れる事はありません。神の御心のままに委ねればよろしいのです」
当り前の話だが、言われた史実アメリカ側は驚愕した。
即座に離脱を図った史実アメリカ側はそれと同時にマンハッタン島を隔離した。
後に憂鬱世界に赴いた人間多数に強毒ペストの感染と、蔓延が発覚。ボランティアやNPO、マスコミ関係者などが多数集まっていたニューヨークは一転、混乱の場と化した。
ワシントンはこれに対して強権を持って対応。
ニューヨークを完全封鎖し、軍に武器をもっての対処を命じた。早い話が、脱出を図る者を射殺せよ、と命じた訳だ。
この強硬な行動によって当然だがニューヨーク証券取引所などが閉鎖に追い込まれ、また多数の死傷者が出た事で経済含め甚大な損失を史実アメリカは被る事になる。それでも、ギリギリの所で感染の拡大は食い止められ、ニューヨークの外では数名の感染者が出たものの、事前に同じくニューヨークを訪れた者とその人物と接触した全員を強制隔離。封じ込めにギリギリの所で成功している。これは支援活動が本格的に開始されてまだ三日目と短かった事が原因でもあった。
ここで憂鬱世界側の狂信者達は牙を剥いた。
審判を逃れようとする不信心者と看做した彼らは離脱を図る米軍に追いすがり、一部がゲートを潜り史実側へと到達する……寸前で全員が射殺された。
だが、このままでは彼らは再びやってくる。
故に決死の覚悟で全身をバイオハザード用の防護服に身を固めた志願者による部隊を送り込み、掃討。後に、憂鬱側のゲートを囲い込む形で密閉型の要塞を構築している。
しかし、問題はここからで、もし他にも東海岸の狂信者達の勢力圏に通じるゲートがあれば大変な事になる。
実際、後に更に三つのゲートが発見されるもいずれも憂鬱アメリカでは人が暮らしていなかった地域であったのが幸いした。史実アメリカと憂鬱アメリカでは人口にも大きな差があり、また情報の伝達速度にも差があった。すなわち、史実アメリカ側が大々的な広報活動によって即座にアメリカ全土に対して緊急警告を発したのに対して、これらの広報網が発展していなかった憂鬱アメリカ側はゲートの発見に手間取った。この為に他のゲートからの攻撃が行われる前に史実アメリカはゲートの封鎖に成功したのだ。
530 :名無しさん:2016/11/08(火) 13:58:08
しかし、これらの一連の騒動はアメリカという国の余裕を奪い去った。
ニューヨークの閉鎖は甚大なる経済的損失をアメリカに与え、株価は暴落。
更に東海岸の狂信者のみならず、テキサス共和国とも結局折り合いはつかず(つく訳もないが)、相互不干渉という名の武力による睨みあいに陥った。それでもテキサス共和国側との本格的な武力衝突に至らなかったのは矢張り双方が東海岸に対して強い警戒感を抱いていた事と、防疫線の崩壊を懸念したナチスドイツがテキサス共和国に対して協力要請という名の警告を行った事が原因と後に判明している。
しかし、これらによってアメリカは海軍のこれまで通りの維持が困難になった。
海外の駐屯地からは随時撤退。日本の基地も大半は撤退したものの、横須賀には例外的に残している。これらを韓国は非難しているが、現実は単純に史実日本がアメリカの駐留費用の大半を負担しており、また整備も行っていた為下手に本国に戻して管理するより安く空母機動部隊を維持出来るとソロバンをはじいただけである。
事実この当時アメリカはやむをえず十隻の原子力空母の内、二隻をモスボール化、更に後継艦のジェラルド・フォード級を完成直前であった一番艦を除きキャンセルしている。
アメリカの保有する原子力空母の整備を行えるドックは世界でも四か所のみ、この内二か所が日本。
更にアメリカが保有する燃料貯蔵庫の内、本国含めて三本の指に入る規模のものが二か所も日本に設けられているし、膨大な量の弾薬が備蓄され、しかもこれらは日本でなら生産が可能。これらを全てアメリカ本国で担うとなるとそれこそとんでもない費用と手間がかかるのは容易に想像がつくだろう。
沖縄の緊急展開部隊こそ縮小し、グアムに引き上げたものの司令部を維持したのはそこら辺の事情が大きい。
反面、韓国やフィリピンからは撤退し、中国に対する牽制はカリフォルニア共和国の一件から一転して好意的になった日本帝国の派遣艦隊と共に質と量を高めて行っている。
これらには史実日本側において憂鬱日本の行動によってパヨクの活動が大幅に抑え込まれた(実質壊滅状態)のも影響している。
現状、残るアメリカ軍基地を有する海外の国は駐留費の負担額を大幅に増やす事で何とか撤退を食い止めようとしているが正式に駐留維持が決定したのは日本のみというのが実情で、結果としてアメリカの影響力はかなりの減衰を見せている。
史実側はこれによって世界情勢は大きな混乱状態に見舞われつつあり、今後憂鬱世界も絡んでの世界再編が行われるのではないか、という見解も強い。
いずれにせよ史実アメリカのゲートに対する感情は最悪であり、アメリカ国内でまともな交流が行われているゲートはカリフォルニア共和国にある一つのみである。
531 :名無しさん:2016/11/08(火) 13:58:46
以上です、うぃきなどへの掲載はご自由にどうぞー
最終更新:2016年11月14日 09:55