516: ナイ神父Mk-2 :2016/12/27(火) 00:26:48
大陸SEED その23

ヤキン攻略と各軍の動き

ジェネシスによって予想外の被害を受けた連合艦隊で有ったが、その後の大洋の報復攻撃によってジェネシスが崩壊した事と、その余波によってヤキンドゥーエの防衛部隊に大きな打撃を与えた事を確認した。その事から連合上層部は東アジア艦隊の残存部隊を一時的に大西洋艦隊へと編入し攻略を続行、翌26日午前ヤキンドゥーエ及びプラント本国の有る宙域へと到達した連合艦隊は一斉にミサイルを発射、それが戦闘開始の合図となった。二手に分かれていた大洋・ユーラシア艦隊と大西洋艦隊の艦からは次々にMS隊が出撃し其々、ザフトが敷いた防衛ラインの突破に取り掛かった。

この連合の動きに対して勿論ザフトも持てる全てのMS隊を動員して防衛隊を編成、迫り来る連合のMS部隊に対して多種多様な火器で反撃を始めた。しかし、機体自体の性能・数共に大きく連合から大きく差を開けられたザフトは時間が経つ毎に形勢が不利と成って行く。

『誰か弾をくれ!は、早く!』

『防衛本部、聞えるか!此方Wフィールド防衛隊、敵の攻撃が厳しく防衛ラインが維持できない、援軍を送ってくれ!』

『た、助けておかあ・・・』

通信網に入ってくるのは何れも此方の不利或いは声変わりもしていない様な少年、或いは少女達の悲鳴ばかりであった。その頭に響く声を聞きながらザフト古参のMSパイロット達は何とか敵を進入させまいと自身が与えられた高級機に搭乗しながら奮戦していた。

「チィ、次から次へと一体幾ら敵が居るんだ!」

「前方から艦砲射撃が来ています!」

「解って居る」

複座に乗るシホにそう返してコートニーは自身の乗機であるガーディアンをナスカ級とネルソン級の間に滑り込ませるとその侭盾を構えてビームを防ぎ切り、残った副腕からビームを発射してネルソンに向かって行く。しかし、発射したビームが艦砲と反発して射線が変わりビームは下方へと消えて行った。

「やはり艦砲の後だと磁場が歪むか・・・」

「気を付けて下さい、何発も艦砲射撃を受けて盾が熔解してきています。」

「それは知っている。此方にも警告が出ているからな」

「2時方向より直掩機接近!」

シホの言葉を聞いて其方のほうに顔を向ければ先ほど攻撃したネルソン級を護衛していたと思われるダガー小隊がビームサーベルを抜いて此方に格闘戦を仕掛けようとビームを放ちながら此方に近づいて来ていた。其れに対してガーディアンは残弾を残していたランサーダートを射出接近してくるダガーを次々と貫き撃墜していく。しかし、最後の一発が熱で歪んだのか射出されずにダガーの接近を許してしまう。

「システムエラー!?こんな時に!」

「くっ私は此の侭本体の武装のみで対応する。其方はシステムを復旧してくれ!」

そう言って腰部からビームサーベルを引き抜くとコートニーは機体を操作してダガーへと向かって行った。そうしたザフトの有する多数のエース達が全力を持って各戦線の維持に動いている頃、クルーゼも又自身に与えられた新型機であるプロヴィデンスのドラグーンをその超人的な空間認識能力で部隊単位で大西洋艦隊が有するMS部隊を駆逐していく。

「私が周辺のMS部隊を優先的に潰していく。君達は戦艦を優先して落して貰いたい」

「了解しました!」

クルーゼのその指示に後ろから付いてきていた幼年兵の乗るD装備のジンやゲイツが動き出し、護衛を失ったネルソンやドレイクへと取り付き撃沈していく。しかし、戦艦の数が減少してきた辺りで突如多方向からのビーム攻撃と現在相手をしている艦隊後より飛来したビームによって後方に控えていたナスカ級やローラシア級の一部が撃沈され、其方のほうへと視線を向けると此方へと向かってくるアークエンジェルに似た黒い艦とカラミティの改良型と思わしき3機のMSが存在していた。

517: ナイ神父Mk-2 :2016/12/27(火) 00:27:26
「まさか、足付きか?」

「足付き!?マジか、連合のエース部隊だろ」

現れた連合のエース部隊と思わしき戦力にクルーゼ隊を構成する面々にも緊張が走るが、その中で唯一余裕を保って居たのは隊長のクルーゼだけだった。

(あの時の足付きとは印象が違うな・・・何よりムウの気配を感じない、そうなると別の艦か)

「先ほど同様私がMS隊を抑える、他の兵は足付きの色違いを頼んだ」

そう言うとクルーゼはビームライフルで向かってくるMSに牽制を行いながら攻撃を仕掛け、その間に他のパイロット達は足付きの色違いドミニオンへと向かって攻撃を仕掛けた。其れをカラミティの改良型、「ブラストカラミティ」から見ていたサラ・イメリア中尉は此方に臆する事無く向かってくる敵機に笑みを深める。

「動揺している様だからてっきり逃げ出すと思っていたが・・・良いぞ、此れで良い。其れでこそ私が戦うに相応しい相手だ、お前もそう思うだろ?グレゴリー中佐、ノボトニー」

「知らん、俺は唯ザフト兵を倒すだけだ。楽しみたいなら一人で楽しめ。」

そう如何にも興味が無いと言った雰囲気で返してきたのはガンバレルカラミティに乗ったジャック・グレゴリー中佐であり、彼は静かに憎悪に燃える目で目の前のザフトを見据えていた。そして、その遣り取りを通信を介して聞いていたフランクリン・ノボトニー少尉はガンブレイドカラミティのコックピット静かにため息を吐く

「はあ、俺は何でこんなヤバイ奴二人に囲まれてんだよ・・・」

その言葉に反応したのか今度はノボトニーにイメリアは絡み始める。

「そのヤバイ奴二人に付いて来れるお前も十分そのヤバイ奴に含まれるんだぞ?」

「何はともあれ上官二人にその言葉は看過出来んな、後でお前には罰をくれてやろう。」

「まあ、何はともあれ無事アレを生き残ってからだ、来たぞ!」

その言葉と同時に3機はその場から散開クルーゼの放ったドラグーンからのビームを回避し、其々自身の機体の武装を使い迎撃を始めた。

大西洋連邦の部隊がそうして防衛部隊との激しい戦いが行われている頃、大洋とユーラシアが担当しているNフィールドでも大規模な激突が開始されていた。宙域の至る所でゲルググやハイザックが忙しく動き回りながらビームやマシンガンで敵機に攻撃し、対するゲイツやアサルトシュラウドを装備したジン部隊が手に持った大型ミサイルや無反動砲を使用して反撃している。そんな中目立つのは他のMSより遥かにデップリとした見た目を持つジ・Oで有るが、見た目に反して有する反応速度で敵機の攻撃を次々と避けながら手に持った大型のビームライフルで反撃していく様は、応援に駆けつけ接近戦を挑んだノヴァ・インフィニティのパイロットを驚愕させた。

「デカイ癖してなんて反応だ、コッチの攻撃が避けられる!」

ジ・Oに追い付こうと各部のスラスターを使用しながら脚部や上腕部のビームダガーも展開して格闘戦を挑むノヴァのパイロットであったが、ジ・Oの反応速度差が徐々に現れ始め、一瞬の隙を付いてジ・Oがノヴァの両腕部を今まで出していなかった隠し腕に持つビームサーベルで切断、武器を失ったパイロットが動揺した瞬間を逃さず横一文字にノヴァ・インフィニティを切り裂き撃墜している。

敵エースと思われる機体を撃墜し、戦線を縮小する為なのか、敵機が一時交代して行く様を見て、マツナガ大尉は自身に専用機として与えられたジ・Oの中でホッとため息を吐いた。

「まさか、このジ・Oに追いつくだけの機体が居るとは、流石はザフトと言った所か・・・」

「マツナガ大尉、大丈夫ですか!?」

そう慌てた様子で通信をしながら近づいてきたのはマツナガの指揮するMS隊の面々であった。

「私は大丈夫だ。其方も欠員は無いな?」

「はい、大尉に鍛えられましたから、此れくらいじゃあ落ちる奴は居ませんよ!」

「言うように成ったな・・・まあ良い、其れより敵機が一度退いた。我々も補給に戻るぞ」

「了解しました!」

そう元気良く返事をする隊のメンバーにマツナガは思わず笑みを零した。

518: ナイ神父Mk-2 :2016/12/27(火) 00:28:45
大蛇の咆哮とザフトの切り札

前線の艦隊がそうしたMS戦を行っているのと同時刻、戦闘を行っている戦域から少し離れ、ヤキンドゥーエを直線状に捉える位置に高雄型を中心とした小規模艦隊が攻撃に加わる事無く存在していた。艦隊の中央には樫野型のMS母艦の一つであるヨークと神風型輸送艦より幾多の部品が運び出され、MS隊の護衛を受けながらオッゴを初めとした作業ポッドたちによって巨大な大砲が組み上げられて居た。

高雄型のブリッジでは開発を主導したギニアス・サハリン技術少将がその様子を眺めており、傍に控えていたノリス大佐より声が掛けられる。

「組み立ては完了ですかな?」

「ああ、後は実戦で威力を確かめるだけだ。」

「発射を担当するヘンメ砲術長もベテランです。かれなら先ず失敗は無いでしょう。」

「ノリスが紹介した男だ、其処は信頼している。それでだ、ノリス、今言う事では無いがアイナの事だ」

「アイナ様の?」

「アイナの恋人・・・たしか、アマダとか言ったな。如何だ、上手く行きそうか?」

「はい、私が直接見た限りでは問題は有りません。上官で素行調査を行わせていたミラーズ少佐からも御墨付きが出ています。」

「そうか・・・成らば問題は無いな、ノリス、この戦いの終了後に私はサハリン家の当主の席より退く」

その言葉にノリスは若干驚いた様子でギニアスへと視線を向ける。

「そう驚く事でも有るまい、私は如何にも当主の勤めより研究を行っていたい性分だからな、家督はアイナとそのシローと言う男に任せるさ」

「ギニアス様がそう決められたので有れば私が口を出す所では有りませんが、宜しいので?」

「ああ、もう決めた、だからノリスのその際はお前がアイナ達をサポートしてやれ」

「それは勿論」

「その言葉を聴いて安心したよ・・・どうやらヨルムンガンドも準備を終えた様だ。祝砲では無いが、精々大輪の華を咲かせるとしよう」

ギニアスがそう呟くのと同時に組み立てを終えエネルギーを充填したヨルムンガンドはその砲口より莫大な熱力を持ったプラズマを砲弾として発射し、射線上にあるあらゆる物体を焼き払いながらヤキンドゥーエの下部にある港湾施設に直撃し、内部で修復を受けていた艦艇やMSを消滅させ、さらに発生した爆風が内部に張り巡らされた通路を駆け巡り大きな衝撃を要塞内部へと与える。

激しく揺さぶられた要塞内部では上部港湾施設で待機中の艦同士が停泊地点より離れてぶつかり合い損傷するなどの事態が起きており司令室内部でもオペレーターが床に投げ出される等の被害が発生していた。揺れに襲われながらも何とか耐え凌いだパトリックは声を張り上げ被害を知らせるようにオペレーターに命じる

「被害状況は!?何が起った!」

「だ、第二港湾部にビームと思われる高エネルギー体の着弾を確認!停泊中であった艦に被害が出ています!」

「第一港湾部より報告です。今の衝撃で施設が破損、艦艇の補給設備に被害が出ているとの報告が入っています!」

「おのれ、ナチュラルめ・・・次から次へと戦略兵器を・・・止むを得ん、『オペレーション・ジャッチメントデイ』の発動を許可する!
ナチュラル共に此の侭我々が黙って滅びる事は無いと言う所を見せてやれ!」

その言葉と共にオペレーター達は再び忙しく動き始めた、そして、その動きの変化の影響は戦場となっているL5宙域では無く、地球圏近くのデブリが集まるデブリベルトに有るユニウスセブンの残骸で発生する。残骸周辺で待機していたザフト艦隊はヤキンドゥーエから放たれた信号をキャッチ、取り付けていたフレアモーターを機動させ、ユニウスセブンを地球へと向かわせ始める。戦いは新たな局面を迎えようとしていた。

519: ナイ神父Mk-2 :2016/12/27(火) 00:29:22
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最終更新:2017年01月16日 16:39