241 :名無しさん:2012/01/05(木) 22:14:55
安息は光年単位先ですら手に入らないというネタ。




――天孫たちの憂鬱――



 ―――西暦二ΧΧΧ年(昭和ΧΧΧ年) 太陽系第三惑星・地球 大日本帝国 本州 帝都 とある料亭


「……で、今度は何があったんだ?」

 帝都東京の一角に位置する、とある料亭。
 創業から『数世紀』という老舗中の老舗。
 その創業当時と変わらぬ和の心を提供する落ち着いた一室で、
帝国の影の重鎮たち――夢幻会は久し振りの会合を開いていた。

「面倒な事態、といったところでしょうか」

「やはりか……」

 当たり前のように繰り出された辻の言葉に、嶋田は深い溜息を吐く。
 数世紀前、彼らの存命中に解明されてしまった魂のメカニズム。
 それにより、彼らは今尚御國のために働かされ続ける運命を辿っていた。
 最初こそ『俺達が居ると後任が育たない』とごねてはみたが、
大日本帝国が星屑の大海に船出して久しい現在、人手不足も重なり、
有用な人材である彼らを遊ばせておく理由にはならなかった。
 何せ陛下ですら、精力的にご公務に励んでいる状況なのだ。
 最早彼らのような存在ともなれば、働かざる者は非国民、である。

「実は昨夜、太陽系とグリーゼ581……失礼。<敷島>星系を結ぶワープゲートの開通工事が行われたのですが、こんな事態になりまして」

 そう言いながら、辻は数枚の写真を畳の上に広げる。
 参加者が一斉に食い入ったその写真には、母なる青い星、地球の姿があった。

「……これが何か?」

 どうかしたのか、といった空気が参加者の間を流れる。
 だが、しかし。

「これは開通したゲートの向こう側の写真です。我々の地球ではありません。調査の結果、かつて我々が居た二十一世紀の地球と判明致しました」

「は?」

 その空気は続いた辻の発言によって、一瞬で吹き飛ばされる事となる。

242 :名無しさん:2012/01/05(木) 22:15:38
 西暦二ΧΧΧ年。
 坂を登り続け、雲を突き破り、星間国家に至った大日本帝国は何の悪戯か、
予期していた形とは別の形で『知的生命体』とのコンタクトを強いられた。
 かつての協議で別方向の宇宙に勢力を広げて余裕がない欧州連合・ドイツ第三帝国や
大英帝国などから『責任を取るべき』と対応を丸投げされた大日本帝国は
通常のワープゲート閉鎖処理を受け付けないまでに強固な安定を示した『事故』ワープゲートを介し、
より面倒な事になる前に二十一世紀の『平成』世界の地球と接触を行なう事を決定する。

 天孫とならざるを得なかった彼らの明日は一体どうなるのか。
 それは誰も知らない。

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最終更新:2012年01月07日 00:55