380: 名無しさん :2017/01/01(日) 21:35:22
パトリック・ザラの憂鬱

「もう、連合軍は、モビルスーツを実践投入してきたと言うのか・・・」

そう震え声で呟く親友、シーゲル・クラインを見て、私、パトリック・ザラは自らの後悔が募ることを感じた。
開戦前とは変わり、やつれてしまった友の姿は、哀愁が漂う。

「ま、予想されていたことです。
ニュートロンジャマー影響下における、国軍であるザフトが実証してきました。
確かに、連合軍のモビルスーツの実戦投入は予定より早いですが、早いだけです。
ザフトは十分、対抗できます」

そうシーゲルを気遣ってか、フォローを入れたアマルフィ議員に私は続いた

「前線からの報告によれば、連合軍の汎用機と重装機を相手に我々の最新鋭機、ハイ・マニューバは、機動力では圧倒。
損害があったとは言え、連合軍相手に戦果を上げた、との事。
議長が心配なさる事はない」

残念だが、これはハイ・マニューバが従来の連合軍の戦力に対して与えた損害であり、連合軍のMSに対して、ではない。
実際には、この二機種のコンビネーション運用に流石のハイ・マニューバ型と言えども損害が相次ぎ、損害比でも痛み分けに終わった。
通常型のジンに至っては、この短期間に練られたであろう連合軍の対MS戦術に開戦初期より損害が多くなっている。
ハイ・マニューバが間に合ってなかったら、と考えると背筋が凍るが、今は無理をして捻じ込んだ甲斐があったというものだ。

「そうか・・・」

若干だが、シーゲルが気を取り直した様にも見える。

「厳しいですが、手隙の部下を総動員して次世代機の開発を急がせます。
大丈夫ですよ、プラントは負けません」

そう言って笑う、アマルフィ評議員にシーゲルは頷き、背筋を正す。

「これから一層厳しい戦いとなるが、我々はもはや後戻りはできない。
賽は、もうすでに投げられている。
後はこのルビコンを渡りきるしかないのだ」

381: 名無しさん :2017/01/01(日) 21:36:07




開戦以来、自室になりつつある執務室に戻ると、早速私は奥底に置いてある『気付け薬』を取り出し、行儀悪く瓶に直接口を付け一飲みする。
ボトルを乱暴にデスクに置くと、予想以上に音が響く。
理事国との流通が途絶えた今となっては、まだ手頃だった日本製ウィスキー、因幡の5年物でさえプレミア価格だ。
今となってはグリマルディ戦線の影響で理事国側でも高騰していたりするかもしれないが。
雑多なジャンク屋を名乗る密輸業者は、食料を中心に持ってきているので、嗜好品は後回しにされている事情もある。
その事を思い出して、ばつが悪くなった私は、今度は丁寧にグラスに注ぎ、何時もより芳しい独特の香りを楽しむ。
ここに中米産の葉巻でもあれば最高だが、喫煙は妻と結婚する時にやめるように念書を書かされている。非常に残念だが。
まぁ、そもそも空気が貴重であるコロニーで、喫煙なぞした時にはすぐに治安部隊が来てすぐに捕まってしまうだろう。
行儀悪い地球育ちが、コロニーに移住する際にきついと言われる習慣のひとつだ。
地球戦線にいるザフト兵にも気をつけるように言わんといけないな。
理事国ではそうもないが、ザフトが展開する地域は旧世紀と変わらずタバコは安価で、手に入れやすい嗜好品だ。
それにプラントと比べ酒も破格的に安いはずだ。
非番の日にはしゃぐのは兵士の義務と言ってもいいが、羽目をはずしすぎるとプラントに戻って来た時には問題になりかねん。
戦前はムンゾから比較的安価な嗜好品が流れてきていたが、戦中となった今では当然の如く途絶えている。
食料に加えて嗜好品も流すよう要請するべきかもしれん。
南米で別の意味で盛んなコカが入って来ても困るが。
旧世紀で盛んであったそれは、CEに入っても盛んである。
現在は中和剤があるためそこまで問題はないが、トラブルに巻き込まれかねない。
今、南米においてプラントを支持する現政権はかつてのカルテル系の反社会組織が参加しているとも聞く。
派遣している隊には気をつける様に言う必要があるかもしれん・・・



そういう取り留めのない思考とともに程よい酔いが体に回るのを感じる。
そしてふと、会議室に置いて来た親友、シーゲル・クラインを思う。
民衆に強要され、望まぬ独立戦争の指導者として心身を削る穏健派のシーゲルの心労が積み重なっているのは、分かっていた。
元々、軍事に対して明るくないシーゲルは、他のプラント最高議会議員にはない、対外的なコネクションを活かし、戦争へのエスカレーションを予防するため最高議会議長に選出された。
それが、着任してからと言う物、L5事変からコベルニクスの悲劇を経て、不慣れな軍事を采配しつつ、この独立戦争を終わらせる道筋をつけようとしなければならない事態になってしまった。
本来であれば、タカ派の取りまとめである私が強権を行使し、民衆を抑えつつ戦時の指導を行い、シーゲルに講和に向けて動いてもらう予定だった。
それが今となっては、プラントの民衆を支持を持ちすぎているシーゲルを議長職から動かすのは難しい。
例え、今、本人が望んで議長職から降りたら民衆の疑惑と反感を買ってしまう。
私も今、議長職になれば手が回らず、過激的なタカ派に対する統制が緩む危険性がでる。

世の中ままならんものだと盛大なため息をつきながらボトルを片付ける。
プラント敗戦のその日まで書類仕事は逃げてはくれないのだから

382: 名無しさん :2017/01/01(日) 21:38:34
以上になります
いやぁ皆様にお見せするのが恥ずかしい出来ですが一応
トゥ!ヘァ! さんの世界戦プラント指導部はまともだと言うし、パトリック・ザラもこういう感じなんじゃないかなぁ

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最終更新:2023年11月05日 16:00