958: トゥ!ヘァ! :2017/01/09(月) 19:21:35
大陸seed アナザーストーリー その5 苦難と奪取
CE70年12月中旬
停戦明けから起きた地上のアフリカ、宇宙のL1宙域世界樹で起こった両決戦にて大敗を喫したプラントとその軍事組織であるザフトはこれまで以上の苦難に陥っていた。
アフリカではスーダンにおいての重要拠点を失い戦線が下がり、宇宙ではL1宙域において世界樹という月―地球間航路の最短経路を塞ぐ重要拠点兼月への前線拠点を失った。
これによりL2やL4への最短補給路が復活するだけではなく、最寄りの拠点を失った月面方面隊はL5宙域まで撤退したため、月方面においての連合戦力の大多数がフリーになってしまったのである。
他ではプラントにおいての現議会の支持率である。コーカサスの敗北から続き、アフリカ、世界樹での大敗は民衆に大きな衝撃を与え、議会へは失望と怒りが向けられた。
体調不良で倒れたシーゲルの代わりに新議長に就任したパトリックは就任早々に難しい舵取りを挑まなくてはならなくなる。
そして何より不味いのは人員の問題である。
地上・宇宙双方で大きな損害を受けてしまった。MSや艦船などはまだ親ザフト諸国の力を借りればどうにかなるが、それを操る人員だけはどうしようもない。
アフリカと世界樹で多くの精鋭とベテランを失い、その穴を埋めるためには本国部隊や比較的安定している南米方面軍からの人員引き抜きとそれぞれの部隊には訓練の終了した新兵が充てられることとなり各地のMS隊の根本的な質というのが下がってしまう羽目になる。
更に言えばまだどうにかなるといった兵器の数にせよ、あくまで計画通りに生産・配備できればの話であり、戦力と勢いを取り戻してきて連合がそれらが順当に配備されていくのを黙ってみているはずもないというのが議会とザフトの見解である。
また連合各国で融合炉の普及と共にNJ被害からの復興が進み国力が回復してきている現状では根本的な差も合わさり、プラントが生産するスピードよりも圧倒的な速さで戦力の補充と拡充が行われる。
現在ではアフリカ、世界樹において金よりも重い多数の精鋭の命と引き換えに連合部隊にも大きな被害を与えられたため暫くは猶予ができると思われるが、今までのような優位は望むべくもないというのがザフトにおける現状判断である。
まとめると多数の精鋭を失い軍(ザフト)全体における質が大きく低下。
数にしても時間が経てば回復してきた連合にこれまで以上に上回られることは必然。
おまけに民衆からの突き上げもきつい。
プラントやザフトの上層部は顔面蒼白を通り越してお通夜状態である。
しかし、こんな状況でも諦めるわけにはいかず軍備の再建計画を粛々と進めていた。
ここで戦争辞めますなんて言っても連合からは戦後に戦犯扱いされるだろうし、プラントの民衆に至っては自分たちを宇宙に漂わせることだって厭わないだろう。
閉鎖空間であるコロニー内では逃げ道は少ないのである。
そんな中でとある一方がもたらされた。
それはL3宙域に存在する大西洋のとあるコロニーにて連合の新型MSが開発されているとの情報である。
これには今までに見ない画期的な新技術が使われているとの話もあり、難易度は高いがザフトはこれらの奪取計画を立案。
連合の技術の解析と取り込みを図る。そして何よりも未だ解析できていない核融合炉の技術が一番の狙いであった。
CE70年12月25日
L3宙域 大西洋コロニー群
この日はクリスマス。ついこの間まで停戦していたためクリスマス休戦などもなく平時である。
兵士たちの様子としては序盤と違い幾らかの緩みが見える。
理由としてはまず一つ目についこの間の世界樹決戦において大勝したため。
ザフトの戦力が一時的にせよ大きな損害を被ったため通商破壊艦隊の動きも低調化していたためである。
二つ目としてはプラント方面へは要塞化されたルナツーとAEUのコロニー群が存在しており、大規模なザフトの部隊が真っ先にこちらに来る可能性は低いということ。
そして何より大戦勃発以降、この宇宙における大西洋の重要拠点は嫌がらせ目的の散発的な攻撃以外これといったものがなく、戦力においてもミノフスキー式融合炉へと換装を済ました艦隊と大洋からもたらされたMSを中心とした部隊が存在しているため兵士たちは安心していた。
クリスマスということもありどうしても緩んでしまう。
いささか情けないが兵士とて人の子である。またこの点においては他国のコロニー駐留軍も似たりよったりであり大西洋だけの問題ではなかった。
959: トゥ!ヘァ! :2017/01/09(月) 19:22:06
しかし、そんな中で事件は起こる。
突如コロニー内にて幾つもの爆発が起こる。
それも一つのコロニーだけではなく数基のコロニーにおいて。
そしてその混乱を知っていたかのように突然ナスカ級3隻からなるザフト艦隊がコロニー群に襲い掛かってきた。
大西洋側の司令官としては警戒担当は何をしていたとの怒号が飛び交うが、それもそのはず、このザフト艦隊にはプラント独自開発のアクティブステルス装置(原作におけるバクゥ戦術偵察タイプ搭載の試作品)が搭載されており、これによりNJ下によるレーダーの不調も合わせ秘密裏にコロニーまで接近できたのである。
更に参加しているナスカ級は艦艇に特殊なステルス塗料を塗り、色は宇宙に紛れやすいように黒、コロニー群の近くに来てからは推進装置を切り、僅かな空気噴射による機動調整によって近づいてきたという徹底ぶりである。
また船体には機動調整専用空気噴射タンクと逃走用の追加ブースターが備え付けられている。
人員も今回の作戦のため先の決戦から生き残った中から選ばれた精鋭たちである。
搭載MSに至ってはシグー・ハイマニューバとジン・ハイマニューバのみの編成。
コロニー襲撃において民間居住区への被害を出す可能性を極力減らすためカノーネやディープアームズなどの高火力機は除外されている。
なお残念だが作戦の成功性を優先して原作の赤服4人組は乗っていない。
この時期はまだ新兵であるためだ。
また同時並行で陽動のためL3とL5の中間に存在するAEUコロニー群にもまとまった数の艦隊による攻撃を開始。
こちら初めから陽動が目的のためそこまで激しい戦闘は行わず、終始一定の距離を取っての戦いとなった。
なんせ艦隊と言ってもザフト側は世界樹の決戦で敗れた敗残部隊を急遽まとめた部隊に過ぎず、また新兵の割合も大きかったため積極的な攻撃ができるだけの練度を確保していなかったのである。
AEU側にとっては突然のザフト艦隊接近の報告に驚きながらも常日頃準備してきた甲斐もあり、すぐさま迎撃態勢に入れたが敵が距離を保ったまま積極的には攻撃してこないので怪しみながらも防衛体制のままである。
逆に攻勢に出れればいいのだが、他の国々と違い本国が戦火にさらされ地上軍が優先されている今では宇宙軍は中々当初の損害を回復できず、結果としてプラント本拠地から近いということもあり被害が大きなものになるであろう攻勢はかけず、後背地の大西洋コロニーに連絡を入れ、自軍は防衛体制にて敵の様子を見るということとなる。
戦前から潜ませていた数少ない工作員を使いコロニーの各所で混乱を起こし陽動。
その隙に速力に優れるナスカ級三隻とその搭載MS部隊が各地の湾口設備を破壊。
急ぎ出てきた防衛のための大西洋艦艇やMS、MA隊も迎撃。
味方が連合部隊を抑えている間に奪取のための特務部隊とそれを援護するMS部隊が目標のコロニーに侵入。
市民への被害を最小限に抑えるため市街地は出来るだけ避けながらも新型が配備されている区画へ侵入。
邪魔をする大西洋の歩兵隊などを蹴散らしながらも特務隊が5機の新型機のいる区画へ突入。
「この機体はいただいていく。ザフトの栄光のために!」とのセリフを残し特務隊Gタイプ5機を奪取。
起動させたばかりの機体を四苦八苦しながらも操り味方MSに護衛され、外で暴れる味方ナスカ級へと帰還。
そのままザフト艦隊は長居は無用とばかりにL3宙域か脱兎の如く撤退していった。
このことに慌てたのは何を隠そう大西洋連邦の上層部である。
ようやくまとまった数のMSの配備が始まったとはいえ南米戦線は停滞。
コーカサスでは大きな被害を受けながらも新ソ連と東アジアが勝利。
アフリカではBUと大洋が大勝し、世界樹の決戦には参加できたものの主役はやはり大洋に取られてしまっている状況。
月では自国のエースが活躍したとはいえ流石にここで恥の上塗りはできぬと駐留していた艦隊の中ですぐさま動ける船と部隊を見繕い異常なまでの速さで追撃艦隊を編成。
そのままザフト艦隊の追跡を開始した
また恥を忍んで近場のAEUにも追跡の艦隊を出すように連絡したが、こちらは陽動に出てきたザフトの艦隊と戦闘中であり、戦力は出せないと断られてしまった。
しかし、この時両者の状況を詳しく説明できていればAEU方面においては相手の動きを見て何かが可笑しいと気づき、攻勢に出れたかもしれない。
だが他の連合国と違いこれといった勝利を得ていないAEU軍にとってザフト艦隊とは自分たちを散々蹴散らした相手であり、世界樹の勝利で士気は高くなれど侮るべき相手ではないという慢心は存在せずとも消極的な姿勢であった。
960: トゥ!ヘァ! :2017/01/09(月) 19:22:49
後にここでAEUが攻勢に出てそのまま追跡艦隊も出していればザフトの貴重な戦力を更にすり減らすことに成功し、大西洋のG
シリーズは奪還できる可能性は高かったと言われる羽目になるがこれは後知恵というものであろう。
当事者ではない者たちは幾らでも景気のいいことを言えるのだ。
さて、奪われた大西洋としては面子丸潰れどころではない。BUからはこれで半世紀以上皮肉られるだろうし、大洋は笑顔で怖いこと言ってくるのだ。
追跡のための奪還艦隊はザフトの特務艦隊を追ったが、ザフト艦は船に載せているアクティブステルスを使い疑似的なステルス状態に。
そのせいで中々発見できなかったが、ここで大西洋艦隊はMS以外の艦載機の大半を斥候として放つという数でカバーする力業を展開。
ミラージュコロイドのように物理的に透明になるわけではなかったザフト特務艦隊は敢え無く発見されてしまった。
発見の報を聞いた大西洋の追跡艦隊は足止めとして残っていたMA、航宙機部隊をザフト艦隊へと発進させ、更に艦隊から足の速い駆逐艦や巡洋艦のみを選抜した先遣艦隊を分離派遣。徹底的な足止めを狙う。
対するザフト艦隊は速度の速いナスカ級とはいえこれだけの規模の艦隊から無傷で逃げ切ることはできぬと判断。
奪ったG五機を乗せたナスカ級一隻のみをプラント本国方面へと逃走させ、残りの二隻と艦載されている12機のMSにて決死の足止めを図る作戦に出る。
結果だけを言うならば大西洋の追跡艦隊はG
シリーズを奪還することは出来なかった。
文字通り全滅するまで暴れたナスカ級2隻と12機のハイマニューバタイプに乗ったベテランに先遣艦隊も本隊も足止めされてしまったからである。
艦隊においても洒落にならない被害を受けてしまいここに大西洋はG奪還作戦は失敗に終わった。
ザフトとしても連合の新型を手に入れる代償に金よりも貴重なベテランパイロットと船員と艦艇を失うことになる。
しかし、奪ったG
シリーズからはプラント製に比べ小型化されたビーム兵器にフェイズシフト装甲、ミラージュコロイドといった多数の新技術がもたらされ、アフリカと世界樹の決戦において多数の戦力を失ったザフトが後半も戦い抜いていく原動力となる。
残念ながらミノフスキー理論を完全には理解していなかったため、核融合炉の再現には至らなかったが、機体の構成からどのような仕組みや保護をすれば謎の粒子(ミノスフキー粒子)散布下においても兵器が戦闘力を落とさず戦闘続行可能かという最も重要な知識を手に入れることとなる。
大西洋においては今回の失態を挽回するために予定を前倒しに、1月中旬頃から南米攻略戦を開始することとなる。
また今回の騒動によって宇宙における各地の連合拠点ではプラント諜報員の徹底的な狩り出しが行われ、プラントの諜報網は半ば半壊状態となる。
人的資源や諜報員の質的に劣るプラントでは、より苛烈になった連合側のいぶり出しも合わさり、終戦まで諜報網の完全な立て直しがなされることはついぞできなかった。
961: トゥ!ヘァ! :2017/01/09(月) 19:23:22
○設定
前に一度説明したが今までの経験と必死の諜報活動から連合側では融合炉に必須であり、撒かれた場合は謎の電波障害や電子機器障害が起こる粒子が存在しているところまでは察している。
今回のG
シリーズ奪取に伴い、Gの構造を参考にザフトの電子機器に関しては出来る限りの対策を取ることとなる。
しかし、根本的なミノフスキー理論が謎のため融合炉の再現には失敗している。
なおGを調べる際には今まで大洋MSの残骸や鹵獲機を調べてきた経験から初めから機体の解析とエンジン部分の解析は別々のステーションで行われることとなる。
案の定エンジン部分の解析では大洋MSの解析時同様の融合炉周りの調査の際にはミノフスキー粒子がばら撒かれ調査機器が不調をきたす事態となった。
上記のように機体本体の解析の方は別途のステーションで行われていたため問題はない。
ザフトはここからPS装甲とミラージュコロイド、イージスのX300番台からの変形機構、ストライクのストライカーパック、そしてビーム兵器の小型化と収束化技術を手に入れることとなる。
無論実機に反映されるのはまだ時間はかかるが。
劇中でも説明したような専用の改修をしたナスカ級3隻と搭載されていた18機のジンとシグーのハイマニューバタイプMS。
G奪取後逃走する際にはG五機を乗せたナスカ級では格納庫に入りきらなかった残り5機は艦外へとケーブルで繋がれ運ばれることとなる。
人員は全てザフト教導隊に入れるレベルのベテランばかり。練度を考え原作のような訓練校出たばかりの赤服はいない。
隊長はサトー・ミナギシ(原作サトー)
彼自身は殿部隊に残ろうとしたが部下に説得され泣く泣くGを搭載したナスカ級の護衛部隊に残った。
特務ナスカ級は通常ナスカ級の大よそ2倍の値段。
更に今回選抜したMS隊のパイロットは全員後方において教官職を果たせるレベルのベテランだったため、そのうち12人のMSパイロットと特務ナスカ級2隻とその船員の戦死は現状の戦力不足で悩むザフトにとっては手痛い損害となる。
今回の大戦犯。言い訳できないので上層部も焦っている。アズにゃんは絶叫している。
原作と違い味方拠点の中でしかも一応は警備も厳重にしていたのにG五機すべてが奪われた。悲惨。
流石に不味すぎる失態だったため、名誉挽回するために予定を一か月ほど前倒しにして新年明けて半月ほどしたら南米へ大規模な侵攻を開始する模様。
その時には地上でも運用試験を行っていたGタイプが多数投入される予定である。
また大洋からライセンス生産しているザニーとガンキャノン、そして鹵獲し連合系OSに書き換えたザフト製MS部隊も全て投入する一大反抗作戦である。
大西洋「あああああああああ」
AEU「うちは今回仕方ないから!ビビったわけじゃないから!」
BU「これは紛れもない戦犯ですね」
大洋「今回ばかりは言い訳できないなぁ」
新ソ連「ウチや東アに見たいに兵力を生贄に捧げて国威を回復しなきゃね!」
東アジア「んだんだ」
962: トゥ!ヘァ! :2017/01/09(月) 19:24:14
投下終了
書いていて少し大西洋が可哀想になった(小並感)
なので次回は南米で大暴れするよ!
そろそろ各国のMSも出てくる頃合いだしね。
最終更新:2023年11月05日 15:49