228: earth :2016/11/30(水) 23:31:01
 『時空の迷い子達
 《不死者との会談》

 地球帝国情報省の大臣室でライガーはかつて生活を送っていた世界の現状を知らされる。

「……悲惨なことだな」

 彼がいた世界は地球に首都を置いた銀河連邦と銀河連邦からの独立を目論む植民惑星群との全面戦争は銀河を二分する大戦争が起きていた。
 彼が知る原作では全面戦争を危惧した《ライガー教授》が、ジオイド弾で連邦を早期に崩壊させたために大戦争は回避されたが、そのような
策動がないため、その世界では危惧通り全面戦争が勃発した。
 最初はジオイド弾がなかったが、戦争の長期化によってジオイド弾が登場。ただの一発で惑星を破壊しかねない大量破壊兵器のパイ投げ合戦
が始まったのだ。
 彼が恐れる超人ロックはこの動きを何とかしようとしたが、銀河を二分する大戦争を止めることはできず、長く続いた戦争は人類社会を破壊し
人類はその数を半分以下に減らした。あちらの世界の地球もジオイド弾で消滅してしまった。 
 その世界に地球帝国が進出すれば人類社会の再建の一助となっただろうが、ライガーは瓦礫の山から資源や技術を回収し、生き残った惑星から
使えそうな人材をこちらの世界につれてくる程度の動きしかしなかった。  

「下手に関わったら首を折られて死ぬ。それよりも生き残っている技術や資源、人材を漁っておこう。
 エスパー共の管理と勢力圏の拡大を考慮すれば、出来れば《プラグ》と《エスパーコントローラー》は欲しいからな」

 急激な勢力圏の拡大によって地球帝国が抱える不穏分子は増えることはあっても減ることはない。
 地球帝国は不穏分子を始末するために超能力部隊(鬼攻兵団)を運用し、絶大な戦果を挙げていた。
 かといって超能力者を全面的に信用している訳ではない。彼らが叛乱を起こすことも考慮して、超能力者の動きを封じるジャマー、脳に打ち
込んで超能力を封じる《針》も運用していた(山田博士の23世紀技術は切り札であるため早々に切りたくないという思いもある)。
 しかしそれだけで満足しないライガーは超能力を封じるのではなく、《針》を打ち込んだ人間を超空間通信とワールドナビゲーターを用いて
《端末》にできる《プラグ》の開発を推進していた。
 やっていることはまさに悪の帝国そのものだが、ライガーは「ドラえもんにだって似たような能力を持った道具、種族がいるだろう」と言い
放って開き直っている。 
 しかしそんな彼にとっても恐ろしいのが、原作主人公であるロックがこちらの存在をかぎつけて干渉してくることだった。 

「まぁこちらが先に手を出さなければ、或いは銀河帝国のように《浄化》をしなければ反帝国運動はしないだろうが……いや、奴のことだから
 こちらの人間があちらの人類再建に役立つ人材や物資を吸い上げていることに激怒して攻めてくる可能性はないとは言えないか。いやそこは
 話し合いで《地球人類》が生き残るため、と言えばワンチャンある、か? ガトランティス帝国のこともあるし説得力はある」

 ブツブツ言いつつ、ライガーは大臣室を歩き回る。

「ふむ、多少リスクはあるが、あの男に同じく不滅の存在を会わせるのが良いか……いや、でも俺たちもある意味で《パパ》としていることが
 近い?……いや、少なくとも人類文明の保護はしているから」

 暫くの逡巡の末、ライガーはオリハルコンでできた不滅の男、ワッハマンと顔をつないでおくことにした。

「ワッハマンだって、自分と同じ永遠を生きる存在には興味を持つはず。まぁさすがに二人が意気投合してこちらに喧嘩を売ってきたら
 洒落にならないが……積極的に喧嘩を売っていかなければワッハマンも敵対はしないだろう」

 かくしてライガーはワッハマンにあうために、人類が滅んだ世界の地球に向かった。

229: earth :2016/11/30(水) 23:31:36

 ワッハマンが人類の敵であるパパを倒して幾星霜。人類どころか、生命体の多くが死滅し、荒涼とした大地に変わった地球。
 そこには小柄な少女の姿をしたアンドロイド・レミィと、オリハルコンで作られた不滅の男・ワッハマンがいた。

(見れば見る程、黄金バットそのものだよな……)

 巨大な宇宙船、そして仰々しい護衛と共に現れたライガーに最初は警戒をあらわにしたレミィだったが、ライガーは極力丁寧な姿勢で
接した上、素っ裸だったレミィに服をプレゼントし、彼らにとって久しぶりの料理を振る舞って警戒心を解こうとする。

(この二人、料理を食べることが必要なのだろうか?)

 そんなことを思いつつライガーは話をつづけた。

「……それで地球帝国って国が、あんた達が支配する地球なのか?」

 テーブルをはさんでライガーの向かい側に座ったレミィの言葉にライガ―は頷く。ちなみにワッハマンはわれ関せずと食事をとっていた。
 このため会話はレミィとライガーの間で続く。

「我々もまた異世界人なのだが、滅亡寸前の地球人類の懇願を無視できなくてね。まぁ帝国というと多少聞こえは悪いだろうが、多少強引な方法を
 使わないと人類が滅んでいたんだ。その点は判ってもらいたい」
「ふ~ん」
「君たちが望めば、こちらの世界へ滞在することも許可できると思うがどうするかね?」
「少しこちらに都合が良すぎじゃないか?」 

 その疑問に対し、ライガーは顔色を変えずに口を開く。

「君たちはこちらの世界の人類の貴重な遺産とも言えるのだ。学術的な見地から言わせてもらえば、失われるのは惜しい」
「分解でもする気か?」

 小柄な少女の腕が変形して、太い鋼鉄の腕が現れる。
 明らかに物理法則に反したものだったがライガーは顔色一つ変えない。

「まさか。その気なら、わざわざ船に招かんよ」
「ふん。どうする?」

 レミィは横のワッハマンを見る。ワッハマンは突然笑い出した後、首を縦に振る。
 これを見たレミィは「仕方ない」という顔をする。

「行こうじゃないか。ただし下手な真似をしたら」
「判っているとも」

 かくして二人は地球帝国の客人として招かれることになる。

(うむ、ロックへのカードにはなるか?)

 彼はまだ知らない。
 後に3人が意気投合(?)した上で盛大な珍道中を別世界の銀河で繰り広げることを。
 そしてその冒険活劇をまじかで見れないことに切歯扼腕することを。

230: earth :2016/11/30(水) 23:34:03
あとがき
ワッハマンの最終回を見て、いずれレミィもいなくなってワッハマンは
一人になるんだな、と思ったので、何とか救いの手が欲しかった……その思いが
こんな形になりました。
ロックの場合は探偵シリーズで不死の相方が出来ますが、ワッハマンはいませんから。

まぁ3人の活躍はたぶん書かないと思います(笑)。
というか本格的に書いていたら、それだけで本格的な長編になりそうですし(汗)。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2017年02月08日 19:33