377: earth :2016/12/03(土) 22:51:07
地球帝国情報相として仕事にあたっているライガー。
この世界の地球人、そして異星人からはスパイの親玉のような扱いをされているが、彼自身は優秀な科学者であり、地球帝国の要であるワールドナビゲーターの設計にも深く関わっている。
転生者からすれば「故郷への帰還」を果たすためのツールと思われていたそのスーパーコンピュータであったが、ライガー自身には別の目的があった。
「宇宙と一体となり、宇宙のすべてを記録する。宇宙が滅んでも、宇宙を新たに生み出す力を持つ……まさに不死身の、永遠を生きる、全知全能の神……」
彼は確かに故郷への帰還を欲していた。
だが同時に科学者として、《究極の知性体》をこの手で作り上げたい、とも思っていた。
それが故に、彼はこの科学者としての欲と故郷への帰還という転生者の願望を両立させるものとしてワールドナビゲーターの建造を推し進めたのだ。
一応、山田博士がいた世界では世界のすべてを知る《宇宙完全大百科》があった。それは過去、現在、未来のすべてを記す知の宝物館だ。
しかしライガーはそれさえ不完全とし、そのすべての情報を収集し、蓄積し、分析し、それを応用できる《モノ》を作りたいと考えた。
「原作でライガーはライガー1を作り上げた。ならば、ドラえもんの23世紀、そして他の並行世界の技術を知る私なら、より高次の存在を作り上げることができる筈だ」
そんな彼の思いが籠められたワールドナビゲーターは自己進化を続けている。
ライガーが知る《原作》において、ライガー1が自己進化の果てに銀河帝国を乗っ取り、多くの不幸を振りまいたことを知っていても尚、ワールドナビゲーターに自己進化を続けさせる。
「この世のすべてを知り、世界の終焉さえ克服する……そうなれば、例え故郷に帰還したときに人類が、世界が滅んでいても、いや、消滅して過去に戻ることができない状態になっていたとしても、我々の手で再現することが出来る。まずは《スネーカー》をこの手で作り上げなければ」
情報省の大臣室の端末からワールドナビゲーターの現状を確認するライガーの顔には一種の狂気さえ宿っていた。
彼の脳裏には《世界の外》から観測した究極のコンピュータ知性体とも言える《スネーカー》の姿があった。
並行世界の宇宙において、ビックバンが起こる以前の文明が作り上げた究極のコンピュータ。宇宙と融合を果たしたコンピュータ知性体。
宇宙の全てを記録し、宇宙の生命体の進化に介入し、宇宙の終焉すら乗り越える。そして《ソレ》にとって不要な存在を歴史改変で抹消できる能力は、ライガーが欲するものと重なっていた。
尤も彼にとって、そんな存在でさえ通過点でしかないが。
「ははは、旧ヤマトクルーが我々に反発するのは、これを本能的に悟っているからかも知れないな。いやはや、連中の嗅覚は侮れない」
ブローネが改エルトリウム級を建造したように、ライガーはワールドナビゲーターのサブシステムの更なる構築のみならず、第二のワールドナビゲーターの建造を目論んでいた。
「ギガゾンビ、いや山田博士も、もはや反対はするまい」
彼の野望が成就できるか、それを知る者はこの世界にいなかった。
378: earth :2016/12/03(土) 22:53:29
あとがき
原作よりもマッド度が増したライガー教授でした。
転生者になるとまともになるパターンが多いのですが、今回はよりアレな感じに……。
スネーカー……天才テレビ君のジーンダイバーを知っているヒト、どれだけいることやら(汗)。
今から20年以上前の作品ですからね……。
まさかこの年で、SSに出す羽目になるとは思いもしなかったですが(苦笑)。
最終更新:2017年02月08日 19:39