572: earth :2016/12/06(火) 19:06:05

 『時空の迷い子達』 
 《見送る人々》

 地球周辺宙域に目を疑わんばかりの大艦隊が集結していた。
 全長が70キロに及ぶ艦隊旗艦・改エルトリウム級戦艦2番艦《セイレーン》、セイレーンには負けるが全長が10キロもある改スーパーエクセリヲン級戦艦の群れ。
 それは別の星間国家群からすれば超大型要塞が集結しているようにしか見えない。
 実際、この巨大な構造物が集まっている様を見せつけられた異星に住まう人々には宇宙要塞が集結しているように見えた。
 銀河帝国を疎ましく思う者たちをさらに追い打ちをかけたのは、見慣れぬ全長が200m近くあるヒト型兵器の群れ、そして地球帝国時代から見慣れた多数の艦艇の姿だった。
 波動エネルギーとモノポールエネルギーのハイブリットで動くエンタープライズ級戦艦、ゼノビア級巡洋艦、アマギ級戦闘空母、純粋に波動エンジンで動くブルーノア級戦闘空母、スーパーアンドロメダ級戦艦、ドレットノート級戦艦といった護衛艦隊とされた部隊の戦闘力も圧倒的であった。何しろ、彼らがその気になれば太陽クラスの恒星すら吹き飛ばせるだけの打撃力を有している。
 そして何より恐るべきは、これらの6000隻もの大艦隊(6割は完全な無人艦)を異世界に派遣しても尚、銀河帝国には十分な機動戦力があるということなのだ。 
 異世界に派遣される兵力の穴埋めとして新型艦の大量配備が発表されると多くの人間は絶句した。

「連中、並行世界の銀河でどれだけ搾取しているんだ?」

 旧ボラー連邦勢力圏でそんな声があがるほど、その軍事力は圧倒的だった。
 アンドロメダ星雲を支配していたガトランティス帝国も度重なる銀河系遠征の失敗によってついに力尽き、内戦状態に陥っており 今や外敵で銀河帝国を倒す力がある者はいなくなった状況でのこの大軍拡と遠征に、銀河系に住まう人々の中には底知れぬ恐怖を感じる者もいた。

「彼らはこの宇宙のみならず、全ての世界を支配しなければ気が済まないのだろうか?」

 銀河帝国の統治は穏やかであり、軍拡や遠征の負担を押し付けてこないために抵抗運動は起きないものの、膨張を止める気配のない銀河帝国がどこに向かおうとしているのか……そんな不安を感じる者も少なくなかった。
 ただし銀河帝国政府は今回の出兵は三賢者の古参メンバー、クローン将校、そしてロボットのみで行うとして、旧防衛軍将校を否定していたため、地球住民の多くは積極的に反対しなかった。
 家族や知り合いが危険にさらされる訳ではないという帝国政府の説明が彼らの態度を軟化させていたのだ。
 むしろこの遠征で、植民惑星が広がることに期待する者さえいる。
 旧ヤマトクルーはこの遠征を無意味な派兵といって批判していたものの、同調する人間は多くなかった。
 色々な思惑が交差する中、殴り込み艦隊はその姿を通常空間から消していった。

573: earth :2016/12/06(火) 19:07:15

 一方、帝国政府、正確には三賢者とそれに近い者たちは「まぁこれだけあれば瞬殺されることはないだろう」と考えていた。

「数こそ《原作》の銀河中心殴り込み艦隊の半分程度だが、質の面では宇宙怪獣とも戦える戦力だ」

 ブローネがそう自負するように、その気になれば宇宙怪獣とも戦える戦力だった。
 しかしそれでもなお、勝ち切れるかどうかわからない存在がいるかも知れないのだ。

「まだ実在は確認していないが、某邪神とロリコン探偵がいる世界やそれに類似した存在にはちょっかいを出すべきではない。
 対魔法戦闘の研究は進めているがノウハウ不足は否めない」
「ドラえもん時空は当然ですが、それ並みにヤバい連中がいてもおかしくないですからね」

 確認されていないだけで、実は邪神クラスの化け物がいました……などと言うことも考えられる。
 23世紀技術で強化しているものの、落とし穴があるかも知れないと危惧はあった。 
 故に艦隊司令官には武力衝突は可能な限り控えるように命じてあった。
 尤も艦隊司令官の出自を知るライガーと山田は何とも言えない顔をした

「しかし、彼が艦隊司令官とは……いや能力的には信用できるのは判っているが、《原作》を知る人間が知ったら失笑しかねないな」
「《原作》では、アレでしたからね……いや、まぁあれがあくまで後世の人間に書かれた形になっていることは知っていますが」

 ライガーと山田が何とも言えない顔をするが、ブローネは擁護するように言う。

「彼の能力が信用に足ることは判っているだろう? 23世紀技術に頼ることなく、ボラー連邦軍の戦線を突破して友軍を救出した実績もある。それがなければ私もあそこまで重用せん」
「……確かに。あの勝負勘はNTと言われても納得するレベルです」
「元の世界で活用できれば正規艦隊司令官に出世できたでしょうね。まぁ彼にとって、かの国が尽くすべき祖国ではなかったからこそ、こちらに来たのでしょうが……」

 そして三人は顔を見合わせる。
 すでに賽は投げられたのだ。彼らにできるのは祈ることだけだった。

「「「アンドリュー・フォーク大将に期待するとするか」」」

574: earth :2016/12/06(火) 19:09:02
あとがき
銀英伝から《彼》の参戦です。
担当した声優からさえも嫌われた人ですが、こちらでは勝負勘の強い転生者です。
まぁ結局は同盟を見捨てて地球帝国に参加したんですが(笑)。
次回は艦隊とフォーク提督(笑)の様子になります。

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最終更新:2017年02月08日 19:53