747: earth :2016/12/08(木) 21:55:05

 『時空の迷い子達』 
 《精霊王(笑)の日常》


 銀河帝国は並行世界に進出する際、いくつもの中継地点を設置し、銀河帝国の本拠を容易に特定されないように手を打っていた。
 殴り込み艦隊も本国出港後、わざわざ分散して各中継基地を経由してから再集結した程、機密保持には気を使っていた。

「世界間戦争も、神々(邪神含む)を相手にした宇宙最終戦争も御免被る。利益になるなら……多少の弱い者いじめはするがな」

 それがブローネ達の意思であった。
 かといってその準備をしないということはない。彼らは神々との戦争すら視野に入れて準備を進めた。
 自己増殖する採掘・工作機械を並行世界に解き放ち、資源を回収させ、軍需工廠を作らせ、必要な兵器を量産した。 
 ギガゾンビもとい山田博士が開発した蘇生装置で復活させた大魔王・デマオンや魔族を研究することで、彼らは魔法技術や対魔戦闘に必要なノウハウの蓄積も進めていた。今後はいくつかのファンタジー世界に実験部隊を送り込む予定だ。

「しかし劇場版ラスボスを復活とか……やっていることは《ギガゾンビの逆襲》ですね。ドラえもんが来ないことを祈りますよ」
『彼らを復活させたのは、念のために人類が滅んだ世界(ワッハマンの地球)。幾重も障壁を張り巡らせ、出られないようにしているし、最悪の場合に備えて宇宙艦隊を待機させ、23世紀製秘密道具を装備させた超能力者部隊と自動追跡機能を持たせた銀のダーツも用意してある……問題ないのでは?』

 ちなみに魔王のご機嫌を取るために、魔王の好物である栗饅頭も送られている。
 何はともあれ、楽観的な味方をするライガーに山田は不機嫌そうな視線を向ける。

「油断して手下にしたはずの牛魔王に娘を殺されたゲーム上のギガゾンビの轍は踏みたくないのですよ。しかしそれにしても……
 本気で魔法使いと戦うことを考慮しなければならないとは……」

 科学省の大臣室において山田博士とライガー(こちらは立体映像)は、現状に苦笑する。

『少なくとも山田博士がいた世界は魔法のような科学が行使される世界だった。それを考えれば違和感はないのでは?』
「あくまでも科学の産物だと判っていましたから」

 「この歳になって魔法使いと戦うことをまじめに考えなければならないとは」……とボヤく山田であった。 

『我らの故郷で『魔法使いと戦う』などと言ったら狂人扱いだ』
「神と戦うなんて言ったら、『厨二病乙』かと。まぁフィクションの中で邪神を含め神と戦う者たちには憧れましたが……
 実際に戦えと言われたら腰が引けますよ」
『ははは。確かに』

 そう笑いつつも神に匹敵する知性体を生みかねない男に山田は警告する。

「神と戦うだけでなく、自分から神になりたいと思う者は大抵、負けるのがお約束。我々も心しなければならないでしょう」
『勿論。私がワールドナビゲーターを進化させているのは、あくまでも故郷への帰還。我らの大願成就のため』
「……その言葉、信用しましょう」

 ライガーの立体映像が消えたのを見て山田は机の引き出しにある《保険》を思い浮かべる。

「世界で一番高価なコンピュータを、最も原始的な方法で破壊する日がこないことを祈りますよ……我々とこの世界の地球に住まう人々のために」

 そう言い終わった後、山田博士は派遣艦隊から送られた情報が記された書類を見る。 

「颱宙ジェーンか……あの中の向こうに何があるかは明らかになっていない。調査する必要があるか。颱宙ジェーンの対応が終わったら娘の時代だが、まぁ下手な接触は回避したほうが良いな。あの男がこちらに来たら、我々の方が傀儡になりかねないし、颱宙ジェーンの調査を最優先としよう。それにこちらは――」

 内の暴走に目を配り、必要な技術開発に関わり、更に帰還への手掛かりを探る男に惰眠を貪る暇はない。

748: earth :2016/12/08(木) 21:56:10
 あとがき
 ギガゾンビの逆襲を知っているヒトはどれだけいるでしょうか(汗)。あと颱宙ジェーンとか……。
 いや本当にこの話のネタについてこれる人ってどれだけいるのやら……というか需要あるのだろうか(苦笑)。

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最終更新:2017年02月08日 19:58