892: earth :2016/12/10(土) 23:17:18


 『時空の迷い子達』 
 《渡る世間は……》

 銀河帝国宇宙軍並行世界殴り込み艦隊は惑星連合とラアルゴン帝国の動きを監視するに留め、浮いた戦力を別世界に振り分けた。
 殴り込み艦隊は基本的に現地勢力に対して穏健な対応を心掛けているが、超越者、或いは文明が確認されず、なおかつ価値がある惑星に対しては陸戦部隊を送り込み、銀河帝国による領有を宣言してその版図に加えていた。
 かといって並行世界の新領土に地球人による植民は行われること基本的にない。人間が住める惑星に対しては三賢者が生産したロボット、遺伝子改造を受けたクローン人間が住む都市が建設され、人間の居住に適さない惑星は自律型資源採掘機械、工作機械がばら撒かれ次々に採掘施設やプラントを建設していた。 

「今や地球人類は三賢者が作るクローン人間や自動機械の恩恵なしには生きられない」

 そう評される程、地球は三賢者の作り上げたシステムに依存していた。
 加えてこれまでのガミラス戦役、ガトランティス戦役、デザリアム戦役で失われた多くの伝統的な文化も三賢者が持ち込んだ物によって復興された為、良識的な人間は「今や、人類は経済も文化も三賢者に依存した文明になった訳だ。さしずめ賢者による平和か」と自嘲した。
 中には三賢者に成り代わり、自分こそが地球と銀河の覇者になろうとする者たち、逆に帝国に寄生することで目に余る不正蓄財を試みる者もいたが、そのすべてが叩き潰されていた。
 何はともあれ、地球人類は幾らかの制限を受けつつも、戦前を超える繁栄を謳歌していた。

「科学者と科学者が作ったコンピュータに政治面と軍事面で支配され、機械とクローンに支えられた繁栄に酔いしれるか……
全くどこのSFだ。いや、もはやドラえもんとブリキのラビリンスみたいな世界になってくるな」

 科学省の一室に設けられたソファーの上で山田はため息を漏らす。 

「まぁあそこまで人類が軟弱になっていないだけ、まだましな方か」

 そんな山田にお茶が差し出される。

「どうぞ、大臣」 
「うむ、ありがとう。ハルミ君」

 ハルミと呼ばれた美しい女性。彼女は山田が新たに設けた秘書であり……人造人間でもある。
 オリジナルはタイラーのいた世界にあったのだが、諜報部隊によってハルミの残骸や予備部品がコピーされて持ち帰られたのだ。
 そして山田は過去への哀愁から、ハルミをそのままの姿で再現し、己の手元に置いていた。それが単なる自己満足であるということは判っていたが、それでも過去の、それも子供時代の思い出に多少なりとも浸れるのなら悪くないと思っていた。
 勿論、名目は回収した技術で作られた人造人間の実地試験であるが……。

(まぁオリジナルはあちらに残した。無責任三国志以降にも影響はない)

 そんなことを考えながら、山田はお茶をすする。

「うむ」

 「ああ、今、俺は多少なりとも気分転換を図れている」などと思っていた山田だったが、そんな時間は続かない。 
 突如入った部下からの電話報告に目をむく羽目になったからだ。

「ギルガメス軍? それはあの異能生存体がいる世界だろう?! もう確認済み? だったら尚更だ。
 曲がり間違っても容易に手を出させるな!! あくまで情報収集に留めるんだ。これから皇帝陛下と情報相とも話をする」

 必要な通達をし終えた後、山田はソファーに背中を預ける。

「全く……渡る世間(世界)は鬼ばかり、か」

894: earth :2016/12/10(土) 23:18:31
あとがき
主人公はチートのはずなのに、なぜかあまりチートの恩恵にあずかっていないように見えるのは何故でしょうね……。
という訳でみんな大好き、かのヒトの世界との遭遇……。
まぁタイラーと同じように静観が正解になるので、あまり話にはならないと思いますが。

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最終更新:2017年02月08日 20:13