245: earth :2016/12/17(土) 22:39:21
宇宙怪獣、異世界に現る……その報告を受けた銀河帝国上層部に衝撃が走った。
《どこでもドア》を使ってひそかに集まったブローネ、ライガー、山田は、皇帝府の小会議室に置かれた丸テーブルで頭を突き合わせて悩んだ。
ブローネは渋い顔で口を開く。
「改スーパーエクセリヲン級の戦闘能力は大きく向上している。搭載しているシズラーもだ。しかしあまりに数が違い過ぎる。1億もの宇宙怪獣を前に第12分艦隊をすぐに下げたフォーク提督の判断は正しかった。あれと戦うのはタイラークラスの幸運でもなければ不可能だろう」
ブローネの感覚で言えば改スーパーエクセリヲン級は例えるなら『スパロボでフル改造し、強化パーツ(?)を限界まで積み込んだスーパーエクセリヲン』のようなものだった。
厳密に言えば23世紀技術を含め異世界の技術で底上げを図っているので単純な改造という訳でもないが……。
ブローネの感覚は兎に角、さすがに1個分艦隊でまともに殴り合うことはできないというのは正しかった。
エクセルヲンのように宇宙怪獣の群れの中心でアルゴーを自沈させ、ブラックホールで相手を呑み込む戦術を取らず、真っ向勝負となれば数の暴力によって敗北は必至だった。
ライガーは「威力偵察、使い捨てにできる無人艦で一当て程度すればよかったのでは?」とも当初思ったが「宇宙怪獣の反応(反撃)が不明である以上は様子見に徹するのも策」と思い直した。
「帝国宇宙軍に代わり、《ガンガル世界》、いや第84観測世界の地球軍は最低限の仕事は果たしました。まぁ星系国家でしかなかった地球軍にしてはよくやった……そんなところでしょうな」
銀河帝国によって見捨てられたかの世界の地球に勝ち目などなかった。
それでも僅かながら宇宙怪獣を刺激してくれたおかげで、宇宙怪獣の手の内をある程度知ることができたのはそこそこの成果だった。
尤も儚い抵抗をつづけた宇宙艦隊群が蹴散らされた後、宇宙怪獣の攻撃で地表に生きていた生命は死滅した。
余談となるが、銀河帝国は宇宙怪獣が去った後、調査隊が送り込み、ガンガルの残骸を含めたいくつかの文明の痕跡を回収。後に滅亡した異世界人類の遺物として博物館に展示することになる。
「攻撃力、いやほぼすべての性能を最低でも《原作》並みと想定して問題ないでしょう。場合によっては速やかに上方修正するべきかと」
山田の意見に反対意見はなかった。
続いて彼らは『なぜあの場に宇宙怪獣が現れたのか』に議論を集中するようになる。
「第84観測世界の地球に縮退炉に相当する技術はない。ワープ技術もだ」
ライガーは念のために集めた情報を何度も確認した結果、宇宙怪獣を吸い寄せるような該当する技術はないと断言した。
これを聞いた山田は眉を顰める。
「だとすると、彼らの敵は最初から我々だった可能性があるのでは?」
「しかし、いきなり1億も送り込むかね? 我々は第84観測世界で一度も宇宙怪獣の類と交戦した記録はない。それとも1億もの部隊をいきなり送り込むのがあちらの宇宙怪獣の流儀と? 随分な大盤振る舞いだ」
第12分艦隊が第84観測世界に実際に侵入してそう日は経っていない。
何者かと交戦した記録もなければ、察知された形跡もなかった。仮に一方的に監視されていたとなれば大問題が……。
246: earth :2016/12/17(土) 22:39:56
「む……では、ワールドナビゲーターが示した可能性が?」
「我々以外の第三者があの宙域にいた……その可能性は十分にある。そして彼らが宇宙怪獣と太陽系周辺宙域で戦ったのなら、あの大群が現れたのも納得がいく。あれは増援、或いは本隊だった」
「そこに我々が太陽系内に現れたため、彼らは地球に向かった、と……ですがそれだと地球滅亡後に余所者と宇宙怪獣が
戦っているはず。それなのに何もないとは……」
山田が口を紡ぐのを見たブローネは、おもむろに口を開く。
「太陽系近傍から撤退した、或いは異世界に移動したか」
彼らは自分たちが知らない何者かが、並行世界をウロウロしているのではないか……そんな懸念を覚えた。
「仮に後者なら……友好的な関係を築かなければなりませんな。最低でも、異次元に住む紳士たちとの間に築いた関係を」
1mgも敬意を感じられないライガーの物言いだが、それを咎める者はいない。
「あとフォーク提督が懸念していた宇宙怪獣自身が異世界を移動している可能性は?」
この山田の問いかけに、ブローネは揶揄するように言う。
「宇宙怪獣が独自の能力を得た可能性もあるが、それ以上に異次元の紳士達が何かしら悪巧みをしていた可能性も考慮するべきだろう。連中は侵略を行うための手駒が欲しがっている」
「手駒に宇宙怪獣を選ぶ、と?」
「可能性は皆無ではあるまい。この仮説が正しい場合、連中は宇宙怪獣を使ってこちらの艦隊を壊滅させようとしたこと
になる……宣戦布告なしの騙し討ちだな。まぁ証拠はない以上、あまり言っても仕方がないが」
彼らの脳裏には銀河帝国が建造した無数の兵器群(多くが無人兵器)と異次元人が増殖させた無数の宇宙怪獣が激突する最終戦争が浮かぶ。
「いずれにせよ通常戦力の強化と並行して因果律操作装置の完成度をより高めなければなりませんな。それとその装置を
前線で柔軟に運用できるようにする用意も」
ライガーの言葉に山田が異を唱える。
「しかし安全性の面から考えると……」
「だが備える必要はある」
「……ヱルトリウム以上の巨艦を作る、と?」
「機動要塞と言うべきか」
(因果律、時間を操作する兵器を搭載した超巨大機動要塞……主人公が来たら、攻略される側だな。物語だと敵の奇襲で
乗っ取られて偉い人が「馬鹿な?!」とか言う奴だ)
戦闘機によって爆砕された某・死の星や某魔術師に制圧された宇宙要塞を思い浮かべ山田は苦笑するが、いつまでもそうしている訳にもいかない。
「早速検討してみましょう」
かくして銀河帝国は動き出す。
247: earth :2016/12/17(土) 22:42:35
あとがき
三賢者側は更なる軍備増強に乗り出します。
全長70キロの戦艦を超える超巨大機動要塞……物語だとラスボスで出てきそうですね(汗)。
まぁこちらには宇宙怪獣と言う化け物がいるので……。
しかし超巨大機動要塞、全長70キロ、10キロの超巨大戦艦、その周りにヤマト世界の宇宙戦艦の群れ……どんな世界なのだろうか……。
彼らの故郷である地球の住民が目撃したら発狂しそうだ(笑)。
最終更新:2017年02月08日 20:42