273: 百年戦争 :2016/12/18(日) 09:55:18
おはようございます
日米百年戦争の続きが出来ましたので10:00から投下したいと思います
あとローマ軍縮条約の設定を間違えていましたので訂正です
×艦齢15年未満は代艦建造禁止。
○艦齢20年未満は代艦建造禁止。
274: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:02:12
1925年。ローマ海軍軍縮条約によって海軍の拡張を抑え込まれたアメリカ合衆国は、日英に対して劣勢となった海上戦力に代わって陸上戦力の大幅な拡張を開始し、世界最長の戦線である米加国境を重厚な要塞線へと作り替えていた。
軍縮条約に従って廃棄された超弩級戦艦の16インチ砲を要塞砲として備えたこの要塞群は、中止された海軍の拡大計画から『ダニエルズ・フォートレス』と呼ばれる事になる。
「どうしたもんかな、アレ」
建設中の要塞線をカナダ側から眺めながら、カナダ駐留日本軍の指揮を執るその将軍は古びた水筒に口を付けて勢い良く傾け、甘辛い香りを放つ液体を喉の奥に流し込んだ。
澄み切ったカナダの冷気を肴に喉を焦がす酒精を楽しみ、同期の元帥へ水筒を乱暴に突きだす。
遠くカナダまで視察に訪れていたのを無理やり国境まで連れだされた元帥は無造作に突きだされた水筒を受け取ると、その持ち主と同じように勢いよく傾けた。
「儂の工兵隊で接近して爆破……と、言いたいが。兵子をぶつけたら、ぶつけただけ溶けるだろうな」
呆れたように酒精が混じった吐息を吐きだし、虚空に白い幕を張る。
「欧州で貴様らはオモチャを使って塹壕を突破したが、最後に兵子を乗り込ませて土地を占領しなきゃならんのは結局変わらなかった」
「突破するのは簡単だったんだがなぁ」
「気楽に笑いおって、誰が支援してやったと思っとる」
自身が走破した戦場を思い出してカラリと笑う将軍を、同じ戦場の後方で兵の手配に走り回っていた元帥はうんざりした顔で睨んだ。
「戦車があっても、占領するのは兵子の仕事だ。あの要塞砲の射程があれば進軍するこちらの後方を打撃できる、侵攻にも防衛にも面倒な代物になるだろうな」
「やっぱり貴様もそう思うか」
敷き布も無しにどっかり地べたへ座り込み、水筒に入れた酒を回し飲みにして話し込んでいるが、二人とも大日本帝国の最高級現役将官でありれっきとした勤務中の人間である。
かたや
第四次太平洋戦争において日本軍騎兵と反アメリカのインディアン義勇兵を率いて北米平原地帯を駆け回り、世界大戦が勃発すると日英が共同開発した戦車を装備する世界初の機甲部隊を指揮してフランスの塹壕戦を踏みつぶした男。
かたやその技術的知識を生かして日本工兵隊の近代化と拡大に尽力し、第四次太平洋戦争では乃木希典率いる第三軍のシアトル要塞攻略の礎となり、欧州の戦場で「日本の工兵に破壊されない塹壕を作れ!」とフランス陸軍に悲鳴を上げさせた男。
『騎兵の神様』秋山好古陸軍大将。
『工兵元帥』上原勇作元帥陸軍大将。
何が間違っても最前線と言えるカナダ国境で、仮想敵国の要塞を肴に酒を回し飲みしていて良い男達ではない。
「第四次の時のように迂回するのはダメか? 戦車が通れんような道を、騎兵で進撃する」
「それで迂回できても、いまさら馬ではなぁ……」
上原に返された秋山の言葉は自身の生涯をかけた騎兵が時代遅れとなった事を認める悲しみに沈んで――いや、戻ってきた水筒の軽さに落胆していただけかもしれない。
空になった水筒を未練がましく逆さに振って、秋山は背後に控えていた歩兵中佐を振り返った。
「つまり攻めるにせよ守るにせよ、あいつをどうにかする必要がある」
「はっ!」
雲上人たる帝国陸軍将官に急に話を振られて、その中佐は直立不動で返答する。
275: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:02:48
(一体全体何の話だ?)
上官の密会へ急に呼び出されて緊張しているものの、階級に似合わぬ奇妙な落ち着きを漂わせているその中佐に上原は不審げな視線を向けた。
「コイツがそうなのか?」
「ああ、貴様の所に送った無線装備開発の提案書、彼が書いたんだ」
「おお、あれか。ウチの戦闘工兵にちょっとやらせてみたが中々評判も良いようだ。形になったら機甲科にも回してやろう、戦車なら電源を気にせず持ち運べるぞ」
にこやかに秋山が言い放った言葉に上原は納得して頷き、中佐は無言で驚愕した。
(無線開発が工兵科に分捕られていったのはアンタらの仕業か!)
内心の絶叫を押し隠す中佐は、不意に上原から向けられた冷たい視線に息を飲む。
衣擦れの音も無く立ち上がった上原勇作陸軍元帥――薩摩示現流免許皆伝。
その腰には元帥刀。
中佐が気が付いた時には、一足で一間を駆ける示現流の間合いに収められていた。
「……」
自らの属する組織の名前を元帥から口にされ、中佐の表情が一変する。
上官に恐縮する佐官のものから、開戦を受けて号令を下す将官のものに。
「どうにも胡乱な連中で、儂は信用できん……が。帝国の役に立つなら、どんなに胡散臭い連中でも使いこなしてやるつもりだ」
中佐の表情の変化を面白そうに見やり、上原はニヤリと笑って見せる。
人を斬るのに殺気を放つようでは所詮二流。
一流の剣客である上原にとって斬るという意思表示など他愛の無い脅しに過ぎない。
それが分かっている秋山は何事も無かったかのように特命を告げる。
「そういう訳でヤンキー共の要塞線攻略の研究を任せる」
「貴様らのお仲間にも協力するよう伝えてあるからな、しっかりやれよ」
史実において皇道派の源流となった陸軍派閥を作り上げた男の言葉に、東條英機歩兵中佐は内心でがっくりと項垂れた。
「……不肖東條、全力で研究に当たらせていただきます」
組織的な根回しを終えた軍閥の長からの命令に、一介の中佐風情が他に何を言えるというのだろう?
(前より早く無線技術を開発しようとしただけなのに、どうしてこうなった!?)
再転生しても憑いてきた不運を嘆く東條を救ってくれる神様は、この世界にも居ないようであった。
騎兵の神様に目を付けられ工兵元帥に利用される事になった東條英機中佐は、両巨頭の後押しにより騎兵科から改変された機甲科の大佐にされてしまう。
かくして東條はダニエル要塞線攻略の為に陸空協調機甲戦術――すなわち電撃戦の研究を推進していく事になる。
276: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:03:26
夢幻会の憂鬱
人種差別と反人種差別の国内対立から世界大戦に参加できず、大戦後もただひたすら経済発展に勤しみ続けたアメリカ合衆国にとって、第四次太平洋戦争で日英に殲滅された海軍力の再建は最優先事項であり、独仏の経済的事情から開催されたローマ海軍軍縮条約など貧乏国家の戯言に過ぎなかった。
大日本帝国と大英帝国という二大海洋国家と対立するアメリカ合衆国が両洋に展開できる艦隊を建造しようとするのは、国家防衛という観点からも必要不可欠な事だったからだ。
大戦に参加出来なかった事でフランスを結果的に裏切ってしまった後ろめたさから一応軍縮会議に参加はしたものの、
アメリカは軍縮会議の席上で日英同盟の解消を強硬に主張して日英との対立を改めて鮮明にする。
日英米で同規模の海軍を保有したとしても日英同盟を存続させたのではアメリカが一方的に不利となってしまうのだから、アメリカの主張は当然な物であった。
しかしながらアメリカは最終的に日英同盟の存続と、自国が不利となる軍縮条約への参加を受け入れる。
それは日本との対立が始まって以降まともな勝利を挙げた事が無い海軍に対する、アメリカ国民の拭いがたい不信感の発露でもあった。
カナダと国境を接し、第四次太平洋戦争で戦場となった各州の住民は連邦政府に対して日英に対抗できる陸軍の整備を求め続け、そうしたアメリカ国民の声は欧州の塹壕において繰り広げられた地獄がアメリカ国内でも知られるようになるとより一層高まっていた。
これには予算獲得と勢力拡大を望むアメリカ陸軍のロビー活動も多分に含まれていたのだが、何よりもアメリカ政府自身が軍縮条約を無視して日英と無制限に建艦競争を繰り広げる事の理不尽さを理解していた。
アメリカが全力で戦艦を建造し続けて日英の合計に匹敵する大海軍を建設したとしても、日英はその半分の努力でアメリカ海軍と対抗する事が出来、しかも北米大陸によって太平洋と大西洋に戦力を分散させざるを得ないアメリカ海軍は、日英の倍の規模の海軍を整備してもようやく互角になるだけで圧倒するまでには至らない。
ならば一時的に海軍の正面戦力で不利になるのを享受して軍縮条約に参加し、日英の海軍拡大に足枷を嵌めた上でアメリカが勝利できる国際情勢を作り上げて最終的な勝利を目指す。
アメリカ合衆国はそう判断し、第四次太平洋戦争の後に就役させていた弩級戦艦八隻の破棄と引き換えに、条約の制限以下に規模を抑えた15インチ砲搭載のヴァージニア級戦艦五隻の新造を条約の特例として認めさせ、ドイツ帝国の提案を受け入れてコロラド級四番艦ウェストバージニアをフランスに売却。
ラファイエットへの改装費用を肩代わりしてフランスへと事実上譲渡したのを皮切りに、長期国債の低金利購入をフランスに持ちかけて大戦の疲労に喘ぐフランス国内に資金を流し込み、予算不足で中止されていたノルマンディー級戦艦の建造を再開させる。
さらにアメリカは革命の混乱が続くソビエト社会主義共和国連邦へと接近し、自らの大戦不参加によって崩壊してしまった対日英同盟の再構築を画策していく。
米仏ソの戦略的連携という選択は第三次太平洋戦争へと至った日本包囲網の焼き直しに他ならなかったのだが、大英帝国を敵に回してまでアメリカと手を組もうという国が仏ソの他に存在しない以上、アメリカに取りうる選択肢はそれしか残されていなかった。
もちろん日英に包囲された自国の国際情勢を根本的に解決しようと考えるアメリカ人は連邦政府内部にも存在し、その解決手段の一つとして日英との和解を求める勢力は南部を中心に一定以上の数が存在したのだが、他ならぬ日英同盟――というよりその片翼である大英帝国の側にアメリカ合衆国と和解しようとする意志が完全に欠如していた。
北米大陸に築き上げられたアメリカ合衆国の工業力、生産力、経済力。
その全てが世界帝国たるイギリスにとって目障りであり、アメリカという巨大な経済力を受け入れるには世界の市場はあまりにも小さかった。
そしてイギリスにはもう一つ、経済面以外にもアメリカと和解する事が出来ない重要な理由が存在した。
日本の敵、というアメリカ合衆国の立ち位置そのものである。
日英同盟を破棄してイギリス単独でアメリカと和解するという事は、アジア太平洋を勢力圏に収める大日本帝国との決別を意味し、王立海軍と同等の規模と練度を誇る帝国海軍との全面戦争の開始と同義であった。
しかし日米が太平洋で対立し続ける限り大日本帝国は日英同盟を簡単に破棄できず、アメリカが日本の敵である限りイギリスは日英同盟を通じて
アジア最大の帝国の行動に干渉できる。
それは大英帝国の世界戦略において重要な外交要素であり、日本に対する手綱をイギリスが簡単に放棄するはずがなかった。
つまりアメリカはイギリスの国益の為に、『日英同盟の敵』であることを望まれていたのだ。
277: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:05:05
1925年。イギリスによるアラビア鉄道株式会社設立と時を同じくして、アメリカはソ連のバクー油田開発に参入する。
一度動き始めたアメリカ資本は瞬く間にソ連への投資額を増大させ、バクー油田の開発のみならずウラル山脈の鉱山から東ウクライナの農業産業に至るまで、当時実行されていたネップに乗じる形でソビエト連邦全体に膨大な量の資金を染み込ませていった。
『狂乱の20年代』
後にそう呼ばれる事になる混沌の時代を過ごしていた当時のアメリカには、投資先を求める民間資本が満ち溢れていた。
断続的に繰り返される太平洋戦争と、二度に渡って行われた南北戦争。
これにより生じた莫大な浪費を満たす為にアメリカ合衆国は工業力と生産力を増大させ、日英との対立により有力な海外市場を獲得できなかったアメリカ資本は必然的に国内へのみ投資され、拡大再生産された資本は新たな投資先を求める。
人種差別主義者とKKKが銃器を手に街中で衝突する「内乱一歩手前、暴動の一歩向こう側」と評される治安状況の頻発さえ、『護身用』銃器の販売拡大という形でアメリカ経済の拡大に繋がっていた。
そうしたアメリカ経済の過熱は世界大戦中に一段と加速し、合衆国政府は有り余る国内資金を元に陸軍の規模拡大とカナダ国境線の要塞化を計画。さらに潜在的海軍力の整備――すなわち大規模な造船施設の拡充に乗り出し、対日戦用設備としてサンディエゴ、サンフランシスコ、シアトルといった西海岸の海軍工廠・造船所の大規模な拡大と建設を開始。ダニエルズ・プランとローマ海軍軍縮条約の締結へと繋がっていく。
そして軍縮条約が締結されると、こうした大規模公共事業からさえ溢れだしたアメリカ資金はようやく見つけた投資先である仏ソへと一気に雪崩れ込み、社会主義国家ソビエトに対する国外資本の大量投資という異常事態を発生させる。
共産革命によって成立した社会主義国家・ソビエト社会主義共和国連邦が、思想的に不倶戴天の敵である資本主義の権化・アメリカ合衆国の資本投下を受け入れた理由はただ一つ。
金が無かったからだ。
日英とアレクセイ=ナポレオンによるロマノフ王室脱出と、白軍主体のシベリア連合共和国成立。
これによってソ連国内の王党派及び非社会主義的共和主義者と彼らが保有していた金融資本はソ連から大量に流出し、ロマノフ王室の存続とロシア帝国の継承者たる艦隊政府の樹立は、革命政権であるソビエトが運用可能な資金をロシアから尽く奪い去ってしまう。
資本家階級の一掃、という点では共産主義の理想が実現された訳だが、理想の実現と共に労働者へと再分配されるべき富そのものもソ連から一掃されてしまっていた。
1920年のソビエト=ポーランド戦争によってベラルーシ、ウクライナをドイツ帝国と分割し、食糧生産地と若干の資本を手に入れる事に成功したが、ソ連全体を動かすにはあらゆる物が不足していた。
それ故にソ連共産党の指導者たるウラジーミル・レーニンは国家資本主義と揶揄されるネップを実行し、レーニンの後を継いだヨシフ・スターリンもアメリカ資本を受け入れてソ連経済の再建を推進せざるを得なかった。
278: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:06:14
無論これはトロツキーを始めとする他の急進的共産主義者や、ソビエトに参加している社会革命党の批判の的となったのだが、革命と内戦と対外戦争によって疲れ果てていたソ連国民はスターリンの経済政策を支持。
トロツキーの戦勝とスターリンの経済政策により国民の支持を一手に集めたソ連共産党は内部対立を一時棚上げにして、野党勢力である社会革命党を排除しようと――できなかった。
干渉戦争の危機を煽ってソビエトに取り込んでいたメンシェビキ、社会革命党の勢力は農相を務めるヴィクトル・チェルノフを筆頭としてソ連人民委員会議の実務系官僚と旧農奴層の支持を取り付けており、これを排除する為に新たな内乱を引き起こすような体力はソビエトのどこにもなかったのだ。
そもそも革命方針の異なるスターリンとトロツキーが共同歩調を取り続ける事は不可能に近く、共産革命の前段階として国家社会主義に舵を切るしかなかったスターリンと、赤軍を基盤に世界革命を目指すトロツキーによってソ連共産党は事実上分裂し、その間隙をついてマリア・スピリドノワ率いる社会革命党が政府官僚機構を掌握。
スターリン率いるソ連共産党、トロツキーを支持するソ連労農赤軍、社会革命党の人民委員会議=ソ連政府という三竦みが発生すると、それは資金不足から発火点を迎える事も出来ないままズルズルと慢性化していき、アメリカ資本の流入によってなし崩し的に制度化されてしまう。
表立った暗殺や内乱も引き起こせないほど疲弊した党・軍・政府の三者対立=トロイカ体制は、皮肉な事に国外から見ると穏健で理知的な民主主義的政治運営と見えないこともなく、表面上穏やかに睨み合ったソ連の政情はアメリカ資本家達の共産主義への警戒心を軽減させ、ソ連への投資を加速させる一因となっていた。
もっともその実情は外から見えるように平穏ではなく、表立って波風を起こせないソ連政界の裏側では、秘密警察チェーカーから発展したソ連共産党政治局KPPと労農赤軍情報局GRU、そして社会革命党が成立させた国家政治保安部GPUによる三つ巴の暗闘が繰り広げられる事になる。
アメリカが仏ソへと大規模な経済進出を開始した当初、フランス国民は大戦に参加しなかった友好国の行動に白けた眼差しを向けていたが、疲弊した自国経済を前に新大陸人が持ちこむ膨大な資金を祖国復興の為に大々的に利用すると決意。
それは一歩間違えばアメリカの経済植民地か属国になりかねない危険な選択だったが、フランス第四共和政政府はルノーFT17を筆頭としたフランス製兵器と世界大戦の戦訓をアメリカに提供する事で辛うじてアメリカ資本の制御に成功
し、米仏の外交関係を対等に近付けて衰弱したとはいえ列強の一角の意地を見せていた。
大戦前にはオランダ系資本を利用して各国に影響力を行使していた列強が、経済再建に対して国外資本へ頼らねばならないという現実はフランス国民の矜持を大いに傷付け、フランス人は祖国を衰退させた発端である独立戦争を引き起こしたオランダとドイツ帝国、そして大元の火種をばら撒いたイギリスに対して憎悪を募らせる。
英独蘭へ向けられたフランスの復讐心はドイツの敵であるソビエト連邦への接近として発露し、フランスはアメリカの資本で経済を立て直しながら政治的に赤く染まっていく。
279: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:06:48
こうした米仏ソの日英独に向けた動きに対して、包囲網の標的とされた各国の反応は様々だった。
アメリカと対立する大日本帝国は関東大震災からの復興と勢力圏内の経済開発に注力しており、ソ連への牽制としてドイツ帝国とシベリア連合へ若干の経済支援を行った以外には特に反応を示さなかった。
革命によってソ連が成立する以前から米露と東西で対立していた日本にとって、シベリア連合がソ連との緩衝国家として存在する現状は大戦前よりも有利になったと言っても良かったからだ。
日本国内の一部勢力、夢幻会を中心とした一派は更なる安全保障の確保としてフランスをアメリカ側から引き離したいと考えていたが、第二次百年戦争で日英にアジア植民地を根こそぎにされ、世界大戦でも叩きのめされたフランスがいまさら日本の手を取れるはずもなく、フランスをドイツへの重しにしたいイギリスの思惑もあり日本のフランス引き抜き工作はごく短時間で失敗する。
結局、夢幻会は自国の置かれた国際環境に満足するしかなく、関東大震災の復興と大恐慌に備えた国内開発に専念。
世界の管理者を自認する大英帝国は米仏の行動を確認して一人頷き、ドイツが仏ソとの対立によって欧州大陸に縛りつけられた事に満足して中東へと一気に進出する。
アラビア半島をオスマン=トルコに併呑させる過程でシオニズムを掲げるユダヤ系資本がイスラエル建国を本格化させるが、史実での泥沼を知る夢幻会と自国勢力圏での混乱を嫌ったイギリスが秘密裏に制圧。
最終的にシオニズムはごく小規模な入植事業とオスマン=トルコ主権下における限定的な自治権の付与へと縮小され、イスラエル建国を望むユダヤ資本はアラビア鉄道株式会社を通じて日英に吸収されてしまう。
比較的余裕のある日英とは対照的にドイツ帝国は仏ソという仮想敵国と国境を接しているだけに大きく反応し、大洋海軍縮小で生じた予算を戦後経済の再建へ注ぎ込むと共に、東欧勢力圏の代理人であるポーランド=ベラルーシ連邦共和国への各種支援、さらには世界大戦の浪費から立ち直れないオーストリア=ハンガリー二重帝国との経済協定など、苦しい財政をやり繰りしながら潜在敵国に東西を挟まれた自国の現状を打破しようと奔走していた。
当然ながらドイツ一国の経済力でアメリカの潤沢な経済支援を受けた仏ソ両国に対抗するのは困難であり、ドイツ帝国は大戦前から構築していたオスマン=トルコ帝国との繋がりを日本に提供する事でアラビア鉄道株式会社設立へ間接的に参加。
イギリスの勢力拡大に苦虫を噛み潰しながら、ドイツ帝国は日英の経済圏に参画する事で仏ソに対抗可能な国力の獲得を目指していく。
大戦前に回帰するかのような米仏ソの連携と、それに対抗する日独の動きはイギリスにとって想定内であり、列強各国が互いに睨み合って迂闊に動く事が出来ない世界情勢は、中東へと勢力圏を拡大した大英帝国にとって十分に満足できる状態であるといえた。
そしてそれは日本の政治を主導する夢幻会にとっても同様であり、対立の果てに構築された均衡によって夢幻会はようやく一時の平穏を謳歌する。
――自らの慢心を思い知らされる、その瞬間まで。
1931年9月18日。
満州事変が勃発する。
280: 百年戦争 :2016/12/18(日) 10:08:58
投下は以上となります
wiki転載などOKです
283: 名無しさん :2016/12/18(日) 10:46:32
一応、誤字
兵子じゃなくて兵士な
284: 百年戦争 :2016/12/18(日) 11:03:39
283
誤字じゃなくて方言です
ドリフのお豊さんが言ってる「兵子(へこ)」ですね
上原元帥九州の人なんでそれっぽさを出したかったんですが、分かり辛かったですね
精進いたします
最終更新:2017年02月08日 20:47