293: earth :2016/12/18(日) 13:19:30
《イデ》のような存在を仮想敵とした因果律操作装置を搭載した機動要塞の建造計画を銀河帝国が検討することになった矢先、セイレーンで指揮を執るフォーク提督に吉報が届けられた。
「21世紀地球を発見したと?」
「はい。第25分艦隊からの報告では、歴史に差異はなく、魔法のような非科学技術、異星人の存在は確認されていません。
異次元側からも何の通告はありません」
「ふむ、揉め事は起きないか。大いに結構。それにしても、漸くここまできたか」
フォークは期待に胸を膨らませた。
原子力で動く10万馬力のロボットがいたり、日本ではなくスットン共和国を名乗る国家があったり、異星人の血を引く超能力者同士が争う世界があったりと外れが多かった中、漸くそれらしい世界があったことに感動したフォークは涙を
流しそうになった。
これまで発見した世界の中には子供のころにあこがれた世界もあったが、フォークは全く感動しなかった。
「現実と虚構の差に落胆するだけだ」
過去の経験がその手の感動を奪っていた。
故に彼の措置は極めて事務処理的なものであった。介入すれば救える命があったとしても、「利益にならない」とみれば全く手を差し伸べなかった。
「生きるも死ぬも、彼らの手によって選択されるべきだろう」
そのような冷めた視線で世界を見続けた男にとって、帰郷への可能性が見つかったというのは大いなる喜びだった。
(あそこが故郷なら……漸くこの長い旅も終わる)
故郷に帰れる……そう思うだけで彼の気分は晴れやかになる。
ただしガンガルの世界に訪れた予期せぬ終焉を思い出すと、すぐに手を打つ。
「地上に、特に日本列島に調査隊を送れ。それと周辺の世界に展開中の艦隊は警備のために急行せよ」
「は」
「それと……主力艦隊も動く。準備を始めろ」
「本艦隊をですか?」
「そうだ。T兵器のチェックは欠かすな。場合によっては必要になるかも知れん」
「宇宙怪獣が現れる可能性があると?」
「零ではない。調査結果が判明する前に、その地球が滅亡するようなことがあれば皇帝陛下に顔向けできないぞ」
「了解しました」
「軍本部にも通達は忘れるな」
かくしてセイレーンを旗艦とした並行世界殴り込み艦隊主力が動き出す。
「目標、第99観測世界。主力艦隊、出撃せよ」
星系国家なら文字通り一蹴できる強大な軍事力を持つ大艦隊が次々に出撃していく。
目指した先で何が起こるか、それはまだ誰にも分らなかった。
295: earth :2016/12/18(日) 13:20:38
あとがき
という訳でようやく21世紀地球を彼らは見つけました。
故郷かどうかは次回以降に。
最終更新:2017年02月08日 20:48