244: 333 :2017/01/05(木) 14:10:04
フローデ達の憂鬱


レンド                   グラハレル・ビューラル
嶋田提督は憂鬱だった。なぜ自分が艦隊司令長官など勤めているのだろうか?今度の人生こそ平穏無事に過ごしたかっ

ったのに。

自問自答するが、答えは出ない。いや意識的にその答えにたどり着くのを避けているのかもしれない。

なぜ司令長官に任命されたかと言えば、原作情報を知っている(この世界に転生した時あらすじは教わった)のに加え

て100年前のシャシャイン戦役、50年前のカミンテール戦役にも携わった経験豊富な指揮官だからである。

しかしなぜ経験豊富な指揮官になったかというと、いろいろこじらせたアーヴと星界軍が放っておけなかったからだ。

言わば元来の面倒見の良さがこの状況を招いているのだが、レンドはそこから目をそらしていた。
              ケドレル
「敵艦隊までおよそ30天浬。まもなく戦闘可能範囲に入ります。」

平穏な生活ができなかったのが自分の性格にある事実から現実逃避していると報告が聞こえてきた。
 サテュス・ゴール・ホーカ
「機動時空爆雷を放出するように伝えろ。まだ打ち出すなよ。」
 ファーズ        ゴール・プタロス       イルギューフ  ルニュージュ ヴォークラーニュ フラサス
平面宇宙での戦闘は時空融合が主流だ。電磁投射砲も反陽子砲も凝集光砲も時空泡内でしか通用しない。

しかし平面宇宙を隔てた敵を攻撃する手段は一つだけ存在する。極小の宇宙船をぶつけるのだ。
  メーンラジュ               メーニュ
平面宇宙航行機能を備えた無人の宇宙船を突っ込ませ、反物質をまき散らして爆発させる。

平面宇宙での時空泡の移動速度は内包する質量によって決まるため、最低限の質量しか必要としない無人の宇宙船なら
        ウィクリュール
有人のどんな軍艦よりも速く動けるのだ。
                    ホクサス
これが機動時空爆雷、いわゆる機雷だがこの兵器にも欠点がある。

それは大きすぎることだ。
  フラサティア
時空泡発生装置は巨大で複雑な機構である。1000年の改良を経ても、それは変わらなかった。
                                                 ゴール・リュトコス
そして時空泡が内包できる質量には限りがある。あまり重すぎると制御できない時空分裂がおきてしまう。

つまり艦の大きさ、重さには制限があるのに機雷はそれを空費してしまうのだ。

必然的に機雷は搭載量が多ければ母艦の戦闘力が落ち、母艦の戦闘力を高めれば搭載量が落ちる。
アレーク
戦列艦は前者であった。つまり限界まで機雷を積み、撃った後は尻をまくって逃げる。
                     ドロシュ・フラクテーダル
「そろそろ機雷の射程だな…。全艦に泡間通信。射程に入り次第機雷を射出せよ。」
       スプー・フラサス
平面宇宙は時空粒子という極小の時空泡で満たされている。これを振動させることにより、短距離で少ない情報量では

あるが時空融合させずとも情報をやりとりできるのだ。

「信号送信完了。……射程範囲内まで5、4、3、2、1、発射。」

245: 333 :2017/01/05(木) 14:12:43
 ヤ・ファド                  ヤドビュール・ヴォートゥト
平面宇宙図の後方、戦列艦で構成された打撃分艦隊から一斉に光点が分離する。機雷を時空分離したのだ。
     メーニュ
無人の宇宙船は敵艦隊との中間で互いを食い合う。

どんな時空泡よりも速い機雷は言うまでもなく厄介な存在である。それゆえ攻撃目標を敵艦ではなく機雷に設定するのだ。

もちろんその分打撃力は落ちる。対抗雷撃の割合をどうするかは指揮官の性格次第であった。

今回は全機雷を対抗雷撃に設定してある。敵の機雷よりもこちらの機雷の方が多いからだ。

味方機雷が敵機雷もろとも自爆し、次々と敵の放った機雷を食っていく。融合していた時空泡が消えていき、時空粒子

となって平面宇宙に波風を立てた。

しかしすべての機雷が自爆したわけではない。敵機雷と時空融合できなかった機雷は次なる標的、敵艦を目指して突撃

していく。
 ゲール
「突撃艦を前進させろ。」

未だ機雷は敵を撃滅していないが、このくらいがちょうどいいだろう。レンドは味方に突撃を命じた。

「司令官。少し早いのでは?まだ機雷が敵に到達していませんが。」
シュボーズ・アロン=ラドケス・ケスゴーシュ
島津朝臣忠久久良が意見具申する。確かに彼女の言う通り、味方の突撃は機雷が敵を撃破してからのことだ。

しかしそれは教科書に載っていることに過ぎない。実際の戦場を何度も経験したレンドにすれば、現場を知らない意見

だった。
ワス・カーサレール
「参謀長。君はシュボーズには珍しく頭脳派だが実戦経験が足りないな。突撃艦は機動力が命。敵に立ち直る隙を与え

ないためにも、少しでも早く突撃するのが肝要だ。どのみち突撃艦も機雷よりは遅いのだから、たどり着いた時には

機雷戦は終わっているだろう。」

若いシュボーズは納得していないようだが、経験豊かな司令官の言葉に反論もできなかったようだ。
キュス・シュボージュ
島津の菱を持っているおかげで視覚に頼らなくていい彼女は、目を閉じたままのその顔をわずかに歪めて引き下がった。
                           ラームネイ
シュボーズは地球時代から名を馳せていた武家で、レンドも転生前から知っているほどの名族だった。

かの一族は勇猛果敢で有名で、総じて脳筋と呼ばれているほどだが彼女はその反対らしい。
   ワリート            フローシュ
また家徴として特別敏感な空識覚器官を持っているのでも有名で、普段は目を閉じている。

246: 333 :2017/01/05(木) 14:14:37
                 ヤドビュール・アシャム
「突撃艦に前進命令を出します。…突撃分艦隊、突撃を開始しました。」

突撃艦は機雷に人間が乗るための施設と、自爆以外の攻撃手段を持たせた軍艦だ。

機雷よりは遅いが、有人艦艇では最も優れた機動力を持ち、何より量産性に優れる。

機雷で削った敵によってたかって殺到し、戦場の切込み役となるのが仕事だった。

「それにしても。」

くっきりした顔だちのケスゴーシュを見て目を開けたらさぞかし美人だろうな、などとレンドが考えているとその彼女

が話しかけてきた。どうやら機嫌は直ったらしい。

「よく奇襲を察知しましたね。航路から離れた場所に、我々の知らない門を開いていたのに。」

レンドは思わず冷や汗を流す。察知したのではなく、あらかじめ知っていたからだ。

怪しまれないためにさりげなく話題を変える。

「そのおかげでこうして奇襲しかえすことができる訳だがな。でなければ最悪帝都は落ちていたかもしれん。」

戦闘が開始する前から敵の奇襲艦隊は混乱しっぱなしだった。

奇襲を敢行したと思えば敵が待ち受けており、戦闘陣形を組む前に機雷を撃ち込まれた。

さらに機雷戦が終わってすぐに突撃艦が突っ込んできて混乱の極みの艦隊をかき乱している。

しかしいくら敵が混乱しているとはいえ、機雷と突撃艦だけでは艦隊を殲滅できない。
     レスィー
主力艦、巡察艦の出番だった。
              ヤドビュール・ウセム
「そろそろ本隊も前進する。偵察分艦隊に通達。帝国の敵を蹂躙せよ。」

偵察分艦隊は巡察艦で構成された主力艦隊である。

戦列艦が打撃力を備えた弓兵、突撃艦が衝力でかき乱す騎兵だとすれば巡察艦は戦場の主役たる歩兵に例えられるかも

しれない。

しかし巡察艦は歩兵と違い、高価で強力である。突撃艦にはない機雷と、戦列艦にはない直接戦闘能力を持っている。

全てを高い次元で備えた巡察艦は花形なのだ。

「了解。泡間通信を発信。…内容はいかがしますか?」

混乱しきった敵はすでに烏合の衆だ。帝国の勝利は約束されている。
     レンド
それでも嶋田は言った。きっとこの先何度でも言うだろう。
 サーソート・フリューバラリ
「帝国に勝利を!」

247: 333 :2017/01/05(木) 14:15:34
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最終更新:2017年02月09日 21:02