343: 333 :2017/02/03(金) 18:11:06
人類統合体 ミシェーラ門
キーヨース・ミシェーラル
ミシェーラ星系は七つの惑星を持つやや小規模な星系だ。
だがその利用価値は大きなものである。
有人惑星ミシェーラⅣが金属惑星ミシェーラⅢの同軌道惑星として存在しているのだ。
人類統合体でいうところのクトニア惑星とのトロヤ惑星だが、これにより惑星規模の巨大な金属塊を引き連れた有人惑星になる。
ソード・ミシェーラル ファーズ
さらにミシェーラ門は平面宇宙上で重要な航路の結節点に存在している。
以上の理由からミシェーラⅢで採掘した金属をミシェーラⅣとの中間点で加工し、星間交易に乗せて出荷するという人類統合体全体
から見ても豊かな星系になっているのだ。
ダーズ
当然ながらミシェーラ門は通常宇宙側では工廠付近、すなわちミシェーラⅢとミシェーラⅣの中間点に存在する。
ウィクリュール
普段は数えきれないほど行き来している民間船の影は、現在では軍艦のそれに代わっていた。
ブスューリア ラブール
軍艦の周りには膨大な数の自翔弾が浮かび、星界軍の侵攻を今か今かと待ち構えている。
直径1セダージュの光の塊、門。その表面が泡立ち始めた。
ホクサス
機雷が放たれたのだ。
フローデ達の憂鬱 第三章
344: 333 :2017/02/03(金) 18:12:56
『損害の補填。安全の保障。通常宇宙での自由な活動。これだけは譲れません。』
ラブール トセール
「二つ目は星界軍の全力を挙げて実行しよう。だが一つ目は私の権限では判断しきれぬ。後ほど来る代官に相談してほしい。」
フォフローデ ベイダーシュ
レンド大提督め。今度宮中であったら嫌味の一つでもくれてやる。
ローワス
眼前に映る立体映像と併合に向けた交渉をしながら、ラフィール十翔長は心の中で毒づいていた。
クファリア
征服した先々で領主代行を押し付けられたラフィールは、事前の教育もあって本人も自覚していなかった官僚としての才を花開かせつつ
あった。
『では三つ目は?飲んでいただけるのですかな?』
「それは無理だ。宇宙は全て我らアーヴのものである。」
『なんですと!?』
ミシェーラ星系首相と名乗る眼前の男は大仰に驚いて見せた。
そのわざとらしい仕草がまた癇に障る。この点を譲らないことなど、わかっていただろうに。
ヌイ・アブリアルサル
知らず、耳に手が行く。天照の耳。
ファサンゼール ワリート
皇族の証たる家徴だが、ラフィールは同族のなかでは短いこれがあまり好きではなかった。
『ミシェーラⅣは工業で成り立っています。せめて通常宇宙でだけでも活動できなければ、鉱物の採掘も工廠の再開もできません!』
アイプ フリューバル
「だが我らとてこればかりは譲れぬ。宇宙はアーヴが、地上は地上人が。それが帝国の原則だ。」
首相が言う通り、ミシェーラは星間交易と工業で成り立っていた。
ロール
だが戦争の影響で工廠は移転され交易は細っていった。安全地帯だったのが、前線になってしまったからだ。
なにも無茶な要求をしているわけではないのはラフィールにもわかる。彼とて住民の生活を守らなければならないからだ。
しかし譲れないのはこちらも同じ。
議論は平行線にしかならなかった。
「とにかく詳細は代官が来てからお願いしたい。それまでの生活については星界軍が保証しよう。」
溜息をつき、通信を切る。
肉体的には何もしていないに等しいが、精神的には疲労の限界だった。
こうした問題は領主代行になってから幾度も経験した。そして思い知った。
統治とは、支配とは、世の中の厄介ごとを一身に背負うことなのだ。
「なあジン…」
呼びかけて、途中で気付く。
そうだ。ジントは自分が遠ざけたのだ。
人形に現を抜かしたと聞いて腹が立った。だから知らんぷりをした。
だが離れると、寂しくなる。
セリュメコス
今まではこんなことはなかった。軍務で離れていても、次の休暇には会えるからだ。
そこまで考えて思い至る。
ああ、そうか。いつ会えないかわからないから寂しいのだ。
境遇が二人を離したのなら、会えるように努力すればいい。
だが自分からジントを遠ざけたのなら、自分が改心しなければもう会えないのだ。
345: 333 :2017/02/03(金) 18:14:06
「意外ですね。それで私に相談に来たんですか。」
ラクネーヴ・ホーカ レンド
機動酒保街でラフィールは嶋田と話していた。
初めは仕事を押し付けたことへの愚痴だったが、次第に仕事そのものへの愚痴になっていき、最後にはジントと仲たがいしたことの相談
になっていた。
レンドも私的な用事だからなのか、こちらを気遣う話しぶりだ。
ボスナル
前に会った時に纏っていた覇気は鳴りを潜め、今はごく普通の軍士といった風情である。
「ああ。知り合いに相談しようにも、まだ私はろくに顔を合わせておらぬからな。」
ジント本人は論外。彼を連れて行ったサムソンも駄目だ。だいいちサムソンとは顔を合わせた程度である。
ロダイル
それ以外の翔士とはまだ自己紹介くらいしかしていない。
全て自分の態度が招いた結果だが、それゆえ相談相手になりそうなのはレンドしかいなかったのだ。
「そうですね。私でよければお力になりますよ。」
「恩に着る。」
いい傾向だ。レンドはそう思う。
彼女はどうも一人で抱え込む傾向があったからだ。
もしかしたらジントとの仲が原作より深まっているのがいい影響を及ぼしているのかもしれない。
「そうですね…。まずラフィールさんは何をしたいんですか?」
「なにを…したい?」
ラフィールは思いがけなかったことを言われてきょとんとしている。
まるでそんなこと思考の外だったと言わんばかりだ。
おそらくはすべきことばかりを自分に言い聞かせて、したいことを封印し続けてきたのだろう。
責任感の強い子だ、と思う。
だからこそ簡単なことが思いつかなかったのだろう。
レンドはこういう人をこそ支えていきたいと願うのだった。
「したいこと…したいことか。」
「ええ。まずそれを決めなければ、何をしたらいいのかもわかりませんよ。」
ラフィールは暫く考え込む。
しかし心の奥底では、既に答えはあったのだろう。
「私はジントと恋仲になりたい。」
顔を上げてキッパリと言い放つ。
こうもはっきり言われてしまっては断れるはずもない。
「ええ、お手伝いしましょう。」
レンドは彼女の恋路に手を貸すことにした。
夢幻会の連中と同じ扱いになるのは、ご免被りたかったが。
346: 333 :2017/02/03(金) 18:15:15
「それでどうしたんですか?」
「どうしたもなにも、少し助言をしただけだよ。」
ファーズ ケドレル
ミシェーラ門から旅立ち、平面宇宙を数千天浬。
ヤ・ファド
平面宇宙図の端に門が見えてきたところで艦隊は一時待機に入っていた。
進撃途中分散していた艦隊が徐々に集まりだし、巨大な戦力を現出させつつある。
フォフローデ シュボーズ
レンド大提督は待機している間、島津参謀長と会話して暇つぶしをしていた。
今は戦力が集まるのを待っている段階である。
ソード
元々、この門では強烈な抵抗が予想されていた。
それゆえ各地に分散進撃させた艦隊も、直前で集合する予定になっていたのだ。
いまのところ遅れは見られない。
平面宇宙図に映る光点は数を増しつつある。
集まりつつある艦隊のはるか向こう。
ソード・センタラル
人類統合体首都、センタール門があった。
グラハレル
「司令長官。艦隊終結完了しました。」
「よし、陣形を組め。センタール攻撃開始だ。」
ホクサティオクス
機雷戦の陣形が光点によってあらわされる。
ラブール
攻める星界軍。守る連合軍。この戦場はそういった形で戦われるだろう。
同時に行われるもう一つの戦場とは反対に。
347: 333 :2017/02/03(金) 18:15:49
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最終更新:2017年02月10日 21:34