635: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:07:39
半リーグ 半リーグ
半リーグ 前進
六百騎の兵は全員
死の谷へと進む。
「軽騎兵 総員前進!」
「砲兵陣地を攻撃せよ!」
六百騎の兵は全員
死の谷へと進む。
「軽騎兵 総員前進!」
怯えていた兵士はいたか?
いない 指揮官は誰かの間違い
だと分かっていたが
兵士たちは無言で
理由を聞くことなく
ただ命令に従い死地に向かう。
六百騎の兵は全員
死の谷へと進む。
右に砲弾
左に砲弾
前に砲弾
弾と破片の一斉射撃が
鳴り響き 襲いかかるが
勇敢にも兵士は馬を進め
六百騎の兵は全員
死の谷へと進む。
閃く兵士のサーベル
閃く宙を舞うサーベル
敵砲兵を切り付け
一軍団を襲う
全世界は驚いた。
硝煙の中に飛び込み
前線をつき破った。
コサックとロシア兵は
サーベルの一撃によろめき
打ち砕かれ 切り裂かれた。
敵は逃亡したが
六百騎の兵は後退しなかった。
右に砲弾
左に砲弾
後に砲弾
弾と破片の一斉射撃が
雷鳴のごとくに鳴り響き
馬と英雄は倒れたが
勇戦した兵士は
死の顎をくぐり抜け
地獄の入り口から生還した。
六百騎の兵士の
生き残りが生還した。
彼らの栄光が色あせるだろうか?
彼らの無謀な突撃!
全世界が驚いた。
彼らの突撃を称えよ
軽騎兵を称えよ
高貴なる六百騎。
「軽騎兵の突撃」 アルフレッド・テニスン
636: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:09:46
米国版捷号作戦の基本は空母と基地航空隊の傘の下、戦艦部隊がアラスカまで突進。
アンカレッジにたむろっている敵攻略船団と
アメリカ侵攻作戦の補給基地一大補給を艦砲射撃で撃破すると極めて単純なものだ。
これまでの激戦を生き残った稼働空母は艦載機の大半を戦闘機で固める。
さらに動ける範囲内で陸軍の航空隊によるエアカバーをかけてもらうなど手を抜かなかった。
ただ、相手はすでにジェット戦闘機まで実戦配備しているため、焼け石に水と思われていたがしないよりましである。
それより、5月下旬にやってきた台風が最大の味方となると思われた。
何せ台風なら航空機どころか駆逐艦は動くのに手一杯となり、動けるのは戦艦だけとなる。
つまりは、アメリカにとって無事にアラスカまで突進できるチャンスであった。
が、悪天候と局地的制空権の下を突進する以外、太平洋艦隊がアラスカに到達できる可能性はない事を意味していた。
さらには、相手も戦艦を保有しており、途中で海戦することが十分予想され、例え突入に成功したとして問題は帰りだ。
どう計算しても天候は回復し、航空機が自由に動き回れるようになる。
早い話、成功しようが失敗しようが太平洋艦隊が壊滅する可能性は十分あった。
しかし、台風接近のおかげで空襲できる回数は限られ、少なくても行く途中の空襲で全滅することはないと見られた。
そして直前に大西洋から直前に回航された空母3隻、『バターン』『フランクリン』『バンガーヒル』のおかげである程度は戦える可能性を帯びていた。
「突撃中に壊滅したバラクバラの騎兵突撃よりは勝算がある」
とはバーグ大佐の言葉である。
しかし、それは帰りに全滅する事実をあえて言わなかった。
対する日本海軍は、夏の攻勢に向けて戦力の再編中であった。
そしてアメリカ海軍、出撃する。との報告を受けた海軍は色めきたった。
何せ敵艦隊の撃滅こそが海軍の本領であり本懐であるからだ。
だが、台風接近の報告を受けると緩んだ空気は一撃で吹き飛んだ。
おまけに、即座に動ける機動部隊は整備や補給のためため、サンディエゴから離れた瞬間に攻撃することはできなかった。
ゆえに、カナダ~アラスカで迎撃するほかない。
なお、この時のアメリカ太平洋艦隊の規模は以下の通りであった。
戦艦
『ワシントン』
『アラバマ』『マサチューセッツ』
『アイオワ』『ミズーリ』
軽空母
『カウペンス』『モンテレー』『バターン』
空母
『エンタープライズ』
『フランクリン』 『バンガーヒル』
戦艦5
空母6
あれほど沈めてもなお回復するアメリカの底力は流石と言うべきだが、当事者は違った。
例えばエックス級空母の『フランクリン』『バンガーヒル』は今年の初めから昨年末にようやく完成した艦だ。
パナマ運河がいまだに使用不能なため、わざわざ南米大陸の端を回ったため、3月~4月にようやく太平洋に来た。
艦が完成してギリギリ3ヶ月か少しの訓練。
艦隊としては行動しているのは1ヶ月そこらでしかなかった。
いくら優先的に熟練兵を割り当てているとはいえ、アメリカ側の当事者達はかなり不安を感じていた。
昨年12月に完成したアイオワ級戦艦4番艦『ウィスコンシン』は英国の本国艦隊に対処せねばならず、
エセックス級空母は『フランクリン』『バンガーヒル』こそ太平洋に送り込めたが『ハンコック』も同じく大西洋で足止めをされていた。
また完成した『ワスプⅡ』『タイコンデロカ』は3月上旬に英国の特殊潜水艇のX艇がノーフォーク港に侵入。
『ソース作戦』と名づけられた攻撃で艦底で2トンもの爆薬が炸裂、瞬時に沈没。
キールが折れ、乗員数千名と共に僅か数ヶ月で即席の魚礁となってしまった。
以上の経緯と、基本的に造船所は東海岸にありパナマ運河が使えない点。
英国が参戦したため安易に戦力を太平洋に送ることができないことなどが、これ以上の戦力拡大を防いでいた。
アメリカ海軍は色々言いたいことや不安を抱いていたが、ただ職務に全力で尽くすことを考えた。
637: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:10:50
5月30日。
太平洋艦隊はこれまで沿岸沿いに進むことで陸軍のエアカバーを受けていたが、
航空隊の基地がないカナダの領域に入ったため、エアカバーが消失。
そして、予想通りというべきか偵察機の結果。
付近に日本側の機動部隊の存在を察知したアメリカ太平洋艦隊は予定通り艦隊を分派。
空母機動部隊が囮となり、日本を引き寄せている間に戦艦部隊がアラスカへの突入を開始。
『ワシントン』
『アラバマ』『マサチューセッツ』
『アイオワ』
の4隻を率いるジェシー・B・オルデンドルフ中将と水雷戦隊はそのまま北上。
残る空母の全てと『ミズーリ』は日本の機動部隊に接近。
日本側が攻撃するよりも先に、合計450機による後先考えない全力攻撃を行った。
単独行動中の日本の第3艦隊の第1機動戦隊に殺到した攻撃隊は、
ジェット戦闘機の『疾風』に妨害されつつもアルミ箔の散布によるレーダーの欺瞞。
さらに、高速のジェット機からすれば危険な低空で密集編隊を組み、損害を受けつつも防空隊を強引に突破。
艦隊に突入してからは数百の高射砲、
数千の機関砲で続々と打ち落とされて行ったがロケット弾や爆弾を抱えたヘルキャットが護衛の艦船を撃破。
空いた防空の穴から、艦隊内部へ侵入。
そして、多数の至近弾と1つの機動戦隊(任務部隊に相当する)に絞って攻撃する局地的な飽和攻撃。
これにより、復帰したばかり空母『赤城』は再度大破、甲板に大穴が開き、航空機の発艦機能を喪失する。
『祥鳳』は魚雷と爆弾で穴を空けられ大破炎上。
応急修理では手に負えず、やむなく自沈処分することなった。
そして、この攻撃で、第1機動戦隊の空母3隻で健在なのは臨時に編入された空母『隼鷹』のみであった。
この戦いはアメリカの作戦勝ちで、後は帰るだけだがそう問屋はおろさなかった。
第1機動戦隊が空襲受けたことを知った第2機動戦隊から護衛の戦闘機が飛来。
さらに装甲空母『大鳳』を有する第2艦隊からも護衛の戦闘機が飛来するとアメリカの攻撃隊は壊滅。
未帰還率8割、という数字はいくら日本がジェット戦闘機を運営しているとはいえ、尋常な数字ではなかった。
つまり、太平洋艦隊に戻ってこれた機体は90機程度、それも戦闘機が大半を占めていた。
そして、いきなり殴られた日本側は当然のごとく報復を決意。
第2、第3艦隊は積極的な索敵を開始し、その日の内に200機以上の大編隊で米機動部隊に襲い掛かった。
雲霞のごとく押し寄せる日本の大編隊をアメリカの将兵は神に祈りを捧げたが、ハルゼーは微笑を浮かべ電文を発する。
「我、敵大編隊ノ攻撃ヲ受ケツツアリ。
コレニ可能ナ限リ耐久シ、祖国ト海軍ヘノ忠誠ヲ証明セントス」
囮作戦が成功した瞬間であった。
だが、もっとも困難で死が約束された苦行の始まりであった。
第1派で護衛の駆逐艦の大半が沈められ、
艦隊内部に突入した魚雷と爆弾を抱いた『流星』は軽空母『バターン』に魚雷3爆弾1を叩き込み大破炎上。
空母『フランクリン』に魚雷1爆弾2で中破、その他艦船も何らかの傷を多い無傷なのは空母『エンタープライズ』戦艦『ミズーリ』であった。
638: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:11:33
第2派では150機程度であったが、護衛が減少したせいで、
同じく軽空母『カウペンス』『モンテレー』が大破、たちまち炎上し行き足が遅くなる。
手が着けられない火災のため、軽空母3隻はに自沈処分することになる。
残るは空母は『エンタープライズ』『フランクリン』 『バンガーヒル』の3隻。
どれも大型空母であるが、艦載機はこの攻撃でさらに50機まで低下してしまった。
さらに、太陽が水平線の向こうに沈む時間になりつつあったが、ハルゼーは囮を徹するべき夜襲を決意。
強風の中、残った艦載機を全て日本の機動部隊に叩きつけた。
結果、とうとう稼動機が1桁になってしまったが空母『千歳』の大破に成功。
空母機動部隊の割には戦艦の数が少ない事に首をかしげていた日本は、この攻撃で完全にハルゼーの機動部隊を主力と認定。
既にアンカレッジにいる第1艦隊以外に念のために第2、第3艦隊の一部をアンカレッジに向かわせ、艦隊は追撃を開始。
しかし、翌日の昼から本格的な台風に突入。
航空機の索敵も行えず、しばらく無為な時間を過ごす羽目になる
そして、ハルゼーの献身的かつ積極的な行動が日本の機動部隊を引き寄せることに成功した。
6月5日。
分派されたオルテンドルフ艦隊は西海岸を直撃した台風の北上を最大の味方として進撃を続けていた。
日本軍の空襲もハルゼー囮行動のおかげでなく、翌日未明にはアンカレッジに突入できると見られた。
だがしかし、オルテンドルフ艦隊の前に日本の第1艦隊が立ちふさがった。
第1艦隊
第1戦隊『長門』『陸奥』
第2戦隊『伊勢』『日向』『扶桑』『山城』
第6戦隊『青葉』『衣笠』『加古』『古鷹』
第1水雷戦隊『米代』駆逐艦16隻
第2水雷戦隊『宇治』駆逐艦16隻
ビック7たる『長門』『陸奥』、本土から復帰した戦艦『山城』『扶桑』
敵艦殴りこみ、台風だって怖くない、夜襲上等夜露死苦な第2水雷戦隊、俗の華の二水戦。
さらに主力艦を護衛し、あのロリコンT督達が愛して病まない第6駆逐隊の面子もいる第1水雷戦隊。
編成から分かるように完全に艦隊決戦を思考したもので、万が一に備え
夢幻会の梃入れでアンカレッジに待機していた。
先に砲火を開いたのは日本側であった。
アメリカよりも優れたレーダーを以って電探射撃を開始した。
だが、アメリカ側も射撃電探を妨害するアルミ箔のチャフの散布を開始、日本のその優れた電子の目から逃れた。
電子の眼を潰されたるなど、予想外の行為に日本は混乱する。
少し早いが水雷戦隊に突撃を命じたが、ここでも勝手は違っていた。
日本の水雷戦隊も対空火器を増加していたせいで、
トップヘビー気味になり、いくら練度に優れた日本海軍といえども台風の中を動くのは過酷であった。
だが、それでも誘導魚雷を放てば勝機は自分たちのもの。
そう信じて米水雷戦隊に対して統制雷撃を行ったが、信じられない光景を眼にする。
魚雷の大半は明後日の方向で続々と起爆し、水柱が去った後に現れた米水雷戦隊は傷つきつつも健在であった。
日本が音響誘導魚雷を使用していることを知ったアメリカが開発した囮が正常に稼動し、日本の水雷屋の必殺技を封殺した瞬間であった。
呆然とする日本の水雷戦隊に対し、バーク率いる水雷戦隊が突撃。
台風でお互い隊列を組むのが精一杯であるが、無理やり混戦状態に持ち込んだ。
そして戦艦同士で目視での殴り合いが始まる。
数こそ日本の戦艦6、米の戦艦4と日本側が戦力的に超越していたが、
米の戦艦は全て16インチ、つまり40センチ砲搭載の艦で全て新鋭戦艦であった。
そのため戦艦の殴り合いは先手こそ日本側が取ったが、徐々にオアメリカ側に優位となりつつあった。
639: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:12:10
『伊勢』『扶桑』が相次いで大破、対するアメリカ側は『アイオワ』が脱落。
その他艦船もお互い傷つき、数の上では日本側が優位であったが『長門』が機関部への被弾で速度低下。
隊列が乱れた隙を突いて、アメリカは新鋭戦艦の足の速さを利用して引き離した。
日本側は必死に追撃するが、アメリカはアンカレッジへの突撃を敢行。
軽騎兵のごとく突撃するアメリカの戦艦部隊を防ぐ者はもはやないかと思われたが、
突如レーダーに映った艦影と同時に、周囲に降り注いだ水柱によってその望みは絶たれた。
それは、日本の主力の空母機動部隊から派遣された高速戦艦部隊、
『鞍馬』『伊吹』
『金剛』『比叡』 『榛名』
を中心とする戦艦5がアメリカの進路を遮るように立ちふさがり、アンカレッジへの突撃は阻まれた。
彼らは第1艦隊が接触した時点で、速度差で突破されるのを予想し直ぐに援護に向かわず待ち構えていた。
そして、T字、というよりイの字に展開した日本の高速戦艦部隊は先頭の『ワシントン』に砲火を集中する。
『金剛』『比叡』『榛名』3隻の統制射撃で戦艦『ワシントン』はたちまち炎上。
さらに、『鞍馬』『伊吹』の統制射撃で止めをさされ炎上大破、戦闘力を喪失する。
残るは『アラバマ』『マサチューセッツ』だけとなったが、それでも振り切るようにアンカレッジへの突撃を継続。
対して、イの字に通り抜けた日本の高速戦艦は進路を変え、同航戦による追撃に以降する。
最大速度27ノットの『アラバマ』『マサチューセッツ』は30ノット出せる日本の追撃に振り切れず再度砲撃戦を開始。
アメリカは『榛名』を脱落させることに成功したが、手数の上で徐々に追い詰められる。
さらに時間が経つにつれて『陸奥』『日向』『山城』の戦艦3隻が応援に駆けつけて来た時点で勝負は決まった。
数時間後には2隻は炎上しつつ転覆、爆沈。
また、戦闘不能に陥った艦船も日本の追撃と自沈で全滅。
混乱の最中、辛うじて駆逐艦数隻を連れて逃走に成功したバーグ率いる部隊を除きアメリカは全滅。
彼らはバラクバラの騎兵突撃と同じく、勇敢に戦いそして死んだ。
640: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:12:54
そして、6月8日。
台風が完全に去り、作戦が失敗したことを悟ったハルゼーの機動部隊は撤退を開始。
しかし、追撃を諦めていなかった小沢機動部隊に補足され一方的な空襲を受ける。
第1派200機の攻撃で空母『フランクリン』大破炎上。
空母『バンガーヒル』も水面下の防御が弱いエセックス級ゆえに魚雷の片舷集中攻撃で傾斜。
その他巡洋艦、駆逐艦も相次いでで撃沈されてしまい、1桁だけの直援も壊滅する。
そんな中で、空母『エンタープライズ』は生き残り続けた。
第1派から集中攻撃を受けていたが、回避行動で爆弾1魚雷1に抑えることに成功、しかし速度25ノットに低下。
が、第2派第3派第4派の攻撃で空母『バンガーヒル』沈没。
空母『フランクリン』横転沈没、そして空母『エンタープライズ』も爆弾6、魚雷8の被害を受け傾斜。
これまでの戦訓から弾薬庫のコンクリート壁設置の不沈対策、毛布は火災の火種となるため将兵は床に雑魚寝の防火対策もついに限界となり火災猛烈。
電気系統も魚雷の打撃で完全に停止。
浸水が止まらず、傾斜が増大、とうとう総員発着甲板へ上がれの命令が下る。
国歌『星条旗』の下、軍艦旗が降ろされ、生き残ったハルゼーを始めとする乗員は退艦。
6月8日、14時20分。
空母『エンタープライズ』は静かに横転沈没。
戦艦『ミズーリ』を残し、ここにアメリカ太平洋艦隊は消滅することになった。
しかし、日本は空母『赤城』『千歳』の損傷、空母『祥鳳』が沈没。
戦艦『榛名』『伊勢』『扶桑』をはじめ一度本土へ帰還し修理する必要がある艦船が多数出た。
これにより、夏の反抗作戦は中止。
変わりに日英連合軍はアラスカに立てこもる方針へ移行する。
そう、これこそアメリカ太平洋艦隊最後の勝利であった。
641: 第三帝国 :2014/06/28(土) 16:19:11
以上です。
本作品は現実に即しつつ可能な限り物語の面白さを両立させたearth様のと比べると、
相変わらずかなり『火葬』で『架空』かつ『空想』な要素が満載で、それでもかまわない!
という方にしかおススメできません。
ですが、こんな作品でも応援してくださる方々のおかげで昨年11月からここまでこれました。
earth様の「提督たちの憂鬱」が無事完結するのを祈りつつ自分もまた、
完結を目指し、頑張って行きます。
では。
最終更新:2017年08月30日 16:00