434: ナハト :2017/01/12(木) 19:26:10
「はー・・・・」
あれから数時間、患者たちの治療の山は越え
夜になったので、私はそのまま船に乗っており
デッキに出て、備え付けの椅子に座っていました。
「あんなにたくさん人が・・・・
今日だけで救えた命と救えなかった命がどれだけあったのやら・・・・」
私は両手を見る
今は綺麗になっているが、ほんの数十分前までは真っ赤に血が染まっていた
その赤さは命の重さでもあった
私がじっと手を見つめ続けていると
「宮藤さん」
「あ、リリィさん」
「今日はお疲れ様。突然、放り出してごめんなさいね」
「いえっ・・・・・いつか、経験する事でした」
「そう・・・・」
リリィさんは私の隣に座ります
私もリリィさんもボーッと目の前の海を眺め続けます
ふと、私が気になった事を尋ねます
「あの・・・リリィさん」
「うん?」
「その・・・・ウィルマさんはどこか体悪いのですか?」
「・・・・えっ?」
「あっ!ムリなら言わなくてもいいですよ!」
「いえ、あなたも知っておいた方がいいわ」
それからリリィさんの過去語りが始まりました
私は元々、スオムスのウィッチだったのよ
私は宮藤さんのように。元々医療を目指していたんだけど、魔法力が具現して、戦う力があるならという理由で軍に志願したのよ。
だけど、魔力コントロールは下手で、継続戦闘能力は一番低く、固有能力も不明という困ったちゃんだった。
私もいっぱい努力した。それでも、改善できなかった
軍も私もどうしようかと思っていた時に扶桑からライトニングフォックスの募集が入ったのよ
私はそれを自分を変えるチャンスだ!と思い志願したのよ
こうして、扶桑に渡って、ティナやウィルマ、そして先生にであったのよ
先生の修行は厳しかったけど、それ以上に優しく、楽しかったなあ
ティナとドミニカがいつも張り合って、それをマイルズとヘルが頭痛ませて
直江とは本を交換したり、ルチアナと刺繍したり
ウィルマさんと一緒に訓練したりと楽しかったなあ・・・・
それが、崩れたのは扶桑海事変で先生が度々いなくなって
修行が後半に入る頃だった
それぞれが、特技・能力をみつけ伸ばしていく中で、まだみつからないティナが
焦りからか、立ち入り禁止の書庫に入ろうとしたのよ
ティナ一人だったなら止めれたかもしれないけど、直江やドミニカも一緒に入ろう入ろう
となって、止めることもできなかった。
私は、助けを呼ぶためにほかの部屋に行ったんだけど、たまたまウィルマさんがいて
ウィルマさんに事情を話したら、一緒に部屋までついて行ってくれて、ティナに止めるように言ったんだけど
結局、ティナに押し切られる形で、ウィルマさんも部屋に捜索しちゃったんです。
435: ナハト :2017/01/12(木) 19:26:52
もしも、あの時に強く、この作業を止めるように主張出来てたら・・・・・
ティナが部屋の片隅にあったお札が沢山張られた扉を開けてしまったのです。
そして、部屋の中からナニカが飛び出して、触手をティナに貫こうとしたんです。
それを見た、ウィルマさんが咄嗟にティナを押しだし、代わりに攻撃を受けてしまったんです・・・
私はウィルマさんの胸から大量の血を吹き出しながら倒れていくのを呆然と見る他無かったのです
それを、直江がビンタをして、しっかりしろ!ウィルマを救えるのはお前しかいないんだ!と言われて
私は、はっとなり、急いで治癒魔法をかけたんです。
私の前に直江がシールド張って守り、さらにその外ではティナとナニカが戦い合って
部屋がめちゃくちゃな状態になりましたよ
この戦いは、ティナの刀が折れて、ナニカからの触手攻撃を使い魔が庇い、大空に逃げる形で終わりました。
ですが、私の戦いは終わらなかったのです。
止まらない出血に深すぎる傷と穴。
これらを一個一個縫い合わせるように治癒魔法をかけ続けなければなりませんでした。
事実、私が手術を終わったとたんに、気絶してしまい、目覚めてみれば三日経ってたのです。
ウィルマさんの手術は成功しましたが、一か月近く眠った状態になりました。
それからは最悪でした。
ティナが自分を責めてより無茶な修行を行い
止めに入ったドミニカと衝突するなど、修行始まって以来最悪の空気でした。
この空気を解消したのは目覚めたウィルマさんです
「無理に謝らなくていい。自分で、自分を許せるようになったら来てね」
この言葉でティナはようやく無茶な修行を止めたのです。
結局、ウィルマさん頼りで私はなにも出来ませんでした。
私はその悔しさをバネに医療を勉強し、宮藤さんからも教えを乞うほどには
医療の知識を高めることができました。
こうして、ライトニングフォックスの修行を終えて、ウィルマさんの治療を続け、大丈夫だと判断してスオムスに帰りました。
ですが、ウィルマの体は完治してなかったのです。
実は、ウィルマを貫いたナニカの一部がウィルマの体に残り、心臓などに癒着してしまったのです。
普段は魔法力によって、抑えつけることができるのですが、魔法力を使ってしまうと、閉じた蓋が無くなったビンのように
暴れだして、ウィルマの体を傷つけるのです
宮藤さんも先ほどウィルマさんが血を吐くのを見ましたよね?
あれはウィルマさんが大型ネウロイを倒すために、弾に魔法を込めて、魔力が枯渇してアイツが暴れたした結果なのです。
「じゃあ、どうして軍を辞めたりしないんですか!?辞めても問題ないのに!」
私は思わず叫んでしまったが、リリィさんは悲しそうに首を降る
「そうだよね・・・・辞めても誰も責めないよね・・・・
でも、ウィルマさんは絶対に辞めることはないでしょう。だって、ウィルマさんは優しいんですから」
「優しいって・・・・どういうことですか?」
「ウィルマさんが負傷した原因を先ほど知りましたね?その場にいた私も含めてみんながウィルマさんが辞めたことを知ったら
もの凄く自分を責め続けるでしょう。苦悩するでしょう。ウィルマさんは皆がそのような苦しみを背負ってほしくないからと辞めないんですよ。
ティナには自分の体が悪いとは教えていても、胸が少し苦しい程度で、無理をすれば血を吐く程酷いとは知らせてないんです」
「そんな・・・治る方法はないんですか?」
「ないんです・・・・このような症例を出した例は見たことないんです!先生すら匙を投げてしまいました!」
そして、リリィさんは泣き出す
「どうして・・・・どうして!!あのような残酷な運命を課したんですか!?
あの優しいウィルマさんが何をしたというんですか!?」
私はその迫力に何も言えませんでした。
「でも、私は諦めません」
と、リリィさんが顔を上げて言う
「今は確かに無いでしょう。ですが、将来的には新しい医療技術が入って治る可能性が1%でも上げることができるでしょう。
先生が教えてくれました。
大切なのは、最後まであきらめず、立ち向かうこと
例えわずかな希望でも、自分を信じて戦うこと
信じる心。その心の強さが不可能を可能にする
それが、ウィッチだ
と教えてくれました。私は絶対に諦めません!絶対に治して見せます!」
とリリィさんが希望を信じる笑顔で答えました
こうして夜が降り、新しい朝が来ました・・・・
おまけ
――――某所
拝啓 加東圭子隊長殿。お元気で過ごしてますか?
私はようやくロンドンの軍司令部にたどり着きました
そして、今・・・・
「うっ・・・・また、足の小指があ」
角を曲がるたびに、物が落ちて来るたびに、人とすれ違うたびに
ピンポイントに右足の小指へ14回も当たりました
436: ナハト :2017/01/12(木) 19:27:32
終わり
ウィルマがここまでひどく虚弱な理由を付けました
ブレイブウィッチーズコミカライズで孝美が血を吐き出すシーンが良かったので
思わず、採用してしまった形です。
最初は宮藤が治療をしてると、軍医がそいつはダメだ!諦めろと叱咤して
宮藤が助けなきゃと葛藤してると、リリィがあきらめちゃダメです!といって
数人同時オペで解決といった感じのを考えてたんですが、いい話が思いつかなくて
前回のような形になりました。
最終更新:2017年02月12日 20:55