263: 名無しさん :2017/01/26(木) 21:28:50
「かつて我らには誇りがあった」
「しかし、今は見る影も無い」
「北大西洋条約機構、枢軸諸国同盟、そしてソヴィエト。
三つ巴の冷戦の中で、ソヴィエトは初めに膝を折ることになった」
「それは脈々と続いていた誇りを、愚かにも捨て去ったからに他ならない」
「挙句に時の指導者と呼ばれた者たちは、わずかな端金と引き換えにこの国を欧米に売り渡した」
「我々の文化は破壊された。経済も、名誉も、何もかも」
「今こそ我らはかつての誇りを取り戻す」
「奴らが我々の国土を荒らしたように、今度は奴らの国を」
「
アメリカも、イギリスも、ドイツも、フランスも、日本も」
ヴァロータ
「忌まわしき“ 門 ”の向こうもだ」
「今こそ、我らに誇りを」
「今こそ、奴らに報いを」
――― イムラン=ザカエフ 新生ロシア超国家主義派への演説より抜粋
西暦201X年。
第二次世界大戦以降、半世紀に渡って繰り広げられていた三つ巴の冷戦構造は、
1991年のソヴィエト連邦の崩壊によって、一つの変化を迎えていた。
かつてブカレスト条約機構(BPO)を構成していた諸国は、
続々とNATO加入を果たし、ソヴィエト連邦の後継である新生ロシア連邦も
2000年代初頭にはオブザーバーという形でNATOに合流。
世界情勢は米英を中心とし、新たに新生ロシアを加えた北大西洋条約機構(NATO)と
日独を中心とした枢軸諸国同盟(ISA)による二極構造へと再編されつつあった。
しかし旧BPOを実質的に吸収し、世界最大規模の軍事同盟と化したNATOであっても、
綻びを見せるどころか現在も成長を続けるISAと相対するには不十分とされた。
これはISAの結束もさることながら、第二次世界大戦の最中に沖縄諸島沖に発生した“門”を介し、
今なお彼らを背後から支援し続ける異世界の巨大国家連合、大洋連合(OCU)の存在が大きかった。
ISAを“こちら側”における窓口兼防壁と定めるOCUの支援を受け、
緩やかながらOCU式の持続的な成長を続けているISAに対抗すべく、
NATOは新たに陣営へ加えた旧BPO諸国、さらには新生ロシアに対して経済的に浸透していく。
それが世界情勢を再び混迷に導く切っ掛けになるとは、露知らず。
『先に良いニュースから。世界情勢は本日も申し分無し』
『新生ロシアで超国家主義派と現政権派との間で内戦が発生。一万五千発の核弾頭が不安定な状態に』
『これを受け、枢軸諸国連合が国境の軍事力を強化させたことを確認』
『対して、そのどちらとも国境を接するウクライナやベラルーシは北大西洋条約機構に軍事支援を要請した、と』
「いつものことだ」
『次にカレド=アル=アサド』
『このアフリカ屈指の実力者が一気にトップへ躍りられるだけの天然資源を見付けたとの噂有り』
『情報部が引き続き監視しています』
「独立して間もなく、か。旧スーダン総督府の連中は揃いも揃って間抜けしかいなかったらしいな」
「それで、悪いニュースは?」
ファッキンニューガイ
『今日、選抜をパスした“クソったれ新人”がチームに加わります』
『名前はソープ』
『ジョン=“ソープ”マクタビッシュ』
――― ジョン=プライス英陸軍大尉、及び副官 訓練施設での会話より
264: 名無しさん :2017/01/26(木) 21:30:13
連邦崩壊後、米英に対して国内市場を開く形で経済支援を受けて立ち直りつつあった新生ロシアでは、
非業の死を遂げたとされたかつての英雄、ヨシフ=スターリンを崇拝し、
米英による干渉を排除して再びソ連を復活させることを主張する超国家主義派と、
現政権を支持する軍人の一派が激しく対立。
ついには内紛へと発展し、一万五千発もの核弾頭が不安定な状態に晒されていた。
これを受け、勢力圏を接する枢軸諸国同盟が警戒を理由に大規模な戦力を国境へと移動させる一方、
新生ロシア現政権を支持する米英が事態を収束させるべく、
ウクライナやベラルーシといった地域に対し、
新生ロシアの政権派を支援するためのNATO軍の派遣を検討していた。
しかし同じ頃、英連邦からの独立間もない北アフリカのスーダンでは
反欧米主義者のアル=アサド率いる一派が潤沢な資源を背景に勢力拡大し、
米英との協調を維持する現大統領を排除しようという構えを見せる。
このため、貴重な産油地の失陥を恐れた米英は北アフリカ地域も同時に注視せざるを得ず、
新生ロシアに対しては、特殊作戦部隊の先行派遣という方針を取ることになった。
このような情勢の下で英陸軍特殊部隊SASは、
北極圏の港より核弾頭が密かに新生ロシア国外へ運び出されようとしていることを察知。
実働部隊を率いるジョン=プライス大尉は
核弾頭輸送中の貨物船を密かに確保すべく、北大西洋上での強襲作戦を立案。
直ちに模擬訓練が開始され、慌ただしさを増したその訓練場に、
選抜試験を突破したばかりの新人隊員、“ソープ”マクタビッシュ軍曹が姿を見せた。
「お前が例の新人か」
「ソープとは、随分ふざけた名前だな。一体どうやって合格しやがった。え?」
「まあ、良い。早速だが近接戦闘のテストを行う」
「このテストでは、貨物船の中を60秒以内に通り抜けてもらう」
「隊内レコードはギャズの19秒だ。やってみろ」
「……いいだろう、ソープ。合格だ」
――― ジョン=プライス英陸軍大尉 着任した新人隊員に対して
これが以降数年に渡って続くSASの、否、彼らの長い戦いの幕開けであり、
ひいては七十余年振りとなる、真の意味での世界大戦の切っ掛けへと繋がることは、この時知る由も無かった。
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます」
「大本営陸海軍部午前六時発表。
本日未明、帝国陸海軍部隊は南樺太及び日本海上においてロシア軍と戦闘状態に入れり」
「また沖縄の“門”が弾道弾攻撃を受けるも、大洋連合軍警戒部隊と共にこれを撃墜す」
――― 201X+5年某日 日本放送協会の臨時ニュース放送より
「沖縄への核攻撃と連動した、帝都での化学兵器による無差別テロ」
「おそらくNATOからの要請により、ISAがNATO側で参戦することを知っての時間稼ぎと思われます」
「時間帯を考えれば被害は極限まで抑えられましたが、死傷者の数は万を下らないでしょう」
「またベルリン及びパリ、ローマなどでも同様の攻撃を確認したとの情報が入っています」
「また北米上空で新たに核爆発を確認。いずれも詳細は不明」
「……それと、大洋連合からの渡航者にも少なからない死傷者が出ています」
「連中、よりにもよって“向こう側”の逆鱗を ―――」
「し、失礼します! 新たに弾道弾、及び巡航ミサイルによる攻撃を確認! ただちに防空壕へ!」
――― 201X+5年某日 “こちら側”の大日本帝国、総理官邸の音声より
「かつて彼らは敗戦直前の状況さえも覆した。こちらの常識は通用しない。そういう集団なのだ、彼らは」
「その事実を忘れ、連中はパンドラの箱を勢い任せに蹴り開けた」
――― ??? 詳細不明
――― Call of Duty : Modern Warfare IF after 1944 Gate ―――
.
265: 名無しさん :2017/01/26(木) 21:32:17
以上になります。
上の方で話していたCoD:MWネタが勿体無かったので日蘭世界1944ゲートネタと混ぜて煮込んでみました。
続く予定はありません。お目汚し失礼しました。
最終更新:2017年02月12日 22:15