500: ひゅうが :2013/08/06(火) 08:57:03
ちょっと解説のような感じ。


――日本を象徴する戦艦といえば、記念艦となっている戦艦「大和」がまず挙げられるだろう。
栄光と敗北に彩られた大和型戦艦。その働きはあまりに有名であるためここに詳細は記さないが、超大型護衛艦「やまと」と名を改めた後もその活躍が続いたことは記憶に新しい。
だが、その横にならぶ2隻の軍艦の由来について知るものは少ない。

巡洋戦艦「樺太」級。
2番艦である「千島」とともに、かつての「向こう側」では「栄光」と「解放」と呼ばれていた軍艦である。
とはいっても、この艦は大和型と違い日本海軍の直系とはいえない。
なぜならば、この軍艦の名前はかつて「82型重巡洋艦」と呼ばれるソ連海軍の主力戦闘艦となる予定であったためだったからだ。
その1番艦の名前をとって彼女らはこう呼ばれていた。「スターリングラード」級と。
全長273メートル、満載排水量4万2500トン。主砲は305ミリ(12インチ)砲3連装3基。速力は35.5ノット。
この高速の申し子は、スターリンの見果てぬ夢の賜物。高速を利用して米艦隊にまで肉薄し、127キロの彼方から米空母を「狙撃」するという恐るべき戦法を構想として抱いていたもののそれが米海軍への対抗心を理由にしたスターリンの恐怖心の賜物であることは明らかであろう。
太平洋で繰り広げられた超弩級戦艦同士のどつきあいに触発されてソヴィエッキー・ソユーズ級戦艦の建造を再開したあたりからもそれはみてとれる。

計画ではこの同型艦を6隻建造する予定だったというが計画は遅れ、スターリン死去時には1番艦「スターリングラード」が就役間近、2番艦「モスクワ」が進水済みであった。
ここで政権を握ったラヴレンチー・ベリヤが「従来型の軍艦は時代遅れである」として建造中止を命じようとしたのだ。

日本人技術者の力を借りて進められつつあった赤軍の海上艦隊計画が気に入らなかったのであるとも、スターリンの暴走への反動ともいわれているが、これにソ連海軍は全力で抵抗した。
しかし、結局は建造が進みつつあった「ソヴィエッキー・ソユーズ」級戦艦を擁護するのが精いっぱい。
声を上げたベリヤたち党の側も政治的な意味での勝利の象徴を探していた。
そこで白羽の矢が立ったのが、スターリングラード級であったのだ。
完成間近である最新鋭戦闘艦が政治的理由で葬られかけるあたり実にソヴィエト的であるが、彼女は結果として救われた。
彼女の設計に際し尽力した日本人造船技術者から情報を入手した分断国家の北側の国が購入に名乗りを上げたのだ。
彼らとしては、圧倒的な戦闘力を持つ南側の「大和」型戦艦の恐怖は先の北海道戦争で身に染みておりその対抗策を欲していたのだ。
長射程30.5センチ砲による打撃力は貧弱な南側の補助艦戦力を粉砕できる打撃力を持っているし、もしかしたら東京の反動帝国主義政権に砲弾を撃ち込むことができるかもしれない。
実に魅力的であった。
本当はソヴィエッキー・ソユーズ級がほしかったのだがこれはソ連側が手放さないだろう。
1隻だけ手に入れられても大和型相手では意味がないのだ。

この申し出を「処分先」に困っていたソ連首脳と、「同盟国」に保持させることで廃艦にする屈辱を回避できるソ連海軍首脳は快諾。
北海道戦争終結後わずか2年である1955年1月、大泊軍港に2隻の「戦艦」が浮かんだのであった。
対する南の日本側は、この強力な敵の出現に頭を悩ませた。
1隻であるのなら自分たちの大和型が相手をできるが、2隻となると下手をすれば東京へ艦砲射撃ができてしまうかもしれない。
かといって空自にすべてを任せることはできない。彼らには防空軍としての任務があるからだ。

――かくて、海上自衛隊と呼ばれるようになった南の帝国海軍の末裔たちは「正規空母」の再保有を企図する。
戦艦には航空攻撃。
彼らもまた学んでいたのだ。その努力は空母「かつらぎ」と「あかぎ」(エセックス級)という形で結実する。


その後、「栄光」と「解放」は時代にあわせ改装が重ねられ、1970年には「樺太」と「千島」と名を改めた。
統一戦争時には主砲はそのままに、主として防空艦としての役割が強くなっていた。
主兵装がソ連製の対艦ミサイルでなく防空用ミサイルVLSであったあたり、「やまと」の改装とコンセプトは似ているかもしれない。
(対艦攻撃としては北日本海軍は空中発射対艦ミサイルと潜水艦という形で割り切っていた)

現在、「樺太」と「千島」は冷戦時の兵装はそのままであるものの基本的には就役当時の姿を再現して記念艦となっている。
かつて敵とした「やまと」と並んで仲良く海に浮かぶ姿は、かつて2つの国であった日本がようやくひとつになったことを象徴しているかのような光景であった。

501: ひゅうが :2013/08/06(火) 09:05:22
というわけでちょっと投下しました。
「ソヴィエッキー・ソユーズ」級がもらえなかったので2隻の「スターリングラード」級がきました的な展開ですw
彼女らがいるために北日本海軍はキーロフ級を保持していません。
統一戦争時までに憂鬱な某提督たちの暗躍で、南側の「やまと」と似たような運用コンセプトに基づき「ソ連版アーセナルシップ」となってしまいました。
征途版「あきづき」型を大型化したようなある意味割り切りすぎな内容ですね。

幸いなことに統一戦争では空母の直掩として活躍、その名の通り祖国に「栄光」と「解放」をもたらしました。
現在は仲よくならんで「やまと」とともに人気の観光スポットになっているという感じですね。

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最終更新:2017年02月20日 10:29