304: earth :2016/12/23(金) 00:15:09


 『時空の迷い子達』 
 《ワーストコンタクト》


「おいおいおい……」

 自他ともに認めるオタク、陸上自衛隊三等陸尉・伊丹耀司は冷や汗を流した。
 彼は突如現れた謎の軍勢の無差別攻撃から民間人を守るため、皇居に民間人を誘導した。そして皇居に誘導したのは正しい選択だった。少なくとも銀座に現れた軍勢を想定した時には……。

「……」 

 誰もが動けなかった。
 日本から見たら正体不明の軍勢も、それらに対し反撃に転じた自衛隊や警察も、誰もかれもが異常な光景に目を奪われている。
 東京上空には常軌を逸した巨大な《何か》。彼らのこれまでの常識とはかけ離れた《何か》が見慣れた空に居座っているのだ。
 《何か》がメッセージを発してもいないし、攻撃を加えてもいない。
 だが、それが味方ではないことは誰もが判った。いや理解させられた。
 そこから発せられる圧倒的なまでの『悪意』。身震いするほどの『敵意』。
 人を拒絶し、人を害そうとする意思。
 それは空に浮かぶ《何か》から、《何か》を見ていた全ての人間に容赦なく向けられている。
 《何か》の意思を理解するのに言葉など不要だった。
 そこにいる誰もが等しく悟ったのだ。目の前にいる《何か》はこれまで地球人類が遭遇したことのない《天敵》であると。
 《何か》……銀河帝国側が宇宙怪獣と呼ぶソレは地表に這いつくばるヒトが己の意思を理解したのを見計らったかのように攻撃を開始した。

「うそ、だろおい……」

 伊丹は己の目を疑った。
 宇宙怪獣が光を放った次の瞬間、東京各地は火の海と化したのだ。 
 高層ビル群は次々に倒壊し、東京駅は文字通り消し飛んだ。官庁街の一部さえも消し炭と化した。
 皇居は辛うじて直撃を受けなかったものの、周囲のビル群は甚大な被害をこうむっていた。原型が残っているのはまだ幸運な方で、ただの瓦礫の山、或いはクレーターしか残されていないものもある。
 当然、攻撃を開始する自衛隊。そして在日米軍。
 多数のミサイルが叩き込まれるも、全くダメージを与えることはない。

「何なんだ、こいつは?!」

 F-15Jのパイロットは思わず叫ぶ。
 だが、その言葉が叫ばれたのは東京だけではない。
 今や、世界各地で叫ばれていた。
 東京に出現したと前後して、この巨大な怪物は世界各地に出現。そして東京の第一撃を合図にするかのように同時に攻撃を開始していたのだ。
 世界最強のアメリカ合衆国、米国に挑戦しようとした新興の大国・中国、虎視眈々と力を回復しようとしていたロシア。
 三ヶ国は即座に反撃するが、そのどれもが全く通用しない。
 逆に宇宙怪獣の無慈悲な攻撃でいくつかの都市は一瞬にして灰燼と帰した。
 世界が燃えていた。しかしそれは化け物たちからすれば最初の挨拶程度なのだ。彼らからすれば火星軌道で戦っている者と比較にならない程、脆弱な者たちを潰すことなど容易だった。  
 挨拶程度の初撃から辛うじて逃れた皇居が化け物の次の標的にされていることを伊丹は悟る。
 狼狽える警官や民間人を何とか宥めつつ、伊丹は次の手を必死に考える。

「ヤバい! 急いで避難を……」

 しかしどこに逃げればいいというのか……あの化け物は東京全域を射程に収めている。
 どこに逃げても撃たれるリスクは高いのだ。
 一瞬の迷い。  
 その迷いを嘲笑うかのように……化け物から破滅の光が皇居に向けて放たれた。

305: earth :2016/12/23(金) 00:16:48
あとがき
次回は銀河帝国側の動きです。
核兵器さえ通用しない化け物が億単位で押し寄せる……発狂ものですね(汗)。
これで米軍の秘密兵器で逆転したらハリウッド映画ですけど(笑)。

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最終更新:2017年02月20日 11:55