310: earth :2016/12/24(土) 17:11:28
東京に宇宙怪獣が現れる少し前。
銀河帝国政府は異次元人の介入の可能性が疑われる以上、座視することは出来ないとして軍事介入を決断した。
プロキシマ・ケンタウリbから急行してきた殴り込み艦隊主力部隊、各地から集められた分艦隊、合計4524隻は火星軌道に集結し、宇宙怪獣に対する防衛線を構築していた。
波動砲及びツインノヴァ波動砲の発射準備を整えた前衛艦隊が艦列を整え、残りの艦も前方からこちらに向かってくる
宇宙怪獣に対して砲を向ける。
量産型ガンバスター・シズラーを改良したシズラー改が宇宙怪獣とすぐに戦えるように配置につき、コスモパルサー系列の機体が艦隊の直掩任務とシズラーの支援のために展開していた。
コスモパルサーは対宇宙怪獣戦に備え、波動カードリッジ弾を改造し、月クラスの天体ですら数発で破壊できる光子魚雷を超える破壊力を持たせたミサイルを複数搭載しているが、それでも眼前の宇宙怪獣と真っ向から殴り合うのは難しいされていたため、この手の任務を振りあてられている。
ちなみにコスモパルサーも三賢者の手によって《原作》以上に、このフル爆装の状態でも大気圏離脱程度は当たり前。
更に使い捨ての強化ユニットを使えば亜空間潜航や短距離ワープすら出来る恐るべき兵器であり、ボラー連邦の戦闘機ではコスモパルサーに歯が立たなかった。このため銀河帝国本国がある銀河ではこの機体は《死の運び手》として恐れられていた。
そんな超兵器が宇宙怪獣の前では超兵器(笑)となるのだ。
銀河帝国軍が宇宙怪獣を恐れるのも当然だった。
「宇宙怪獣のワープアウトを確認。現在観測できるのは約4500万。光速の90%でこちらに接近中」
「全艦、砲雷撃戦準備完了」
「シズラー部隊、全機発進完了」
「マイクロブラックホール砲、及びT兵器起動準備完了」
「前衛部隊の波動砲射程圏内到達まで後5分」
セイレーンの第一艦橋は緊張感に包まれていた。
何しろ殴り込み艦隊編成後、初めての大規模な実戦。それもボラー連邦のときのように敵はヒトではない。ヒトの天敵とも言える宇宙怪獣が敵なのだ。その数、約4500万。自分たちの1000倍もの物量を誇り、質の面でもこれまで戦ってきた者たちとは比較にならない水準を誇る。
ボラー連邦を相手に艦隊戦の指揮を執ってきたフォークも、さすがにこれだけの物量と質を持つ敵、それもヒトではない宇宙怪獣を相手にしたことはない。
「全く、怪獣と戦うのは東宝映画の自衛隊や、ゲームの地球防衛軍、ウルトラ警備隊のような連中の仕事だろうに」
艦隊の長であるフォークはそんな軽口を飛ばしながら、場を和ませる。
尤も内心では本国で配備が進む未来予知システムの配備を強く具申することを決意していた。
(旧ガミラス、旧ボラーの残党、古代の女王を奉ずる宗教家共、それに完全な独立を欲するガルマン人……それに一部の
恩知らずの地球人。あの連中が煩わしいのせいでどれだけ足を引っ張られていることか)
銀河帝国を脅かす者たちを罵りつつも「たった30年で恩を忘れて昔の夢が忘れられない連中が現れるのだから、あちらの地球で地球教が生まれたのも当然か」などと、かつて生活していた世界のことも一瞬考えたが、すぐに頭を切り替える。
「宇宙怪獣が小ワープで奇襲を仕掛けてくる可能性がある。周囲の警戒を怠るな。だが過度な心配は不要だ。T兵器をもってすれば、どの方向から奇襲を仕掛けてきても対処できる」
時間を操り、相手を抹消するか、強制的に死に至らしめる《T兵器》。
そして表向きボラー連邦から接収した技術で開発したとされる《マイクロブラックホール砲》。
セイレーンに搭載されているソレラは波動砲を超える決戦兵器であり、フォークはその威力について相応の自信を持っていた。
逆にこの決戦兵器をものともしない連中が現れたら、銀河帝国は国家総力戦を決意することになる。
その日が来ないことを祈りつつ、フォークは口を閉じてモニターに映される宇宙怪獣をにらむ。
そして運命の瞬間が訪れる。
「全艦、耐ショック、耐閃光防御」
「宇宙怪獣、前衛艦隊の射程圏内に到達」
「波動砲発射!」
311: earth :2016/12/24(土) 17:12:03
フォークの号令の下、前衛艦隊1912隻が装備する波動砲、ツインノヴァ波動砲から膨大なエネルギーを宇宙怪獣に向けて放った。太陽クラスの恒星さえ消し飛ばせるだけの膨大なエネルギーが宇宙怪獣の群れに降り注いだ。
兵隊は勿論、混合型、高速型、上陸艇といった巡洋艦タイプ、合体型の宇宙怪獣が次々に消滅していく。帝国艦隊前方の巨大な閃光が消え去り、レーダーが回復した帝国艦隊が見たのは……群れの過半が消滅した宇宙怪獣の群れであった。
「目標に命中を確認。敵集団の70%が消滅」
傍目に見て大戦果だった。
宇宙怪獣の群れの中央部には大きな空洞が生まれ、その周囲にも穴が目立つ。これだけを素人が見れば宇宙怪獣が大打撃を受けたように見え、拍手喝さいするところだろう。
しかしボラー連邦と戦ってきた者たちからすれば信じがたい光景であった。
「化け物……」
オペレーターの口から洩れた言葉。それはその場にいた者が抱いた思いを端的に示していた。
銀河帝国が保有する波動砲搭載艦で構成される2000隻近い大艦隊から、一切邪魔されることなく放たれた波動砲。
ボラーが相手なら、この一撃で片が付いたであろう大火力の直撃を受けても尚、1300万以上の宇宙怪獣が生き残っているのだ。恐るべきタフネスぶりだった。
フォークも衝撃を覚えるが、すぐに立ち直る。
「前衛を下げろ! 残りの艦隊は撃って撃って、撃ちまくれ!! 残りはたったの3割だ!」
提督の号令の下、堰を切ったかのように沈黙していた帝国艦隊は全砲門を開き、攻撃を開始する。
セイレーンから発射されたマイクロブラックホール、、改スーパーエクセリヲン級から撃ち出されるレーザーは、次々に宇宙怪獣を打ち倒した。《原作》では歯が立たなかったスーパーエクセリヲン級の鬱憤を晴らすかのような活躍ぶりを示していく。
護衛部隊も十分に活躍した。
特に《ブルーノア》のような艦首と《しゅんらん》を彷彿とさせる構造物を持つエンタープライズ級の活躍は目覚ましかった。
この艦は大口径ショックカノン4連装砲塔を前部に3基、後部に2基、更に艦底に1基を持っている。加えて副砲として中口径ショックカノン3連装砲塔も左右両舷に1門ずつ配置されている。一門あたりの攻撃力、連射性もそれ以前の艦艇より向上している。
このクラスの戦艦の攻撃をまともに受ければ巡洋艦クラスの宇宙怪獣と言えどもひとたまりもない。
そしてこの級の戦艦が秀でているのは砲撃力だけではない。
「ホーミング波動砲、撃て!」
エンタープライズ艦長の号令と共に艦首から発射された波動砲はまるでそれが意思があるかのように軌道を変えつつ目標に殺到していく。その針路上にあった宇宙怪獣は次々に粉砕されていき、ホーミング波動砲の目標であった合体型の宇宙怪獣は直撃を受けて跡形もなく消滅した。
エンタープライズ級戦艦はブルーノアと同様に艦首にホーミング波動砲と言う誘導式の波動砲2門を持っている。これはボラーとの戦いでも猛威を振るった。
しかしそれ以上の破壊力を持つのがモノポールエネルギーと波動エネルギーのハイブリット兵器であるツインノヴァ波動砲であった。
18代YAMATO建造を目指すブローネが試作のため開発した初代ツインノヴァ砲ともいうべき兵器をエンタープライズ級は搭載していた。この新型波動砲の破壊力は従来の波動砲を遥かに超えるものであり、エンタープライズ級を銀河帝国の主力戦艦と名乗るのにふさわしい存在にした。
だが宇宙怪獣も帝国軍に一方的に撃たれっぱなしでいる訳ではない。
凶悪な打撃力を誇る帝国艦隊を、ヒト種を逆に駆逐せんとばかりに、彼らは残った力を振り絞るかのように反撃に転じる。
「化け物共め、あれだけの損害を受けてもまだ戦うか」
フォークは唸った。
相手が人間なら戦意を喪失するか、パニックを起こすか、或いは撤退しようとするほどの大損害を初手で与えたのだ。
それにも関わらず相手は未だに戦意を失うことなく、戦闘を継続している。
生き残った母艦型は次々に巡洋艦を発進させ、巡洋艦からは大量の兵隊クラスが放出されている。
シズラー改、コスモパルサーが対応しているが、その相手は決して楽ではない。
「生き残っている母艦を倒すのにT兵器を使うか?」
312: earth :2016/12/24(土) 17:12:53
フォークが奥の手を使うか悩んだ次の瞬間、オペレーターが異常を報告する。
「艦隊右舷にワープアウト反応! 宇宙怪獣です!! 数1500万!!」
「奇襲か!」
T兵器の起動を命じようとするフォーク。
しかしその直後の報告は彼を絶句させるものであった。
「敵はこちらを無視して地球に向かっています!!」
「何?! くそ、第8分艦隊、右舷の集団を撃て!! 無傷で奴らを通すな!! T兵器は右舷の敵に照準をあわせろ!」
スーパーアンドロメダ級を中核とした第8分艦隊は即座に向けられる火力を新たな集団に叩き込むが全てを
仕留めきることはできない。
帝国艦隊をあざ笑うかのように彼らはワープを始めようとするが、それを座視するほどフォークはお人よしではない。
「T兵器、発射!」
セイレーンの右舷に幾何学的な模様が現れる。
某オタク自衛官がみれば「魔法陣?」と思うようなソレがひと際強い光を放った瞬間、右舷の宇宙怪獣に変化が現れる。
そう、宇宙怪獣の集団の大半が急速に崩れていったのだ。傍目には何もされていない。しかしそこにいた宇宙怪獣の集団は急速に崩れていった。まるで砂で作られた城が崩れるように、光の粒子に分解されて宇宙に消えていく。
「やったか?!」
「敵集団の99.98%の消滅を確認……ダメです、生き残った宇宙怪獣が再ワープを開始しました!」
「行かせるな!」
回頭を済ませた第8分艦隊のうち、最低限のチャージを済ませた艦から波動砲が発射される。
これによって更に宇宙怪獣を撃ち減らすことに成功したが、全滅させることはできなかった。
「ダメです! 少数の敵がワープした模様!」
「前面の敵集団が全面攻勢に出ました。連中、体当たりしてきます!!」
「この大群が囮だったとでも言うのか?」
ここに至り、フォークは一つの決断を下す。
「……地球に潜入中の部隊に迎撃を命じろ。全リミッターを解除して構わん」
「提督?!」
「この際、地球人に直に目撃されるのは仕方ない。やれ」
「……了解しました」
313: earth :2016/12/24(土) 17:13:29
もうここまでかと思って目を瞑った伊丹は目を開けた。
「生きてる?」
伊丹はあたりを見回す。
そこには避難してきた民間人、そして警察官もいた。少なくとも誰も死んでいないし、一見したところ皇居にも
被害はない。
「何が?」
伊丹が見上げるとそこには、信じがたい光景が広がっていた。
数名の髪の長い女性(?)と思われる存在が、赤白のレオタードのような服を身にまとい、空を飛んでいるのだ。
それだけでも十分に目を疑う光景だったが、更に信じられないのは、彼女たちが化け物から放たれた光をバリアー(?)を張って食い止めているのだ。
「うそ……」
漫画やアニメではありふれた光景かも知れない。
しかしそれが目の前に現れたとなれば、さすがの伊丹も平常心のままではいられない。伊丹以外の人間の大半は、現実についていけず呆然としていた。
そんな彼らに更なる追い打ちが襲い掛かる。
彼女たちは受け止めた光をそのまま化け物に投げ返したのだ。そしてソレはこれまでどのような攻撃にも耐えた化け物にダメージを与えたようで、化け物はよろめいた。
これを見ていた人々は呆然とした。
「あれは何者なんだ?!」
この様子をモニターしていた政府、自衛隊、警察のお偉方は一様にそう叫ぶ。
そしてそれを承知とばかりに、彼女たちは名乗る。
この場にいるすべての人間に、そして目の前の倒すべき宇宙怪獣に。
「銀河帝国宇宙軍第1特務次元航行艦隊(並行世界殴り込み艦隊の書類上の名称)所属、第601特務班、この星を守るために
助太刀します!」
この日をもって、地球人類は地球外生命体の存在とその脅威を知ることになる。
314: earth :2016/12/24(土) 17:15:21
あとがき
ここまで恰好よく登場するヌクヌクがいただろうか(笑)。
正義のヒロイン登場と言った感じですかね……。
彼女たちの衣装は万猫DASHの戦闘服です。
覚えているヒト、どれだけいるかな(汗)。
最終更新:2017年02月20日 11:59