333: earth :2016/12/31(土) 00:22:49
銀座事件及び世界同時襲撃事件から2週間後、沖縄上空に4隻の宇宙戦艦が現れた。
エンタープライズ級戦艦《アドミラル・ヒジカタ》に乗って地球に降下したフォークは、地球の惨状を改めて確認して
軽くため息を吐いた。
「酷いものだ」
東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワ、北京……経済、政治上で重要な都市の多くが攻撃されて
多大な被害を受けている。
ロシア、中華人民共和国による核攻撃、中東ペルシア湾での米原子力空母沈没、産業地帯や発電施設への攻撃による
各種危険物質の大量流出……それは地球環境に多大な悪影響を与えている。
経済の混乱とあわさって無政府状態になっている地域も存在しており、混乱は未だに収まっていない。
「コスモクリーナーを持ってきて、自然環境の回復位はしてやらないと拙いな……本国におわす三賢者は今回の接触を実験程度にしか思っていないだろうから、実験動物が徒に死なない様にケアするのも学者の仕事と説得するしかないか」
自分の故郷に似た土地が滅んでいく様をただ眺めてみているのは気が引けるフォークとしては、多少なりとも手を差し
のべてやりたいと思っていた。
「それにしても、地球諸国の交渉団選出……ここまで手間取るとは、いや宇宙怪獣に襲撃され混乱した状態で未知の来訪者を迎えたにも関わらず、よくやったほうと言えるか?」
銀河帝国からの会談申し込みを受けて手を挙げたのは国家だけではなかった。非政府機関、宗教団体も手を挙げた。
銀河帝国側は「国家に限る」とし、更に参加する国々について色々と詰めた末、G20を構成する国々が代表を沖縄
に派遣することになった。
これらの調整に約2週間。
平時ならフォークも「遅い」と感じるところだが、これだけの災厄に見舞われた状態なら仕方ないと判断した。
フォークがそんなことを考えていると沖縄から発進した自衛隊と在日米軍のF-15がこちらに向かってくることが
確認された。
「実に久しぶりだ……ここが故郷に近い世界だということを実感させてくれる」
懐かしさを感じたフォークは思わず笑みを浮かべる。
334: earth :2016/12/31(土) 00:23:21
宇宙空間で光年単位で戦ってきた軍人からすれば、目の前を飛ぶ鉄の鳥など博物館で飾る骨董品のような兵器であり
周りを飛ばれてもただ煩わしいだけだろう。
しかし彼個人からすれば、帰郷へ向けて一歩一歩進んでいることを実感させる光景でもあった。
一方、原子力空母を超える巨大宇宙船(全長600m)、それも明らかな戦闘艦を出迎える地球側は気が気でなかった。
「米軍の空母より遥かに大きい艦が、これだけの速度で動くだと?」
「信じられない」
自衛隊機、米軍機のパイロットは全長が600mはある巨大な軍艦が宇宙から降りてきたという事実に驚愕していた。
地上で映像を見ていた各国の人間も信じられないものを見たという顔をしている。
「どのようなエネルギーを使っているんだ?」
「いやそもそもどうやって浮いているのだ? あれだけの巨大な物体を空中で自由自在に動かすとは」
「少なくとも、あの女性型兵士よりは強いということだな……あの4隻だけで我々を壊滅させることは容易ということか」
銀河帝国側が事前の通告通りに寄越した4隻の蒼い軍艦。
宇宙に陣取る数千隻の艦隊からすれば、ほんの一握りの艦であるが、そのほんの一握りだけの戦力で自分たちを滅ぼす
ことが出来る……彼らはそう認識した。
「ははは、まるで日本のアニメに出てきそうな宇宙船だな。実は宇宙人も日本のアニメを見ていて影響を受けているとか?」
那覇空港で出迎える準備をしていたアメリカ軍の士官が重苦しい気分を吹き飛ばそうとそんなジョークを飛ばし、自衛官が
「まさか」と返すものの、場の空気は完全にはほぐれない。
東京でこの映像を見ていた伊丹は「宇宙戦艦ヤマトとか、そのあたりに出てきても不思議じゃない形だな」などと言って同僚から白い眼で見られていたが……。
「黒船来航ならぬ、蒼船来航と言ったところか」
沖縄で銀河帝国艦隊司令官を待つ日本国首相北条の呟き。
それこそが多くの日本人の率直な感想と言えた。
かくして日本人にとって第二の黒船来航とも言える蒼船来航、そして沖縄会談の幕が上がろうとしていた。
335: earth :2016/12/31(土) 00:26:17
あとがき
さすがに宇宙戦艦ヤマト世界の船だと断定する人間はいませんでした。
まぁさすがにフィクションの存在を認められるヒトはいないでしょうから……。
事実を知ったらどうなることやら(汗)。
最終更新:2017年02月20日 12:10